(取材)Go Visions株式会社の最高技術責任者に聞く|ベンチャーのCTOってどんな仕事?フリーランスの生存戦略とは?

(取材)Go Visions株式会社の最高技術責任者に聞く|ベンチャーのCTOってどんな仕事?フリーランスの生存戦略とは?

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コロナ禍によって、これまでの働き方を見直し、プログラミングスクールに通いエンジニアとして転職したいと考える人が増えています。なかには、いずれ独立開業を視野に入れている人も少なくありません。

そうなると、気になってくるのが……

  • そもそも、未経験からエンジニア転職は可能?
  • 起業を前提とした就職って、やっぱり無謀?
  • フリーランスになるために必要な資質とは?

といった点ではないでしょうか。

今回は株式会社ウイングル(現、LITALICO)からフリーランスエンジニアを経て、現在はGo Visions株式会社CTOとして働かれている西晃生さんに、普段のお仕事や起業を見据えたキャリアプランについて詳しく伺いました。

Go Visions株式会社 CTO 西晃生さん

ベンチャー企業のCTOはいわば“何でも屋” 

ーまず、西さんは現在、どのようなお仕事をされているのか教えてください。

私は現在、2019年6月に設立されたGo Visions株式会社で最高技術責任者(以下、CTO)として働いております。CTOの業務内容は企業によって異なりますが、簡単に説明すると「企業における技術領域のスペシャリスト」。企業内の技術面における責任を任される立場で、弊社はスモールベンチャーという特性から、基本的にすべての煩雑な作業を担当するいわば“何でも屋”の役割を担っています。

ー具体的にどのような事業を展開しているのでしょうか?

現在は、小・中学生向けオンラインの学び場「SOZOW(ソーゾウ)」、エデュテイメント・イベント「Go SOZO」というオンライン事業を展開しておりまして。私は配信スタジオの設備といったハード面から、メールの配信システムやホームページ、今後リリース予定の適正診断ツールの開発を手がけています。

事業内容的に社員のバックグラウンドが教育面寄りという理由から、コードを書ける人材がいないため、自動的に技術面は私がすべて引き受けるという流れになりました。

ーまさにスタートアップのCTOならではの役割ですね。この仕事のやりがいはどんなところにありますか。

そうですね。従業員やフリーランスとして働いているエンジニアは「いかに自分の個人スキルを培うか」という考えになりますが、私の現在の立場ですと「一企業として社会にどうインパクトを出していくか」「その点において、どうやってテクノロジーでサポートできるのか」をより考えるようになります。そこがこの仕事の苦労する部分であり、やりがいでもあります。

起業を見据えたエンジニア就職。新規事業の開発を経験して予定通り3年で独立

ーベンチャー企業のCTOになるには、どのようなキャリアを進む必要があるのか興味があります。西さんのこれまでのキャリアについて教えてください。

私は幼い頃から、ロボット系のアニメが好きでした。また、たまたま実家の近くに高等専門学校(高専)があり、一般的な家庭では3年制の高校に進学するところを、5年制の高専に進んだんです。こうした道を選べたのは、祖父と姉が卒業生だったことから、両親の理解があったのが大きいですね。

高専を卒業後は、東京大学の大学院に進学しました。「せっかく地方からこの環境に来て、自分は何を持ち帰るべきか」と考えたときに、ちょうど東大主催のアントレプレナー(起業家)道場が開始しており、これはうってつけだなと入らせていただきました。そこでは​チームを組んでビジネスを考えたあと実践する​という流れで、私は途中でインターンシップも始めたため最後まで参加できなかったのですが……。周囲が「自分で何かを作ったり発信したりすることが当たり前の人たち」だったのは非常に良い環境で、今の起業にも繋がっています。

ーアントレプレナーシップを学んだ西さんは、卒業後の進路をどう考えていたのでしょうか。

もちろん、就職をせずに起業という選択肢もありました。ただ、起業するのであれば社会の右も左もわからない状態より、一度は会社に所属して社会を学んでから起業の準備をしようと就職活動をしました。

結論から先に申し上げると、大学院卒業後は株式会社ウイングル(現、株式会社LITALICO)に就職して、3年勤務してから独立。フリーランスのエンジニアとして数年働き、2019年6月にGo Visons株式会社を代表の小助川と設立しました。

ー起業を見据えた就職活動とは。

就職する会社は人生の重要な通過点にしたいなと思っていたので、今考えると非常に失礼な話かもしれませんが、採用面接で「3年で辞めます」といつも言っていました。もちろん、「なぜ、3年なのか」と聞かれるため、「3年後の起業を見据えて、1年目で新規事業に携われるようスキルを磨き、2年目で運用型または新規事業の構築、3年目で運用からその後の黒字化や事業の引き継ぎが経験したいと考えています」と説明しました。

自分の努力次第ではあるのですが、一番重要なことは、スキルが伴った瞬間に自分の裁量権がある位置にいけるかどうかだと考えていました。

何社か内定をいただいた中で、就労移行支援事業や教育事業を展開している株式会社ウイングル(現、株式会社LITALICO)にエンジニアとして入社を決めました。当時、会社は人に対するデータは多いものの、それをうまく使って社会にインパクトを出せてない状態であると知りました。そこで得た知識や方法論は、おそらくその後に福祉や教育の世界に行く行かないにしても、さまざまな事業に展開できるのでは、と考えたのです。

ーエンジニアとして入社後はどのようなキャリアを歩まれたのでしょうか。

1年目は、Webメディアの企画の立ち上げから開発・運営まで携わり、2年目に別のWebメディアのPMとして運営に従事。その後、ITものづくり教育のLITALICOワンダー事業部に異動して、秋葉原教室の教室長に就任し拠点立ち上げと運営に携わりました。ちなみに、Go Visonsの代表の小助川とはLITALICO時代に出会って一緒に働きました。

そして、入社から3年後にフリーランスとして独立。動画型学習コンテンツ配信プラットフォームのUdemyでコンテンツ配信でVR、AR、ブロックチェーンの内容を販売したり、企業の新卒対象のエンジニア講師を勤めたり、経済産業省などと合同でシステム開発に従事したりしました。また2019年にはPythonの技術書籍をナツメ社より出版しました。

ー当初の予定通り、就職して3年後に独立され、フリーランスのエンジニアとしてもさまざまなプロジェクトに参加されているんですね。

はい。フリーランスになった当初、フリーランスのエンジニアをまとめていろんな企業のニーズに対して対処していこうという任意団体を立ち上げた人たちがおり、そこに顔を出していくうちに私自身も運営側に回らせていただくようになりました。経済産業省などと合同でシステム開発をしたプロジェクトはその中で携わったものです。自分自身の名前によって得たというわけではありませんが、そういった横のつながりがあってこその仕事です。

ーフリーランスエンジニアとしてある程度成功されていた西さんですが、そこから起業したきっかけを教えてください。

私の場合は、前提として組織を作ることを目指してフリーランスになりました。そして、そろそろ起業したいなと、自分のビジネスプランをお世話になった方々に壁打ちのような形で話をしていた時期がありました。

そのうちの1人に、現Go Visions代表の小助川がおりまして。ちょうど小助川もLITALICOを辞めてHR事業の会社を経営しており、もう1つ起業しようと思っていたタイミングだったそうです。そこで私がビジネスプランを持っていったところ、ほぼ意見が一致。「これは一緒にやった方がいいんじゃないか」という流れでGo VIsions株式会社を設立しました。

成功体験や常識を捨てて柔軟にスキルを学びに行く

ー起業を見据えた就職を考えているエンジニアは少なくないですが、採用する企業側からすると長く勤めて欲しいというのが本音だと思います。また、独立したものの仕事がうまくいかないという方も多いのではないでしょうか。西さん流のフリーランスエンジニアの生存戦略について教えてください。

これはエンジニアに限った話ではないのかもしれませんが……。新しい環境に行くのであれば、「これまでの成功体験や常識概念を壊した状態で、新しいスキルを学び続けること」ができれば、最終的にはエンジニアとして成長していけると考えています。

例えば、自分にスキルがない場合にその知識や経験を持った年下の後輩たちに、言い方は悪いかもしれませんが、土下座してでもスキルを学びにいく姿勢​があるかどうか​。新しいスキルを学び続けるには、そういった根気強い姿勢が大事になってきます。私自身もお世話になった方々からは「学びにいくときの貪欲さと素直さでいえばトップレベル」と評価いただいていました。

ー「貪欲さと素直さ」というのは具体的にどういう姿勢をいうのでしょうか。

そうですね。私自身の具体的な経験ですと、新卒で入った事業部にはまだ新卒研修がありませんでした。1年後に研修パッケージができたので参加したところ、自分が携わってきた開発言語と違っていたのです。それまではPHPという言語だったのが、研修ではRubyだっためわからないことが多く、後輩たちに「教えて欲しい」とお願いする場面がありました。

新しいことを学ぶときに、この業界では社会的立場は関係ないことを認識し、これまでの成功体験を一度崩して自分なりに学び進められるかが大事です。それこそ、ネットの掲示板に「自分は勉強中でわからないところがあり、現在こういう状況です」とヘルプを求めることも。別の領域では経験者ゆえ、どうしても恥ずかしい気持ちはありますが、そこでつまらないプライドを守っているようでは成長はありません

このように割り切れるかどうかが、エンジニアとして成長できるかどうかのひとつの指標になると思います。未経験者はもちろん、経験者であっても、謙虚な気持ちを忘れずに学び続けたいものですね。

ー西さん、貴重なお話をありがとうございました!

豊富な技術と経験で会社の利益を最大化。それがCTOの仕事!

CTOは所属する企業によって仕事内容が変わってきます。創業まもない企業であれば、プロジェクトのマネジメントから実行する役割を担うため、自分で手を動かす仕事も少なくありません。それに対し、大企業では技術面においての意思決定と幹部としてプロジェクトをまとめ上げる能力が必要となります。

どちらにせよ、企業の中で技術面と強いリーダーシップを求められるのがCTO。西さんのように、起業を見据えた就職で入社数年のうちに新規事業の立ち上げを経験したり、フリーランスとしてさまざまな企業のプロジェクトに参加したり、ときには講師として若いエンジニアの育成に携わるなど、豊富な技術と経験を持ち合わせたエンジニアはCTOへのキャリアアップも夢ではないはず。それには常に最新技術を学び、ときには後輩に学びにいく柔軟な姿勢が求められるのかもしれませんね。

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