農業用ドローンの補助金や免許制度を紹介 | 導入のメリット・デメリットも解説

農業用ドローンの補助金や免許制度を紹介 | 導入のメリット・デメリットも解説
農業に従事している人のなかには、時間や人手がかかる農薬散布に頭を悩ませている人も多いでしょう。そのような人におすすめしたいのは、農業用ドローンです。

近年では、ロボットやドローンなどを活用するスマート農業が普及されています。人手不足に悩んでいる場合でも、ロボットやドローンを導入すれば効率的に作業を行うことが可能です。

この記事では、農業用ドローンの特徴や選び方などをわかりやすく紹介します。

農業用ドローンの特徴

農業用ドローンは、一般的なドローンと比較して本体やプロペラが大きなサイズであることが特徴です。機体下部には農薬散布用のタンクが搭載されており、防水・防汚コートが施されている機体もあります。

世界的にも農業用ドローンは急速に普及しており、世界市場では2020年に12億米ドルとなっており、2025年に57億米ドルに到達すると予想されています。

ここでは、農業用ドローンの種類や役割について詳しく説明します。
参考:先端農業マガジン

農業用ドローンの種類

特徴 マルチコプター型 固定翼型
価格 250~350万円 調査中
飛行時間 10~20分前後 1時間以上
最大散布面積 約1ha 約1,500ha
タンク容量 10L前後 調査中
散布速度 時速15~20km 時速140km
騒音 少ない 調査中
自動運航 可能 可能

農業用ドローンとして主に活用されているのは、以下の2種類です。
  • マルチコプター型
  • 固定翼型
マルチコプター型は複数のプロペラを有しており、固定翼型は長時間飛行が可能となっています。さらに、そのなかでも農薬散布ドローンや苗木運搬ドローンなど、目的に応じて活用するドローンは異なるため、注意して選びたいですね。

農薬散布ドローンを選ぶ場合は、タンク容量や最高時速、最大飛行可能時間や最大散布面積などもチェックすることが重要です。また、防滴仕様のドローンを選べば、天候に左右されず農薬散布を行えることがメリットです。

農業用ドローンの役割・メリット

農業用ドローンには、以下のような役割があります。
  • 肥料・農薬の散布
  • 受粉
  • 農作物の運搬
  • 鳥獣被害対策
  • 麦や米の種まき(播種)
  • 農地の空撮
  • 雑草や病害虫の発生状況の確認
最も多く使われている用途は、農薬や肥料の散布です。農薬や肥料、受粉などの作業が農業用ドローンで行えることで、作業時間の大幅な短縮を可能にします。さらに、マルチスペクトルカメラを搭載している農業用ドローンなら、高度な分析が可能となる点がメリットです。

また、赤外線カメラを搭載しているドローンを使用すれば、鳥獣の生息状況を確認できます。鳥獣対策に活用できることで、農作物の被害を最小限に抑えられるでしょう。

農業用ドローンを導入するメリットとして、急傾斜地のような人が入りにくい場所の防除作業を軽労化できる点が挙げられます。人員を削減できることから、人件費を削減できる点も大きなメリットの1つ。ドローンでセンシングを行うことで圃場間のばらつきを確認しやすくなり、生育状況を把握しやすくなります。

その結果、適した場所に肥料や農薬を散布でき、生産量もアップしやすくなるでしょう。また、農業用ドローンにカメラを搭載することで、生育状況や病害虫の有無などのデータを管理しやすくなります。大きな圃場を管理する必要がある農家にとっては、最小限の人数で管理できるため、作業時間の短縮にもつながります。

農業用ドローンを利用する際に資格・免許が必要となるケース

使用する産業機によっては、資格や免許が必要となるケースもあるため、運航する前に確認しておきましょう。ここでは、農業用ドローンを利用する際に資格・免許が必要となるケースについて説明します。

農林水産航空協会の認定機を使用する場合

農林水産航空協会の認定機を使用するためには、農林水産航空協会が認定する「産業用マルチローターオペレーター技能認定」を取得する必要があります。産業用マルチローターオペレーター技能認定を取得するためには、農林水産航空協会が指定する教習施設でカリキュラムを受講します。

受講期間は初学者で5日間ほど、他機種のライセンスを取得している人なら1~3日間となっています。また、受講料は初学者の場合は25万円前後、他機種のライセンスを取得している人なら5~20万円前後となることが一般的です。カリキュラムを受講したうえで試験に合格すると、資格を取得することができます。
参考:一般社団法人 農林水産航空協会

DJI・クボタの農業用ドローンを使用する場合

DJI・クボタ製の農業用ドローンを使用する際には、DJI JAPANが運営するドローンの産業パイロット教育・訓練機関のUTCが発行する「農業ドローン技能認定証名証」が必要です。DJI・クボタの農業用ドローンは散布性能が保障されており、安心して使用できることがメリットです。

さらに、補助金や助成金の対象となるケースが多いため、農業用ドローンとして選ばれている傾向があります。なお、一般的には講習期間は5日間ほどとなっており、受講費は220,000~240,000円ほどです。

2022年12月よりドローンの免許制・国家資格制度も開始

2022年12月より、ドローンに国家資格制度が導入されました。農業用ドローンを操縦する際に、国家資格は必須となる資格ではありません。しかし、国家資格を保有することで、レベル4(有人地帯での目視外飛行)が可能となり申請・許可の手間が省略されるなどのメリットも多くあります。

そのため、ビジネスの幅を広げていきたいと考える場合は、国家資格の取得を検討したいですね。ドローンの国家資格を取得する際には、国家資格に対応したコースがあるドローンスクールに通うことがおすすめです。
参考:レベル4の実現に向けた新たな制度整備等

ドローン国家資格・免許制度が開始!費用や取り方・難易度を解説

2022年12月から、ドローンの免許が国家資格化されました。この記事ではドローンの国家資格である「一等無人航空機操縦士」「二等無人航空機操縦士」の試験内容や資格を取得するメリット、JUIDA・DPA・JDAなどの民間資格と国家資格の違いについて解説します。費用や取り方、どれがいいのかも紹介します。

この記事をcoeteco.jp で読む >

農業用ドローン導入時の初期費用・維持費の価格相場

農業用ドローンは初期費用の相場が80~300万円前後で、維持費は年間で20万円以上かかることが特徴です。高額な費用が必要となることから、導入する際には慎重にならざるを得ないことも少なくありません。

そのため、小規模な農家の場合なら、農業用ドローンを導入しない方が年間のコストを抑えられるケースもあるでしょう。費用をかけずに農業用ドローンを導入したいなら、複数の農家で共同購入するのも1つの方法です。
参考:農林水産省

農業用ドローン向け補助金

名称 対象者 補助率 詳細URL
担い手確保・経営強化支援事業 個人・法人 100~3,000万円 https://www.maff.go.jp/j/keiei/sien/R3ni_shien/index.html
小規模事業者持続化補助金(一般型) 常時使用する従業員が20人以下の小規模事業者および一定要件を満たす特定非営利活動法人 3分の2(赤字事業者の賃金引上げ枠は4分の3) https://r3.jizokukahojokin.info/
スマート産業総合推進対策事業 農業支援サービスを新たに実施する者もしくは実施している者 個別要件により異なる https://www.maff.go.jp/j/supply/hozyo/nousan/220912_376-1.html
みどりの食料システム戦略推進交付金 協議会のメンバーである農業者 300~360万円 https://www.maff.go.jp/j/kanbo/kankyo/seisaku/midori/

担い手確保・経営強化支援事業

農作物の輸出に向けた取り組みなど農業経営の発展を図ろうとする担い手を対象とし、スマート農機等の導入を支援するのは、担い手確保・経営強化支援事業です。配分上限額は個人が1,500万円、法人が3,000万円、市町村が認める者は100万円となっています。

助成対象となるのは、経営の開始もしくは改善に必要な機械や施設などが含まれます。具体的には、トラクターやコンバインなどの農業用機械、ビニールハウスの整備や農畜産物加工施設などが該当します。

小規模事業者持続化補助金(一般型)

小規模事業者持続化補助金(一般型)は、地域の雇用や産業を支える小規模事業者等の生産性向上と持続的発展を図ることを目的としています。小規模事業者持続化補助金(一般型)に申請するためには、経営計画書・補助事業計画書を作成したうえで、管轄の商工会議所へ「事業支援計画書」の交付を依頼する必要があります。

なお、申請書類の受付期間が定められているため、申請を検討している場合は早めに書類などを準備しておきたいですね。通常枠の補助上限は50万円となっており、それ以外の枠では上限が200万円となっています。

スマート農業総合推進対策事業

ロボットやIoTなどのスマート農業普及を推進するための補助金には、スマート農業総合推進対策事業があります。具体的には、ドローンによる農薬散布や総合管理システム、自動収穫ロボットの導入などを行う際に補助金を活用することが可能です。

スマート農業総合推進対策事業を活用することで、農業の担い手がデータを活用した農業を実践できるようになることを目指しています。

みどりの食料システム戦略推進交付金

みどりの食料システム戦略推進交付金は、農林水産省によって令和3年に策定された「みどりの食料システム戦略」に基づいていることが特徴です。対象者は、有機農業に取り組む新規就農者や慣行栽培から有機農業への転換に取り組む農業者などです。

なお、2022年12月時点では、全国の活用事例は300件を突破しています。みどりの食料システム戦略推進交付金を利用して化学肥料や温室効果ガスの削減を目指すとともに、省力化技術の実証などが実施されています。

農業用ドローンを導入する際の注意点・デメリット

さまざまな役割を担える農業用ドローンですが、導入する際には注意点を抑えておく必要があります。ここでは、農業用ドローンを導入する際の注意点を解説します。

操縦能力を身に付ける必要がある

農業用ドローンの重量は10~25kg前後あるため、落下事故を起こさないよう慎重に操縦できるスキルが求められます。さらに、操縦スキルだけではなく、ドローンに関する法律の知識も学ぶ必要があります。

農業用ドローンの講習会は、全国各地で盛んに開催されています。今後、農業用ドローンを操縦したいと考えている場合は、積極的に講習会に参加したいですね。

バッテリーの取り扱いを慎重に行う必要がある

ドローンのバッテリーは、リチウムポリマー電池かリチウムイオン電池が採用されています。これらのバッテリーを過剰な充電をして放置すると発火する可能性があるため、注意しましょう。

さらに、バッテリーを長期間高温にさらすことで発火する恐れもあります。バッテリーを保管するときには、耐火性の容器を準備して保管するよう心掛ける必要があります。

農薬散布は国土交通省への申請が必要となる

ドローンによる農薬散布や輸送は、航空法における「危険物の輸送」「物件投下」に該当します。そのため、ドローンの農薬散布を行う際には、国土交通省へ申請する必要があります。併せて、安全を確保して農薬散布するために、農薬取締法の「空中散布ガイドライン」を事前に確認しておきたいですね。

飛行を申請する際には、飛行開始予定日の10開庁日前までに、飛行予定場所を管轄する空港事務所か地方航空局に申請する必要があります。安全確保のための基準に適合していることを示せる書類や資料を提出する必要があるため、早めに申請の準備をしておきましょう。

万が一、機体事故や紛失などがあった場合は、地方航空局へ報告します。さらに、農薬の流出やドリフトなどの事故が発生した際には、都道府県の農薬指導部局へ報告するようにしましょう。

ドローンでの農薬・肥料の散布の手続きを行う際には、ドローン登録システムで機体登録を行ったうえで、国土交通省の「ドローン情報基盤システム2.0」を利用しましょう。ドローン情報基盤システムには、飛行計画を登録する必要があります。

飛行計画を登録する以外にも、同じ空域を飛行する航空機や無人航空機の飛行情報や飛行禁止エリアなどを確認することもできます。
参考:国土交通省

最大離陸重量が25kg以上では厳しい基準が設けられている

ドローンの最大離陸重量が25kgを超える場合は、以下のような追加基準が設けられています。
  • 想定される全ての運用に耐えうる堅牢性を有する
  • 100時間以上の飛行に耐えうる耐久性を有する
  • 通信が他の機器に悪影響を与えない
  • 発動機やモーター、プロペラが故障した場合でも破損した部品が飛散する可能性が低い構造である
  • 事故発生時の原因調査を行うために飛行記録できる機能を有する
  • 通信系統や推進系統などの不具合に対し、適切なフェールセーフ機能を有する
海外のドローンを注文した場合は、以上のような事項が確認できないことも少なくありません。そのため、最大離陸重量が25kgを超えるドローンを導入する際には、日本の大手メーカーのドローンを導入すると安心です。

農業用ドローンの補助金や免許制度まとめ

農業用ドローンは、導入することで人手不足を解決できることが大きなメリットだと言えます。費用を抑えたい場合は、共同購入したりリースしたりしても良いでしょう。農業用ドローンを選ぶ際には、安さだけで決めるのではなく、自身の農地の広さや目的に応じて選ぶ必要があります。

最適な農業用ドローンを選んで、スマート農業を始めてみましょう!


まるわかりガイドでドローンを知ろう
まるわかりガイドを見る

RECOMMEND

この記事を読んだ方へおすすめ