映像クリエイター・岡田 和士さんのYouTubeチャンネルは、ドローンでしかできない演出動画で溢れています。ドローンは新しい表現のツール。これから岡田さんのような映像クリエイターになりたいと考えている方や、自分の動画にドローンを使った映像を取り入れたいという方も多いでしょう。
誰かに喜んで貰いたい、感動を分かち合いたいから動画を趣味で始め、 今はドローンまで使った撮影をさせて頂けるようになりました。 映像撮影・ドローン撮影・編集など、ご依頼あればご相談ください。 Instagram eleven_film_design
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しかし、近年はドローンの国家ライセンス制度を始め、空の交通ルールが急激に整えられ、初心者が知識のないままドローンを飛ばすことが難しくなっています。
今回お話をうかがった岡田さんは、以前はドローン業界最大手DJI社の認定ストアでマネージャーを勤めており、現在はドローンを使ったプログラミング教育の教師もしているという、いわばドローンのプロフェッショナル。
この記事では映像クリエイターであり、ドローンの専門家でもある岡田さんに、初心者がドローン空撮を始める前に知っておくべきことや機体の選び方についてうかがいました。
ドローンの運転は車の運転と同じ。整備されつつある空の交通ルール
__そもそも、まったくの初心者がドローンを飛ばすには、どのような準備をすればよいのでしょうか。たとえば、初心者が「旅行で動画を撮るために、いきなりドローンを買って持っていく」ということは可能ですか?
まず、ドローンを飛ばすためには、相当な下準備が必要です。「旅行に行くので、ドローンを買って現地で飛ばそう」というのは、たとえばアメリカへ旅行するためにいきなりかっこいいバイクを買い、免許もないのに乗ろうとしているようなイメージ。はっきり言えば、かなり無茶です(笑)。
ドローンは近年急激に法整備が進んでいるため、経験のない方が何の知識もなくドローンを飛ばすことは、車でいえば無免許運転と同じ状態。法に触れてしまうだけでなく、人や物を傷つけるリスクもあります。
__具体的には、どのような制度を知る必要があるのでしょうか?
大きなものとしては、2022年の12月にドローンの国家ライセンス制度が始まったことがあります。国家ライセンスは、飛行できる場所によって一等資格と二等資格に分かれています。ライセンスがなくてもドローンを飛ばすこと自体は可能ですが、航空法が定めるドローン飛行禁止空域を飛ばすには、国土交通省へ申請しなければなりません。特に、人口の多い場所での目視外飛行(レベル4)には、一等資格が必要です。
また、2022年6月には機体登録制度が変更されました。今までは200g未満のドローンであれば機体認証手続きが不要でしたが、それが100g未満に引き下げられたのです。100g以上のドローンを登録なしに屋外で飛ばすと、航空法に抵触するおそれがあります。
__100g未満のドローンというと、どの程度の大きさでしょうか?
100g未満のドローンは「トイドローン」とも呼ばれます。これらは「トイ(おもちゃ)」と呼ばれるだけあって、サイズも性能もおもちゃレベル。軽く、不安定なため、屋外で飛ばすのは難しくなります。
空撮用のドローンにはGPSが搭載されており、常に自分の位置を把握しながら飛んでいますが、トイドローンは室内の無風状態の場所で飛ばすことを想定しているため、GPS搭載のものは少ないんです。本体が不安定なうえにGPSもないとなれば、ひとたびドローンを見失ったが最後、再び手元に戻ってくることは難しいでしょう。
さらにいえば、カメラの性能も一般的な空撮に使えるレベルではありません。つまり、ドローンの空撮を現実的に行いたいなら、各種の申請や手続きが不可欠です。
ドローンの利用場面が増えるにつれて事故やトラブルも多くなっているので、気軽な気持ちでは飛ばせないように、法整備が進んでいるんです。
スクール選びのポイントは費用だけじゃない。目的によっても使い分けが必要
__さらに質問させてください。ドローンを飛ばすには、スクールに通う必要があるのでしょうか?スクールに通わなくても、ドローンを飛ばすことはできます。しかし、スクールに通わずにドローンを飛ばすためには、独学で航空法のルールや申請方法を学び、自分でドローンを購入し、どこかの敷地を借りてドローンの飛行練習をしなければなりません。個人的には、あまり現実的ではないと感じます。
スクールに通えば、最低でも10万円以上の受講費がかかってしまうのはネックですが、スクールの敷地で、インストラクターから直接ドローン飛行技術を学べるのは安心材料です。また座学も、必要な範囲を的確に教えてもらえるためメリットは大きいでしょう。
__では、スクールに通うとして、どのような基準で選べばいいのでしょうか?
ドローンスクールは全国に、国家資格の登録講習機関だけでも300校以上ありますし、費用も10万円代〜60万円以上までさまざまですから、選ぶのが難しいですよね。
そのうえで見極めるポイントとしては、同じドローンスクールでも、自分が希望する分野にくわしい講師がいるかどうかに注目しましょう。たとえば空撮をしたいなら、農業や点検に特化したスクールでは希望に沿わない可能性が高いです。こうなると時間とお金が無駄になってしまいますので、事前にホームページ上で確認し、空撮にくわしい講師がいるスクールを選びましょう。
あとはサポート体制ですね。スクールには、単に飛ばすための技術や知識を教えるだけのところもあれば、飛行申請や機体登録までをサポートしてくれるところもあります。予算だけでなく、専門性やサポート体制を見て決めることが大切ですよ。
初心者へのおすすめはDJI社のドローン|先代モデル、中古品に注意!
__スクールを出て初めて空撮にチャレンジする際に、おすすめのドローンを教えてください。初心者でも経験者でも、空撮をするなら私は「DJI社」のドローンをおすすめします。DJI社は、世界シェア90%以上を誇る中国のドローンメーカーです。初心者なら特に、DJI社がベストでしょう。
DJI technology empowers us to see the future of possible. Learn about our consumer drones like DJI Mavic 3 Pro, DJI Mini 4 Pro, DJI Air 3. Handheld products like Osmo Action 4 and Pocket 2 capture smooth photo and video. Our Ronin camera stabilizers and Inspire drones are professional cinematography tools.
https://www.dji.com/jp >
__DJI社のドローンは、他とどう違うのでしょうか?
少なくとも空撮においては、価格や性能が他社とは比べものにならないくらい優れています。
たとえば、ドローンを飛ばすとき、機体が風にあおられて左右に傾いてしまうことがあります。しかし、DJI社のドローンは、カメラ部分が飛行の揺れに応じてバランスを保つようになっています。これを「ジンバル」というのですが、この技術が搭載されていることで、初心者が撮った映像でもブレがなく、プロのような仕上がりになります。
これだけの技術をDJI社と同程度の価格で作ることが、他のメーカーにはまだできていないんです。
__なるほど、ではDJI社のドローンのなかでも、どの機種を買うべきでしょうか?
DJI社のドローンには、価格・性能順に「ミニシリーズ」、「エアシリーズ」、「プロシリーズ」があります。アップル社のiPhoneシリーズと似たイメージですね。各シリーズが、その時代によってバージョンアップされていきます。たとえば、現在ミニシリーズの最新機種はミニ3ですが、ひとつ前の世代のミニ2もまだ販売されています。
DJI Mini 3 is a compact, ultra-lightweight camera drone, ready for adventure. It features an extended battery life, stunning 4K HDR, and True Vertical Shooting.
https://www.dji.com/jp/mini-3?site=brandsite&from=nav >
__では、今ならDJI社のミニ3がおすすめなんですね。たとえば、先代機種のミニ2を安く購入したり、ミニ3でも中古で価格を抑えたりすることも可能でしょうか?
先代機種や中古品の購入はおすすめできません。DJI社はバージョンを変更すると、先代の部品を作らなくなります。ですから、たとえば型落ちのミニ2を安く購入した場合、プロペラやバッテリーなどの消耗品を交換したいと思っても、製造終了で手に入りにくくなるんです。
また、中古品もやはりおすすめできません。しっかりメンテナンスがされていないものだと、センサーが壊れていて制御不能になる可能性もありますし、バッテリーが劣化していることもあります。それらが中古品では見分けがつかないんです。
__なるほど、ではやはり、正規品で最新機種を買うのが望ましいということですね。
はい。初めての方なら、ミニ3で十分でしょう。機体が軽いので持ち運びも簡単ですし、故障したときの保証リスクも少なく済みます。今は、ミニでもかなりカメラ性能が高くなっていますから、プロとの映像の違いは一般の方にはそれほど気にならないでしょう。
また、正規品で購入すると、1年間の保険が付いてきます。車と同じで、ドローンの運転には事故がつきもので、保険は欠かせません。保険を後付けすることを考えると、中古品や型落ち品を購入してもそれほど価格は変わらないことも多いですから、正規品で、最新機種を購入するのが総合的に見てベストです。
取得すれば世界が変わる!ドローン免許で未来はもっと面白くなる
__ここまでのお話を踏まえると、ドローンでの空撮は決して簡単ではないのですね。
たしかに、ここまでの話を聞くと「難しい」「面倒だ」と思ってしまうかもしれません。事実、ややこしい手続き等も多いですから、お仕事で使うならともかく、趣味の中ではかなり手間がかかる部類になります。
しかし、だからこそ免許やスキルを持っていることの価値も高いんです。ドローンは空撮だけでなく、災害対応等の現場でも使われるようになってきています。今後は警察や消防でのドローン需要も増えていくでしょう。通常、警察官や消防士になるには体を鍛えなければなりませんが、ドローンの操縦ができれば、肉体的な強さに自信のない方でも社会貢献がしやすくなるはずです。
__ドローンを通じて新たな可能性が見出せるわけですね。
その通りです。2025年の大阪万博では、ドローンタクシーが人を乗せて街中を飛ぶそうです。まさに「空飛ぶクルマ」の実現です。また、ドローン物流などはかなりの実証実験が行われており、いずれドローンが荷物を運んできてくれることが当たり前になるかもしれません。ドローンが溶け込んだ社会が訪れるのは、決して遠い未来の話ではないでしょう。
そして何より、ドローンには夢があります。制度面や運用面などハードルが高い部分は事実としてありますが、少しでも関心があるのであれば、今のうちからチャレンジしてみてください。きっと、おもしろいチャンスに巡りあえるはずです!