2022年に有人地帯における目視外飛行(レベル4)が解禁され、ドローンの運航についてより高い安全性・正確性が求められるようになりました。運航管理システムは、周辺空域の情報把握や重大事故の防止において、欠かすことのできないシステムです。
本記事では、ドローンの運航管理システムサービスの概要や利用方法・選び方をまとめました。おすすめの運航管理システムサービスについてもご紹介しているので、詳細を確認してください。
運航管理システムサービスとは?
ドローン運航管理システムとは、ドローンの飛行情報を一元管理するシステムです。ドローンが飛行をおこなうためには、適切なフライト計画に基づく運航、飛行や撮影ログの記録、機体や周辺空域・地形・気象のリアルタイム情報の共有が欠かせません。ドローン運航管理システムはこれらの情報を全てまとめて管理し、ドローンの円滑かつ安全な運航を支援します。
2022年12月5日に航空法が改正され、ドローンの有人地帯での目視外飛行(レベル4)が可能となりました。人の手・目に依存しない適切な運航管理体制を構築することは、急務となっています。
運航管理システムサービスでできること
選択するシステムによる違いはありますが、主に以下についてシステムによる支援を受けることが可能です。- フライトプランの作成
- 遠隔飛行制御
- 飛行ログの保存
- 画像・音声データの保存
- 3次元地図情報の取得
- 気象情報の取得
- 機体情報の管理
- 操縦者情報の管理
- インシデント報告
- 位置情報管理 など
ドローン運用者が適切な運航管理を実施することにより、「安心・安全なドローンの運用」「限られた空域・空間・電波の有効活用」を実現できます。
参考:レベル4飛行の制度概要及び施行状況について|国土交通省 無人航空機安全課
運航管理システムサービスの利用方法
運航管理システムサービスの導入方法は、「既存の外部サービスを利用する」「自社向けに開発してもらう」といった方法があります。いずれのケースも、まずは条件に見合うベンダーをリストアップし、ヒアリング・見積もりを経て最適な1社を決める流れです。外部サービスを利用するメリットは、イニシャルコストが少ない・導入までの期間が短いなどが挙げられます。導入後もシステムの運用保守を一任できるため、アップデートやインシデントへの対応がスムーズな点も魅力です。
ただし「ランニングコストが高額になる」「自社のニーズにマッチするサービスの見極めが必須」などには注意しなければなりません。
一方運航管理システムサービスを自社向けに開発してもらう場合、「完全自社仕様のシステムを作れる」「セキュリティレベルを高く設定できる」などがメリットです。一方でイニシャルコストが高額になる・導入までに時間がかかるといった点は、デメリットといえるでしょう。
ドローンの運用方法・事業形態等を勘案し、自社に必要なサービスを選択してください。
運航管理システムサービスの選び方
ドローン運航管理システムを選択するときは、以下のポイントを踏まえましょう。- 事業内容・飛行目的
- ドローン本体の性能
- 飛行空域
- ランニングコスト・イニシャルコスト
運航管理システムに必要な機能は、飛行目的によって異なります。
例えばイベント演出やドローンショーなどが目的の場合、複数のドローンを同時制御できる機能が必要です。一方測量や点検が目的なら、位置情報・地形情報等の提供を適切に受けられるかを重視してください。
またドローンに長距離飛行機能や自動航行機能が付属している場合は、「航続距離が長い」「自動航行に対応できる」運航管理システムが必須です。このほかDID地区(人口密集地区)を飛行する場合は衝突防止機能、夜間の飛行が想定される場合は夜間飛行機能を搭載した運航管理システムを選択しましょう。
なお費用については、運航管理システムの機能や利用するサービスによって異なります。「飛行計画作成機能と離発着調整機能のみ」といったシンプルな運航管理システムのみなら数十万円、あらゆる機能を搭載した運航管理システムなら数百万円から1,000万円以上……といった費用感です。
ランニングコストは、定期的な保守・運用・メンテナンスをベンダーに任せるなら、月額数万円から数十万円を見ておく必要があるでしょう。
ドローンの運用スタイルと予算を付き合わせ、バランスのよい運航管理システムサービスを選択してください。
おすすめの運航管理システムサービス
ドローンのレベル4飛行が可能となり、ドローンを活用できるシーンが増えてきました。さまざまな業種・業務に特化した運航管理システムサービスの開発も進んでおり、システムの選択肢は増えているのが現状です。ここからは、ドローンを活用する事業者におすすめの運航管理システムサービスを12個ご紹介します。
圃場管理サービスAgri Field Manager(オプティム)
出典:オプティムスマート農業を実現する、ドローンの圃場管理システムです。
ドローンフライトプラン管理・画像データ管理・気象アラートといった標準的な機能のほか、雑草や病害虫の検知やピンポイントの農薬散布が可能です。気象、⼟壌などの環境データを管理・分析する機能も搭載しており、圃場管理の最適化を実現できます。
セキュアフライトマネジメントクラウド(docomo sky)
国内ドローンメーカー「株式会社ACSL」によって開発された「SOTEN(蒼天)」向けの、機体一体型のクラウドサービスです。日本の通信最大手「docomo」グループのモバイルネットワークの活用により、GPSが取得しづらい環境でも安心・安全な飛行を実現します。
サービスを導入すると、フライト管理機能・機材管理機能・メンバー管理機能・組織情報管理機能の利用が可能です。
また撮影データやフライトログを含む飛行情報は、クラウドサービス上でセキュアに管理されます。機体の紛失やサイバーアタックが発生しても、情報漏えい等のリスクはありません。
UTM(テラドローン株式会社)
産業ドローンの開発・ソリューションを提供する、「テラドローン株式会社」の運航管理システムサービスです。特に目視外が必要となる場所での飛行に強い特徴があり、物流・災害救援・点検・土木測量・農業等、あらゆる現場で使用できます。
運航管理システムの構成要素は、飛行計画の管理・飛行エリアの管理・衝突検知の3つです。飛行経路を目的に合わせて設定できる・複数機体の同時制御にも対応できるなどのメリットがあり、ドローンの運航管理を効率化できます。
サービスを導入すると東京海上日動の「対人・対物賠償責任保険」が自動付帯するため、もしものときも安心です。
"DOP SUITE(ドップスイート)シリーズ ~機体管理・サポート基盤パッケージ~(ドローン・ジャパン)
ドローン・ジャパンのDOP SUITEシリーズは、ドローンの安定運用をサポートするクラウドアプリケーションです。機体運用リスクの低減や機体メーカーとの連携を図ることで、機体管理の質を大きく向上させます。
DOPHUB(ドップハブ)対応周辺機器と組み合わせることにより、機体本体とあわせて運用管理することも可能なサービスです。機体メーカーよりパッケージ化(機体本体+機体オプション+サポート+DOPUSUITE+機体保険)して提供されています。
SkyLift Plus(株式会社スカイドライブ)
愛知県豊田市に本社を置く株式会社スカイドライブは、2022年に物流ドローンの新サービスである「SkyLift Plus」をスタート。SkyLift Plusとは、1回の飛行で30kgの重量物を運搬できる物流ドローンのSkyLiftを活用し、運用に関わる各種業務をワンストップで行うサービスです。
現地調査・飛行ルート設計などの企画、飛行許可申請書類の作成・交渉代行、経験豊富なパイロットの派遣などの支援を受けられます。サービスを通じてドローン運航ノウハウ確立の支援も受けられるため、将来的にはご自身で物流ドローンの運行を管理することも可能です。
VTOL型ドローンで離着陸の場所を選ばずにフライト(アジルジオデザイン株式会社)
アジルジオデザイン株式会社は、ソフトウェア開発を行っている企業です。お客様のニーズをシステム化するのはもちろん、ハードウェアの相談や提案にも対応しています。
国内では希少なVTOL型ドローンを用いることで、離着陸の場所を選ばない効率的なフライトを実現。自動操縦垂直離着力式の固定翼型UAVであるDeltaQuad Proを使い、離発着場所が広く確保できない場所でのフライトも可能にします。固定翼型UAVと回転欲型UAVの良いとこどりをした画期的なUAVシステムが、DeltaQuad Proです。
iDaaS「落ちないドローンサービス」(リアルタイム予知保全)(DPMSs合同会社)
DPMSs合同会社の提供するiDaaSは、AI技術によるドローンの安全運航支援サービスです。機体搭載型のリアルタイム予知保全システムで、天候や突風などの局所異変を即座に察知し、オートでドローンの姿勢を安定させます。人・車の検知、緊急着陸地点の探索、着陸経路の生成、自動離発着、故障検知診断など、さまざまな作業をAIにより自動で行うことが可能です。
ネットワークRTK基地局の設置運用(慶應義塾大学ドローン社会共創コンソーシアム)
慶應義塾大学SFC研究所ドローン社会共創コンソーシアムでは、物流ドローンを誘導する上で重要なGPS精度向上のために、ネットワークRTK基地局の設置運用を行っています。RTK基地局は福島県田村市、神奈川県小田原市などに設置され、物流ドローンを使った実験も実施済みです。
同団体の活動目的は、「ドローン前提社会の実現を目的とした教育・研究・産学官連携活動の推進」。教育活動や研究活動、産学官連携活動を主に行っています。
4GLTEパッケージ ゆうあいマーケット(KDDIスマートドローン株式会社)
KDDIスマートドローン株式会社の提供する4GLTEパッケージは、モバイル通信・運行管理システム・クラウドを基本パッケージで提供するプランです。使いたいオプションを組み合わせることで、ベストな形で利用できます。巡視・点検・測量・配送・無人遠隔巡視など、さまざまな用途に活用可能です。
運行管理システムは、長野県伊那市の「ゆうあいマーケット」で実際に運用されています。自治体の運用するドローン配送事業としては日本初の試み。中山間地域への荷物配送にかかる費用や時間などの地域課題を解決する手段として活躍しています。
AI管制プラットフォーム(株式会社トラジェクトリー)
株式会社トラジェクトリーのAI管制プラットフォームの特徴は、安全・簡単・管制です。システムを利用すれば、誰でも安全かつ簡単に複数の無人航空機を同時展開できるようになります。具体的には、衝突回避、安全ルートの自動生成、VR画面操作、ルート共有、リモートコントロールなどが可能です。
同社では、長時間飛行できるマルチコプター型ドローンや4K対応のコンパクトドローンなどの機体販売も行っています。
リモートIDソリューション(イームズロボティクス株式会社)
イームズロボティクス株式会社のリモートIDソリューションは、ドローンの飛行情報を確認できるシステムです。見えない電波であるリモートIDを可視化することにより、機体から発信されるID情報を記録て情報を管理し、安全確保をサポートします。
リモートIDの送受信機には受信機能と測位機能が備わっているため、ドローンが互いに認識しあい、衝突回避しながらフライトすることが可能です。920MHz LoRaを使用した通信であれば、およそ10kmまでの機体間通信ができます。
同社は、佐川急便と協力し、自動運航AIを搭載したドローンを用いて荷物を配送する実証実験も行っています。
参考:EAMS ROBOTICS Corporate Profile
ドローンポート情報管理システム|VIS(ブルーイノベーション株式会社)
ブルーイノベーション株式会社が提供しているドローンポート情報管理システムは、物流ドローンポート向け国際標準規格に準拠した世界初のシステムです。独自のデバイス総合プラットフォームをベースに、ドローンポートやドローン、周辺機器メーカーに機種を問わず接続でき、遠隔で管理・運用を実現できます。
2017年より国土交通省とともにドローンポートシステムの研究開発および利活用を推進してきた、同社だからこそ提供できるシステムです。
まとめ
レベル4飛行が可能となった今、運航管理の必要性はより高まっています。事業内容や機体性能にマッチした運航管理システムサービスを導入し、ドローンの安心・安全な運用に努めましょう。なお2023年4月、日本発のドローンの運航管理システムに関する国際規格(ISO 23629-5)が発行されました。運航管理システムサービスを選択するときは、規格に則っているかもチェックしてみてください。
参考:日本発のドローンの運航管理システムに関する国際規格が発行されました