まだまだ働き盛りである一方で、今後のキャリアを改めて考え直したり、新しいフィールドに挑戦したいと思う方もいらっしゃるのではないでしょうか。
しかし50代という年齢が引っ掛かり、転職に対し二の足を踏んでしまう方も多いかと思います。
そこで今回は50歳転職のリアルな実情と、50代に焦点を当てた転職成功のコツを解説致します。
50代からの転職のリアル
「難しい」「やめたほうがいい」など、50代転職はネガティブな情報やコメントを耳にする機会のほうが多いかもしれません。実際の転職事情はどうなのでしょうか。まずは50代転職の特徴をお伝えします。
50代の転職者数・求人数は、ともに増加傾向にある
総務省統計局の『労働力調査(2021年平均 )』のデータでは、2020年の45歳~54歳の転職者は59万人と公表されており、6年間で14万人も増加していることが分かります。また有効求人倍率が上がり続ける反面、少子高齢化を受けて若年層の人材不足が加速していくことが予想されます。
それに伴い人材確保の範囲は、40代~50代にも広がりつつあります。
そのため50代向けの求人が占める割合は、20代・30代向けの求人と比較し少ないものの、50代向けの求人にだけに絞るとその数は増加傾向にあります。
参考:労働力調査(総務省統計局)
50代の転職は、他の年代と比較して正社員の採用率が下がる傾向にある
マイナビ転職『ミドルシニア採用企業レポート 2018』によると、50代の転職希望者が正規雇用で採用される割合は28.7%です。20代の57.8%や30代の74.4%と比較すると、圧倒的に数値が下がっています。転職を検討する場合は、20代・30代と比較して正社員雇用の割合が圧倒的に低い旨を理解しておかなければなりません。
参考:マイナビ転職『ミドルシニア採用企業レポート 2018』
転職活動に時間がかかる
50代の転職活動は、若年層と比べ求人数そのものが限られています。そのため条件に合う転職先が見つかるまでに、多くの時間を要してしまう可能性も考えられます。現職を退職してから転職活動を始めると、収入が途絶えてしまい精神的にも焦りが生じ、じっくり検討をする心の余裕がなくなってしまうことも。よほど性急な転職を検討しているのでなければ、現職を続け収入を得ながらじっくり転職活動を進めていきましょう。
予め転職活動が長期化する覚悟を持った上で、取り組むことが肝要です。
転職により年収が下がってしまう可能性が高い
ようやく転職先が見つかった場合でも、転職前よりも年収が下がったという声は年齢が上がるにつれて顕著になります。厚生労働省『2019年(令和元年)雇用動向調査結果の概要 転職入職者の状況』によると、前職よりも賃金が増加したと回答した方は50代前半で34.8%、一方減少したと回答した人は37.4%にものぼります。
また50代後半では、前職よりも賃金が増加したと回答した方は28.6%、減少したと回答した人は43.7%でした。
60代以降のデータからも、年齢が上がるにつれて転職後の収入増は難しくなるようです。
家族があり教育費や住宅ローンなどお金のかかることの多い50代転職希望者にとっては、頭の痛い問題です。
転職活動を始める前に、収入面の対策も検討する必要があるでしょう。
参考:厚生労働省『2019年(令和元年)雇用動向調査結果の概要 転職入職者の状況』
50代からの転職が厳しい理由
50代の転職実情をご紹介してきましたが、実際に50代の転職活動を阻む壁にはどのようなものがあるのでしょうか。次に50代の転職が厳しいと言われる具体的な理由をお伝えします。
定年が近いため
50代の転職が難しい理由の1つに、企業の定年に近い世代であることが挙げられます。当然20代・30代と比較して近い未来定年退職が見えている世代であり、教育コストやパフォーマンスを考えると採用に後ろ向きになってしまうケースも考えられます。
健康面の心配がある
50代はまだまだ働き盛りと思う反面、体力が付いていかない・新しい知識や技術の吸収に不安を感じる方もいるかもしれません。"できるだけ長く働いてほしい" と思っている企業側の心理からも、健康面・体力面で不安のある50代は採用に踏み切れない事実があります。
人件費がかさむため
まだまだ年功序列の給与体系が一般的な日本では、若年層の社員と比べて50代の転職者を雇用すると人件費が高くケースもあります。若い人材の給与搾取や組織の士気低下に繋がらないかと、その給与に見合う人物なのかを見極めるため、企業側も採用に慎重になる傾向があります。
これまでの経験が求められる
50代の転職希望者に企業側が求めることは、『これまでの豊富な経験を活かしてほしい』という点です。マイナビ転職『ミドルシニア採用企業レポート 2018』のデータからも、その事実が伺えます。企業が期待する基準に満たなければ、採用対象として見てもらうことは難しいでしょう。
豊富な経験が求められていることを理解した上で、自分の強みを洗い出し強みを活かせる転職活動を意識しましょう。
参考:マイナビ転職『ミドルシニア採用企業レポート 2018』
扱いにくい印象がある
50代転職者は長い人生経験の中で実績や経験を積み重ねています。20代・30代にはないスキルや経験を持つ一方で、新しい転職先の上司や先輩社員の指示に従えるのかという心配があります。上司や先輩が年下であるケースも珍しくありません。
新しい会社や組織に馴染めるのか、スキル・経験共に人間性も見極められていることも念頭に入れておきましょう。
50代転職を成功に導く!転職のコツ
50代の転職には若年層にはない、年齢独自のハードルがあります。しかし一方で、50代でも転職の成功を叶えている方がいるのも事実です。
50代転職の成功者になるためには、どのように転職活動を進めるべきなのでしょうか。
本項目では、成功の道を切り拓く転職のコツをお伝えします。
強み・弱みの徹底分析
どの年代にも共通することですが、自己分析の精度が転職成否を大きく左右します。先述の通り特に50代採用において、企業は長年培われた経験やスキルを期待をします。
そのため選考時にも、どんな実績を積み重ねてきたのかを深堀されるでしょう。
自分の強み・弱みを徹底的に振り返ることで、自分の経歴と親和性の高い強みを活かせる企業が見つかるでしょう。また自身の強み・弱みを理解することで、転職の方向性を決める一助にもなります。
年収・キャリアダウンも視野に入れる
年収やポジションなどの雇用条件は、転職前より下がることも大いにあり得ます。理想の年収・キャリアポジションと自身の市場価値に大きな乖離が生じていないか、転職活動を始める前に自分の転職市場における価値を確認してみましょう。
一定の価値があるのであれば、年収アップ・キャリアアップを目標にした転職を目指すことも不可能ではありません。
市場価値は日々刻々と変化します。市場が飽和状態にあり、自身の市場価値が低下するケースもあります。
転職を検討する際は年収・キャリアダウンもあり得ることを理解した上で、転職活動に臨みましょう。
例え転職に伴い年収・キャリアダウンしたとしても、新たな職場でこれまでの人生経験を活かし活躍することで年収アップやキャリアアップに繋がる可能性もあります。
こだわりを強く持ち過ぎない
50代の転職では、条件にこだわりすぎないよう注意が必要です。20代・30代とは違い、50代はそもそもの求人数が限られています。その中で条件や待遇などにこだわりすぎてしまうと、さらに選択肢を狭めてしまうことに。
転職にあたり目標や軸を持つことは大切ですが、出来るだけ視野を広げることも大切です。
大企業や老舗企業に限らず、ベンチャー企業や新興企業の求人をチェックしてみるのも良いでしょう。また正社員以外の雇用形態など、幅広く検討してみることで可能性やチャンスも広がります。
転職エージェントを有効活用する
50代向けの転職情報は、市場に数多く出回るわけではありません。そのため自分の希望に沿う求人を探すだけでも、多くの労力や時間が割かれてしまいます。そんな時に頼りになるのが転職エージェントです。転職エージェントの中にはミドル・シニア層の転職に特化したサービスもあります。
求人情報の提供はもちろん、自己分析の手引き・転職アドバイス・応募書類の添削・ 企業との橋渡しまで様々なサポートを受けられるでしょう。
参考:50代におすすめの転職サイト・エージェント
50代からの転職まとめ
本記事では50代の転職について詳しく解説しました。20代・30代と比較してそもそもの求人数が少ない、企業が採用に消極的な場合があるなど、不利な点もあります。しかし転職市場が年々拡大しているのも事実です。
50代のキャリアやスキルを即戦力として求めている企業や、これまで培った人脈を存分に生かしてほしいと思っている企業もたくさんあります。
50代ならではの転職事情・コツを理解した上で戦略的に転職活動を推進することで、きっと転職の成功を掴めるでしょう。