(取材)エンジニア採用担当に聞く|IT企業のマネージャー職ってどんな仕事?未経験からの転職は教育環境を重視すべし!

(取材)エンジニア採用担当に聞く|IT企業のマネージャー職ってどんな仕事?未経験からの転職は教育環境を重視すべし!
近年、社会人が選ぶ働きたい企業ランキングの上位に入ることからもわかるように、IT企業が転職先として人気です。プログラミングスクールに入会するなど、スキルアップをして未経験からのエンジニア転職を目指す人も増えてきました。

ただ、一口に「エンジニア」と言っても、キャリアの描き方によっては、仕事内容や収入面も大きく変わってきますし、転職を繰り返してキャリアアップを図る人も少なくありません

今回はSIerから転職をしてWeb開発やプロダクトマネジメントを経験し、現在はバックエンドのエンジニアとして働かれているBさんに、普段のお仕事や採用担当としてのエンジニア転職のリアルについてくわしく伺いました。

インタビューに協力してくださったBさん

バックエンドのエンジニアとしてプロセス全般と採用を担当 

ーまずは、Bさんの現在のお仕事について教えてください。

私は現在、個人や機関投資家といったお客様向けの投資運用サービスを提供する企業でバックエンドのエンジニアとして勤務しています。具体的には、銀行振り込みをするシステムやそこからお金を当社の口座に移すシステムの要件定義にはじまり、開発・設計・実装、QA、テストなど、一連の流れを担当しています。また、サービスをリリースしてお客様に使っていただくプロセス全般に携わりつつ、エンジニアの採用も担当しています。

ー最近では、エンジニアのマネージャー職を「別になりたくないんだけど」と敬遠する方もいるようです。そのなかで、エンジニアマネジメント職の魅力、おすすめできる点を教えてください。

ひとことで言うと「自分のチームを持っていること」が魅力です。

会社で働いていると、土台無理だと思われるような目標を課されることもあります。そんなときに、チームという単位でやるべき事を分担し、前向きに取り組めるのは自分にとって魅力的です。また、メンバーが成長し、プロジェクトを成功させたりしている様を見ていると、自分だけでは味わえない嬉しさがあります。

もちろん、そういったことに興味がない人もいるとは思いますが、私自身はプログラミング自体がめちゃくちゃ好きだったわけではなく、どちらかというと「仕事をうまく進められれば、自分は何をやってもいいな」と思っているタイプ。こういう人間だとマネージャー職が向いているかもしれないですね。

あとは、働く人を自分で選べるのも大きいです。前職では「人が欲しかったら自分たちで採用して」という感じでしたので、極端な話、誰が推そうが、私と気が合わない方はチームには入りません。このように、自分でフィットする人材を探せる環境なのも良かったです。

ー仕事内容やチームで一緒に働く人を自分で選べるのは、権限を与えられたマネージャー職ならではですね。

ええ。マネージャーも人間なので、好きな人・嫌いな人は絶対ありますし、相性の良し悪しも仕事に関わってくるので、そこは無理しないほうがいいかなとは思いますね。

あとは一度、エンジニアマネジメントを経験しておくと、市場評価も上がりやすいなと実感します。今は小さな会社でソフトウェアエンジニアをしていますが、それこそCTOやVPoEのオファーも来るので、直截的に言えば、お金も稼ぎやすいメリットがありますね。

SIerから技術面や待遇面を重視してキャリアアップ

ーこれまでのキャリアについて深堀りさせてください。Bさんは幼い頃からエンジニアになりたいと考えていたタイプですか?

いいえ。「食える職種」を探そうと思ってたどりついたのがエンジニアでした。

私が専門学校を卒業したのは15年ほど前ですが、当時はネットビジネス科で、コンピュータサイエンスをガッツリという感じのカリキュラムではなく、どちらかというと文系エンジニアみたいな感じでした。マーケティングや簡単なスクリプトを学び、卒業後はメーカー系のSIerでエンジニアとして採用されました。

ーエンジニアのキャリアはSIerがスタートだったのですね。具体的にはどのような業務をされていたのか教えてください。

最初の企業は大手家電メーカーの三次請けのような会社で、大手の会社に出向して、サーバーの卸売りをするという部署に所属していました。具体的には、オペレーターさんが伝票を出力するときに使用する入力システムを作っていました。

そこで2年ほど働いて……すごく意識が低くて申し訳ないんですけれども(笑)、次の出向先が家から少し離れたところだったので「じゃあ辞めよう」と転職活動をしました。

そこで、せっかく転職するんだったらこのあたりでちゃんとキャリアを考えよう、若いうちだったらレバレッジが効くだろうと考え、未経験でも採用してくれてスキルアップもできそうな、もともと興味があったWeb開発やゲームサービス事業を展開する会社に入社しました。そこでは3年ほどWebサービスやソーシャルゲームの開発・運用・マネジメントをしています。

ーご自身の興味のある会社に転職できたんですね。

はい。ただ、技術役員がいない会社だったため、端的に言うと「技術よりもお金儲け」の方が優先されていました。エンジニアとしては、まず技術に投資をして、その結果大きくビジネスが伸びたらいいな、という考えがあったので、どうにも引っかかっていました。当時は27歳くらいだったので、「技術をちゃんと学んでキャリア自体も今後伸ばしていけるような会社に転職したい」と考えるように。そんなとき、Wantedlyを通じていわゆる大手のIT企業に声をかけていただいて、「じゃあ行きます」みたいな軽い感じで面接をしたら、たまたま受かりました。

そこでは、最初の2年半くらいはエンジニアをしていて、その後は​ゲームの開発のプロジェクトマネジメント​を担当しています。だいたい、3つくらいのタイトルを掛け持ちで、スケジュールの管理やQAのプロセスの管理など、管理業務を行っていました。

ただ、働き続けるうちに、いわゆる大企業的なキャリアアップの考え方があまり面白くないと感じました。生々しい話をすると、年収も全然伸びていかない状況だったんです。もうちょっと挑戦していきたいなと思うようになり、知人に声をかけてもらったタイミングで転職しました。

ーある程度経験を詰んだエンジニア、かつ、プロジェクトマネジメントをしていたBさんのような方は、転職がキャリアアップにつながる可能性も高いのでは。

次の会社は60名ほどの規模のIT企業で、最初はそれこそ普通のエンジニアだったのですが、入社数ヶ月後にマネージャーになり、その後はVPoEのような立場になりました。こうなると、マネージャー業務のような仕事が多くなりましたね。

大手のIT企業であれば放っておいても応募者が来るような会社もあります。しかし、当時働いていた会社の規模になると、知名度はあるのですが、欲しいレベルの人材を採用するにはこちらからスカウトしにいかないと来てくれない状態でしたので、そういう採用活動を組織的に設計し取り組んでいました。

ーそこから、現在の会社に入社したきっかけは。

きっかけは、当社の取締役が前々職の元同僚であったこと、将来的なリターンが大きそうなことが決め手でした。少し生々しい話になりますが、今後のキャリアを考えたときに「会社を上場させて持株を売却し、生活のために働かなくてもいいようなキャリアを設計したい」と考えていまして。そういう軸で企業を探すと、大手企業ではなくスタートアップやベンチャー企業になりますよね。どうしてもエンジニアとしては給料が下がってしまいますが、将来的なリターンが期待できるという理由で今この会社にいますね。

未経験者の採用は会社の規模とリソースによる

ー大変ユニークなキャリアについてお話していただきありがとうございました。では最後に、エンジニア採用についてお伺いします。Bさんが経験したような「新規事業立ち上げ」に求められるエンジニアの素養やスキルとは。

新規事業と言っても、リリース前後とビジネスを成長させるフェーズで事情が異なりますので、それぞれについてご説明します。

まず、リリース前については、とにかく動くことを重要視しなければならないため、ある程度スキルがあってスピード感がある人が求められますね。とにかく手が速い人で、シンプルに言うと「エース」。一から十まで説明しないとわからないような方はついていけません

一方で、リリースしてビジネスを成長させましょうという段階になると、やっぱりグロースハックの開発や、ビジネスの全貌が見えているエンジニアが活躍すると思います。

ー人によるかもしれませんが、未経験からIT企業にエンジニア転職は可能なんでしょうか?

会社の規模によると思います。前提として、​小さな会社では育てるリソースもなければ、育て方のノウハウもありません​。仮に入社できたとしても、未経験者からすると、環境的に当たり外れが激しい印象。ちゃんとしたエンジニアがいて、教育してくれる環境であれば未経験からのエンジニア転職も可能かもしれませんが、ハズレの会社に当たってしまうと、ただ疲弊することになりかねません。

また、大きな会社になると採用の要件に実務経験が求められる傾向が強いので「そんなに簡単なことではないけれども、100%不可能ではない」くらいの認識です。

ーこれまで、Bさんは数多くのエンジニアを採用しておられますが、例えばプログラミングスクールに通って転職活動中です、というような方を採用したことはありますか?

実は経験がないんです。申し訳ないんですけど、​はなから除外していたの​が現状です。私の採用ポリシーとして、「自分の能力をどこかで超えてくるようなエンジニアを採用する」というのがあります。また、これまで勤めていた会社の規模感から、ポテンシャルがはかれない人に投資し続けることが難しかったのもあります。

ですから、未経験者の方は最初はメンターがしっかりついてくれる環境や、サポートがしっかりしている環境での開発を行っている会社などを選択する方がいいのではないでしょうか。

ーなるほど。現実は実務経験がないと転職は厳しいということですね。例えば、異業種からの転職でアドバンテージがあるとしたらどんなことが挙げられるか教えてください。

そうですね。例えば、金融関係に勤めている方であればFinTech(フィンテック)は相性がいいかもしれません。ちゃんとした仕様を書けたり要件定義ができたりもするので、企画半分・エンジニア半分のようなポジションは考えやすいかなとは思います。

ITは何でも組み合わせが効くので、その会社がどれくらいIT以外での能力を重要視しているのかを見極めればチャンスはあるかもしれませんよ。

ーありがとうございました!

仕事も働くメンバーも自分で選べる管理職

エンジニアのキャリアプランの1つに、プロダクトマネジメントなど管理職として働く選択肢もあります。なかには管理職を敬遠する人もいますが、経験を積んでエンジニアの採用担当や開発チームの責任者になることで、仕事内容や一緒に働くメンバーさえも自分で選択できる権限が与えられることも。また、年収アップを目指している人にはマネージャー職や採用担当を経験することで、CTOやVPoEなど企業の執行役員といったオやファーがきやすくなるというのもメリットではないでしょうか。

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