(取材)ドローン仏から小豆島のエリアマネジメント事業まで。fly代表・船津氏に聞く、ドローン活用の可能性
このユニークすぎるイベントを可能にしたのが、ドローンの技術提供をしたfly株式会社です。人の臨終の際に阿弥陀仏が雲に乗って迎えに来る「来迎」を、小さな釈迦像をトイドローンに載せて浮かび上がらせることで再現しました。
ドローンを活用した映像制作事業、教育事業、そしてコンサルティング事業を展開するfly株式会社。代表取締役である船津宏樹さんに、その豊かな発想の原点と、今後目指すユニークな未来についてうかがいました。

fly株式会社 代表取締役 船津宏樹氏
操縦技術ではなく、ドローンで新しい技術を創造する力が必要
――改めて、船津様のこれまでのご経歴について教えてください。私は2009年に株式会社ブイキューブというWebシステムの開発をしている会社に入社し、全国の拠点間をWebで繋ぐツールの営業や現場でのサポート業務を担当していました。しかし、実際にお客様の要望を直接聞いてみると、会議室同士を繋ぐシステムよりも、会議室と現場を繋ぐシステムへのニーズが高いことがわかったんです。
そこで2015年、現場に行かなくても災害現場の状況把握ができるシステムを作るため、ブイキューブからスピンアウトする形でブイキューブロボティクスジャパン(現・センシンロボティクス)を立ち上げました。同社で営業取締役を務めたのが、ドローン業界に携わったきっかけです。
現在ブイキューブロボティクスジャパンはセンシンロボティクスと社名を変更しましたが、業務をしていく中で、これからもっとドローン業界全体を大きくしたいという思いが強くなりました。
そして、ドローン業界を育てるためにも教育事業をやりたいという思いで、センシンロボティクスから独立し、fly株式会社を設立したというのが経緯です。

――教育事業に注力というのは、いわゆるドローンスクールの運営などでしょうか?
いえ、教育事業といっても、私が目指しているのはドローンスクールの運営ではなく、ドローンの可能性を生かして新しい技術や表現を創り出すための教育です。ドローン操縦技術だけでなく、映像制作やプログラミングなど、自分が作りたいものに必要な技術を獲得できるよう、中学校、高校などで複合的な授業を実施しています。
業界自体をもっと大きくするためにも、子どもたちにはドローンに対する憧れを持ってほしい。そのため、興味や関心を集めやすいアーティストのライブ撮影や企画イベントなど、エンターテインメントへのドローン活用にも力をいれています。
小豆島を最先端技術の島にするために
――現在の事業内容について教えてください。現在の事業はプロダクション業務とコンサルティング業務が4割ずつ、残りの2割が教育業務です。最近は教育業務が増えてきていますね。
また、私自身は現在、小豆島瀬戸内エリアマネジメント協会の理事を担っております。小豆島は、まさに日本の縮図です。若い人はみな都会へ出てしまい、島の高齢化は急速に進んでいます。
一方、美しい風景に魅せられて、島を訪れる観光客は後を絶ちません。しかし、宿泊施設も交通機関も整っておらず、まさにオーバーツーリズム状態。新しい技術を導入することで問題を解決し、ゆくゆくは若い人たちに戻ってきてもらうためのプランナーとして、私が理事に就任しました。

――小豆島では、どのような活動をされているんですか?
たとえば、ドローンの映像からシェアサイクルの自転車の最適な配置を決めたり、プロペラサイネージを使ってバス停や駐車場の場所を案内したりと、観光事業でのドローン活用を進めています。
また、若者を取り込むための教育にも力を入れています。中学校からSTEAM教育を強化しました。9月9日にSTEAM ISLANDというイベントも実施しています。
コSTEAM ISLANDは2023年9月9日に小豆島で実施された中学生向けのドローン・動画編集・プログラミングの授業です。授業の様子や三社の声をお届けします。
https://teamfly.jp/steam_island/index.html >
Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学・ものづくり)、Art(芸術・リベラルアーツ)、Mathematics(数学)の頭文字を取ったSTEAM教育は、今注目されている教育概念です。そこで、小豆島に来れば最先端の技術が学べることをアピールして、島の外から「離島留学」に来てもらうための活動を実施しています。
それに、小豆島は空港がないためドローンの飛行制限地域がなく、ドローン教育に最適な土地なんです。たとえば、中学校のうちに森林管理の学習で実際にドローンを飛ばしてみて、森林の状況を把握するような授業もできる。学生時代からドローン操縦の技術を身に着けておけば、将来の雇用にも繋がります。
ゆくゆくは、私たちの会社が撮影を担当させてもらっているアーティストに対し、小豆島でフェスをやりましょうという売り込みもできます。全部が循環して相乗効果になって、島を盛り上げていけたらいいですね。

小豆島町と包括連携協定を締結しています。
イベント撮影の知られざる苦労。法律、体力、技術面で困難の連続
――御社は特にドローンを活用してイベントの映像制作をされていますが、ドローンでの撮影にはどのような難しさがありますか?法律面、体力面、技術面でそれぞれ大変さがあります。法律面からいうと、イベント上空にドローンを飛ばして撮影する際には、通常の包括申請に加えて、イベントごと個別に申請を出さなければなりません。イベントごとに内容、配置、人数などが全く違いますから、たとえば、人との距離は30mを保てるのか、飛行ルートはどうするのか、安全管理上問題ないかなどの細かい調整が必要です。そこでようやく国土交通省の許可が出たとしても、イベント会場との兼ね合いで別のルールが提示されたり……。イベント撮影の事務手続きは、測量業務などとは違った手間がかかるんです。
体力面のハードさもあります。通常の点検、測量業務などは、それほど長い時間ドローンを飛ばしているわけではありません。しかし、フェスで撮るとなると、アーティスト1組につき40分ほどパフォーマンスが続くことも珍しくありません。その間ずっと集中していなければならないし、電池交換のタイミングも考えて撮影しなければなりません。体力的にも精神的にもきついですが、好きな音楽を聴きながら映像を使ってもらい、一つの作品をチームで作るのは何よりも楽しです。
イベント撮影には、高い技術も必要です。ステージには様々な特攻があります。ドローンが特効に巻き込まれないように飛行計画を立てないといけません。
また、空調がかなり回っているところで安定して飛ばさなければなりません。それが2、3時間続くのです。法律、体力、技術、どれも均等に大変です。

――御社の強みといえば、「ドローン仏」を代表とする独創的な映像です。そのクリエイティブセンスはどこから生まれるのでしょうか。
教育事業で子どもたちのクリエイティブな発想に触れているからかもしれません。子どもたちの発想は本当に豊かで、たとえばドローンを使った映像を作る際、ドローンを虫に見立てて、虫の視点から一つのストーリーとして動画を撮る、なんていうアイデアがたくさん湧いてくるんです。
私たちが先日撮影した花まつりでの「ドローン仏」は、ドローンにお釈迦様を乗せて浮かせることで、極楽浄土から衆生を迎えにくる「来迎」を表現しました。子どもたちの豊かな発想に刺激を受けて、私たちも日々勉強させてもらっています。これを、エデュケーション・プロダクション・コンサルティングのサイクルを一緒に回していくという意味で、「共育」、コエデュケーションと私たちは呼んでいます。子どもたちと共にこのサイクルを回して、どんどん広げていきたいと思っています。
誰も実現したことのないサービス展開を目指す
――御社の今後の展望について教えてください。私たちの事業の柱である、エデュケーション、プロダクション、コンサルティングの3つの事業をもっと大きくしていきたい思いがまずあります。そのうえで、最近は誰も実現していないことに挑戦するために、エンジニアリング的な部分を含めたドローンの開発やサービス提供を考えています。
たとえば、アクティビティを勝手に撮影してくれるサービスです。SUPやカヤックなど、水上のアクティビティを体験しているところを撮影してほしいという要望に対応するためには、今までは人がドローンを操作して撮影しなければなりませんでした。
でも、SUPの端にセンサーを付け、自分でボタンを押せば勝手にドローンが飛んで撮影してくれるようなシステムを組めば、たっぷり遊んで帰る頃には編集された動画ができていて、帰り際に購入できる……なんてサービスを始められるかもしれません。これは一例ですが、そんな便利なサービスを提供していきたいですね。
私たちはさまざまな産業ノウハウからクリエイティブなことまでやっています。また、ドローンを活用した体制づくりのコンサルティングもやっておりますので、ぜひお気軽にご相談いただきたいと思います。

私たちflyは、教育・コンサルティング・クリエイティブを通じて新たな領域にチャレンジし続ける組織です。ドローンに関するプラクティカルな教育事業を基軸に、クリエイティブからコンサルティングの領域を対応し、将来子供たちが学んだスキルを実際に活かして働ける環境や過程を構築します。
https://teamfly.jp/ >
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