しかしその一方で、就職活動が初めての学生にとって、どの企業が自分に合っているのか、どんな業界や職種が将来にとって最適なのかは判断に迷う場面も多く、就職活動は依然として大きな悩みの種です。企業の採用スタイルも、従来の方法から、オファー型サービスを取り入れるなど変化が進んでおり、学生は新しい形での就職活動に対応していくことも求められています。
そこで今回は、新卒オファー型就活サービス「OfferBox」を運営している株式会社i–plug 法人マーケティンググループ 前本 貴生氏にインタビュー。新卒市場の現状は?就職活動を成功させるためのポイントとは?OfferBoxのサービスの魅力も含めて、詳しくお話を伺いました。
新卒市場の現状と売り手市場の回復
—まず、前本様のご経歴について教えてください。私は2016年に大学を卒業後、オフィス関連の専門商社に新卒入社し、新規開拓営業としてキャリアをスタートしました。その後は法人パートナー営業を経て、新卒採用担当として採用業務に従事しました。多様な採用サービスを利用する中でOfferBoxと出会い、そのご縁もあって2022年10月に株式会社i–plugに入社しました。
株式会社i–plugでは、まずOfferBoxを利用する企業様の採用支援を行うカスタマーサクセスを担当し、現在は法人マーケティンググループに所属しています。主に採用セミナーの開催や大学での登壇、コラム記事の執筆や監修など、幅広い業務に携わっています。
—OfferBoxでは、新卒向けのサービスを展開していますよね。現在の新卒市場の状況について教えていただけますか?
今の新卒市場は超売り手市場です。コロナ禍の影響で一時期は有効求人倍率が1.5倍前後に落ちていたものの、現在は1.75倍程度まで回復し、コロナ前の水準に戻りつつあります。
学生にとっては選択肢が広がりつつある状況で、企業側は優秀な人材を確保するために採用戦略を工夫している印象です。
—どのような企業が学生に人気なのでしょうか?
やはり就活を始める際には、学生もまず、「知っている企業」から調べ始めますよね。そのため、大手企業やネームバリューのある企業には多くの応募が集まる傾向にあります。
しかし、近年では単に知名度やブランド力だけでなく、福利厚生の充実度や勤務地、待遇、そして社風など、働く環境そのものを重視する学生が増えているのも特徴的ですね。
計画通りにいかないことも!自分が選んだ道を「正解」にしていく努力が大切
—学生がキャリアプランを考える際に、特に意識すべきポイントは何でしょうか?キャリアプランを考える際、初めから完璧な計画を立てようとする必要はありません。
私が好きなキャリアの考え方に「計画的偶発性理論」というものがあります。これは、個人のキャリアの約8割は、偶然の出来事によって決まるという考え方です。
社会人として長いキャリアを積む中で、思い通りにいかないことも多くあるでしょう。しかしその都度、自分が選んだ道を「正解」にしていく努力が大切なのです。
就職活動の段階に関して言えば、これから積み上げたい経験や、挑戦したい仕事にどれだけ近づけるかを基準に企業を選ぶと、結果として納得のいくキャリア選択につながりやすくなります。なおかつ、柔軟な姿勢で新しい機会を受け入れ、様々な経験を積むことが、将来のキャリアの幅を広げることにつながるでしょう。
ー就職活動では、学生の市場価値はどう決まるのでしょうか?
一般に採用においては、スキルフィットとカルチャーフィットの二つが重要な軸になります。ただし新卒の場合は、既存のスキルよりも「企業との相性」、つまりカルチャーフィットが重視される傾向がありますね。学生が社風にマッチするのか、そのなかできちんと成長していけるのかを慎重に見極める企業が多いように思います。
ー就職活動でよくある失敗例や、その対策方法について教えて下さい。
よくある失敗例は、過度に期待を抱きすぎて、希望が通らなかったときに気力を失ってしまうことです。
例えば、面接で思うような結果が得られなかったときに気持ちを切り替えられず、落ち込んでしまう学生が多くいます。自分自身は「面接で良いパフォーマンスができた」と思っていても、企業側がそれを評価するかは別問題です。就職活動はあくまでも相性の問題ですから、結果に一喜一憂せず、気持ちを切り替えることが大切です。
また、周囲の友人と比べて焦ってしまうのも、よくある悩みですね。「何社から内定をもらえた?」などと話しているうちに、「自分は遅れているのでは?」と不安になってしまうのです。しかし、比較することには何の意味もありません。周りに流されず、自分のペースを守って進めることが大切です。
それから、就活におけるストレスや不安で気持ちが沈みがちになる方もいます。おすすめの対処法は、毎日少しずつ活動を進めることですね。例えば、寝る前の15分だけスカウトサービスをチェックしたり、ナビサイトでエントリーしてみたりと、無理のない範囲で進めていくと良いでしょう。心の健康を大切にし、計画的、かつバランス良く進めることが重要です。
賢く就活サービスを使い分けよう!
—世の中にはさまざまな就活サービスがありますが、就活生がサービスを選ぶ際に重視すべきポイントは?どのサービスがもっとも自分に適しているかは、就活の準備状況や志望の明確さによって異なります。
すでに準備が整い、志望企業や業界が明確になっている場合は、就活ナビ系のサイトを利用して、自ら興味のある企業に積極的にアプローチする方法が適しています。希望に沿った企業にターゲットを絞って応募できるため、効率的に活動を進められるでしょう。
一方で準備ができていない場合や、業界・職種の絞り込みができていない場合は、オファー型サービスもおすすめです。オファー型サービスでは、企業側からのスカウトを通じて思わぬ出会いが得られることも多く、視野を広げながら検討を進められます。話を聞きながら自分自身の希望が明確になることもあるため、模索中の学生に向いていると言えるでしょう。
もちろん、どれか一つに絞るのではなく、複数のサービスを併用するのも賢い方法ですね。
—学生が1社目の企業を選ぶ際に意識するべきことがあれば教えてください。
会社を選ぶ際は、まず自分の就活の軸をしっかり持つことが重要です。軸があれば、企業説明会や選考を受ける際に判断がしやすくなり、意思決定にも自信を持てます。
例えば、福利厚生が充実しているか、社風が自分に合っているかなど、自分が会社に求める要素を明確にすることで、より自分に合った企業と出会いやすくなります。
こうした軸を持つためには、自己分析が欠かせません。就活中に何度も言われることかもしれませんが、裏を返せばそれだけ自己分析は重要なのです。
自分を見つめ直す方法は多々ありますが、とくに試していただきたいのは、人生におけるモチベーションの変化をグラフで表す「モチベーショングラフ」ですね。どのような環境ならやる気を持って取り組めるのかを知ることで、前向きに働ける会社を見つけやすくなりますよ。
視野と未来が広がる「OfferBox」のオファー型就活
—ここからは、OfferBoxのサービスについて詳しく教えてください。
OfferBoxは、学生と企業をつなげるオファー型の就活プラットフォームです。
サービスの核となるのは、創業者全員が共通して持つ“我が子のために”という強い思い。就職活動を通じて、成長や学びが楽しいと感じられる環境を提供したいという願いが込められています。
また、最適なマッチングを生み出すこともこのサービスの重要な狙いです。オファー型サービスとして、企業と学生の双方が相互に理解を深められる環境を提供し、ただの求人情報の提供ではなく、納得と共感に基づいた出会いを実現することを目指しています。
ーOfferBoxならではの強みやポイントは?
1つ目は、今まで知り得なかった企業と出会える点です。
企業側はプロフィールを見て、興味を持った学生にオファーを送ります。そのため、自分では見つられなかったような企業とも、オファーをきっかけに出会える可能性があります。自分で調べてエントリーするだけでは、応募先に偏りが出てしまいがちです。その点、OfferBoxなら、マッチ度が高い企業からのオファーを受け取り、検討するなかで視野が広がります。
2つ目は、ミスマッチが発生しづらい点です。オファー型といっても、結局のところ多数の学生に一斉メールを送信しているのでは?と疑われるかもしれませんが、当社ではオファー送信数に制限を設けています。一人ひとりに合ったオファーを丁寧に送ることで、企業と学生の双方が納得できるマッチングを実現しているのです。
なお、さらに質の高い出会いを実現するための工夫として、学生さん側にはプロフィールへの詳細な記入をお願いしています。これによりマッチングの精度が向上し、より適したオファーが送られるようになります。
3つ目は、企業からのアクションを通じて学生が自分を深く理解し、成長のきっかけを得られる点です。
オファーを送る企業側には、学生のプロフィールをしっかりと読み込み「なぜその学生に興味を持ったのか」を具体的に伝えるよう推奨しています。これにより、学生は自身の強みや特徴を客観視でき、キャリア形成に役立てることができます。自分でも気づいていなかった長所に気づくきっかけとなり、就活をより充実させるサポートになります。
—OfferBoxを使う際のポイントがあれば教えてください。
継続的にサービスを利用し続けることが成功のカギです。就職活動の初期段階では、多くの方が複数のサービスに登録します。しかし大抵の場合、だんだんと使わなくなるサービスが出てきます。ある程度は仕方のないことですが、まったく開かないようでは企業との出会いを逃しているかもしれません。
なぜなら、企業が学生を検索する際には、ログイン日時で絞り込むことが多いからです。「3日以内」「7日以内」など、直近のログインユーザーを対象に探すケースが多く、ログインが途絶えると検索結果に表示されにくくなります。可能な範囲でサービスをこまめに利用することで、より多くのチャンスに出会えるでしょう。
また、オファー型のサービスであっても、企業からのオファーを待つだけでなく、自分からアクションを起こすことも可能です。
たとえば、自分に合いそうな企業に対して「私を見て」とアピールできる機能などですね。こうして自分から積極的にアプローチすることで、企業との接点を増やし、就職活動をより充実させられるのです。
就活は「自分を見つめ直す機会」
—最後に、就職活動中の学生に向けてアドバイスをお願いします。就職活動の期間はあっという間です。ときには悩んだり、苦しいと感じたりするかもしれませんが、やりきった先には喜びや達成感が待っています。ですから、ぜひこの期間を自分を見つめ直す貴重な機会として捉えてください。就活を通じて得られた自己分析は、きっと社会に出てからも役立つはずです。
企業側は、学生に完璧さを求めているわけではありません。むしろ多くの企業が、一人ひとりの個性や適性を重視しています。無理に自分を飾る必要はありません。これまでの学生生活で積み重ねてきた自分の経験と準備してきたことに自信を持ち、企業に飛び込んでいってください。就職活動が実りあるものになるよう、心から応援しています。