(取材)アイ・ロボティクス代表 安藤嘉康|"課題先進国"日本におけるドローンの最新ソリューションとは
そんな課題にアイデアとロボティクスで解決策を提案するのが、株式会社アイ・ロボティクス。同社の代表取締役である安藤嘉康さんは、プロスポーツチームの立ち上げや、大企業の技術実装支援など、テクノロジーの社会実装に貢献してきた人物です。
今あるツールだけでは解決不可能な課題に対し、テクノロジーのかけ合わせで同社が生み出すソリューション。ドローンもまた、その一端を担っています。
長年テクノロジーによる社会課題解決に従事してきた安藤さんに、今の日本が直面している課題と、その解決のために同社が果たす役割について、お話をうかがいました。

株式会社アイ・ロボティクス 代表取締役社長 安藤嘉康氏
解決策がない課題に対するソリューションを「伴走支援」
__御社は2011年に前身となる産業ロボティクス勉強会を発足し、2016年に法人設立したとのことですが、創業の経緯と当時のビジョンについて教えてください。まず、勉強会発足の経緯からお話ししますと、きっかけは人が入れなくなった施設の点検調査作業用のロボット開発依頼を受けたことでした。
人が中に入れない場所の点検や調査、作業という課題に対して、誰も解決方法がわからない。解決するためには各分野の知見や要素技術を持っている人を集めて、ソリューションをゼロイチベースで作らなければなりませんでした。
そのために勉強会を発足させました。そして、トライアンドエラーを繰り返せば今まで解決策がなかった課題のソリューションを作り出せることをこの勉強会で経験し、これはさまざまな分野でビジネスになるという気づきを得て、2016年にアイ・ロボティクスを設立しました。
__2011年から5年という年月が経過していますが、その間にはどういった経緯があったのでしょうか?
私はその間、大企業の技術実装支援や、「CEATEC(アジア最大級のIT技術・エレクトロニクスの国際展示会)」や「Inter BEE(メディア・エンターテインメントの総合イベント)」の事務局付プロデューサーなどを務めました。そこで、さまざまな企業さまの課題をヒヤリングするなかで、テクノロジーを組み合わせればゼロイチで課題を解決できると気づき、創業に至ったのです。
__御社の掲げている「伴走型支援」とは、具体的にどのようなサービスなのでしょうか?
私たちは、まずお客様の現場に行き、課題を探ることから始めます。そして課題に対してどの手段を組み合わせれば解決できるのか仮説を立て、検証する。その仮説をブラッシュアップし、実際に導入し、課題解決まで寄り添います。
お客様の課題によっては、今あるツールで解決できるもの、一つのツールでは解決できないけれど、いくつかのツールを組み合わせることで解決できるもの、そして全く新しいツールが必要なものがあります。
つまり、解決すべき課題によって「道具」を使い分けているのです。そして、今ない「道具」が必要ならば新しく作り出す。それが弊社の存在意義でもあります。
老朽化問題、労働人口減少問題を「機械化」「遠隔化」「自動化」で解決
__実際に、課題解決のツールとしてドローンを活用した場面を教えてください。例えば、弊社がプラントの点検・整備で確立した「足場レスソリューション」というものがあります。
プラント施設は高度経済成長期に多く作られているため、老朽化が進んでいます。建てられてから40年、50年が経過しているので、補修するのか建て替えるのかを決断するタイミングが待ったなしで迫っているのです。
設備の点検や補修をするのなら、まずは足場を組まなければなりません。しかし現在は足場を組む鳶職人が高齢化して、新たな担い手もいません。同じことは塗装職人にもいえます。
そこで、弊社が日本製鉄株式会社、日鉄テックスエンジ株式会社と協同で開発したのが「壁面足場レスソリューション」です。
足場設置不要!労働力不足解消に向け本格ロボット活用を提案へ。革新的な高所作業・壁面メンテナンスソリューションの提供を開始いたします。 背景 国内の大規模プラントや特殊建築物は建築から数十年を経て老朽化対策が課題となってお [...]
https://irobotics.jp/news/_wall/ >
まず、ドローンをプラント上空の位置にGPSで固定して浮かせ、そこを吊り元として、壁に張り付くロボットを滑車のようにして釣り上げ、一定のスピードで上下させます。そのロボットに地上からポンプで水やペンキを送って高圧洗浄したり、塗装したりするのです。
そうすることで、足場を組まなくても、人が屋根に登らなくても点検や補修ができるようになりました。
ちなみにこの張り付き型のロボットは、私たちが新しく作り出した道具です。
__なるほど、ドローンを特定の位置で停止させ、そのドローンに滑車をかけてロボットを上下させるんですね。
はい。これは大型のドローンを吊り元として使ったソリューションのパターンです。他にも、マイクロドローンを使って、人の入れない狭い隙間を点検する事も行っています。
2019年から2020年にかけて、弊社はOsaka Metroの41駅の屋根裏点検を実施しました。超小型のドローンを点検口から屋根裏に侵入させ、老朽具合をチェックするのです。
点検業務採択のお知らせ Osaka Metroが土木構造物点Osaka Metroが土木構造物点検に狭隘部ドローン点検にアイ・ロボティクスの狭隘部ドローン点検サービスを採用。構造物点検にマイクロ・ドローンを本格導入へ。 [...]
https://irobotics.jp/case/osaka_metro/ >
__ドローンにカメラを積んで中を点検したのですか?
はい。しかし、どんなカメラを積むかは、各駅ごとにヒヤリングしなければ決まりません。最初に360度カメラで全体を撮影し、必要な箇所だけ4Kのカメラで詳細にチェックするなど、何をどんな精度で見たいかによっても違うでしょう。場合によっては赤外線カメラが必要な場合もあります。
弊社では、ドローンで問題を解決するわけではありません。お客様の課題に対し、必要であればドローンも手段の一つとします。そして、どんなドローンを使うのか、何を搭載するのかも含めて解決策を提案しています。
あくまでもお客様の課題に寄り添い、それに合ったテクノロジーで解決まで導くこと、それが弊社のサービスです。
Osaka Metroのケースでは、2019年にコンクリートが崩落して老朽化が明らかとなり、国土交通省から総点検の指示を受けていました。それに対応できるソリューションを作り出せるのが、弊社だけだったことで、ご依頼を受けたという背景があります。
今後、特にプラントや地下鉄などのインフラ設備は老朽化が進み、点検や修繕作業は急務になります。労働人口減も相まって、機械化・遠隔化・自動化ソリューションを社会実装させる需要は高まっていくでしょう。
「デジタルツイン」でシミュレーション、街全体をDX
__今後、御社のソリューション提供によって、社会にどのような変革をもたらしていきたいと考えていますか?我々は、インフラ設備の老朽化、労働人口の減少など、多様な社会課題を解決するためには、街全体をDXしていかなければならないと考えています。
たとえば、ロボットやドローンなどで定期的に設備の写真を撮るなど移動点検しておけば、経年劣化の経過がわかります。3ヶ月前までは漏水は見えなかったけれど2ヶ月前から変化が見え始め、1ヶ月前の時点では明らかに漏水しているのがわかる、というように、データの蓄積によって変化の進み具合がわかれば、それに合わせて買い替え資金を貯めたり資材を調達しておくなど、準備しておくことができるでしょう。
この発想を広げたものが、いわゆる「デジタルツイン」です。街全体のデータを取って双子のようにサイバー空間上に再現しておけば、老朽化対策だけでなく、さまざまな場面で分析・シミュレーションが可能になります。
たとえば、弊社で行った実験の一つに、ユニクロの某店舗におけるバーチャルシミュレーションがあります。この店舗は車椅子ユーザーのお客様が多く、店内のユニバーサルデザイン化に課題を抱えていました。
そこで、店内をドローンで撮影し、デジタルツインをリアルタイムで作成するという方法を試みました。店内を1度ドローンで撮影するだけで、コンピューター上にお店のコピーを即時つくることができ、実店舗の業務や人の手を煩わせる事なく車椅子ユーザー目線で店内レイアウトの変更をシミュレーションできます。
コンピューターに映像を取り込み、店舗の「双子」を作ります。これをもとにサイバー空間上でレイアウトやディスプレイ方法を分析すれば、最適な結果を現実空間に反映させることができるのです。
__ドローンはデジタルツインの作成にも役立つのですね。
このケースはまだ実験段階に過ぎませんが、ドローンを始め、ロボット技術などを導入してデジタルツインを作り、分析して現実世界へフィードバックすることは、人間の生活の質の向上にもつながるでしょう。
だからこそ弊社のアイデアと技術で街全体をDX化し、課題解決に貢献したいと考えております。
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