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「コエテコ」では「教育版」第一人者である日本マイクロソフト社 原田 英典(はらた・ひでのり)さんにインタビュー。
前編では「ティーチャーエンゲージメントチーム」としてのお仕事、日米のIT教育に関する課題、北欧の教育について語っていただきました。
この中編では「マイクラ」「マイクラ教育版」の中身をおさらい。「名前は聞いたことがあるけど、どういうゲームなの?」と思う保護者も多い「マイクラ」について、改めて魅力を語っていただきます。
「教育版マインクラフト」第一人者にインタビュー(中編) 〜「マイクラ」で何ができる?〜(今ここ!)
「教育版マインクラフト」第一人者にインタビュー(後編) 〜「マイクラ」で観光ガイド!学校での実践例〜
そもそも「マイクラ」ってどんなゲーム?
—保護者インタビューをしてみると「名前だけは聞いたことがあるけど……」という方も多くいらっしゃいます。改めて、「マインクラフト」というゲームの魅力について原田さんの視点から教えていただけますか。「マインクラフトってどんなゲームなんですか?」と聞かれると、多くの方が「デジタル版『積み木』だよ」と説明されるようです。ただ、「マインクラフト」には積み木とは大きく違うところが多々あります。
たとえばスケールにしても、実際のブロックと比較してはるかに巨大なものが作れる。それだけでなく、レッドストーン(電子部品のようなアイテム)を使うことでブロックに機能を持たせ、自動的な仕掛けを作ることすらできてしまう。
それだけ高度なことができるのに、世界の全てが同じ大きさ・同じ形のブロックでできていて、単純なんです。空も雲も海も土も、全部同じ大きさのブロックからできています。これは、産業で多くの3Dデータで採用されているボクセル構造になっていまして、これを子どもが自由に操作して世界を作れるという点が素晴らしいと思います。
—最近のゲームは、精密なグラフィックを売りにすることもありますよね。「まるで本物みたい」とか。「マイクラ」はカクカクしているので、保護者の方からは「こういうのが逆に新鮮なのかな?」という声がありました。
確かに、リアル志向のゲームの中には、1cmとか1mmとか、実際のサイズと同じスケールで遊べるゲームもあります。でも、あまり緻密すぎると子ども達が理解しにくくなってしまうのですね。
世界の全てが同じパーツでできていて、組み合わせることで自分の世界を作っていける。ブロックの大きさが統一されているからこそ、小さな子どもでも遊びやすい。実際、電車の中で幼稚園くらいの子どもが遊んでいる姿を見かけることもあります。
しかも、単純でありながら限りなく自由なんです。ゲームというと、クリアの仕方が決まっているのが一般的です。一方、「マインクラフト」のアクティブユーザーは1億人近くいると言われていますが、それだけ多くの人が遊んでいても同じ世界にはならないんです。
—確かに、改めて考えてみるとすごいことですよね。材料は同じなのに、全然違うものができる……。
もちろん、慣れないうちは似たり寄ったりな建築になることもあります(笑)。先生向けのワークショップをしても、最初は豆腐*みたいな形の家ばかり。
「本当に自由度が高いの?」と言われるのですが、最近話題になった、マインクラフトで再現された軍艦島*のような作品をお見せすると歓声が上がるんです。
で、よくよく見てみると、同じブロックが自分の手持ちにもある!(笑)
作りたいと思えば、自分も同じものが作れるんです。そこがすごい。
YouTubeでも、お料理番組みたいに作り方を解説してくれる動画があって、子ども達が刺激を受けたりアイディアを得たりすることもあるようです。紙粘土とかだと手先の器用さが影響しますが、「マイクラ」なら特別な技術がなくても世間が驚くような作品を作れます。
プログラミングや化学が学べる「教育版」とは?
—「マインクラフト」にはいろいろなバージョンがありますが、その中でも「教育版」ならではの機能について簡単に教えていただけますか。「教育版」ですが、ポイントは4つかなと思います。
プログラミング(コーディング)
まずはプログラミング(コーディング)です。やってほしい作業を自動化するために、コードビルダー(プログラムを書くためのソフト)を用意しています。参考:マインクラフト(マイクラ)でプログラミングを学ぶ!始め方ややり方を紹介
化学の学習
それから「化学」の機能ですね。「元素構成器」をはじめとした様々な化学の学習機能を使い、マインクラフトの世界で化学実験ができるようになっています。また、この機能を使わないと生成できないアイテムも作ることができます。たとえば、実際の中学の授業でも学ぶ「反応熱」というのがありますね。鉄を酸素と化合させ、熱を発生させる、ホッカイロの仕組みになっているものです。
これが「マインクラフト」だと、鉄・水・炭・塩=ヒートブロックとなります。熱を持ったブロックですので、このブロックは、降雪地域でも雪を積もらせないブロックです。道路などを作るときに使うと便利ですね。
MR(複合現実)などでの3D学習
次に3Dを使った学習です。これは例えば「マインクラフト」の作品を3Dプリンターで出力する方法もあれば、Microsoftが展開しているミックスド・リアリティ(Mixed Reality)を使って映し出すこともできます。ミックスド・リアリティは、VR(仮想現実)ともAR(拡張現実)とも違います。VRは、仮想空間にヒトが入っていきますよね。ARは、ヒトの世界にデジタルデータが現れる。
MRはその融合版で、現実の世界と仮想空間がリアルタイムに影響し合うんです。たとえば、机の上にぽんと「マインクラフト」の作品を置いて360度から鑑賞できるので、3Dプリンターで出力するより簡単ですし、等身大に表示して映像効果として利用することもできます。
探究授業
最後に、協同学習の広がりです。たとえば、総合的な学習の時間などに「街の課題を解決する」というテーマで探究授業を行なっているところがあります。「大きなスポーツ大会が行われたあと、スタジアムだけは残ったけれど、人が来なくなってしまった」といった課題をどう解決するか、生徒達で考える活動などですね。
こうした課題で「マインクラフト」を使ってもらい、解決策も「マインクラフト」上で実現してもらうような方法もあります。
参考:マイクラは小学生におすすめ?勉強や知育になるのか解説
「発言しなさい」と言わなくても、勝手にコミュニケーションが始まる
—本当にいろいろな使い方があるんですね。実際に取り入れてみた先生の反応はどうでしょうか。先生達は、とにかく驚かれますよね。「教育で、こんなに活発に言葉が飛び交うことができるんだ!」ということを仰っていただくことも多いです。
これまで自分の意見をなかなか言えなかった子が、「マインクラフト」で何かを作らせてみると、とにかく誰かに言いたい、聞いてほしい!と話し出すんです。誰も強制していないのに、勝手にみんながコミュニケーションを取り始めます。
—作ったものを見てほしい気持ち、分かります。私も友達に見せて回っています(笑)。
ええ、「マインクラフト」は言語活動と非常に相性がいいんです。子ども達は元より「作ったものを誰かに言いたい」という強い気持ちを持っていますし、作品はそれぞれのオリジナルですから、内容もワンパターンにならず多種多様にパーソナライズされています。
実在のインターナショナルスクールの先生も、簡単なものを作って説明させることで言語活動の教育を進めている例もあるのですよ。
まとめ
いつの時代も「積み木」は子ども達に大人気の遊びです。ブロックの数に制限がなく、巨大な建築や自動的な仕掛けも作れてしまう「マイクラ」が流行るのは必然だったのかもしれません。新しい学習指導要領では、「学ぶ内容」だけでなく「学び方」にも焦点が当たっています。「主体的・対話的で深い学び」が求められる現代において、「誰も強制していないのに、勝手にコミュニケーションが始まる」教材はまさに理想のツールといえるでしょう。
次回、インタビュー後編では、京都・立命館小学校と都立・新宿山吹高校の実践例も交えながら、実際の学校での活用事例を見ていきます。
さらにインタビューの締めでは、小1ママでもある日本マイクロソフト社 ティーチャーエンゲージメントエキスパートの山口 美紀子(やまぐち・みきこ)さんにも加わっていただき、家庭での「マイクラ」活用について楽しい雰囲気でトークしていただきます。