社会に出たら使いこなせて当たり前!いまさら学ぶなんて!と考える人も多いでしょう。
しかしこれらのアプリケーションは非常に多くの機能を持っていて、じぶんがどこまでわかっているか不安になった経験者もいるはずです。
このジレンマを解決する一つの方法がオンライン学習かもしれません。
ここでは「学びたい人教えたい人のためのオンラインのマーケットプレイス」UdemyでみつけたExcelピボットテーブル講座を自己費用で受講してみたライターの体験談をご紹介します。
オンラインの短期間、カジュアルな学習で「Excelの学び直し」はどこまでできたでしょうか?
以下にレポートします。
Udemyとは?
Udemyは2010年にアメリカで創設されたマッチング型のオンライン学習プラットフォームです。だれでも先生役になってコンテンツを提供できるのが基本です。
開発、ビジネススキル、財務会計、ITとソフトウェア、仕事の生産性、自己啓発、デザイン、マーケティング、趣味・実用・ホビー、写真、ヘルス&フィットネス、音楽、教育・教養の各分野に関してコンテンツが提供されています。
ほとんどのコンテンツは数時間で受講が完了するようになっていて、細分化されたテーマのなかから選択できます。
アメリカ発のサービスで現状多くが英語となっていますが日本語講座も急ピッチで開設されてきました。
日本では2015年よりベネッセコーポレーションが提携して個人サービスをスタートしました。
2019年6月には国内向けに法人向け研修サービスとしてUdemy for Businessの提供を開始しています。
受講の目的|ピボットテーブルの意味と考え方をマスターする
Excel経験25年。通学経験ゼロ
じつは私はExcelを95から25年間は使っています。学校などに行った経験はまったくなく買った本も1〜2冊。ほとんど読まなかった記憶があります。
あっちこっちさわってみてできたりできなかったりしながら試行錯誤で学び最近はindirect、rand、randbetween、 rank、 countifぐらいの関数は使えるようになりました。
また「こんな機能ないかな」と思ったときにはGoogle検索してみると大抵は奇特な人がていねいに指導してくれていてあまり苦労はありませんでした。
意味の全然わからなかったピボットテーブル
ところがいちばんの難題はピボットテーブルでした。最近10年間ぐらい「ピボットテーブルを使えるととても便利!」といった内容の記事をよく見るようになってきました。
「なるほど」と思ってインターネット上のチュートリアルページを見てみます。
でも、これが全然わからないんです。
多くのサイトがいきなり操作方法からはじまり「だから、ピボットテーブルで何をしたいのか」との疑問に答えてくれたのは皆無でした。
ピボットテーブルの基本を知り「何ができるか」を理解したい
ここまで20数年間「見よう見まね」「困ったときにはそのへんをクリックしてみてどうなるか見る」姿勢でExcelに向かってきた私も、ピボットテーブルだけは過去の方法が通用しないと痛感しました。一方でピボットテーブルをパーフェクトマスターするなんてできないのはわかっていますしMOTなどの資格を取得する気もありません。
普通にピボットテーブルの使い方がわかり「こんな分析をできないか」と思ったときにGoogle検索できるぐらいになればいい。
そんな感じでピボットテーブルの学び旅ははじまりました。
『ピボットテーブル密林の書』とは?
今回私が選んだのはこのコースでした。『ピボットテーブル密林の書』。
サブタイトルが長くて『Excel上級者へのピボットテーブル ~180分で集計分析、グラフ、ダッシュボードまで手を動かして学ぶ忍者マスター「林」』
このコースを知ったのはGoogle検索かFacebookの広告に上がってきたからだと思います。
一度クリックすると何回も同じ広告と出会うのは皆さんもご存じの通り。
私が受講してみようと思ったのには、つぎの理由がありました。
価格が安い
定価は4,200円。ただUdemyでは頻繁に割引キャンペーンをやっているようで、私もこれよりだいぶ安い値段で受講できました。
学習時間が180分と手ごろ
コロナウィルス禍のなかで自宅にいる時間を有効にすごす目的もあった私は超多忙な人間ではありません。しかし一方で時間を無限にもてあましてもいません。
ピボットテーブルを理解するのに何ヶ月もかけるほどの意欲もなし。
そんな私には180分で完結するのは手ごろな設定に感じられました。
手を動かして理解する方式に好感
Udemyには全体と各学習ポイントの紹介ムービーがありお試しできる設定になっています。ここで感じたのは「実際にピボットテーブルを作成し分析してみる」やり方だったら理解も早そう、でした。
Excelに限らずPCやスマホのアプリの機能では「メニュー上の言葉の意味から、こんな感じ?」と思って操作してみると全然違う場合がよくあります。
メニューをあちこち探してみて「これかな」とクリックして全然違ったアクションを起こすのは結構大きいストレスを生みます。
「ここをクリックすれば」「こうなります」「やってください」「できました」のくり返しでマスターしていく設定は、かなり恵まれた環境です。
このように負担のない低料金で短時間にカジュアルにできる条件が、このコースを受けてみようと思う決め手となりました。
オンラインで決済して学習スタート
オンラインで決済して『マイコース』のページに飛ぶと、すでに『ピボットテーブル密林の書』はリストに入っていました。クリックすれば、もう学習スタート。
『ピボットテーブル密林の書』の教材は?
映像授業
全部で180分の映像授業がメインとなります。3時間と言われると少しヘビーな感じもしますが全部で6章57パートに分かれていて、それぞれに2~5分で一つの課題をこなしていく設定なので負担なく学習を進められます。
映像はパソコンのほかスマホ、タブレットからでもアプリをインストールすれば閲覧できますがダウンロードは不可能な設定のようです。
一度購入したコースの映像は永久に何度でも見られます。
2種類のPDFテキスト
内容は同じでA4に1画面のテキストと6画面の2種類のテキストが用意されています。基本的に映像学習で使われている画面のスクリーンショットのようで実際の授業では使用しません。
が、修了後に「あのコマンドの場所がわからない」などと確認したい部分が出てきたときには映像を見直す必要がなくて便利そうです。
6種類のExcelファイル
『ピボットテーブル密林の書』の教材には6種類のExcelファイルも含まれています。これは映像教材で使われているファイルと同じ内容(正確にはバグフィックスが若干行われているようです)
このExcelファイルがあるために映像で行われている操作とまったく同様な編集・加工・分析を自宅のパソコンで行っていけます。
単純に見て学ぶのではなく、やってみて「あ、できた!」といった具合に知識の蓄積と感動を積み重ねていけます。
この点が、この教材のいちばんすぐれた点ではないかと思いました。
まず最初にピボットテーブルを作成する
イントロダクションとして「はじめに(このコースの説明)(3分)」「老師いわく『ピボットすれば10秒で・・・ほれっ(2分)」「4分弱でわかる、このコース全体の流れと重要な5ポイント(4分)」の映像がありますが、ここは軽く流し見でいいでしょう。第一章は「第1章 ピボットテーブル実践ワーク!手を動かしながら基本の使い方を速習しよう」
元データとして「新橋・東京・有楽町の3店舗を持ち数機種を扱う携帯電話ショップの1日ごとの売上額の一覧」のExcelファイルが提供されます。
こんな感じです。
で、映像授業のマネをしながら、
1.グラフ内の任意のセルを指定
↓
2.[挿入]→[ピボットテーブル]と指定して
こちらの窓から映像の指定どおりの項目を入力すると
ピボットテーブルができちゃいました。
さらに、このピボットテーブルをクリックすると
この窓が表れます。
私がすごいと思ったのは、これだけの操作で長年謎だったピボットテーブルが「ああ、そういう機能なのか!」とわかった気がした点です。
さて、第一章の映像を見はじめてここまで6分。
私が10年間いだいてきた謎がきれいに氷解したのを感じていました。
上に示した「学習の目的」は達成されたのがわかるでしょう。
私の場合は、この段階で「元は取れた!」と感じられました。
180分のレッスンのほとんどは応用応用応用応用
こうして基本の理解ができた後、残りのレッスンは「こういう風に分析できる」「こういう風に『も』分析できる」「グラフにできる」「グラフをまとめてダッシュボードにできる」などの応用的なテクニックの学習が並びます。列挙してみます。
- テーブルを使ってデータを追加できるようにする
- 単純集計
- クロス集計
- 項目のグループ化
- 日ごと、月ごとに集計する
- フィルター機能で表の一部を切り出す
- ダイス分析:拠点を移動する担当者の拠点別・機種別の売上
- ドリルダウン:気になるデータを掘り下げる
- スライサー:感覚的にデータを切り取る
- タイムライン:期間のデータを切り取る
- データチェックのテクニック
- ピボットグラフの作成法
- 条件付き書式やスパークラインで視覚的に表現する
- 売上構成比を%で表示
- ピボット印刷術:印刷タイトル、アイテムごとに改ページ
- GETPIVOTDATA関数でピボットテーブルからデータを抽出
- ピボットテーブルを複数のシートに分割する
- リレーションシップ複数の表からピボットテーブルをつくる
- 複数のグラフをまとめたダッシュボードを作成する
また、これだけの内容を180分でムリなく学習できるのは効率がいいと思いました。
ちなみに最終課題のダッシュボード。
テキストのなかのお手本は、こんな感じでした。
一方、下は私が作成したダッシュボード。
ちなみに全映像を視聴すると下の修了書がもらえます。
学習の収穫
今回、ひととおりの映像を視聴して指示どおりの作業を行うのに3日ほどかかりました。ほかの仕事をしながらの合間なので集中すれば1日で終わらせるのも困難ではないと思います。
ここでは今回得た収穫についてまとめてみました。
ピボットテーブルの基本を理解できた
最初の目的にしたとおり「ピボットテーブルとはなにであるのか?」は大体わかり他人に説明できる程度の理解はできたのではないかと思っています。新しいブックをつくるときには「ピボットテーブルを使えば話が早い」と判断して、それに合わせた作業ができそうです。
Excelの細かいテクニックをいくつか学べた
これは意外な収穫でした。私はExcel原始人でタイピングは割と早いのでオートSUMなどもあまり使わず=sum(a24:a29)と手入力するケースは多いのですが、今回の学習を通じて未知だった操作法をいくつか学べました。
絶対参照の自動挿入
セルを移動しても参照するセルが変わらない絶対参照は$a$24と入力しますが、a24と入力しながらF4を押すと自動的に$が入るのですね。便利です。グラフの移動はALTキーを押しながら
シート内にあるグラフを移動するとき思った場所に到達するのは案外簡単ではありません。この場合はALTキーを押しながら移動するとセル枠にピタリと収まります。
これもまた今回初めて知りました。
数字をカンマで区切るのはワンタッチでできる
4桁以上の数字をカンマで区切るとき、いままで私は[ホーム]-[配置]-[表示方式]から[数値]-[1,234]と進めて指定してきました。今回知ったのは、そんな必要はまったくなく範囲していして[ホーム]-[,(カンマ)]をクリックするだけでできてしまうんですね。
これも衝撃的な事実でした。
このほかにも「いままであんなに手間かかってた作業がこんなに簡単なの?」と思うテクニックをいくつか学べたのは大きな収穫と感じています。
Excelの機能の莫大な広がりを知った
『ピボットテーブル密林の書』で学べるテクニックは上記したとおり広範な内容となっています。しかし、それもピボットテーブルでできる作業全体から見るとほんの一部のようです。
ピボットテーブルを作成すると通常は見れない「ピボットテーブル ツール」のメニューが表れます。
[分析]のなかにはこれだけの項目があります。
さらに[オプション」にはこれだけの項目。
Excelのなかにあるピボットテーブルの機能のすべてを知るのはほぼ不可能な気がします。
とはいえ180分の授業を通じてえた知識を基礎にして「こんな分析をしたい」と思ったときにGoogle検索の力を借りればかなりの応用ができそうです。
Udemy学習の注意点とは?
私のUdemy学習初体験はかなりの成功だったようです。しかし「Udemyのコースだったらなんでもいい」といえるわけではないようです。
申し込み前に確認したい注意点を下にまとめます。
すべての講師・教材が素晴らしいとは限らない
基本的にUdemyのコースは講師が持ち込むコンテンツで一貫性のある教育方針によって企画された講座ではありません。講師によって能力やコストパフォーマンスに差があるのは覚悟した方がいいでしょう。
これをカバーするためにUdemyにはプレビュー機能があり、各コースの「さわり」を確認できます。
また「30日返金保証」があり思った内容と違っていたら返金を求めるのも可能です。
申し込み前にプレビューをじっくり見て「役に立ちそうか」「自分に合った内容か」見当するのをおすすめします。
キャンペーンを利用すると割引も
Udemyの各コースには定価が記載されていますが、不定期の割引キャンペーンが頻繁に行われているようです。ときには半額以下になるケースもあります。
受講したいコースを見つけてもすぐに申し込みはせずに数日間待ってみるのもいいかもしれません。
まとめ|学びたい内容をピンポイントで学べるオーダーメイド感が魅力
Excelをずっと使っていた人が学び直したいと思い「Excel上級コース」といったカリキュラムを受講したら「大半がすでに知っている内容だった」失敗もよく聞きます。Udemyでは多くのコースがピンポイントで細かい内容に設定されていて学びたいと思っていた内容に絞って受講できるのが大きなメリットといえそうです。
この意味でいそがしくてまとまった時間を割けないひとにはちょうどいいコースが多くあるようです。
また自宅やオフィスではパソコンで、移動中にはスマホやタブレットでと臨機応変な学習ができるのも大きな利点と言えそうです。
細かい空き時間を有効に生かして新しい知識を得るためには大変に有効なメディアですね。
無意味に長くて読み飛ばしても全然平気なあとがき
今回Udemyで学習して、私が気がついたのは「中途半端に長年Excelを使ってきてほとんど感覚的に操作できる人間ほどピボットテーブルの理解は困難である」事実です。Excelは表計算ソフトと呼ばれます。
表計算ソフトとは?「表をつくって上下左右の演算を行う作業をサポートしてくれる」ソフトウェアです。
古くからExcelを使っている人間ほど新規ブックを立ち上げてスプレッドシートを作成しようとするとき、自然と頭のなかで表をつくりはじめます。
「縦軸は機種別売上で横軸は拠点。それぞれの拠点の販売員ごとの売上も必要だから・・・」と考えていくうち、やたらと複雑な表になったり、一つのブックが少しずつ内容がリンクする10以上のシートになったりしていました。
すべての問題点は「頭のなかで表組みを組み立ててから入力をはじめなくてはいけない」という思い込みにありました。
ピボットテーブルは、この第一歩目から大きく考え方が異なります。
年月日/販売店/担当者/機種などに関して「なにも計算しない」一覧表の作成から作業がはじまります。
相関関係のない生データを羅列する
↓
その後に必要な項目のみを取り出して集計・分析を行う
元となる情報は一つのシートに収め、そこからさまざまな切り口で表組み・グラフなどを作成できるツールが『ピボットテーブル』なんですね。
これはたしかに便利です。
今回の学習を通じて感じたのは、ある程度知識のある内容について「棚卸し」する有意義さでした。
これからも機会があったら必要な知識も、たいして必要に思えない知識も悪食(あくじき)していきたいと思いました。