人が実際に現場に行って植生調査を実施することもありますが、高所や狭い場所など人の立ち入りが難しい場所や、人が立ち入ることで環境への影響が考えられる場所などではドローン飛行による植生調査が活躍します。
今回はドローンを使った植生調査とはなにか、また最新の植生調査サービスや料金、選び方などを解説します。
植生調査サービスとは?
ここで紹介する植生調査サービスとは、ドローンを使った植生調査のことです。そもそも植生調査とは、特定の場所に生息している植物や、植物の集団について、生育の状態や繁殖の程度などを調べることを言います。植生調査によってその地域の植物の状態や傾向がわかったり、気温や降水量など環境、気候の傾向が判明したりします。
植生調査は、調査をおこなう地域の特徴がもっともよく出ていると思われる場所や区画を選び、その中を標本とするのが通常です。
ドローンを使った植生調査サービスは、対象となる標本の区画を広げたい場合や、人が立ち入りづらい場所への植生調査が必要な場合に、ドローン飛行で実施します。
植生調査では生態の状況を確認し、記録するので、ドローンの飛行を行うことが環境保護へつながる側面もあります。
植生調査サービスでできること
ドローンを使った植生調査を行うことで、通常人が立ち入ることが難しかったり、植生調査を行いたい場所に行くまでに長時間が必要な場面でも、ドローンの飛行によって時間短縮して調査ができます。また、人が立ち入ろうとすることで危険が伴うような場所でも、ドローン飛行なら人に危害を加えることなく、またその土地の植生を壊すことなく安心安全に調査が可能です。
ほかにも、植生調査を実施したい場所が広範囲にわたる場合に、ドローンでの植生調査は有効になります。たとえば、ゴルフ場では芝生の環境は常に整えられている必要があります。人が実際に歩いて、ゴルフ場の状態を確認しようとすると、莫大な時間と労力が欠かせません。
作業の効率化を図り、芝生の育成状況のデータを蓄積することもできます。これまで植生調査で使われてきた衛星画像では、地上までの距離が遠すぎて正確に状況を判断することができませんでしたが、ドローンを使うことで画像での判断もクリアになり、また曇天時でも撮影や植生調査が実現します。
人員削減や時間短縮によって植生調査にかかる費用を抑えることにもつながります。
植生調査サービスの選び方
ドローンをつかった植生調査のサービスを選ぶときには、どんな場所の植生調査を実施したいか、期間や費用、目的に合っているかを事前に明確にしておくことが大切です。植生調査のときには、ドローンによる画像撮影が良いのか、あるいは動画撮影もあった方が良いのかによってどんなサービスを利用するべきか異なります。
ドローンの種類については、サービスを提供する会社が専門的な知識をもって説明をしてくれるはずですが、調査の場所や撮影の種類によって適したドローンは異なります。ドローンにも得手不得手があったり、特徴が異なっていたりしますので、実施したい調査内容に基づいて、最適なサービスを選ぶ必要があります。
植生調査サービスのメリット
ドローンを使うことで、人の立ち入りが難しかった場所まで植生調査ができるようになるのはメリットです。高所や人が通るには狭い場所にもドローンが対応してくれます。実際に人が現地を訪れて植生調査を実施することもありますが、長時間が必要になる分、人件費がかさんだり、結果が出るまでに時間がかかってしまうこともあります。ドローンであれば、飛行可能な距離まで実際に出向き、植生調査を行う区画についてはドローンの飛行で素早く、簡潔に調査が終了します。
さらに、実際に生息している植物を調査するので、人が足を踏み入れることで、そこにある状態や環境に影響する可能性がないとは言い切れません。ドローンであれば、空中を飛行しながら正確なデータを収集することができ、環境への影響も最小限に抑えることができます。
主な植生調査サービス
ここからは、植生調査を実施している会社やそのサービスについてお伝えします。広域植生調査(森山環境科学研究所)
出典:森山環境科学研究所森山環境科学研究所では、広域にわたる林野や農地の調査を実施しています。これらに適したドローンも備えているので、植生調査を行いたい場合は、森山環境科学研究所にすべておまかせすることも可能です。
さらに近赤外線カメラも使用します。これは、植物の活性度合いの調査に使うことができ、カメラを通して色で植物の活性率や活性度を判断することができます。
時期を変えて撮影を繰り返すことで、その差がわかります。植生の変化や季節による影響などの判断材料になります。
必要に応じて、ドローンで映像を撮影し現地の調査も可能です。近赤外線カメラではわからなかった実際の植生の様子を映像や写真を通じて知ることができるサービスも実施しています。
国産ドローンSOTEN(蒼天)を活用した ゴルフ場の芝の生育・維持管理のための植生調査(ACSL)
出典:株式会社ACSL株式会社ACSLは、産業用ドローンの製造販売のほかにドローンの開発や、ドローン飛行による土地の調査をしています。
2023年1月に小型空撮ドローンである「SOTEN(蒼天)」にマルチスペクトルカメラを取り付け、ゴルフ場の広域な場所で植生調査の実証実験を行いました。
これまで植物の生育状況や研究については、衛星画像を使って把握する手法が主流でしたが、ドローンの飛行が可能になったことでより詳細に判断することができ、広域に対応しただけでなく、より細かい範囲に絞って植生調査ができるようになりました。
SOTENでは、設定された自動飛行の経路に沿って撮影のための飛行ができますので、何度も同じ角度から撮影ができます。時間や季節、気温によってその比較がしやすくなったということです。
農地の植生解析事例(KMTドローンサービス)
出典:KMTドローンサービスKMTドローンサービスでは、農地の植生解析の実績があります。
実際に大分県の果樹園で撮影、調査を実施しました。果樹園では、フルーツの糖度の調整と予測が重要項目です。糖度をコントロールするためには、水分ストレスとの関係を知る必要があります。ドローン飛行を活用して、他のデータとの相関関係を調べました。
他にも、大分県臼杵市では、水稲ウンカ被害の調査のために数ヶ月に渡ってドローン飛行での撮影を重ねました。ウンカとは、稲の生育時期に増殖を繰り返す害虫のことです。ウンカに侵されると稲の収穫にも大きな影響が出てしまいます。そこでドローン飛行によって経過をたどることで、どのような影響を及ぼしたのか、どの程度影響があったのかを知ることができます。
それぞれ行われた事業ごとにどんな種類のドローンを使用したか、飛行アプリや解析ソフトの種類まで詳細に紹介されていますので、植生調査サービスの利用を検討している人は、まず公式サイトを確認してみるのが良いかもしれません。
まとめ
今回は、ドローンで植生調査をおこなうサービスについてお伝えしてきました。植生調査とは、特定の場所に生息している植物や、その植物の集団について、生育の状態や繁殖の程度などを調べる調査のことです。生息している植物を調べるため、人が立ち入ることで環境への影響が懸念されたり、調査を終えるまでに長時間を要する場合もありますが、ドローンを利用すれば、安心安全な飛行が可能である他にも、正確なデータの蓄積ができ、環境への配慮も最大限におこなうことができます。
ドローンを使った植生調査を検討している場合は、まずは、専門的にサービスを提供している会社に相談し、見積もりを実施してみましょう。