自社の良さを発信してドライバーを採用したい各社にとって、求人サイトは優秀な運転手と接点を持てる数少ない場です。中でもドライバー向けの求人サイトを運営するドラEVERは、クライアントの採用ページにドローンからの空撮映像を掲載して訴求する場合があるとのこと。
今回は、ドローンマスターズスクール(DMS)卒業生でもある、株式会社ドラEVER営業本部 カスタマーサクセス営業事務 榎本有希さんと、ドローンマスターズスクールを運営する株式会社モビリティテクノ ドローン事業部 統括部長 中山慶一さんに取材を実施。ドローンの活用例やスクールでの学びについて、詳しく伺いました。
助成金を活用してスクールを受講
――まず、ドラEVERについて教えてください。榎本:
当社は求人サイトを運営している会社です。主な取引先は運送会社で、トラックドライバーや、タクシー・バスの乗務員を求める企業に向けて運用しています。
他にも車両管理DXツール「運Soul」や運送会社と荷主を結ぶ求荷求車サービス「ドラマッチ」などの自社システム開発、車両の下取りサービスなども手掛けています。
運送に関わることなら何でも扱う、運送会社にとっての「何でも屋さん」のような存在を目指している企業ですね。
――榎本さんはどのような業務に携わってこられましたか?
榎本:
私は2017年6月に入社したのですが、入社当初は動画制作部として動画や写真の撮影、PR動画の編集などを担当しておりました。現在は営業本部営業事務所属で、撮影業務とSNSの運用をメインに業務しており、運送会社の各部門に実際に現場に行ってインタビューしたり、実際に働く車や、働いている方のPR動画の撮影を行ったりしております。
社長の言葉を借りると、「求人メディアで、専門のプロ動画制作チームがある会社はないよね」ということで、YouTubeなどの動画プラットフォームが流行り始めていた時期でもあったので、その波に乗ろうという意図もありましたね。
撮影した動画は、主にプロモーション用として使用されます。運送業界、特に地方の会社では、まだ紙媒体を使っているところも多いので、動画を持っていくだけでハイテクな印象を与えることができます。
ドローン空撮の映像をお見せすると「すごい」「こんな映像が撮れるんだね」といった反応をいただくことが多く、お客様の満足度向上にもつながっています。
――ドローンの活用を始めたきっかけは何だったのでしょうか?
榎本:
もともと動画制作を始めた当初は既存の素材を使ったり、普通のカメラで撮影したりしていたのですが、より魅力的なコンテンツを作るために、新しい技術や手法を取り入れる必要性がありました。
そのタイミングで航空法が改正されてドローンの国家資格化の話が出てきたんです。
より魅力的な映像を作るため、また業界内での差別化を図るためにも、ドローンの導入は必要不可欠だと考えました。とくに大型の倉庫や広大な敷地を持つ運送会社の規模感を伝えるには、空撮が効果的だと感じていましたね。
さらに私が入社5年目を迎えて、厚労省の「人材開発支援助成金」を使える期日ギリギリになったことで「このビッグウェーブに乗るしかない」と思ったのです。中山さんに相談して、急いでスケジュールを組んでもらいました。
仕事で使える「実技重視」のカリキュラム
――DMSでドローンの講習を受けようと思った理由は何でしょうか?榎本:
実技中心のカリキュラムを展開されていることが大きかったです。既に仕事で使うことが決まっているので、実技をしっかりやってくれるスクールの方が良いと考えました。
またDMSさんはGPSが搭載されていないオリジナル機体で練習するので、より厳しい実技訓練ができるのも魅力的でした。
中山:
我々は初心者の方から経験者までそれぞれの悩みやつまずきを読み取り、受講生の方のスキルに合わせて適切なアドバイスができるように心がけています。
また質問しやすい雰囲気作りも大切にしているので、受講生に「こんな簡単なことを聞いて恥ずかしい」とか「時間を取ってしまって申し訳ない」と思わせない環境を作ることも意識して、指導に当たっています。
各スタッフが雰囲気作りに努めているおかげで、受講生の方々が疑問を解消しながら次のステップに進めるようになっています。とくに座学では法律や専門用語が多く出てくるので、こうした雰囲気は非常に重要なのです。
――実際に講習を受けてみていかがでしたか?
榎本:
座学では航空法など、今まで全く縁のなかった世界の話を聞くことができたので新鮮でした。少人数制だったのでわからないことがあればその場で質問でき、丁寧に答えてもらえたのがよかったです。私が受講したときは、講師1人に対して受講生2人という環境で学びました。
実技では、とくに空間認識が難しかったですね。特に高さの感覚をつかむのに苦労しました。GPSがない状態でのホバリングや八の字飛行も大変でしたが、インストラクターの方がとても褒めてくれたので「できる」という気持ちになれました。
シミュレーターでは何回ドローンを壊したかわからないくらい練習しました。NDフィルター操作やキャリブレーションなど、実際の撮影現場で必要な技術も学べたのでとても満足のいく講座内容だったと思います。練習場も広々としていて使いやすかったです。
中山:
実技の授業でも座学と同様に2人1組のペアで動いてもらい、1人が実機を操作している間はもう1人がシミュレーターで練習する形式をとっています。効率的に学習を進められるのも、当校の特徴だと自負しています。
――講習後、実際の業務でどのようにドローンを活用されていますか?
榎本:
主に運送会社の撮影で使用しており、トラックと並走して撮影したり、大きな倉庫の規模感を伝えるために空撮したりしています。お客様の反応もよく、特に地方の運送会社では「すごい」「ハイテクだ」と喜んでもらえるので、動画の満足度も上がっていると感じます。
固定カメラや地上からは撮れない角度からの撮影が可能になり、編集の際の素材も増えたので、ドローンの導入で表現の幅が広がりましたね。ただ、実際の撮影ではさまざまなリスクも伴います。
つい先週も大量の鳥に追われるという経験をしましたが、スクールで学んだバードストライク(航空機等への鳥衝突)のリスクヘッジを思い出し、無事に対処できました。こういった実践的な知識も、スクールで学んだことが生きていると感じます。
免許を取得して2年経ちますが、今でも操縦時は緊張します。機体を落としてしまうのではないかという恐怖感は常にありますが、DMSで厳しい訓練を受けたことで、自信を持って操縦できるようになりました。
中山:
当校としても、現場でトラブルが起きても対応できるよう、キャリブレーションやセンサー構成などをしっかりお教えすることを指導の中で意識しています。
「気軽なチャレンジ」で新しい世界の扉を開く
――今後の展望についてお聞かせください。榎本:
新しいドローンの購入を検討しています。継続的にお付き合いのあるクライアント様も増えてきたので、「前とは違う動画」を提供できるよう、撮影の幅を広げていきたいですね。
最終的には、その映像を見てドライバーさんたちが「この会社に入りたい」「かっこいい」と思ってもらえるような映像が撮れたらいいなと思っています。
DMSさんには機体の購入相談もできるので、とても助かっています。機体登録の仕方も教えてくれますし、去年は飛行申請の更新の際にもご助力いただきました。このようなサポートの厚さも、DMSさんの良いところだと思います。
これからはお客様から言われる前に自分たちからドローンを持っていき、少しずつ撮影の幅を広げていきたいと考えています。技術の進歩は早いので、常に最新の情報をキャッチアップしながら、より魅力的な映像制作を目指していきます。
――最後に、ドローンにチャレンジしたい人へメッセージをお願いします。
榎本:
大切なのは、やってみようという一歩を踏み出すことです。私もこのスクールを卒業して、自信を持ってドローンを飛ばせるようになりました。最初から尻込みせずに、一度話を聞いたり触ってみたりして、やりたいと思ったら始めてみてください。
実際に飛ばしてみると楽しいですよ。続けたいと思ったら続ければいいし、そうでなければそれでもいい。そんな気軽なマインドでドローンに挑戦してほしいですね。
女性の方も是非チャレンジしてみてください。確かに空間認識など、最初は苦手に感じる部分もあるかもしれませんが、練習で克服できる範囲のものだと思います。
中山:
ドローンは楽しいガジェットですが、場所や風速、バードストライクなど、安全性のリスクは必ず潜んでいます。そのリスクヘッジを前提に、ドローンを楽しんでいただければと思います。
ドローン操縦は性別に関係なく、やる気と努力次第で誰でも上達できる分野なので、新しい技術に触れる楽しさを多くの人に体験してもらいたいですね。