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モスクワ市政府(ロシア)の取り組むIT教育プロジェクトとは?モスクワ教育科学省副局長インタビュー

2019年6月19日(水)~21日(金)、日本最大となる教育展示会 EDIX Tokyo 2019が東京ビッグサイト 青海展示棟にて行われました。

展示会には3日間合計で約3万人が訪れ、会場は活況を呈しました。

そんなEDIXには今回、モスクワ市政府が出展。ねらいはモスクワ市の取り組む教育メガプロジェクトのPRです。モスクワ市は一体どのようなプロジェクトを進めているのでしょうか?代表団であるモスクワ教育科学省のタテャナ・ヴァシリエワ副局長にお話を伺いました。


(右)モスクワ教育科学省 タテャナ・ヴァシリエワ氏


電子黒板を利用したモスクワ市の公立学校の授業(モスクワ市提供)

モスクワ市とは?

ロシアは、地域もしくは民族によって区分された「連邦構成主体」が集まって国家となる「連邦制」である。

モスクワ市はモスクワ州の州都であるが、同時に市単独でも連邦構成主体となっており、ロシア連邦政府とは別にモスクワ市政府を有して地方自治を行なっている。

世界有数のメガシティで人口はヨーロッパ1位。経済規模も大きな都市である。

VR教材用のコントローラー


教材の中ではコントローラーが「手」になり、いろいろなオブジェクトを触ることができる

モスクワ市の潜在能力を見てほしい

—さっそくですが、日本(東京)のEDIXに出展された理由を教えてください。

目的は2つあります。ひとつはモスクワ市の潜在能力、可能性を世界に見ていただくため。もうひとつはベストプラクティス(最もよい方法)を探るためです。

2019年9月から開始する「プレプロフェッショナル・クラス」


我々はブラジル、ロンドン、ドイツなど世界中の有名な教育展示会に出展しています。そこでさまざまなコネクションを作り、話を聞き、それぞれの国の取り組みを知ってモスクワ市の教育に還元したいと考えています。

ちなみに、今回のEDIX出展に関しては、8月29日〜9月1日に行われるCity For Education Moscow Global Forumを告知する目的もあります。

(City For Education Moscow Global Forumはこちら)

—モスクワ市が技術・IT教育に力を入れるのはなぜでしょうか。

スマートシティへの転換は今や世界的な潮流となっており、モスクワ市もまた、スマートシティ構想に基づいて社会へのスマート技術導入に力を入れています。

技術を普及・定着させるには教育が重要です。幼い頃から技術に囲まれた環境に身を置き、技術に慣れ親しんでもらうのです。

モスクワ市では子ども達がゲーム感覚で触れられるさまざまな教材を用意しました。今回のEDIXではVRなど、最先端技術を利用した教材も展示しています。


モスクワ市では公立学校の方がハイレベル

—日本の公立学校ではICT教育環境の整備遅れが問題となっています。モスクワ市の公立学校はどうでしょうか。

モスクワ市の場合、私立学校と公立学校を比べると公立学校の教育水準のほうがはるかに高いです。

これは私立学校が、少人数教育や外国語教育の特化、宗教など家族の特殊なニーズに対応する学校だからです。

一方で公立学校は卒業後に社会で要求される知識を身につけるための学校です。今回のEDIXで展示しているのも、どれも公立学校の教材なのです。


—具体的なカリキュラムを教えていただけますか。

モスクワ市のカリキュラムは二つのパートから成っています。ひとつは、ロシア連邦政府の定めた最低限の学力基準に則って定められたカリキュラム。もうひとつが、各学校の裁量に任されたカリキュラムです。

連邦政府の定めたカリキュラムはロシア全土で教えられます。それに専門性をプラスアルファする形で、各学校が自由にカリキュラムを決められるのです。

—なるほど。技術・ITに力を入れるのはモスクワ市政府の決定ですか?

いえ、どのような分野に特化するかは各学校の自由です。ITだけでなく医学や言語学に特化しても構いません。保護者や子ども達の希望を聞きながら決めます。

とはいえ最近はIT社会ですから、ITや技術へのニーズは高いですね。連邦政府の基礎カリキュラムにもITや技術は含まれていますが、各学校の裁量でより専門性の高い教育を上乗せするイメージです。

やはり人気があるのは「VR教材」


—今回の展示会ではVR教材が目を引いていましたね。すべての学校でああいった教材を使用するのですか?

教え方はそれぞれの先生に任されており、腕の見せどころです。教材も自由ですが、VRをはじめとした最新技術はたいへん人気がありますので積極的に取り入れる傾向が強いです。

また、モスクワ市の教員協会が「電子学校(Moscow Electronic School)」を立ち上げています。子ども達が勉強するためのアプリですが、先生達が授業のアイディア源として利用することもできますよ。

(Moscow Electronic School ※リンク先はロシア語。概要を把握したい場合は以下に挙げる英語記事が便利)

(Moscow Electronic Schoolに関する英語記事)


(今回のEDIXで紹介されたメガプロジェクト「モスクワE-スクール」。電子ジャーナルや日記の機能と電子教育資料のライブラリを統合したもので、教員の負担を軽減するねらいがある。)

E-スクールプロジェクトを通してモスクワの小中学校、高等教育機関、ハイテク企業の相互システムが構築され、今では街のリソースをまとめる役割も担っているそうだ

IT教育への課題は世界共通


—日本では来年度から小学校でのプログラミング教育が必修化します。しかし、教員の知識不足や実践例の不足、負担増が問題となっています。モスクワ市にはどのような課題がありますか。

世界的に見て、それぞれの国の学校が直面している問題は実は共通していると感じます。


最先端の内容に関する先生方の知識が足りないとか、どう教えればいいのか分からないなどの問題はモスクワ市もずっと前から意識しています。

モスクワ市の場合、それぞれの学校には指導役を担ってくれる大学があります。大学の先生や学生を公立学校に招き、最新技術を教えてもらうのです。

このやり方は大学にとってもメリットがあります。どの大学も優秀な学生を求めていますから、公立学校をサポートすることで良い人材を確保できるのです。

「重すぎるカバン」問題にも光明

モスクワ市のブースには日本の教育関係者も多く立ち寄りました。

「モスクワ電子学校」(電子教材)に興味を示した中高理科の教員は「日本の学校では教科書を毎日持っていく必要があり、子ども達が重いカバンを背負うのが負担になっています。電子教材であればタブレット一つで済むので画期的」とコメント。

子どもの学校カバンの重量についてはテレビ番組で取り上げられたこともあり、身体に影響があるのでは?と不安視する保護者もいるようです。電子化による内容の充実と合わせ、健康面のメリットが見出されました。


(モスクワ電子学校で利用できる素材のカタログページ。地理、生物、芸術、文学……と様々な教材が揃っている)

一方、大学職員の参加者はプロジェクト全体に関心を示し「日本では高校生がテストの点数だけで学部やコースを決めてしまう傾向にある。将来どのような道に進みたいか高校生のうちから考えるモスクワ市の取り組みがもっと日本に広まってもよいのではないか」とコメントしました。

技術のための技術ではなく、人間のための技術を


—本日はありがとうございました。最後に、日本のプログラミング教育に関わる先生、事業者へのメッセージをお願いいたします。

技術のための技術ではなく、人間のための技術を教えようと呼びかけたいですね。

やみくもに技術を発展させ、成長だけを追求して環境を破壊したり、他の生き物を脅かしたりしてはいけません。

技術で自動化できるところはして、人間が人間らしい仕事に従事できる社会を一緒に作っていきましょう。

—ありがとうございました。


公開日:2019.07.09

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