この記事では、モバイル通信にドローンを接続するメリットやサービスの選び方、そして期待される応用分野についてご紹介します。最新のモバイル通信サービスを用いたドローン事例も紹介するので、「ドローンを積極的に活用していきたい」という事業者の方はぜひ参考にしてください。
モバイル通信サービスとは?
ドローンにおけるモバイル通信サービスとは、無線通信技術を通じてドローンを制御・操縦するサービスのことを指します。そもそもモバイル通信とは、携帯電話やスマートフォンなどのデバイスで用いられている無線通信システムで、3G、4G、5Gなどさまざまな通信規格があります。ドローンのモバイル通信サービスではLTE(Long Term Evolution)がよく利用され、近年では高速・低遅延の5G通信を利用したドローンの実証実験も行われ始めています。通常、ドローンはWi-Fiもしくは送信機(プロポ)と接続することで飛行します。しかし、その場合は電波が届く範囲に限られてしまい、最大でも数㎞先までしか飛ばせません。
その点、モバイル通信に接続できるドローンは、スマホのようにLTEの電波が届く範囲内であれば操縦が可能です。ドローンとの通信が途切れてしまうリスクが少なく、長距離飛行や障害物の多い環境に向いています。
モバイル通信サービスでできること
ドローンモバイル通信サービスはまだ誕生して間もない技術ですが、多くの可能性を秘めています。将来的にさまざまな分野で応用されていき、具体的に以下のようなシーンでの活用が想定されます。広範囲の点検や測量:通信が安定しているため、鉄道やダム、電波塔など大規模施設の点検や測量などに活用できます。
遠隔監視と管理:農業や建設現場、インフラ設備などの監視・管理に適しており、たとえ遠隔であってもリアルタイムで現場の状況を把握できます。
物資の輸送:飛行範囲が送信機からの距離に依存しないため、医療や物流など二地点間の物資輸送に活用できます。
上記のようにモバイル通信を利用したドローンは、都市部や郊外など場所に限らず多様な用途での活用が期待されています。
モバイル通信サービスの導入効果
ここではもう少し具体的に、ドローンのモバイル通信サービスの実例をいくつか見ていきましょう。最初にご紹介するのがKDDIの「水空合体ドローンによる水中インフラ点検事例」です。2021年11月世界で初めて、空中ドローンと水中ドローンが合体した水陸両用ドローンによる水中点検が行われました。通常、洋上風力発電や水産養殖施設の点検では、ダイバーが海にもぐって目視で水中の状況を確認します。他方、モバイル通信対応の水陸両用ドローンでは、沖まで空中ドローンで飛んでいき、目標地点に着水すると水中ドローンが離脱して水中の探索を行います。この方法であれば人が船を出す必要もなく、飛行~撮影~帰還までをすべて遠隔操作で行えます。
続いて、海外の事例も見てみましょう。アメリカの通信大手Verizon社や配送会社UPS社などの企業はここ数年、ドローンによる配送の実証実験に取り組んでいます。特に5G帯域でのドローン運航に積極的です。5Gは接続可能範囲が広いだけでなく、同時接続が可能なデバイス台数も4Gをはるかに上回ります。物流分野における多くの課題を解決する手立てになるとして、新たな配送システムの研究が進んでいます。
モバイル通信サービスの選び方
ドローンのモバイル通信サービスを提供している会社は、まだまだ多くはありません。主要プレイヤーのほとんどは、NTTやKDDIなどの通信会社が担っている状況です。それらの企業は、LTE通信のみを提供する「通信サービス」と、通信・管理システム・クラウドなどをセットにした「パッケージサービス」を提供しています。
前者は、スマホと同じように利用データ上限が定められた定額契約を行い、SIMカードをモバイル通信対応のドローンに指して利用します。後者の場合はより包括的なサービスであり、上空モバイル通信利用申請の管理や機体の販売、運航管理などの付帯サービスが含まれます。
おすすめのモバイル通信サービス
最後に、ドローンのモバイル通信サービスをご紹介します。これらのサービスは、それぞれ異なる特徴をもつため、自社の課題やニーズに照らし合わせて検討しましょう。LTE上空利用プラン(株式会社NTTドコモ)
出典:株式会社NTTドコモLTE上空利用プランは、NTTドコモが提供するドローン専用のモバイル通信プランです。LTE上空利用プランのSIMカードをLTE対応ドローンに挿入することでWi-Fiエリア外でも操縦が行えます。料金は月額約5万円で、月間の利用可能データ上限は120GB。ドコモの4Gエリア内であれば、全国どこでもモバイル通信でドローンを飛ばすことができます。
docomo skyセルラードローンパートナープログラム(株式会社NTTドコモ)
出典:株式会社NTTドコモdocomo skyセルラードローンパートナープログラムは、産業別の用途に特化したモバイル通信ドローンの総合パッケージサービスです。二地点間で医薬品の個別配送を行う「医薬品配送パッケージ」、立入困難なエリアの状況を把握するための「広域災害対策パッケージ」などがあり、ドローン本体、LTE上空利用プラン、遠隔伝送システムといったものがサービスに含まれます。
4G LTEパッケージ(KDDIスマートドローン株式会社)
出典:KDDIスマートドローン株式会社4G LTEパッケージは、auやUQ mobileなどでおなじみのKDDIのグループ企業「KDDIスマートドローン株式会社」が提供するドローン通信サービスです。モバイル通信の使い放題、上空モバイル通信の許可申請、通信エリアマップ、運行管理システムが基本パッケージになっています。
まとめ
モバイル通信サービスを活用したドローンの技術は、使い方次第で多大な可能性を秘めています。広範囲の点検・測量、遠隔監視、物資輸送などさまざまな用途に用いることができ、労働力不足が深刻化する日本では今後より一層欠かせないものとなっていくでしょう。現時点では実用化例や成功事例は決して多くはありませんが、だからこそ今取り組む意義は大きいのかもしれません。将来的な展望を見据え、この先進的な技術を積極的に取り入れることで自社ビジネスの成長や効率化に注力してみてはいかがでしょうか。