副業として起業はできる？会社にバレない？注意点も解説

副業と起業の基本的な定義

副業で起業を検討する前に、まずは「副業」と「起業」それぞれの基本的な定義を明確にしておきましょう。

概念を正しく理解すれば、自分の目標や状況に適した選択ができます。

副業とは何か

副業とは、本業とは別に行う追加の仕事や事業活動のことです。

法律による明確な定義はありませんが、一般的には会社員が本業の勤務時間外や休日を利用して行う収入獲得活動を指します。

厚生労働省の「副業・兼業の促進に関するガイドライン」では、副業・兼業の説明は以下の通りです。

「副業・兼業を行うということは、二つ以上の仕事をかけ持つことを想定しています。副業・兼業は、企業に雇用される形で行うもの（正社員、パート・アルバイトなど）、自ら起業して事業主として行うもの、コンサルタントとして請負や委任の形で行うものなど、さまざまな形態があります。」

出典：厚生労働省｜副業・兼業の促進に関するガイドライン

起業とは何か

起業とは、新たなビジネスを立ち上げ、経営に関わる活動全般を指します。

自分でゼロからビジネスを創造し、運営します。

起業の形態は以下の2種類です。

個人事業主の場合は開業届を提出すれば始められますが、法人設立の場合は定款作成、法人登記申請、資本金の準備など、より多くのステップが必要になります。

副業と起業の違い

副業と起業は重複する部分もありますが、以下のような違いがあります。

副業としての起業も可能なので、本業を続けながら自分の事業を立ち上げ、段階的に事業を拡大していく選択肢もあります。

2018年に政府が「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を策定した後、企業の副業に対する姿勢も変化したため、副業として起業する選択肢がより現実的になってきています。

副業としての起業は可能か

本業ではなく副業で起業が可能かどうか解説します。副業で起業した場合の企業側の姿勢や、メリット・デメリットも詳しく説明します。

厚生労働省のガイドラインによる見解

結論として、会社員を本業としている人でも、副業として営んでいる事業での起業は可能です。

厚生労働省が定める「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を参照すると分かりやすいでしょう。

厚生労働省は、副業・兼業の現状を「副業・兼業に関する裁判例では、労働者が労働時間以外の時間をどのように利用するかは、基本的には労働者の自由」と述べています。

また、副業・兼業の形態は「副業・兼業の形態も、正社員、パート・アルバイト、会社役員、起業による自営業主等さまざまである」と定義しています。

引用：厚生労働省｜副業･兼業の促進に関するガイドライン

副業としての起業が明確に認められていることが分かります。

企業の副業に対する姿勢の変化

2018年1月に副業・兼業に関する規定が追加され、2020年9月・2022年7月には「副業・兼業の促進に関するガイドライン」が改定されています。

国としては副業・起業を推進している状況です。

企業側の姿勢にも、厚生労働省は以下のような指針を示しています。

引用：厚生労働省｜副業･兼業の促進に関するガイドライン

多くの企業が副業解禁の流れにしたがって就業規則を見直しており、副業としての起業への理解が深まっているのが現状です。

副業起業のメリット・デメリット

副業として起業には、以下のようなメリット・デメリットがあります。

副業として起業するメリットは、本業の安定収入を維持しながら新しい事業にチャレンジできることです。

一方で、時間管理や健康管理などの課題もあるため、慎重な計画と実行が必要です。

本業の勤め先で副業が許可されているのであれば、うしろめたさを感じることなく堂々と副業・起業して問題はないでしょう。

同ガイドラインによって「企業としても副業を許可していることを公表するように」と求められている今、真っ当なビジネスなのであれば最初から会社に伝えてから副業に取り組んだ方が、お互いに気持ちよく始められるはずです。

会社に副業がバレる可能性と対策

副業として起業を検討している会社員の多くが、「会社に副業がバレてしまうのでは？」と不安を抱えています。

実際に副業がバレる可能性はありますが、適切な対策を講じることで、リスクを最小限に抑えることができます。

副業がバレる主な原因

副業が会社に発覚する主な原因は大きく分けて3つあります。

原因を理解し、事前に対策を講じることが重要です。

住民税による発覚

よくある発覚原因が住民税の額の変動です。

副業収入が増えると、翌年の住民税が増額となり、会社の経理担当者が給与額に対して住民税が高いことに気づく可能性があります。

住民税は前年の所得に基づいて計算されるため、副業収入があった年の翌年に住民税額が跳ね上がり発覚するケースが多くあります。

社会保険料の変動

副業先でも社会保険に加入する場合、保険料の変動により発覚する可能性があります。

複数の事業所で働く場合、社会保険料の計算が複雑になり、本業の会社に通知が届くかもしれません。

また、副業収入により年収が一定額を超えて、社会保険料の等級が変更となる場合は、発覚する恐れがあります。

本業への影響

副業に時間を費やすことで本業のパフォーマンスが低下し、上司や同僚に疑われるケースもあります。

また、副業での疲労が本業に影響を与え、遅刻や欠勤が増えて発覚する可能性もあります。

SNSでの発信や顧客との接触により、偶然会社関係者に発見されるケースも少なくありません。

バレないための対策方法

副業がバレるリスクを最小限に抑えるためには、適切な対策が重要です。

特に税務関連の手続きを正しく行うと効果的となります。

確定申告時の注意点

副業収入がある場合は確定申告が必要ですが、申告方法によって会社にバレるリスクを軽減できます。

副業の所得が20万円を超える場合は確定申告が必要となりますが、この際に「白色申告」か「青色申告」かを選択します。

青色申告を選択した場合は、事前に開業届と青色申告承認申請書の提出が必要です。

確定申告書の作成時に、副業収入を適切に申告し、必要経費を正確に計上すれば、税務調査などのリスクを避けられます。

住民税の徴収方法選択

確定申告時に重要なのが、住民税の徴収方法の選択です。

確定申告書の「住民税に関する事項」欄で、「自分で納付」を選択すれば、副業分の住民税を自分で支払えます。

ただし、「自分で納付」を選択しても、自治体の手続きミスにより会社に通知が行くケースもあるため、完全にバレない保証はありません。

会社に報告すべきかの判断基準

副業を秘密にするか、会社に報告するかは慎重に判断する必要があります。

以下の基準を参考に決定しましょう。

最近では副業を推奨する企業も増えており、隠すよりも正直に相談した方がよい結果を得られる場合も多いです。

会社との信頼関係を維持するためにも、可能な限り透明性を保ちましょう。

副業で起業する際の手続き方法

副業で起業する際の手続きは、個人事業主として起業する場合と法人として起業する場合で大きく異なります。

それぞれの手続きの流れと必要な書類を詳しく解説します。

個人事業主として起業する場合

個人事業主として起業する場合、手続きは比較的簡単で、開業届の提出を中心とした必要最小限の手続きで事業を開始できます。

開業届の提出方法

個人事業主として起業するには「個人事業の開業・廃業等届出書」（開業届）の提出が必要です。

事業の開始などの事実があった日から1ヵ月以内に、納税地を所轄する税務署長に提出する必要があります。

開業届の提出方法は以下の3つから選択できます。

青色申告承認申請書の提出

副業で起業する場合、青色申告承認申請書の提出もあわせて行うのがおすすめです。

青色申告を選択すると、最大65万円の青色申告特別控除を受けられるため、税務上の優遇措置を活用できます。

青色申告承認申請書は、開業した年の3月15日まで（1月16日以後に開業した場合は開業の日から2ヵ月以内）に提出する必要があります。

必要な書類と手続きの流れ

個人事業主として起業する際の必要書類と手続きの流れは以下の通りです。

法人として起業する場合

法人として起業する場合は、個人事業主よりも複雑な手続きと初期費用が必要になりますが、事業の信頼性や税務上の優遇措置など、多くのメリットも期待できます。

会社設立の基本的な流れ

法人設立の基本的な流れは以下の通りです。

定款の作成と認証

定款は会社の基本的なルールを定めた重要書類です。

株式会社の場合は公証人による認証が必要で、合同会社の場合は認証不要です。

定款に記載する主な内容は以下の通りです。

• 商号（会社名）

• 目的（事業内容）

• 本店の所在地

• 設立に際して出資される財産の価額

• 発起人の氏名・住所

法人登記申請

法人登記申請は会社設立日から2週間以内に本店所在地を管轄する法務局に提出する必要があります。

登記申請に必要な書類は以下の通りです。

• 登記申請書

• 登録免許税納付用台紙

• 定款

• 発起人決定書

• 設立時代表取締役選任決議書

• 設立時代表取締役就任承諾書

• 印鑑証明書

• 資本金の払込証明書

資本金と初期費用

法人設立には資本金以外にもさまざまな初期費用が必要になります。

主な費用は以下の通りです。

個人事業主と法人の選択基準

副業で起業する際に個人事業主と法人を選択するには、以下の要素の総合的な判断が重要です。

副業として起業する場合、まずは個人事業主からスタートして事業が軌道に乗ってから法人化を検討するのが一般的です。

事業の成長段階に応じて最適な形態を選択しましょう。

副業起業で注意すべき重要なポイント

副業として起業する際は、本業との両立を図りながら適切に事業運営を行う必要があります。

ここでは、副業起業を成功させるために押さえておくべき重要なポイントを詳しく解説します。

就業規則の確認

副業起業を始める前に、現在の勤務先の就業規則を確認しましょう。

厚生労働省が副業・兼業を推進している一方で、企業によっては独自の制限を設けている場合があります。

副業禁止規定の確認方法

就業規則の副業に関する条項を確認し、以下の点をチェックしてください。

就業規則に明確な記載がない場合は、人事担当者に直接確認しましょう。

副業が発覚した後のトラブルを避けるため、事前の確認と適切な手続きが不可欠です。

競業避止義務への注意

競業避止義務とは、在職中および退職後の一定期間、勤務先と競合する事業を行わない義務のことです。

副業起業で特に注意が必要な点は以下の通りです。

• 本業と同一業界での事業展開

• 本業の顧客や取引先との直接的な競合

• 本業で得た情報やノウハウの活用

• 本業の同僚や部下の引き抜き

これらの行為は、就業規則違反や法的問題に発展する可能性があるため、事業内容を慎重に検討する必要があります。

税務・確定申告の注意点

副業起業を行う場合、税務処理の正しい知識を持つのが重要です。

適切な申告を行わないと、追加徴税や罰則の対象となる可能性があります。

20万円ルールの詳細

会社員が副業を行う場合、副業所得が年間20万円を超える場合は確定申告が必要となります。

注意点として、20万円以下の場合でも住民税の申告は必要です。

また、所得は売上から必要経費を差し引いた金額だと理解しておきましょう。

青色申告と白色申告の比較

個人事業主として副業起業する場合、青色申告と白色申告のどちらを選択するかを決める必要があります。

青色申告は手続きが複雑ですが、税制上の優遇措置が多いため、副業収入が継続的に見込まれる場合は青色申告の選択を推奨します。

経費計上のポイント

副業起業の経費計上では、以下の点に注意が必要です。

• 家事按分　：自宅を事業所として使用する場合の光熱費や家賃の按分

• 通信費　　：事業用と私用の明確な区別

• 交通費　　：事業に関連する移動費用の記録

• 備品購入費：事業に必要な機器やソフトウェアの費用

経費として認められるためには、事業との関連性と証拠となる領収書の保管が重要です。

本業との時間管理

副業起業では、本業に支障をきたさないよう適切な時間管理を行うのが重要です。

労働時間の管理

副業と本業を合わせた総労働時間を考慮する必要があります。

本業の業績や職場での評価に悪影響を与えないよう、無理のない範囲で副業を行いましょう。

健康管理の重要性

副業起業により労働時間が増加すると、健康面での配慮が必要となります。

• 睡眠時間の確保

• ストレス管理

• 体調管理

• メンタルヘルス

健康を害してしまうと、本業にも副業にも支障をきたすため、自身の体調を第一に考えた事業運営を行うのが大切です。

副業起業を成功させるためのコツ

副業として起業する際は、限られた時間とリソースの中で最大限の効果を発揮するのが重要です。

本業を続けながら事業を成功させるためには、戦略的なアプローチが必要となります。

事業計画の立て方

副業起業を成功させるには、現実的で具体的な事業計画の立案が重要です。

本業がある中での起業は、フルタイムで事業に取り組める起業家とは条件が異なるため、副業の制約を前提とした計画が必要です。

事業計画を立てる際は、以下の要素を明確にしておきましょう。

また、短期・中期・長期の目標を段階的に設定し、本業への影響を最小限に抑えながら着実に成長していく計画を立てるのが重要です。

最初から大きな成果を求めず、まずは小さな成功を積み重ねていくと、持続可能な事業運営が可能になります。

リスク管理の方法

副業起業では、本業に悪影響を与えるリスクを最小限に抑えるのが優先となります。

事業が失敗しても、本業を失うことがないよう、適切なリスク管理が必要です。

主要なリスクと対策方法は以下の通りです。

財務リスクの管理

副業起業では、初期投資を最小限に抑え、本業の収入に頼らずに事業を運営できる体制の構築が重要です。

生活費と事業費を明確に分離し、事業の損失が家計に影響しないよう資金管理を徹底しましょう。

時間管理リスクの対策

副業に時間を取られすぎて本業のパフォーマンスが低下するリスクを避けるため、事前に副業に充てる時間を明確に設定し、その範囲内で事業を運営する必要があります。

法的リスクの回避

本業の就業規則違反や競業避止義務違反を避けるため、事業内容と本業の関係性を十分に検討し、必要に応じて法的アドバイスを求めるのが重要です。

本業とのバランス調整

副業起業の成功の鍵は、本業と副業の両方で高いパフォーマンスを維持するバランス感覚にあります。

どちらか一方に偏りすぎると、結果的に両方の成果が低下してしまう可能性があります。

効果的なバランス調整のためには、以下の点を意識しましょう。

時間配分の最適化

平日の夜間や休日など、本業に影響しない時間帯を明確に設定し、その時間内で集中して副業に取り組みましょう。

時間の区切りを明確にすると、両方の業務に対する集中力を維持できます。

エネルギー管理

体力と精神力には限界があるため、無理のないペースで継続できる範囲で事業を運営するのが大切です。

短期間で大きな成果を求めるのではなく、長期的な視点で着実に成長していく姿勢が重要です。

優先順位の明確化

本業と副業の両方で重要な業務が重なった場合の優先順位を事前に決めておくことで、迷いなく適切な判断を下せる体制を整えられます。

基本的には本業を優先し、副業は補完的な位置づけにしましょう。

副業起業は、リスクを最小限に抑えながら新しい事業に挑戦できる絶好の機会です。

適切な計画立案とリスク管理、そして本業とのバランス調整を心がければ、安定した本業収入を維持しながら新たな収入源を確立できます。

まとめ

副業としての起業は法的に可能であり、厚生労働省のガイドラインでも推奨されています。

ただし、会社に副業がバレる前に就業規則を確認し、可能であれば会社に報告しておきましょう。

副業で起業する場合の手続きを適切に行い、本業と副業を両立できる事業計画を立案するのが、副業起業を成功させるポイントなので、ぜひ挑戦してみてくださいね。