実は、国語の教科書に載っている物語には、30年以上前から変わらないものもあれば、数年前に発表されたばかりの新しいものもあります。今回は、小学生が学ぶ“物語文''についてご紹介します。
国語といえば、「物語」
国語の教科書に載っている文章は2種類ある
みなさんは、「国語」と聞くと何を思い浮かべるでしょうか。漢字学習、物語、作文などいろいろありますよね。実は、国語の教科書に掲載されている文章は、2種類に分けられています。1つは絵本や小説などの「物語文」、もう一つは出来事や現象などについて説明された「説明文」です。大人で例えると、「小説」、「実用書」といったところです。
学年によって学ぶ目的や発達段階が異なり、それに合わせて物語が選ばれています。
親が物語を知っていると、お子さんの「読解力」「想像力」向上につながる
音読の宿題の目的は、文をすらすら読むことだけではありません。声を出して読むことで読み飛ばしが少なくなり、内容の理解につながると言われています。また、物語文では、登場人物の行動やせりふが書かれています。音読することでより一層、登場人物の様子や気持ちをイメージしやすい、理解できるという効果があります。
さらに「読解力」「想像力」の向上のためには、音読を聞いている親の質問がカギになります。音読をして考えたこと、イメージしたことをお子さんにアウトプットさせるのです。
「くまさんはどうして〇〇したの?」「そうなんだ!教えてくれてありがとう」
「○○ちゃんはどんな顔してたのかな」「そういう気持ちなんだね」
「こんなとき、あなたならどうする?」「そのアイデアもいいね!
「この後かえるくんはどうなったんだろう?」「続きも気になるね」
とやりとりをしていくと、セリフや表情を振り返ることができます。そして、自分なりの言葉でアウトプットすることで、思考が深まります。
こんな質問をするためには、親もある程度物語の内容を把握しておきたいですね。
参考:読解力を高める
参考:国語力を伸ばすには?
小学生の教科書に出てくる懐かしい物語
まずは、パパ・ママ世代のときから変わらず掲載されている物語を紹介します。タイトルを聞いただけで懐かしいものもありますが、大人になってから改めて読んでみると、奥深さが身に沁みます。日本でシェア率が高い「光村図書」「教育出版」の国語教科書に掲載されている物語文の中から、3つご紹介します。
「スイミー」 (1・2年生)
作: レオ・レオニ 訳: 谷川 俊太郎 出版社: 好学社小さな赤い魚たちの中で1匹だけ黒い「スイミー」。ある日大きなマグロがやってきて、赤い魚たちをのみこんでしまいます。一人になったスイミーは、暗い海底で様々な生き物と出会いながら、元気を取り戻していきます。最後にスイミーと赤い魚たちで、大きな魚の振りをする場面が有名です。挿絵がいろいろな技法で描かれて美しいのも魅力です。
「ごんぎつね」 (3・4年生)
作: 新美 南吉 絵: 黒井 健 出版社: 偕成社ひとりで暮らす、きつねのごん。兵十という青年がかけているしかけにうなぎや魚がかかっていたのですが、ごんがいたずらをして逃がしてしまいます。実はそれは、病気のお母さんのために兵十が捕っていた魚だったのです。それを知ったごんは、何かできないかと考えます。
「大造じいさんとガン」 (5年生)
作: 椋 鳩十 出版社: 偕成社狩人の「大造じいさん」と雁(ガン)の群れの頭領である「残雪」のお話です。雁を撃って生計を立てている大造じいさん。その日も猟に出ていました。すると、群れの中で残雪が別の鳥をかばっているところを目撃します。
仲間を大切に思う気持ち、敵であっても認め合う想い、命の重みを考えさせられる作品です。
「こんなお話もあるの?」、新たに掲載された物語
教科書は、学習指導要領の改定にともなって、数年ごとに定期的に改訂されます。その際に、扱われる物語も少しずつ変化しています。ここでは、最新の小学校国語教科書で初掲載された物語を紹介します。
「ミリーのすてきなぼうし」 (光村図書 2年生)
作: きたむら さとし 出版社: BL出版 発行年:2009年ぼうし屋さんに言った女の子のミリーですが、お金を持っていません。そこでぼうし屋さんが出してくれたのは、“想像のぼうし”でした。ミリーが想像をふくらませると、ぼうしの形も変化します。よく見ると、町の人たちの頭にはいろいろなぼうしが乗っています。
「プラタナスの木」 (光村図書 4年生)
作:椎名誠 絵:中島梨絵 (教科書のための書き下ろし)主人公が友達と集まる公園には、大きなプラタナスの木がありました。そこで、主人公は、樹木に詳しいおじいさんと知り合います。夏休みが終わると、いつもの場所にプラタナスの木はありません。台風の影響で切られてしまったのです。すると、あのおじいさんも現れなくなります。
「いつか、大切なところ」 (教育出版 5年)
作:魚住直子 絵:清水沙 (教科書のための書き下ろし)引っ越しをして、新しい学校に転校した主人公の男の子。久しぶりに前の学校の友達に会いに行くところから物語が始まります。久しぶりに友達に会えるワクワク感、以前の雰囲気との違いに戸惑う感覚、あんなに楽しみだったはずなのに楽しくなかったという落胆、今の学校に目を向けていく期待感など、主人公の気持ちの動きが感じられる作品です。
教科書に掲載されている戦争の物語
小学校の教科書では、戦争を経験していない世代にも戦争の悲しさ、辛さを学べる物語が多数紹介されています。辛い戦争をもう二度と繰り返さないためにも、 1人1人が国語の教科書で戦争の辛さ、悲しさを学ぶことが大切です。本項目では、教科書に掲載されている戦争の物語について紹介します。ちいちゃんのかげおくり (あかね書房 3~5年生)
作:あまんきみこ 絵:上野紀子「ちいちゃんのかげおくり」は、空襲で亡くなったちいちゃんが空へ旅たつ切ない物語です。小学生の教科書では、3~5年生で学ぶことが多いようです。最後はとても辛いラストが印象的な物語ですが、過去の戦争があったからこそ今日本は平和なのだと改めて再認識させられます。
かわいそうな像 (金の星社 2年生)
作:つちやゆきお 絵:たけべもといちろう戦争の悲劇に巻き込まれた、上野動物園の像の本当にあった物語です。像以外の動物は毒で殺さますが、像は賢かったため毒入りの食べ物を見分けてしまったため、餌を与えずに餓死させられてしまいます。涙なしには読めない物語です。
小学生の教科書に出てくる懐かしい物語まとめ
「物語を読むと読解力が高まる」という情報は数多くあります。そこには、- 文字を見て、文節に分けて意味が理解できる
- 言葉から情景をイメージできる
- 登場人物のせりふや表情から、気持ちを想像できる
さらに、
- 感想を誰かに話す
- 「自分だったらどうするかな・・・」と想像する
- お話の続きを考える
お子さんの将来のために、早いうちから国語力を身につけていきたいですね。