(取材)外壁調査をドローンで!点検・人材の未来をつくるサンフロンティアの挑戦

東京都心を中心に、オフィスビルの再生事業を手掛けるサンフロンティア不動産株式会社(本社:東京都千代田区有楽町一丁目2番2号 東宝日比谷ビル14階)。不動産に関する幅広い事業を展開している同社はいま、ドローンを使った外壁の外壁調査に注力しています。従来型の調査方法に比べ、日数もコストも圧縮できるドローン調査の拡大に取り組む同社の黒柳 真介氏に、ドローン調査の現状や今後の展望をうかがいました。

サンフロンティア不動産株式会社 事業責任者 黒柳 真介氏

ドローン調査で日数とコストを圧縮 

――御社はこれまでも建物の外壁調査を行ってこられましたが、従来はどのような方法で調査を行っていたのでしょうか。
 
いままではロープを使って人が屋上から降下し、「打診棒」と呼ばれる器具で壁面を1カ所ずつ叩いて確認する「打診調査」が中心でした。棒で壁を叩き、正常な壁よりも「カンカン」と高い音が鳴れば、タイルが浮いている証拠。崩落を防ぐための補修工事が必要になります。
 
すでに工事を実施することが決まっているような現場では、ロープではなく足場を組んで点検を行うこともあります。
 
――御社では築20年~30年の物件を多く管理されていると伺っております。こうした築年数の建物に起きがちなトラブルについて教えてください。
 
建物は建設された瞬間に“中古”になり、年数が経っていくにつれ当然ながら劣化していきます。コンクリートは日々伸縮するため、建設から10年ほど経ってくると、どうしてもタイルが浮いてきます。そのため建築基準法では、竣工してから10年が経過した際に一定の大きさを超える建築物は全面打診調査を行うことが義務付けられています。
 
特に大きな地震を経験すると、たとえ見た目にはわからなくても、建物は確実にダメージを負います。築20~30年であれば地震などの自然災害リスクも増すため、修繕しなければならない箇所が発生しているケースもあります。
 
――そこでドローンを使った調査に踏み切られたわけですが、ドローン調査のメリットを教えてください。 
 
まずはスピーディーに実施できる点ですね。私たちはこれまでに60~70件ぐらいの調査を行ってきましたが、打診調査であれば1週間以上かかるところ、ドローンに搭載した4Kカメラと赤外線カメラを駆使したドローン調査であれば1~2日で終わります
 
人材面でも、打診調査では1日の作業量に限界があるため、納期が短い場合には1現場に20~30人もの人員を投入することがあります。ドローンを活用できれば、大幅に人員を減らすことができます。
 
また打診調査をやってみたいと考える若者が段々減ってきていて、採用が難しくなっている実態もあります。以前現場を見に行ったとき、ロープを使った打診調査を行っていたのは50代の方でした。やはり年齢が上がるにつれ、身体的な負担は大きくなります。
 
若手に教えられる人材も減少してきているので、技術の継承面でも課題があります。そこで、より熟練した技術が求められる打診調査よりもドローン調査の方が、人材の門戸を広げやすいメリットがあります。
 
そのほか、商業施設やホテルなどで足場を組んだ場合、いかにも“修繕中”といった風景になり、どうしても外観を損なう問題もあります。特にホテルなどの場合、その建物に魅力を感じてお客様が来館されるケースもありますから、ドローンを使うほうが好ましいのです。
 
――費用や点検の精度については、従来の手法と比べていかがでしょうか。
 
場合にもよりますが、足場に比べると6分の1程度に抑えられるケースが多いです。精度自体はいずれも丁寧に点検しているので、どのやり方が劣るというわけではありませんが、やはりコストが抑えられるのは大きな魅力です。

打診調査との共創を目指す

――タワーマンションなど大規模な建物だと、そもそも人による調査が難しそうですよね。 
 
そもそもタワーマンションには、建設の際にあまり点検のことまで想定されていないという実態があります。デザインを優先してかっこいいものができあがる一方、点検の観点では課題が多いです。

たとえばタワーマンションでは、あらかじめ設置されているゴンドラでは充分に確認できない箇所があるケースもしばしば見受けられます。すべてを確認するには足場を組むしかありませんが、それだとコストがかかりすぎて、とても費用感が合わないケースが多いんです。
 
タワーマンションは2002年ごろからあちこちで建設され始め、初期に建てられたマンションでようやく大規模修繕が始まったところです。調査や補修工事の方法は確立されていないので、今後に関してはかなり危惧している状態です。
 
このような背景を踏まえると、調査の面ではドローンを活用することが有効だと考えています。この前もタワーマンションでドローンによる調査を行いましたが、ひび割れやモルタルが欠けている箇所などを問題なく確認できました。
 
いざ修繕工事となればどのみち足場を組むことが必要になりますが、修繕が必要かどうかの判断を行うための手段としてドローンの活用を広めていきたいです。


――ドローンによる調査をお客様に提案すると、どのような反応が返ってくるのでしょうか。 
 
まだまだ一般的な調査法ではないので、「そんな方法があるんですね」といった反応をいただくことが多いです。ただ、感触はどんどん良くなってきています。
 
ドローンを飛ばしていても、以前は「何、あれ?」と怪訝な目を向けられていたのが、最近は「初めてドローンを見た!」「見て見て、ドローンだよ」と声が上がることもあります。少しずつドローンが身近なものになってきていることを実感しています。
 
――お話を聞くと、ドローンによる調査はかなり効果的なように思いますが、今後打診調査はなくなっていくのでしょうか?
 
いえ、ドローンによる調査は確かに有効ですが、たとえばビル同士の距離が近くてドローンが飛ばせない場合には打診調査が必要になります。
 
それに、ドローンを飛ばす場合は周囲への配慮もより一層求められます。私たちが使用しているドローンはマンホールより少し大きいくらいのサイズで、約7キロの重さがあるんです。万一操作ミスなどで墜落したときに通行人を巻き込まないよう、現場をカラーコーンで区切ったりトラロープで囲ったりといった安全確保策を展開していますが、どれだけ安全策を講じていても、心理的な負担を感じる近隣住民がいないとも限りません。
 
私たちは決して打診調査を否定しているわけではありません。むしろ、打診調査とドローンはお互いに補い合えるソリューションだと捉えています。これまで打診調査を行ってきた人たちが場合によってはドローンを取り入れるなど、共創していくことでよりよい調査の形を提供できるはずだと期待しています。

“新しい未来”をつくっていく挑戦

――今後、ドローンによる外壁調査市場はどうなっていくとお考えでしょうか。
 
ドローン調査は便利で効果的なので、市場が伸びていくことは間違いないと考えています。ロープを使った打診調査は、作業員にとっては危険と隣り合わせの作業です。業界全体で見ると、結構な頻度で事故が起こっています。
 
そのため、これまでロープを使った打診調査を展開してきた建設会社が安全面から実施を控える動きがあります。加えて、発注者側も危険性を懸念してロープによる打診調査を発注しないケースも出てきています。ドローンが新しい選択肢として注目され始めているのです。
 
――市場の拡大のため、御社はどのような取り組みを行なっていくお考えでしょうか。
 

とにかく「ドローンによる外壁調査」を知ってもらうため、アプローチの機会を増やしていく必要があると考えています。今後の希望としては、ドローンスクールと連携し、点検ができる人材を育成していきたいです。
 
現状では、仕事につながると期待してスクールの門を叩いた人たちが、思うように仕事を得られていないケースがあると聞いています。そこで「空撮」や「測量」以外にも「建物点検」のコースをつくったり、私たちが教えたりすることで、点検ができる人材を増やしていけれと考えています。
 
実際に業務に当たっている人を見ていても、それなりに稼ぐことが可能です。魅力のある仕事だと思います。
 
国の法整備が進み、操縦ライセンスの制度がスタートしたことで、今後操縦者は増えてくるはずです。そもそもプレイヤーが増えないと市場は拡大しないので、ここからが勝負です。
 
――ドローンでの調査に当たる人材が不足している状態なんですね。 
 
そうですね。またドローンでの調査に関連する仕事として、操縦者のほかに画像を纏めて報告書を作成する仕事もありますが、この報告書作成の仕事も人手不足の状態です。今後操縦できる人材が増え、ドローンによる調査が広がっていくと、さらなる解析者不足に陥ると予測しています。
 
そこでいま、報告書作成ができる人材の育成にも力を入れています。この仕事の利点は、ネット環境があれば自宅でもできる仕事であること。実際、いま弊社のスタッフは仙台と静岡、大阪からリモートで業務を行っています。全国どこにいても仕事ができるのは一つの大きなポイントです。
 
私たちの中にも、子どもがいて勤務時間に制約があり、「リモートで仕事ができるのは大変ありがたい」と話すスタッフもいます。育児などで仕事をやめざるを得ない方もたくさんいるので、そういう方たちにとってはすごくいい仕事だと思います。
 
解析に当たっては、画像を一枚一枚細かくチェックしていく必要があります。これまでの傾向から、そういった細やかな作業は女性が得意な分野なのではと見ています。ドローンによる調査の拡大は、女性活躍に貢献できるものだと考えています。


――時間や場所に制約がある人にとって、大変嬉しいお話ですね!画像の分析を仕事にするにはどのような知識が必要なのでしょうか。 
 
まず基本的な建物の勉強をしていただきたいですね。資格としては赤外線建物診断技能士や施工管理技士、建築士の資格があると非常に有効だと思います。
 
ただ、それらの資格も「あればより的確な診断ができる」というもので、必ず必要なわけではありません。未経験の方であっても、しっかりとした研修を提供していますし、そこまで高いハードルではないと思います。
 
作業は写真を見て傷や欠損がある場所にマーキングし、最終的にそのマーキングを図面に反映させていきます。慣れるまではどれが傷でどれが欠損なのかといった区別を行うことは難しいと思いますが、参考となる資料も豊富に用意しており、要所要所で責任者も確認します。

着実にスキルが上昇し、ゆくゆくは無理なく一人で処理できるようになる環境が整っています。
 
――ドローンの社会実装が進んでいく中で、今後御社はどのような存在感を示していきたいとお考えでしょうか。 
 
私たちは建物調査に関する常識を覆していきたいと思っています。これまでと違うアプローチが世の中に増えてくることが予想される中で、私たちは「ドローン外壁調査が当たり前」の社会を目指していきます
 
また、自社だけではドローンによる調査を広げようと頑張ってもなかなか難しいと感じています。ビルを所有している企業などが我々の持つ技術を内製化できると格段に広がっていくはずだと考えており、いま2社に対してコンサルティングを始めています。
 
まだ社会的には、「ドローンの画像診断士」という職種もありません。社会に新しい職種をつくり、点検の未来をつくっていく。そんなチャレンジを行っていきます。

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