(取材)一般社団法人日本UAV利用促進協議会 (JUAVAC)|高レベルのソリューションを全国で展開できる秘訣とは

(取材)一般社団法人日本UAV利用促進協議会 (JUAVAC)|高レベルのソリューションを全国で展開できる秘訣とは
さまざまなドローン関連企業などにより構成されている一般社団法人日本UAV利用促進協議会 (JUAVAC)。全国でドローンスクールや測量、点検といった分野でのソリューションを展開しています。

同団体の強みは、全国で高レベルの人材育成・ソリューション提供が可能である点です。代表の大越信幸氏に、その理由や今後の展望についてうかがいました。

“事業家”が見るドローン業界

――JUAVACはどのような経緯で設立されたのでしょうか。
   
JUAVACは、ドローンを中心とした無人航空機を活用することで、人口減少社会の課題解決に貢献していくことを目的に発足しました。傘下のスクールによるパイロットの育成のほか、さまざまな領域においてソリューションを提供するとともに、さらなる技術の発展を目指し研究開発を進めています。
 
――どのような事業者が参画されていらっしゃるのでしょうか。
   

自動車会社や測量会社、建築会社など、パートナーは多岐に渡っています。特に業種に縛りや偏りはなく、その地域でご活躍されている企業さんにご参画いただいています。
 
――大越さんご自身はどういったきっかけでドローン業界に参入されたのでしょうか。  
   
私自身はもともとドローン業界とはかかわりがなく、この世界に入ってくるまでドローンを飛ばしたこともないような状態でした。ただ、広告代理店を経てマーケティング会社やフィンテック企業を立ち上げるなど、いろいろな業種で経営に携わってきた経験がありました。
 
そこで、経営の知見はドローン業界でも生かせるはずだ」ということで誘われ、業界の発展に向け尽力することになりました。
 
――いろいろな業態の会社の経営を見てきた大越さんから見たドローン業界の現状はいかがでしょうか。 

   
大きなポテンシャルはありますし、業界全体が成長している実感もあります。ただ、現状はまだドローンの社会実装が進んでいるとは言えず、技術も発展途上にあります。ことビジネスに関しては、なかなか収益が出しづらい状況ですね。
   
たとえば自動車業界だと、新車販売より中古車市場の方が儲かる場合もあります。一方でドローンではまだ中古の市場すら立ち上がっていません。加えて新しい技術を搭載した機体が生み出されつづけているので、その技術についていくための投資も相当な額に上ります。

ただし、昨年12月の国による操縦ライセンス制度開始以降、資格取得希望者も大きく増えており、これから急速に成長していくと考えております。  
 
――JUAVAC設立から6年。これまでの歩みを教えてください。 
   
私たちの事業は、大きくは「プロサービス」と「ドローンスクール」にわけられます。このうちプロサービスでは、業務で活躍できるプロの人材の育成のほか、測量や点検、農林水産といった分野でソリューションを提供しています。
 

スクール事業では、開校準備中のスクールも合わせると2023年1月現在で全国に40校のスクールを開校しています。特徴としては、一般の方というよりはドローンを利用して業務を行いたいプロフェッショナル向けのスクールとなっています。
 
正直にお話すると、当初の3~4年は非常に厳しい状況にありました。それはドローンを活用するといってもほとんどが実証実験段階で、なかなかビジネスとしての活用が進まなかったからです。
 
パートナー企業とさまざまな知恵を絞りながらノウハウや実績を積み重ね、いまようやく少しずつ点検や測量分野などで実務に使われるケースが出てきました。特に点検、測量、農業分野の伸びが大きいですね。点検では、ビルやインフラ、プラントといった分野での需要が伸びており、人が入れないような狭い場所での活用も進んでいます。

全国で同じ品質のサービスを提供 

――JUAVACの強みを教えてください。
   
まずプロサービスでは、各パートナーさんがそれぞれの分野のプロフェッショナルである点が強みですね。 JUAVACには多くの事業者さんが参画していますが、大都市圏を除き基本的に各県1企業ずつとなっています。そのためお互いの領域を守りつつ、パートナー同士でさまざまな情報交換を行いながら発展していくことができるんです。
 
また、サービスについてはJUAVACの示した枠組みに則って行っているので、品質が全国で統一されています。たとえば北海道から沖縄まで事業を展開しているようなクライアントでも、品質を担保しつつ、現地の企業に業務を任せられるのでコストを削減することができます。
   
――複数の領域で事業を展開していらっしゃいますが、事業の取捨選択はどのように行っているのでしょうか。 
 
私たちが参入するのは、基本的に「伸びている分野」と「社会的にドローンの活用が求められている分野」です。たとえば最近では、防災の観点からもドローンに注目が集まっています。ドローンを活用すれば、被害状況や津波の発生状況の監視、要救助者の捜索やスピーカーを使った避難誘導など、多くの場面での活用が期待できます。
 
ユニークな事例としては、青森県の漁業組合と共同でAIを使った日本初の密漁監視・抑止システムを運用しています。青森県では、なまこの密漁が大きな問題になっています。そこで、カメラを搭載したドローンを海域に飛ばすことで、夜間であっても密漁者を検知できるシステムを構築しております。
 

――興味深いです。スクール事業での強みはいかがでしょうか。 
   
一番大きな強みが、全国のスクールで高い品質の統一カリキュラムを使って講習が行われている点です。また、教官のレベルにも自信があります。スクールの教官になるための研修では最低でも50時間以上の飛行を義務付けており、研修期間だけで3ヶ月ほどにのぼります。
 
――それは受講者も安心できますね。  
 
おかげさまで、講習や教官の評判はいいと思います。あとは業務に直結した専門コースをつくっていることも私たちの特長です。いまは「フライト基本技術コース」のほかに「空中散布コース」「測量基本技術コース」「非破壊検査基本技術コース」を用意しています。
 
測量コースでは、測量大手のパスコ監修の下でカリキュラムを作っており、スクールでの学びが実務に直結しています。中級コースでは一般社団法人ドローン測量教育研究機構(DSERO)が実施する認定資格「ドローン測量(管理士・技能士)」の資格取得も可能です。また、実際の産業機で講習を行っているというのも一つのポイントだと思います。
 
――各スクールの登録講習機関への移行も進んでいます。 
   
多少の手間はかかりましたが、いままでしっかりとしたカリキュラムを策定していたおかげで、それほど大きな混乱もなく登録講習機関への移行が進んでいます。実際、登録講習機関に認定された時期もかなり早いほうでした。登録講習機関の認定を受けたスクールはまだ一部にとどまりますが、すべてのスクールで認定を受けるべく進めているところです
   
――受講される生徒はどのような属性の方が多いのでしょうか。 
 
やっぱり業務で使用するために来られる方が多いですね。大体7割くらいでしょうか。企業がメインですが、自治体の方もいらっしゃいます。個人では趣味で飛ばしたい方もお越しになりますが、「今後業務として使っていきたい」とお話される方もいます。

――御団体のスクールが選ばれる理由は、やはり高い専門性がある点でしょうか。 
 
それはあると思います。私たちのスクールでは、たとえフライト基本技術コースであったとしても業務の現場を知らない人間は教官になれません。私たちは「プロがプロを育てる」をモットーにしており、教官が“プロ”であることが一つの売りです。なので受講者の方々にもそういった理由で選んでいただけているのではと考えています。

――教官に求められるのは操縦技術のうまさだけではないんですね。 
 
操縦技術に関しては、「操縦がうまい」よりも「リスクマネジメントができる」ことの方が重要です。レースやショーをやるわけでなければ、スピードも曲芸飛行も必要ありません。いかに安全に飛ばすかが一番大事です。
 
ドローンは最悪の場合、人の命や資産を脅かす危険性のあるものです。なので私たちは「簡単に飛ばせます」といった手軽な形での指導は行っていません。法律をよくわかっていないまま飛ばし、検挙されたケースもすでに出てきています。法律に従いながら、安全な飛行を徹底しています。
   
それはプロサービスでも同じです。安全な飛行には、パイロットだけではなく、機体状況を確認する補助者も重要な役割を果たします。この補助者が必要な場面で「パイロットを1人派遣してください。補助はこちらでします」といったご依頼をされる場合にはお断りするケースもあります。

新たな領域を切り開く開拓者としての挑戦

――社会のニーズを捉えているJUAVACですが、今後さらに展開を見据えている分野はあるのでしょうか。  
   
操縦ライセンス制度が始まったこともあり、輸送分野については参入の準備を始めています。ただし、輸送分野が発展していくためにはライセンスのほかにレベル4飛行に対応できる機体と運用ルールが必要ですが、現状はライセンスしか整備されておらず、動き出そうにも動き出せない状況です。いま少しずつガイドラインが整備され始めているので、その流れを注視しています。
 
あとニーズが高いのがデータ分析ですね。たとえば点検分野での活用が進むほど、ドローンが撮った画像を見て「建物のこの部分に劣化によるヒビが入っている」と判断できる人材の育成が必要になってきます。データ分析の技術があるかないかで、業務のレベルが大きく変わってくるはずです。
 
――ドローンの社会実装が進んでいく上において、取り組まなくてはいけないのはどの辺りだとお考えでしょうか。 
   
やはり何と言っても、大事なのはリスクマネジメントです。ドローンを飛ばしていると、正規の手続きを踏んでいても住民の方から警察に通報されることがあります。まだ人々にドローンに対する不信感がある中、JUAVACとしては、社会に対して「ドローンは人々の暮らしを便利にするために活用されている」と啓蒙していかなければいけないと考えています。
 
――具体的には。  
   
たとえば昨年6月には、JUAVACドローンエキスパートアカデミー東京本校では東京都狛江市と連携協定を結びました。災害時に活用するだけではなく、そのような関係性を活用して一般の方にドローンと触れ合ってもらえるイベントや体験会などを実施していきたいと思っています。
 
JUAVACドローンエキスパートアカデミー山口校(山口県宇部市)では、同市にキャンパスがある山口大学や宇部高専の学生・生徒に対し、無償で操縦ライセンスを取得してもらう試みも行いました。青森校では小学生に向けたプログラミング授業、山梨校では地元の高校生向けに、空中写真測量や3D解析を学ぶ体験授業を行いました。楽しそうな顔を見ることができて嬉しかったですね。
 
いまの日本は残念ながら中国製ドローンの後塵を拝している状況ですが、そういった試みによりドローンに興味を持ち、技術開発に進む学生が出てくれば、産業の発展にもつながるはずです。
 
ほかにも、パートナーの中にはドローンレースに力を入れているスクールや、ドローンサッカーを行っているスクールもあります。JUAVACとしてもレースのスポンサーを務めていますが、そのようなエンターテイメントもどんどん推進させていきたいですね。業界全体を発展させていくためには、遊びも仕事も必要です。

――JUAVACの果たす役割は大きいですね。 
 
ようやく市場が成長しつつある中で、私たちとしては市場の発展に合わせてパートナーに対し適切な技術の伝達・普及を図り、情報共有できる場を提供しなければならないと考えています。ドローンはまだまだ大きな可能性を秘めています。新たな分野で活用が進むよう、まだ見ぬ道を切り開いていきたいですね。  


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