(取材)一般社団法人日本マルチコプター協会(JMA)|全員が“親方”だからこそ生まれる事業シナジーでドローン市場を盛り上げる

ドローンの普及とドローン飛行による安全な社会を目指し、2018年に設立された一般社団法人日本マルチコプター協会(JMA)。JMAの特徴は、もともと商工会議所に所属していた経営者らによって組織されている点にあります。

ビジネスの視点が土台にあるJMAだからこそ、「自分たちの手で生み出す」ことを何よりも重視しています。そんなJMAで理事長を務める工藤政宣さんに、JMAの活動内容や目指す未来についてお伺いしました。

一般社団法人日本マルチコプター協会(JMA)理事長 工藤政宣さん

ドローン事業を“もう一つの本業”に 

――まずは日本マルチコプター協会(JMA)のご紹介をお願いします。
 
JMAは商工会議所青年部の出身者たちで構成された団体です。そのため、メンバーのほとんどがドローン以外に本を持っています。

もともとビジネスをやってきた人間だからこそ、「ドローンが好き」「ドローンにはロマンがある」といった理想論だけではなく、ドローンをビジネスとして成り立たせることを重視しています。つまり、ドローンをもう一つの収益の柱にすることを目標に据えているのがJMAの特徴です。


――ほかに本業を持っているからこその強みについて、よりくわしく聞かせてください。
 
ドローンに関するビジネスを始めるにあたり、何か本業があると、ドローンを活用して本業の幅を広げていく、つまり本業とのシナジーを生み出すことができます。さらには、さまざまな本業を持つ加盟企業間でもシナジーが生まれるのが大きなメリットです。

たとえば、JMAのコアメンバーには「日本を代表するエンジニア」が働いている会社や、「フォトブックを活用して全国に販路がある企業」や「地域密着の建設会社」などが加盟しています。
 
ドローンの機体を開発するのは費用がかかりますが、実際に団体に加盟している企業がビジネスで使うとなれば、「よし、やってみよう」とチャレンジする企業が出てくるかもしれません。いろいろな意味で、JMAは共同組合のような性質を有した団体なのです。
 
われわれは1人のトップが引っ張っていく団体ではなく、加盟している62企業すべてが“親方”として団体の発展に尽力しています。事業展開も各社に担当してもらえるので、コンテンツを増やし、拡大するスピードがほかの企業や団体とはまったく異なるのが当団体の良いところです。
 
――そんなJMAがドローンの活用に寄せる思いをお聞かせください。 
 
われわれは、ドローンは良くも悪くも「魔法のアイテムではない」と考えています。世の中はドローンに対して過大評価している面があると感じています。たとえばレスキューのために出動したとしても人は運べないし、落ちてしまう危険性もある。空飛ぶタクシーとして何千万円をかけて導入したとしても、そんな高価な機体を雨風の強い日に飛ばしたくないですよね。
 
繰り返すようですが、われわれはその点、現実的な範囲でドローンを事業化することにこだわっています。たとえば現在では遠隔操作できるFPVドローンを搭載した小型船舶で特許を取り、ビジネスを展開していますが、これにより海で溺れた人の位置を迅速に確認したり、いけすで養育されている魚に餌を与えたりといった活用が期待できます。このように、「ドローンでなければできないこと」を冷静に見極めることが必要です。

地域貢献にも資するドローンレース 

――では、JMAの具体的な活動内容を教えてください。
 
いまは①スクール事業②レース事業③プログラミング事業などを行っています。メインは①のスクール「ドローンステーション」の活動で、全体の8~9割を占めています。全国でフランチャイズ化を進めており、2022年8月現在で58のスクールがあります。
 
スクールではドローンを利用したICTの活用を目的としたコースや農薬散布ができるようになるコースなど、複数のコースを用意しています。現在、スクールの新規加盟は受け付けていませんが、今後また募集を再開するつもりです。さらに進化していくために、商工会議所以外の個人や法人とも連携して新しい化学反応を生み出していきたいと思っています。

JMAスクール最大の特徴=包括申請付の民間ライセンスという点です。バウンダリ行政書士法人様とタッグを組んでしっかりとサポートしています。

国家ライセンス制度が始まってもおおむね3年間は国家ライセンスが無くても不便はないレベルというのはこれからスクールを検討されている方にとっては大きいポイントだと考えています。
 
②プログラミング事業に関しては、全国の小学6年生を対象に、無料でプログラミングによるドローン飛行を体験できる取り組みを行っています。ドローンに親しみを持ってもらいながら、論理的思考力を養うことができる試みです。
 
③ドローンレースは、2022年は3月から11月にかけて全国10か所で開催。子どもたちに「ドローンは怖いものではない」と感じてもらうきっかけとするほか、日ごろドローンの操縦を練習している人たちの成果を発揮するための場として活用してほしいと思っています。
 
ドローンを点検で活用することはあっても、レスキューなどでは使用頻度は少ないですし、趣味で練習している人にとっても自由に飛ばせる場所はそんなにありません。技術を維持・向上させるにはレースの存在が重要だと考えています。
 
――具体的にはどのようなレースなのでしょうか。
 
われわれが使っているのは「タイニードローン」と呼ばれる40g以下の超軽量ドローンです。GPSや高度維持装置がついていない不安定な機体なので、操縦には高い技術が要求されます。各レースで21人の選手が競い、獲得ポイントの合計で総合優勝者を決めます。総合優勝者には賞金100万円が授与されます。これほどまでの賞金を出す大会はそう多くありませんが、大会を盛り上げるためにも頑張りました(笑)。


――今後も同様のレースを続けていく予定なのでしょうか。
 
今後はレースの中で撮影大会も行っていきたいと考えています。たとえば協力してくれた商店街の各店舗を各レーサーたちが撮影し、SNSで写真をアップする。そこで一番たくさんの「いいね」を集めた人に景品をあげる、といった構想です。
 
選手は21人ですが、関係者を含めると50人くらいは開催場所となる街を訪れます。その街のものを食べ、宿泊し、観光名所や商店街の告知を行う。それを見た人たちが街を訪れる――、このサイクルの実現を目指しています。それでこそ、レースを受け入れてくれた街の人たちの恩返しになるでしょう。
 
このように、訪れた地域に対して経済的に貢献できるレースにすることは強く心掛けていますね。そうしないと、ドローン業界は短期的には盛り上がったとしても長期的に栄えていかないと思います。

平和利用で発展を目指す

――ドローン産業が発展していくために、どのような課題があると考えていますか。
 
ドローンは人の命に関わる事故が起こる可能性があるものです。なので、われわれは無理に市場の拡大を目指すべきではないと考えています。たとえ諸外国に3手遅れくらいのスピード感だったとしても、いまは安全を最優先すべきです。
 
「トライアンドエラーで進めよう」というのは地上では許されても、空ではやめた方がいいでしょう。しっかりとした根拠のもとにトライすべきです。国のルールに則って粛々と進めていくことが重要です。
 
電波法やリモートID制度も窮屈なものだと捉えるのではなく、安全を確保するために必要な政策としてありがたく受け止めています。ドローンも車のようにきちんと所有者がわかった方が、社会の安全につながりますよね。
 
――「人材が不足している」とよく聞きますが、その点についてはどのように捉えているのでしょうか?
 
ドローンは新しい産業なので、確かにまだ専門家の数は少ないと言えます。ただ、われわれは経営者集団なので、人材が足りないと嘆くのではなく、人材は育成するものだと思っています。
 
今後は自動車学校がタクシー会社やバス会社を展開しているように、スクールを起点としたビジネス展開も行っていきたいですね。「ドローンステーションに行けば、ドローンの操縦もできるようになるし、ドローンを活用した産業にも携われる」といった状態に持っていきたいと考えています。
 
スクールを出たからといって、すぐに業界の最前線に立てるかというと難しいですよね。ただわれわれには62の加盟企業がありますから、成功事例も失敗事例も情報共有が豊富です。そこからの学びは多いはず。このような団体は、業界ではわれわれだけだと思っています。
 
――経営者だからこそ、「ないものは作ろう」との発想になるのですね。
 
場所についてもそうですね。よく「飛ばせる場所が少ない」といいますが、われわれは「なければ自分でつくればいいじゃない」と考えます。飛ばしたいなら、飛ばせる土地は自分で確保するべきなんです。

誰かの善意に期待してしまうと、産業が成り立ちません。産業が発展するには、しかるべきお金が払われる必要があります。その辺りの考え方がほかのドローン団体と違うのかもしれないですね。


――最後に、JMAが目指す未来をお聞かせください。
 
たとえばスケートボードも昔はあまりいいイメージがありませんでしたが、オリンピックの種目にもなり、いまやアーバンスポーツとして高く評価されていますよね。ドローンもそのように、一つの文化に昇華させていきたいと考えています。
 
ドローンと言えば戦争での活用シーンを思い浮かべる人も多いと思います。われわれはそのイメージを払拭するべく「ドローンでこんなことができるんだ」と親しんでもらう機会を提供し、ドローンの平和利用をとことん追求していきたいと思います。


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