DPCAドローンフェス2022 イベントレポート|有人地帯での目視外飛行解禁間近、ドローンのこれからを学ぶ

DPCAドローンフェス2022 イベントレポート|有人地帯での目視外飛行解禁間近、ドローンのこれからを学ぶ
2022年7月13日、京都府亀岡市にあるサンガスタジアム by KYOCERAにおいて、「DPCAドローンフェス2022」が開催されました。

本年12月のレベル4飛行解禁を控えて、今回のフェスでは自治体と連携したドローン活用事例の紹介や最新ドローンによるデモンストレーション、体験型ワークショップなどが行われました。ドローンの大きな可能性に盛り上がりを見せた「DPCAドローンフェス2022」をレポートします。

レベル4飛行の時代へ突入

「空の産業革命」を引き起こすツールとして期待されているドローン。しかし現段階で認められているドローンの飛行は、目視内飛行および、許可・承認を得た無人地帯での例外的な目視外飛行のみで、物流などでもっとも需要があると思われる有人地帯での目視外飛行は認められていません。

しかし、「有人地帯(第三者上空)での補助者なし目視外飛行」(通称「レベル4飛行」)が2022年12月、ついに解禁。同時に、有人地帯でのレベル4飛行の安全を担保するため、機体認証制度や操縦ライセンス制度など、ドローンの国家資格も導入されます。

これらを目前に控え、今回のフェスは「ドローンの今を知り、これからの未来を学ぶ勉強会」として開催されました。

ドローンフェス開幕

オープニングアクトとして、京都北山の原谷弁天太鼓保存会の皆さんが登場。女性4人による力強い和太鼓のパフォーマンスをドローンが撮影し、スタジアムの大型スクリーンに臨場感あふれる映像が映し出されました。


国家操縦ライセンス制度に向けたドローンスクールの開校をDPCA代表理事・上田雄太氏が発表、続いて京都府南丹広域振興局長・南本尚司氏の開会挨拶でフェスが開幕しました。

今回の「DPCAドローンフェス」を主催する一般社団法人DPCA(ドローン撮影クリエイターズ協会)は、2015年に京都で設立した、国土交通省航空局HP掲載管理団体・講習団体です。

ドローンによる映像制作、クリエイター育成に加え、ドローンの操縦者を育成する「DRONEフライトオペレーター講習」を開講。現在までの講習総修了者数は7,000名を超え、ドローンの操縦技術講習では日本でもトップクラスの受講者数を誇ります。

また、DPCAの関連団体として設立した、一般社団法人地域再生・防災ドローン利活用推進協会(RUSEA)では、ドローンを有効活用した広域防災、災害時運用を目指して、ドローンを活用する人材を育成しています。現在までに全国で90法人以上がRUSEA支部として加盟しており、総務省消防庁や京都府を始め、自治体との災害時運用協定数は40を超え、国内最多となっています。

DPCAドローンフェスでは、そんな全国のDPCA・RUSEA支部が京都に集う全国支部総会として、本年12月の国家操縦ライセンス制度開始を見据えて開催されました。

講演:ドローン社会実装のまち 佐賀県多久市のそらのまちづくりについて

レベル4時代の幕開けにより、ドローンの活用がさらに広がると予想される中、ドローン企業にとって重要になってくるのが自治体との連携です。

官民連携でドローンの社会実装を成功させた佐賀県多久市の取り組みについて、上空シェアリングサービス「ソラシェア」を運営する株式会社トルビズオン代表取締役・増本衛氏を進行役とし、トルビズオン・中村涼子氏と多久市商工観光課町づくり係長・川原学氏とのセッション形式で講演が行われました。

社会実装を前提とした実証実験

有人地帯での目視外飛行解禁に向けて、各自治体におけるドローンの取り組みは活発化しており、実証実験も頻繁に行われています。しかし、そもそもドローンビジネスは機体自体が高額であるため、イニシャルコストが高いビジネスであることも事実です。

イニシャルコストをペイできるビジネスモデルを作るには、社会実装をしていく必要があります。そこで多久市では、「実証実験のあいだの短期間だけでなく、ドローンがずっと飛ぶことを住民と完全合意した『空の道』の構築を目指しました。」と増本氏。

その結果、まちづくり協議会や地域建築業者、小売店、病院などから協力を得て、これらのエリアの上空に12本の「空の道」を作ることに成功。空路は、病院の屋上から限界地区に薬を届ける道や、福祉施設に日用品を届ける道など、地域のニーズをくみ取りながら設計されました。

この12本の空の道には、NEXCO西日本グループとのコラボレーション、「高速道路空の道」も含まれています。

これは多久市内のパーキングエリアと公園、みかんの産地をつなぐもので、PAの店舗から公園に唐揚げ弁当を配送し、PAには特産品のみかんが届けられます。

1スタートアップ企業と自治体との関係に、大企業が接続してきたのは予想外であったと増本氏。「高速道路のほかにも、鉄道や送電線など、線のインフラと地域の空の道をつなげることで、より広範囲な空路を敷くことができる。これは想像していませんでした。」

空のシェアリングエコノミーサービス、「ソラシェア」

さて、そんな多久市が導入したのは、トルビズオンが開発・運営する「sora:share(ソラシェア)」です。

「一言でいうと、ソラシェアとは『自分が住んでいる上空にドローンを飛ばしてよい』と合意するプラットフォームです」と増本氏。

「ドローンの先進地域である深センやフランス、またさまざまな社会実験を視察するうちに明らかになったドローンの課題は、ドローンを社会にどう受け入れてもらうかということでした。つまり、ドローンが上空を飛ぶことを『怖い』と感じている人が少なからずいるのです」

「そこで、ドローンがいつ飛ぶかということを把握できるような仕組みが必要だと考え、たどり着いたビジネスモデルがソラシェアです。いつだれがどんな目的でドローンを飛ばすのか、ドローンの空路を3Dで視覚化。空路直下の地権者の方々にはインセンティブを払う仕組みをプラットフォーム化しました。さらには損保ジャパンと共同でソラシェアの付帯保険も開発しています。」

官民連携成功の秘訣

一般企業であるトルビズオンが自治体と連携できたポイントは、
  • 住民や地域企業が参加できるプラットフォーム「ソラシェア」
  • 住民参加型の空路デザイン「スカイディベロッパー」
  • 連携協定と補助金の獲得
の3つであると増本氏は言います。

スカイディベロッパーとは一種の代理人制度で、ソラシェアを活用して空の道を構築する資格を持った人・団体を指します。多久市では、まちづくり協議会がスカイディベロッパーとなり空の道を登録しました。その具体的なプロセスについて、この6月まで公務員の立場から空のまちづくりに尽力した中村氏は次のように話します。

「まずまちづくり協議会でどのような道が必要か、どのような物流をやるかという課題を抽出しました。一番最初は、キャンプ場に多久市の名産品であるすっぽん鍋の具材を運んだら楽しいだろうというのがきっかけですね。そこで空路にあたる各町長に話をし、空路直下の生活者の方々のお宅を訪問して合意を得、空の道を作っていきました。」

また、地域住民にスカイディベロッパーとして協力してもらうことで、合意が得やすくなると川原氏。「住民のニーズをキャッチすることで、住民に使ってもらえるような空路を作れるメリットもあります。」

左から川原学氏、中村涼子氏、増本衛氏


また、連携協定についても川原氏が解説。「企業と自治体が結ぶ協定で一番多いのは契約です。たとえば業務委託契約なら、自治体で仕様書を作成して入札を行います。契約では自治体がすでにやることを決めているのに対し、連携協定では、地域課題について自治体と企業が一緒に解決法を考えていきます」

「自治体は、本来不得意な民間企業の最新トレンドや最新技術を取り入れることができますし、一方企業は税制の優遇などが受けられる。ウィンウィンの関係なのです。」

前述したように、ドローンビジネスは機体が高額であることなどからイニシャルコストがかかるため、実装へとすすめるためには補助金を獲得したいところです。その点、予算の少ない自治体でも調整が可能であると中村氏。

多久市では地方創生テレワーク交付金を活用しました。ドローンビジネスの企業を誘致することで、1500万円の補助をいただきました。」

また川原氏は、地域のリーダーの熱意も大事だと言います。

「多久市ではまちづくり協議会のみなさんの熱意から始まり、補助金がなくてもやるくらいの勢いがありました。逆に補助金が出ても、地域のリーダーがいないとうまく回らないものです。」

人口たった2万人の多久市での成功経験をもとに、いろいろな補助金を活用すればお金の心配をせず事業に取り組んでいけるのではないかと中村氏は話します。

ドローン事業は物流だけではなく、農業や林業、建築土木調査や測量など、いろいろな分野で活用できると増本氏。

「得意な分野を主軸とし、その周りにビジネスを拡張していく形で自治体と課題解決に取り組んでいけば、岸田内閣のもとで進められている『デジタル田園都市国家構想』などの大がかりな補助金にもアプローチできるのではないでしょうか。」

「空のまちづくり」モデルを広げる

空のまちづくりについて、増本氏は「我々が目指しているのは、地域の企業と市町村が官民連携を進めることで地域を活性化し、ドローンの浸透を実現すること」だと述べます。

市町村の立場からは、地場企業に事業成長の機会を与え、過疎地域の住民に新しい物流網を作って、ドローンを中心とした新しい産業を育成していく狙いがあります。一方、地域企業の立場からは、ドローンによる新規ビジネスの創出や既存事業の拡張を通じて、地域に貢献したいという思いがあります。両者の思いが結実した「空のまち」が多久市なのです。

最後に増本氏は、「空のまちづくりの可能性は無限大。我々は地域ごとに最適な方法を取りながら、日本のドローン産業を強力に推進していきたい」との決意を述べました。

最新ドローンによるデモンストレーション&ワークショップ

フェス後半は、最新ドローンのデモンストレーションや展示、ワークショップが行われました。

高効率な物資運搬が可能

日本発の「空飛ぶ車」を開発するSkyDriveのSkyLiftは、30㎏の荷物運搬が可能な大型カーゴドローン。山岳地帯など、人が歩いて運ぶのが困難な場所で威力を発揮します。

今回、会場で実際にSkyLiftを飛ばすことはできなかったので、福井県永平寺町で行われた実証実験の映像が大型スクリーンで紹介されました。豪雪地帯での道路閉鎖時を想定した災害支援の実験で、ヘリポートから飛び立ったSkyLiftが避難場所の小学校に無事パンを運搬。SkyLiftが飛んでくる様子を校舎の窓から見守る子どもたちのわくわくした表情が印象的でした。

多機能のハイブリッドカメラを搭載

SEKIDOが紹介するのはDJIの最新ドローン、Matrice 300 RTK。ワイドカメラ、ズームカメラ、赤外線カメラ、さらに距離計が一体化したハイブリッドカメラをコンパクトに搭載し、機体重量は約3.6㎏。光学、デジタル合わせて最大200倍のズームにより、人が近づけない場所の点検も可能です。

ボタン一つでカメラを切り替えることができ、赤外線カメラはコンクリートの剥離点検に有用。全体はワイド画面で枠で囲った部分をズームにする分割撮影や360度パノラマ撮影などの多彩な機能が特徴です。実際にドローンをスタジアムの上空高く浮上させて周囲を撮影し、その場で合成して360度パノラマビューを作成するデモンストレーションが行われました。

遠隔操縦でインフラを点検

ドローンを使った橋梁などのインフラ点検サービスを行うジャパンインフラウェイマーク(JIW)が米国Skydio社と共同開発したドローンは、手のひらから飛ばして手でキャッチできるというもの。

これまで入りにくかった橋梁の裏側などの点検に有用です。上下に搭載したカメラの映像をAIが解析し衝突を回避するため、非GPS環境下や高電磁波現場にも対応。遠隔操縦システムを採用し、飛行ルートを生成してAIで自動で飛ばすことができます。

スタジアムの廊下に置いたドローンを会場のパソコンから操縦し、ドローンがプログラム通りに飛行する様子が大型スクリーンに映し出されました。

老若男女が楽しめるドローンサッカー


ワークショップには、ドローンサッカーの体験コーナーが登場。球状のプラスチックフレームに覆われた専用のドローンボールをコントローラーで操作し、コートに設置されたリングを通過させます。

普段からゲーム機などを使っていないと、コントローラーの操作に慣れるのに少々時間がかかりそうですが、ドローンを自由自在に操りチームで対戦するドローンサッカーは、非常にエキサイティングなゲームであるとの印象を受けました。


ドローンのさまざまな可能性に驚かされて、イベントの3時間はあっという間に過ぎ、フェス閉会の時間になりました。

最後に開催地を代表して亀岡市副市長石野茂氏が登壇。観光、スマート農業、点検・測量や災害時の物資運搬などドローンが活用できる分野は多岐にわたり、とくに通信の技術やAIとドローンを組み合わせることで、その可能性は無限大になることを強調しました。

「今回のフェスでドローンをもっと活用できることがわかりました。失敗や成功の体験を積み重ねつつ、次のステージに進んでいきたい」と挨拶し、ドローンフェス2022は閉幕しました。
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