ここでは、eVTOLの基本的な概念、eVTOLサービスの特長やメリット、さらには最新のeVTOL関連企業をまとめて紹介します。
eVTOLサービスとは?
eVTOLとは「Electric Vertical Take-Off and Landing」の頭文字を取ったもので、カタカナでは「イーブイ・トール」と読みます。空飛ぶクルマとも評されるeVTOLは、近年急速に発展している航空輸送形態のひとつです。UAM(UrbanAir Mobilty)とも呼ばれ、新たな空の移動手段として世界の各地で開発が進められています。日本でも2019年ごろから官民連携で研究が行われており、2030年代に実用化することを目指しています。eVTOLは、直訳すると「電動垂直離着陸」を意味します。文字通り、電気を動力源とし、垂直に離着陸できる構造を持ちます。ヘリコプターや飛行機(固定翼機)の両方の特性を併せ持ち、都市部や限られたスペースで離発着ができる点はeVTOLの最大の特徴です。
都市部の交通渋滞の解消や、時間効率の向上に寄与し、地上の交通網を補完する形で将来的には主流のモビリティに成長していくかもしれません。また、ガソリンを必要としないため、直接的に二酸化炭素を排出しないのもeVTOLのメリットといえるでしょう。
eVTOLサービスの主な機能
eVTOLの機能的な特徴としては、「自動操縦」「垂直離着陸」「電動」の3つが挙げられます。eVTOLサービスの多くは高度な自動飛行能力を有しており、プログラムされたルートに沿って自動的に飛行することが可能です。これにより、パイロットの操作による人的ミスが減り、安全性が高まります。さらに、衝突回避システムや緊急時の安全着陸機能なども開発も進んでいます。
eVTOLが垂直離着陸できるのは、複数のローター(プロペラ)を備えているためです。ヘリコプターはひとつの大きなローターを回転させることで揚力を得ますが、eVTOLは数十に及ぶ小型のローターが回ることで地上から垂直に飛び立つことができます。ビルの屋上、民家の庭、駐車場など省スペースで離陸でき、長い滑走路などは必要ありません。
さらに、電気で動くため従来の航空機に比べて、騒音が少なく、排出ガスもゼロです。またエンジン系統がないことからメンテナンスコストも抑えられます。一方で、飛行距離については課題が残っており、ガスタービン技術とのハイブリッドなeVTOLも開発されています。
eVTOLサービスを利用するメリット
eVTOLサービスのメリットとしては、以下のようなものが考えられます。①出発地点から目的地までを直線的に移動できる
②環境負荷が低い
③高度な操縦技術が不要
④災害支援や物流手段など様々な用途で活用できる
①~③はすでに見てきた通りですが、現時点ではeVTOLに乗るためには「自動車免許+α」程度で免許が取得できるとされています。また、④の活用用途についても特筆すべき点です。災害が起きた際にも、eVTOLであればすぐに現場に急行でき、スペースが狭い場所にも着陸ができます。緊急医療のための医師や医療物資の運搬に使えるほか、普及すれば一般的な物流配送のシーンでも活躍するでしょう。
ちなみに、デメリットとしては、初期段階では運用コストが高いこと、安全性への懸念、航空法をはじめとした法整備が整っていないことなどが挙げられます。実用化に向けてまだまだ解決すべき課題は多いですが、グランドデザインを描きながらeVTOLの活用方法を考えていくことが大切です。
eVTOLサービスの選び方
eVTOLサービスは世界各地で開発が進んでいる段階であり、実用化まで至っているケースはほとんどありません。日本では2019年から試験飛行がスタートし、2023年に事業スタート、2030年代から本格的な実用化というロードマップが描かれています。SkyDriveやteTra aviationをはじめ、開発研究を行うプレイヤーも増えてきています。eVTOL関連の情報は日々更新されているため、サービスを利用したいという場合には最新情報を逐次チェックすることが大切です。
なお、世界を見渡すと以下のような企業がeVTOLの市場をけん引しています。
Joby Aviation(アメリカ):トヨタやANAと提携しており、量産化に向けた取り組みを進めている。
Volocopter(ドイツ):2024年に商用化を始める計画を立て、住友商事が出資を行っている。
Vertical Aerospace(イギリス):アメリカン航空をはじめ複数社と大規模契約を結んでおり、丸紅とは最大200機の契約をすでに締結済み。
EHang(中国):多くの納入実績がある先進企業で、スペイン警察に採用され2022年から試験運用がスタートしている。
主なeVTOLサービス
続いて、日本におけるeVTOLサービスを見ていきましょう。ここでは主要な国内サービスを3つ紹介します。株式会社SkyDrive
出典:株式会社SkyDrive株式会社SkyDriveはeVTOLを開発する企業で、2025年の大阪・関西万博におけるスマートモビリティ万博の事業者にも選定されています。SkyDriveのeVTOLは、バッテリー駆動で、最大3名まで搭乗可能。最大巡航速度は時速100km、航続距離は約15kmとなっています。
エアモビリティ株式会社
出典:エアモビリティ株式会社エアモビリティ株式会社は、eVTOL関連企業です。開発・販売だけでなく、インフラ整備や関連サービスの提供にも力を入れています。具体的には、リスク評価によるeVTOL保険の開発、離着陸場の運用、車検・パイロット養成・メンテナンスといった一連のプラットフォームの整備などに取り組んでいます。
日本航空株式会社
出典:日本航空株式会社JALの名で知られる日本航空株式会社も、eVTOL技術の開発と導入へ向けて取り組みを進めています。併せてドローン事業にも着手しており、新たな輸送・移動インフラの提供に力を入れています。
まとめ
eVTOLサービスは、電力を動力源とし、垂直離着陸ができることから限られたスペースでも運用可能です。また、自動操縦が可能な点も革新的であり、労働力不足が深刻化する日本において移動や物流の新たなソリューションになっていくことは間違いないでしょう。世界各地で開発競争が展開されており、日本もそれに負けじと実用化へ向けた研究が進められています。今後の技術進化と普及により、eVTOLサービスのさらなる進化が期待されます。