インターネットやIoTサービスが目まぐるしく発展しているにも関わらず、人材不足という問題が出てきているのはなぜでしょう?この記事では、経済産業省が行っている対策とあわせて、その現状をご紹介します。
1.IT人材が不足している現状とは
IT業界における人材不足は、経済産業省の調査からもその深刻さが伺えます。調査結果によれば、現在のIT人材は約90万人ですが、この状態ですでに17万人以上が不足しているとされています。それだけでなく、2019年からは産業人口が減少傾向になるとまで推測されているのです。
IoTなどのインターネットを使ったサービスが一般化していく中で、IT人材の育成も同時に進められており、今のところはエンジニアも増加しています。ですが、その状態がいつまでも続くという保証はありません。その理由として挙げられるのが、日本全体の課題でもある人口減少と少子高齢化です。労働人口が減ると、どの業界においても人手不足が予想され、大きな問題となることは言うまでもないでしょう。
ITやインターネット関連産業は、今後も拡大していくことが期待できます。だからこそ、より人材不足に陥る可能性が高い産業であるともいえるでしょう。将来的にはインターネットやIoTを使ったサービスが広く普及していくのにも関わらず、それに見合う人材がいないという事態は、産業の発展のためにもできるだけ避けたいことです。この問題を改善しようと、経済産業省は有識者を収集して研究会を行ったり、アンケート調査をしたりと、取り組みを進めています。
2.IT人材の将来推計人口はどうなるのか
これから先、IT人材はどのように減少していくのでしょうか。経済産業省の調査によれば、2011年以降、IT人材は増加傾向にありましたが、前述したとおり2019年を境に減少していくと予測されています。さらに、IT人材の平均年齢は2030年まで上がり続けるとも予測されています。これは、IT業界初期にIT人材となった人たちの高齢化が進み、平均年齢が上がっていくことが影響しています。若年層が減少していると同時にシニア層が増加していることで、平均年齢が上がってしまうのです。高齢化に伴うこのような影響は、IT業界に限らずどの業界でも問題になっているので、実感している方も多いでしょう。
人材不足が深刻化する一方で、ITやインターネット関連サービスの規模は、当然のごとく今以上の拡大が見込まれます。経済成長のカギであるIT業界を支える担い手が減少してしまうのは、社会にとっても非常に困った事態です。前述した経済産業省の調査によれば、日本のIT人材は2030年には59万人以上が不足してしまうと推測されています。このままではサービスだけが独り歩きをし、それに対応できる人間がいない状況になってしまうのです。
また、情報セキュリティの人材も同じく減少傾向にあります。2016年時点でも約13万人の人材が不足しているとされていますが、2020年には不足人数が約19万人まで増加すると考えられており、この傾向はますます拡大することが懸念されています。
情報の機密性を守ったり、安全性を保つための情報セキュリティは私たちの生活において重要なサービスです。それらの担い手が不足すれば、今以上のサービスが受けられなくなるだけでなく、今と同じサービス状態を維持すること自体も難しくなってしまうかもしれません。
3.IT人材を確保するために必要なこと
人材不足が深刻なIT業界ですが、人材を確保するためには様々な対策が考えられます。そのなかのひとつとして、今までITに携わっていたシニア層や女性、外国人などの人材を今以上に起用するというものがあります。特に女性は、2014年の時点の調査では、IT業界全体の4分の1しかいない状態。今後は女性を積極的に雇用し、その割合を増やすことで人材増加が望めるでしょう。もちろんIT業界全体でも待遇や給与面の改善などを進め、将来の人材候補者に魅力ある業界だと認知してもらうことが重要です。業界のイメージをより良くしていくことで新規の就業者を増やすことにつながるだけでなく、すでにIT業界に就いている人たちが他の業界へ流出することを防ぐ効果も期待できるでしょう。
現在の人材を尊重しつつ、新しい人材を発掘し、スキルアップ、レベルアップさせていくこと。この取り組みが、今後のIT業界が発展するためには必要不可欠なのです。
4.子どもたちの教育も重要
少子化が進んでいるとはいえ、今の子どもたちも将来は貴重な人材となることは間違いありません。学校でのプログラミング学習が必修となる中で、ITスキルが向上していくことが予測されます。生まれた時からスマートフォンが当たり前の世代にとって、ITとはもはや特別なものではないのかもしれません。しかし、それと「ITスキルを使える」のはまた別問題。今後のIT人材不足に備えて、しっかりとした教育を行うことが重要だといえるでしょう。
プログラマーやSEなど、ITを専門とする職業ではなくても、職場でITスキルを利用する場面は増えてきています。デスクワーカーでPCを使わないという人の方が珍しいでしょう。そのため、ITを専門としない場合でも、ITスキルを身に着けておくことは大切なのです。