10年で年収200万円台が5倍以上に!? 上場企業のインフラエンジニアが語る、エンジニア業界のリアル

10年で年収200万円台が5倍以上に!? 上場企業のインフラエンジニアが語る、エンジニア業界のリアル
「年収は4ケタはありますね」

そう平然と語るのは、都内の上場企業で「インフラエンジニア」職をつとめる30代男性、Fさん。インフラエンジニアはその存在こそあまり認知されていないものの、じつは業界のなかでも超重要ポジション、かつ好待遇な職なのです。

“エンジニア”は近年、子どものなりたい職業ランキング※で常に上位につけるほどの人気職。その一種であるインフラエンジニアとは、一体どのようなお仕事なのでしょうか?

テレワークの合間をぬって取材を受けてくださったFさんに、どうやったらなれるの? 年収の変化は? どのプログラミング言語を学べばいい?……などなど、エンジニア業界の裏側を、公開できるギリギリまで教えてもらいました。

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インタビューに応じてくれたFさん


Fさんの現在のお給料と貯金額。夢のある金額!

新人からインフラエンジニアになる人は稀

—インフラエンジニアとは、そもそもどんなお仕事なのでしょうか?

インフラエンジニアは、たとえるなら、工場で何かをつくりたい人たち(プログラマーやシステムエンジニア)に向けて、水道や電気、必要な道具などのインフラ面を提供する仕事です。

工場を建てるには、電動かんなやハンマーといった道具が必要ですよね。また、工場が建ったあとも、水道や電気が滞りなく供給されなければ、ものづくりを進められません。そういう必需品をぼくたちがうまく手配して、提供するんです。ゲームクリエイターなどと比較すると、前に出る仕事ではありませんが、「いないと仕事自体が始められない」という黒子のような存在です。

インフラエンジニアは、まさに縁の下の力持ち。サービスの裏側を日々、支えます


日本におけるインフラエンジニアの割合はまだ少なく、体感ですが、エンジニア30人のうち、1人か2人いる程度。また、ポジションに就くまでのプロセスもほかのエンジニアと異なっており、新人からインフラエンジニアになる人は稀です。ぼくを含め、別のエンジニア職を経験し、ワンステップ踏んでからキャリアチェンジする人が多いです。

インフラエンジニアは「1から何かをつくる」というよりも、すでにあるサービスやプロダクトを運用したり、面倒をみる側面が強い仕事です。再び工場の例に戻ると、すでにある工場に、電気や水道をスムーズに供給し続ける、というような。そのため、使用するプログラミング言語も限定されておらず、多岐にわたります。担当する案件によって、必要な道具を使い分ける必要があるんです。

真夜中にスマホが鳴るのは日常的。「好きじゃないと難しい」

働き方は企業によって異なりますが、ぼくはコロナ以降、ずっとフルリモートワークです。そのため、これを機にといっては何ですが、沖縄や北海道へ移住した同僚もいますよ。

弊社はフルフレックス制なので、ぼくの始業は10時~11時と遅めです。ただし、土日や夜中に働くのも日常茶飯事です。たとえば、あるWebサービスやアプリが、何らかの原因でダウンしたりエラーで開けなくなったりすると、監視システムが「なんだなんだ?」と異常を検知します。すると、ぼくたちインフラエンジニアの電話が鳴るんです。どんな夜中でも、アラートが鳴れば起きて対応しなければいけないので、スマホのアラームはわざと耳ざわりな音に設定しています(笑)。

ユーザーに不便をかけないため、深夜でもトラブル対応。手当が出るとはいえ、睡眠が削られるのはキツい……。


正直、夜中に電話が鳴るのはしんどいですが、そのぶん手当は出ますし、振替休日もある。睡眠が取れないのはストレスフルなので、弊社を含め、当番制を採用する企業も多いです。ぼくは好きでやっているので、仕事自体はストレスではないですね。むしろこの業界は、好きじゃないと厳しいと思います。

「白黒はっきりしていて楽」ITに興味をもった小学校時代

—なるほど。ちなみにFさんは、どうやってITの道へ? 年収4ケタとなると、いわゆる「エリート街道まっしぐら」だったのでしょうか? 

いえ(笑)、実家は特別裕福というわけではなく、教育にお金をかけるほうでもない、ごく普通の家庭です。地元はかなり田舎なので、「進学校」という存在すら知らず、当然のように小中学校は公立、高校は工業高校でした。

ITに興味をもったのは、小学校の頃ですね。授業でパソコンを使う機会があり、そのときに、「Aと伝えたらAと返ってくる」コンピュータの動きに魅力を感じたんです。

—というのは?

人との会話って、すこし言葉の使い方を間違えると誤解を招いたり、意図せずに傷つけてしまったりするじゃないですか。個人的にそこが苦手で。コンピュータとのやり取りには、かならず正解がある。白黒はっきりしていて楽だなと

あとは、ゲームが好きだったので、ゲームプログラマーにも憧れていました。当時の人気職は「公務員」が断トツで、プログラマーは魅力がないという風潮でしたが……。それでも高学年になると「IT関係に進みたい」と、漠然と思っていました。単に英語が苦手だから、勉強しなくていい進路を選んでやれ、という魂胆もありましたけど(笑)。

「白黒ハッキリしているから」という理由でコンピュータの世界に飛び込んだFさん。ところが最近、「チームで動く以上、結局、コミュニケーション能力は必要になると気付きました」とのこと。

工業高校では少しプログラミングも。とはいえ授業はさぼりがち

—今ではゲームプログラマー、小学生の「なりたい職業」の1位にもなっていますね。工業高校ではどんなことを?

工業高校では、多くのカリキュラムが高卒で就職する生徒向けに組まれているので、国語や数学、英語のような授業は少なく設定されています。

たとえば数学は、数A・B・C・Ⅲには触れず、ⅠとⅡのみでした。ぼくは電子科だったので、回路まわりをいじる作業や、はんだごてによる電子工作が中心。ITやプログラミングは、基礎を学んだ程度です。

じつを言うと、授業はさぼりがちで。テスト勉強も直前にするので、毎回終わると記憶がパーでした(笑)。ゲームが好きで、1日5時間はやってたかな。親のデスクトップPCを使って、お小遣いで月額1,500円のオンラインゲームに熱中していました。親も、いい顔はしていなかったものの、基本的には放任主義でしたね。


高校卒業後は、就職に特化した専門学校に進学するつもりでした。ところが、先生に「成績がいいから、大学へ進んだらどう?」と言われ、はじめて大学進学という選択肢があることに気づきました。

ただ、それまで勉強してきた内容では入試の内容をまったくカバーできなくて。通常の受験はあきらめ、工業高校からの推薦枠がある国立大学を受験することにしました。無事に面接に受かり、その大学の情報工学科へ進んだ、という流れです。

大学時代、はじめてプログラミングを本格的に学ぶ。きっかけは「ICPC」

大学時代はとにかく貧乏でした。

月5万円の奨学金+仕送り2~3万円がすべてで、そこから家賃4万円と光熱費を支払うので、ほとんど残らない。食パンを1袋買って、朝昼晩で1枚ずつ食べるという生活をしていました(笑)。研究室の仲間との飲み会も、月に1度が限界でしたね。飲み会って、1回4,000円はかかるじゃないですか。

IT関連の職に就きたいとは思いつつ、それに繋がるような行動も起こせていませんでした。プログラミングが好きな人って、「こういう作品やサービスを作りたい!」って思いを持っていることが多いんですけど、ぼくの場合は、作りたいものがなかったんです。だから、手が動かない。ぼくがやりたかったのは、何かを作ることじゃなく、単にプログラムを組むことだったんですよね。目的と手段が入れ替わっていたというか。

—お金もなく、やりたいこともない。お辛かったですよね。状況を打破するきっかけは、何だったんでしょうか?

大学2年生のとき、あるプログラミング系のサークルで、「ICPC(国際大学対抗プログラミングコンテスト)」の存在を知ったんです。

ICPCは、ある課題を与えられて、その課題を解くためのプログラムを作る、というものでした。目的がすでにあるから、自分はプログラミングだけをすれば良い。それが性に合ってたんです。

結果はアジア予選に1度進んだのみでしたが、これには熱中しましたね。

「作りたいものがない」と感じていたFさんには、競技プログラミングの世界観がマッチした


—コンテストに出場するために、大学生で初めて本格的にプログラミングを学ばれたんですね。意外です。そこから新卒で、IT関連の企業に?

それが、就職活動でいくつか企業の説明会に参加した際に、どうしてもそこで働いている人たちが楽しそうに見えなくて。「こんな風に、スーツを着て働きたくない」と思ってしまったんですよ。次第に、就活に奪われる時間と体力をもったいなく感じ、卒業後はそのまま、ニートになりました

ニート→中途採用でプログラマーに。1社目は薄給×ハードワーク

—ニートに! ……その間の生活は、どうされていたんですか?

ひとまず実家に戻りました。ただ、6ヶ月経った頃に「さすがにちょっとまずいな」と思い、IT企業に就職した先輩に「話を聞かせてください」とコンタクトを取りました。その先輩の紹介で、中途採用枠ではありましたが、プログラマーとして働けることになったんです。ゲーム制作や広告企画の会社でした。
エンジニア業界memo
エンジニア業界memo

IT業界で盛んな「リファラル採用」。自社の社員にインセンティブ(報酬)を用意し、入社を希望する人材を紹介してもらう採用方式です。

転職者にとっては、事前に社内の雰囲気を知っておけるメリットがあり、採用する会社側にとっても、ある程度信頼できる人材を確保できるメリットがあります。

(ただし、紹介後の採用フローは通常と同じで、必ずしも入社できるとは限りません。)

未経験だったこともあり、当初はかなりのハードワークでしたね。年収は300万円いかない程度でしたし。資金的に余裕のない会社だったので、たとえばプログラマーのミスによって100万単位の損失が出ると、目の前でアルバイトさんが1人切られる。精神的なプレッシャーが大きかったです。

年収~2,000万円のスカウトメールも!? インフラエンジニアは引く手あまた

そして、入社から3年経った頃、ここでもエンジニア仲間の紹介で、インターネット関連の事業会社へ転職しました。

—それが2社目ですね。

ここで、プログラマーからインフラエンジニアにキャリアチェンジした形です。給料は月5万円アップし、その後も半月ごとに上がっていきました。ただ2社目は、良くも悪くも、平和で起伏のない会社だったんですよね。もうすこし刺激がほしく、新しい仕事を探していたところ、Twitterで現職の募集を見つけたんです。

—3社目の現職との出会いは、Twitterだったんですね。

はじめて真正面から扉をたたきました。急成長している企業のひとつでしたし、システム自体もおもしろそうに感じました。DMで担当者の方とやり取りをし、カジュアル面談を経て入社。ここで年収が、2倍以上3倍未満になりました。

毎月のお給料を記録し、グラフ化していたというFさん。転職のタイミングで大幅にアップしたほか、ボーナスも支給されていると分かる

エンジニア業界memo
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これも、IT業界で盛んな「ランチ面談」。インターン/就職/転職に興味を持つ人材と社員でランチをしながら、ざっくばらんに社内の話を聞く場です。

通常の面談と比べてかなりカジュアルな場で、スーツを着ることはまずないのだとか。企業によっては、「ランチ面談手当」を支給し、活発な交流を促しているケースもあります。

今のところ転職は考えていませんが、ときどき、エージェントからスカウトメールが届きます。なかには年収~2,000万円の掲示もあります。

向いているのは「1つのことを深掘りできる人」。その逆は…?

—年収が4ケタになって、生活はどう変わりましたか?

それが、もともと貧乏だったので、生活の質はぜんぜん変わっていないんです。せいぜい、技術書を躊躇(ちゅうちょ)なく買えるようになった程度。プログラミングの専門書って1冊3,000~4,000円と、結構高いんですよ。

この業界は、会社によって年収に開きがあります。よく、「年収を上げるには、転職するのがもっとも早い」なんて言いますが、残念ながらそのとおり。今いる会社で給与アップの交渉をするより、転職するほうが圧倒的にラクなんです。

民間企業には、ぼくの1社目のように年収300万円以下というところもざらですし、反対に、同じ業務内容で1,000万円のところもあります。ぼくのように転職で年収が倍になるケースも、珍しくはないんじゃないかな。重要なのは、その会社のビジネスがヒットしているかどうか。そこで年収が決まります。

このように、人材の流動性が高い一方で、エンジニア業界は狭いので、一度悪い評判がたつと転職では不利になります。そこは注意が必要です。

人とのご縁で転職できるケースもある一方、傍若無人な振る舞いをしていると、他社にまで悪評が広まることも。常に身を引き締める必要がある


また、向き不向きもがっつり出ます。インフラエンジニアの場合、ひとつの案件との付き合いが長期にわたるので、「責任感が強く、信頼できる」というのが、重要な要素です。いくらスキルがあっても、1年ごとに「仕事に飽きた」と異動希望を出すような人には向いていません。ひとつのことを丁寧に深掘りする人が向いていると、ぼくは思います。

エンジニア志望がなによりも「英語」を学ぶべき理由

—小学生の子どもが今から学ぶのに、おすすめのプログラミング言語はありますか?

うーん、お子さまによっても違ってきます。言語よりも大事なのは、熱中できるものに「きちんと熱中する」ことでしょうか。

ゲームにのめり込んだ子ならゲーム関連の言語に興味を惹かれるでしょうし、学問的にコンピュータサイエンスを学んだ子なら、どんな言語にも対応できるでしょう。また、JavaScriptならブラウザ上でゲーム開発ができるメリットがありますし、Pythonなら、いろいろな学習ツールがあって学びやすい。


こんな風に、それぞれの言語にメリット/デメリットがあり、興味を惹かれるかどうかで習得のスピードが変わるので、一概には言いづらいんですよね。ちなみに、ぼくはプログラミングコンテストに熱中していたので、課題に必要だったC言語から覚えました。1社目のプログラマー時代は、Perlを使いましたね。

あとは、英語を勉強したほうがいいです

この業界は情報の流れがとにかく速くて、1年前、2年前の知識がすぐに役に立たなくなるケースもあります。しかも、流れてくる情報は、日本語ではないケースがほとんどなんですね。英語を学んでおけば、最新の情報をキャッチアップしやすいし、得られる情報量が段違いになります。ぼくはいまだに苦手で苦労していますが(笑)。数学の知識ももっておくといい。できることの幅が広がります。

—非常に勉強になります。最後にFさんの、今後の夢を教えてください。

夢はアーリーリタイアです。プログラミングを仕事ではなく、完全に趣味としてやりながら過ごしたいですね。

—ありがとうございました!

年収2倍は珍しくない。夢のあるエンジニア業界

大学生でプログラミングを本格的に始められたFさん。卒業から約10年が経ったいま、インフラエンジニアとして、今や世の中に欠かせないサービスの裏側を一手に担います。

驚くのは、Fさんは特別な例ではない、ということ。エンジニア業界ではこうした一発逆転劇が、あたり前に起こるといいます。

横のつながりが濃い業界がゆえに、人から嫌われないコミュニケーションスキルは大事。Fさんが仰るように、英語力も必須でしょう。

一方でFさんのお話は、「誰にでもチャンスはあるよ」と勇気をくれます。「ゲームやプログラミングが好き」というお子さんをおもちのご家庭は、ひとまずとことんやらせてみてはいかがでしょうか。

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