(取材)3000件を超えるフライト実績!点検業務の老舗ならではの業務ノウハウとは?株式会社ミラテクドローン社長佐々木康之氏
代表取締役社長 佐々木康之氏
「アライアンス」「スクール」「販売」が三本柱
――ドローン事業を行うに至った経緯を教えてください。当社はもともと、情報通信機器や設備の建設・保守点検を行うミライト・テクノロジーズ(現ミライト・ワン)の一事業部として、2017年10月に立ち上がりました。これまで点検業務を行ってきた中で、社員から「ドローンには可能性がある」との意見が上がったことがきっかけでした。
――ドローン事業部ではどのような事業を展開していたのでしょうか。
事業をスタートさせた当初からいまに至るまで変わらず、三つの柱を掲げています。一つは「アライアンス」。点検や測量、農業の分野で顧客のニーズに応じ、ドローンを飛行させています。二つ目が「人材・スクール」。神戸市と埼玉県熊谷市にスクールを開講し、人材の育成に注力しています。
そしてアライアンスとスクールを進める上で、ドローンの販売やシステム構築にも対応する必要があるということで、「販売・システム」事業も行うことにしました。柱自体はいまも変わっていませんが、少しずつ業務の幅が拡大しています。
――2020年7月、満を持して独立されます。これはどういった理由からでしょうか。
点検とスクールの事業が順調に推移し、さらなる発展が見込めそうだと考えたためです。加えてドローンに関連する仕事は、自分たちだけで完結することはほとんどありません。いろいろなパートナー会社とアライアンスを組む必要がある中で、会社として独立することで意思決定のスピードが速くなることも大きなメリットでした。
――アライアンス、スクール、販売の三本柱の中で、特に大きな比重を占めているのはどの分野でしょうか。
やはりもともとの強みである、アライアンスの比重が大きいですね。中でも増えたのが水管橋の点検です。これまでは通信設備の点検がメインでしたが、2021年10月に和歌山市で発生した河川や水路などを横断する際に用いられる水管橋の崩落事故を受け、相談数が一気に増加しました。
水管橋点検の様子(同社提供)
和歌山市の事故では、約6万戸が断水する被害が発生しました。このような事態を防ぐために、いま全国津々浦々の自治体から依頼が殺到しています。私たちとしては、ずっと前から警鐘を鳴らしていましたが、何か問題が起きると状況が一気に変わることを改めて実感しています。
――ドローンを点検で活用するメリットを教えてください。
ドローン登場前の点検は、人が歩いて目視で電柱やケーブルなどを確認するのが基本でした。ただ人力での確認は時間がかかりますし、どうしても死角が生まれます。
その点、ドローンは短時間であらゆる方向からくまなく確認できます。また、点検結果を画像で記録することができるので、毎年の結果を残しておくことで経年劣化が一目で判断できます。それらの効果は非常に大きく、今後さらに活用が進んでいくと考えています。
災害現場で3D画像を作成
――2021年7月に静岡県熱海市で起きた土石流災害でも、国土交通省の支援にあたられたと聞いています。はい。支援の背景となったのは、2019年に国土交通省中部地方整備局に全天候型ドローンを納入したことでした。
その後、2021年に土石流災害が起こり、ドローンの出番となりましたが、全天候型ドローンは高性能である一方、操作が難しいんですね。そこで、より精緻に現場を確認するためにパイロットの操縦支援にあたりました。
また操縦とは別に、ドローンを旋回させて撮影した写真から現場のオルソ画像を作成し、同局に提供しました。オルソ画像とは、一般的な航空写真ではどうしても起こってしまう写真のひずみを修正したもので、極めて正確に現場を反映できます。

熱海の土石流災害は、盛り土によって造成された土地が崩壊し、大量の土砂が川に流れ込んだことが原因とされています。このオルソ画像により簡単に土の量が算出できるので、災害前の土の量と比較できるというわけです。
このデータは災害対策本部に採用され、検証のために活用されました。災害分野での出動はない方がいいのですが、このように何かが起これば、すぐに対応できる準備も整えています。
――オルソ画像は測量分野でも使われているものですよね。御社の持つ測量技術についても教えてください。
ドローンによる測量は、「写真測量」と「レーザー測量」の二つにわかれます。写真測量は地上の状況を測定して3次元の地形データを作成するもので、熱海市の土石流災害時のように土の量の変化を計測することができます。
レーザー測量は、従来の写真測量では計測が難しかった樹木が生い茂った場所や凹凸が激しい土地でも地形データ取得を可能にするものです。1センチ単位で誤差なく、極めて正確な計測ができます。
最近では、太陽光パネルを設置するために広い敷地の起伏を撮影し、土台や配置図の設計に使うこともあります。人が一日がかりで計測していたものが、レーザー測量では1時間で終わるんです。非常に効率的ですね。
――国に全天候型のドローンを導入したとのことですが、ほかにも扱っている機体はあるのでしょうか。
そもそも、ドローン事業部を立ち上げた2017年時には、業務で使用できるレベルの機体と言えばDJI社のドローンぐらいしかありませんでした。その後少しずつ国産のドローンも改良が進み、中国の機体ではセキュリティ部分で不安だということで、日本やアメリカ、欧州の機体が求められるようになりました。
いまはDJI社のほか、国内ではACSL社や東光鉄工社、NTTイードローン社の機体を、国外ではフランスのParrot社やアメリカのSkydio社の機体を扱っています。点検や測量、調査といった用途ごとに使い分けていますが、国や自治体には国産ドローンが、民間企業ではDJI社製のものが選ばれることが多いですね。
――国産ドローンの課題はどこにあるとお考えでしょうか。
やはりコストパフォーマンスです。同じ性能の機体を比較すると、まだまだ中国製の方が安い。そのうえ、国産では汎用的に使える機体がACSL社の蒼天しかないなど、選択肢も非常に限られています。
今後ますます国産ドローンが求められるケースも増えていくはずです。少しずつ中国製のドローンとの差が縮まっていると感じていますが、国産ドローンのコストパフォーマンスを上げていくためには、もっと国内で健全な競争が起きる必要があるでしょう。
――活用の幅が広がっていますが、今後さらなる展開を考えている分野はあるのでしょうか。
注目しているのは、やはり物流です。これまで物流に関しては制度も技術も不十分だっため、あえて少し距離を置いてきました。しかし、目視外飛行の解禁により、一気に物流分野での活用が進んでいくはず。その機を逃さずチャレンジしていきたいですね。
法律“以外”の運用ノウハウに強み
――ドローンを社会に普及させるために、御社ではどのような取り組みを行っているのでしょうか。まだ社会から“悪者”扱いされているドローンが、社会のために貢献していることを広く周知していく必要があると考えています。たとえば私たちが電柱の点検のために街中でドローンを飛ばしていると、付近の住民から「ドローンに盗撮されているのではないか」と警察に通報されることがしょっちゅうあるんですよ。
そこで私たちは、点検の前に管轄の警察署や周辺の建物に連絡したり、作業時には看板を立てたりと、かなり丁寧にドローンの活用を進めています。通報されたときに、警察から「あれは電柱の点検をしているんですよ」と言ってもらうだけで、苦情は収まりますからね。
立看板では、電力工事でよくあるように「何月何日、何時から何時までミラテクドローンがドローンを使って点検しています」と書いています。非常に地道な活動ですが、こういったことをしっかりと実践していくことで、通行人や地域の方々に「ドローンが活用されている」との認知が広まるはずだと考えています。
――航空法や飛行のガイドラインで定められていないところでの難しさがあるんですね。
むしろ法律で決まってない部分の方が、注意しなくてはいけないことが多いんです。ドローンの業者も増えてきましたが、そういったことに注意を払わずに「ただ飛ばすだけ」の業者が多いことには危機感を抱いています。このままでは、ドローン全体の印象の悪化にもつながりかねません。
同社提供
――具体的にどのような部分で注意が必要でしょうか。
たとえば、河川や海の上空での利用です。現在私たちは個別の事案ごとに河川局や港湾局、漁業組合や自治体などと相談をしながらドローンを飛ばしています。
先方も経験がなく、「どう対応していいのかわからない」と悩まれることもありますが、私たちが一つずつ丁寧に説明することでご理解をいただけています。そのノウハウが積み重なってきていることが、私たちの強みでもあります。
いま明確に決まっていない部分の運用について、ドローン業界全体でコンセンサスを作っていく必要があると考えています。そこではぜひ私たちのノウハウを生かしていければと思いますね。
――そのような対応を全国各地で行っていくのは大変そうですね。
そうですね。ただ実は、ミラテクドローンの社内にはドローンを飛ばせる社員は6人しかいないんですよ。私たちの特徴として、パートナー会社とアライアンスを結ぶことで、拠点とパイロットの拡充を図っている点が挙げられます。
いまパートナー会社は11社、サービス拠点は53か所、配置パイロットは約200名に上ります。これにより、北海道から沖縄まで、全国で迅速な対応が可能になっています。
私たちの強みは「パイロットの質の高さ」です。ドローンを飛ばすことができる人ならたくさんいるんです。ただ、スクール事業を通して私たちが育成した粒ぞろいのパイロットは、ルール以外の考慮しなければならない点を理解した上で円滑に飛ばすことができます。そのような人材は決して多くありません。
――改めて、今後どういった形でドローンの発展に向けて貢献していくお考えでしょうか。
もっと社会の課題を解決できるサービスを提供していきたいと考えています。実際、昨年から依頼が急増した水管橋の点検でも、ドローンを活用することでこれまで発見できなかった異常を発見することができるようになりました。
災害が起こったときにも、ドローンで現状を把握することで、迅速な復興につなげていくサポートができるはずです。最適なソリューションの提供を推進していくことはわれわれの使命だと感じています。
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