(連載)初めての空撮ガイド|プロの映像クリエイターに聞く、空撮前の準備とドローンの選び方
近年はドローンの国家ライセンス制度を始め、空の交通ルールが急激に整えられ、初心者が知識のないままドローンを飛ばすことが難しくなっています。 この記事では映像クリエイターであり、ドローンの専門家でもある岡田さんに、初心者がドローン空撮を始める前に知っておくべきことや機体の選び方についてうかがいました。
この記事をcoeteco.jp で読む >まずはドローンスクールに通い、ライセンスを取得して、ようやくドローンを購入。ようやく迫力のある映像を撮影できると思いきや……ドローンを飛ばすまでには、まだ超えなければならないハードルがあります。
今回は岡田さんに、購入したドローンを実際に飛ばすまでにすべきことや、飛ばす際に知っておくべき知識についてうかがいました。
誰かに喜んで貰いたい、感動を分かち合いたいから動画を趣味で始め、 今はドローンまで使った撮影をさせて頂けるようになりました。 映像撮影・ドローン撮影・編集など、ご依頼あればご相談ください。 Instagram eleven_film_design
この記事をwww.youtube.com で読む >ドローンを飛ばす前に、機体登録と包括申請
__前回はドローンの選び方についてうかがいました。では、実際にドローンを購入し、いざ空撮に行こうという段階では、どのような準備が必要でしょうか。
ドローンを飛ばしに行く前に、まずは国土交通省に対して「機体登録」と「包括申請」をしなければなりません。
機体登録は、車のナンバープレートと同じシステムです。機体登録をしておくことで、万が一ドローンが墜落したときなどに所有者を確認できます。これは案外時間がかかりますので、ドローンを購入したらすぐに登録しておきましょう。
機体登録が済んだら、次は登録番号と飛行許可を紐づけます。これが「包括申請」という手続きです。1年間、日本の空でドローンを飛ばすための許可申請ですね。機体登録と包括申請は、両方とも国土交通省の「ドローン情報基盤システム2.0」のサイトからオンラインで申請できます。
申請には名前や住所、電話番号などの個人情報の他に、機体のシリアルナンバーの入力が必要です。実はこのシリアルナンバーがどこにあるのかがわかりにくいんです。私がDJI社の販売店に勤務していたときに、一番多かった問い合わせがこのシリアルナンバーの場所でした。
DJI社製に限らず、ほとんどのドローンではバッテリーを開けたところの内側に、英数字あわせて14桁のシリアルナンバーが記載されています。
__国が定める飛行禁止区域以外であれば、包括申請は不要ではないのですか?
そのとおりです。しかし、申請不要のエリアで飛ばす予定でも、私は申請しておくことをおすすめします。ドローン自体がまだまだ珍しいので、どこかでドローンを飛ばしていると、警察に通報されてしまうことがあるんです。
警察もまだドローン関係法に詳しくない方が多いので、「ここは許可が必要のない区域なんです」と言っても通じないこともあります。ですから、たとえ申請が要らない地域で飛ばすつもりだとしても、包括申請は取っておくに越したことはないでしょう。
__機体登録と包括申請を取得するのに、どのくらいの日数がかかりますか?
時期にもよりますが、1ヵ月〜2ヵ月程度みておいた方がいいですね。また、機体を改造していると機体登録ができるまでさらに時間がかかってしまうので、空撮の予定は余裕をもって立てましょう。
__2022年12月からはドローンの国家ライセンス制度が始まりましたが、ドローンを飛ばすうえで今後免許が必須になるのでしょうか?
現時点では、飛行禁止区域以外で一般的な飛ばし方をする限り、免許がなくてもドローンを飛ばせます。しかし、今後ドローンを使う仕事に就きたいと考えている場合には、免許を取得しておいた方がいいでしょう。
現在は包括申請制度があるため、必ずしも国家ライセンスは必要ありませんが、ゆくゆくは仕事で使う場合、ライセンスは必須になってくるはず。特に、消防や救助活動などの重大な仕事でドローンを使いたい方は、一等免許の取得を目指しましょう。
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この記事をcoeteco.jp で読む >手続きだけでなく、周囲への配慮を忘れずに
__機体登録と包括申請ができたら、次の日からドローンを飛ばしてもよいのでしょうか?国に申請したからといって、許可された範囲内ならどこでもドローンを飛ばしていいわけではありません。法的には問題ありませんが、倫理的・道徳的な問題にも配慮が必要です。
たとえば、民家のある場所で飛ばした場合、室内がドローンのカメラに映り込む可能性があります。実際は映っていなくても、不快に感じる方も多いでしょう。最悪、盗撮で通報される可能性もあります。
また、ほとんどの公園ではドローンを飛ばすことが禁止されています。公園はあくまでも子どもたちが安全に遊ぶ場所。大人がラジコンを飛ばして遊ぶ場所ではありませんから。
ドローンを飛ばす際には土地の所有者だけでなく、周辺の方に対する十分な配慮が必要です。
____公園がほとんどだめなら、どんなところで飛ばせばいいのですか?
一番いいのはドローンのコミュニティに入って、実際にドローンを飛ばしている人から教えてもらうことです。たとえば私が河川敷でドローンを飛ばしていたからといって、誰でもドローンを飛ばせるとは限りません。実際はドローンを飛ばす前に、周囲の住民や土地の所有者などに一人一人お願いをして、許可をいただいていることが多いんです。
一人でドローンを始める前に、コミュニティに入ったりSNSで繋がったりして、先人から情報を得るのが一番いいでしょう。
ドローンの充電は60%、強風は最大の敵
__実際に空撮に行く際にはどのようなことに気を付けるべきでしょうか。ドローンを長距離持ち運ぶ際には、バッテリーの残量に注意が必要です。ドローンのバッテリーはスマートフォンのものとは違い、100%の充電状態だと過放電となる可能性があります。
ドローンの適度な電池残量は60%。長距離持ち運ぶにしても家で保管しておくにしても、60%の充電をキープしておくのがバッテリーを長持ちさせる秘訣です。
たとえば旅行先で空撮したいと思ったら、移動中は60%をキープし、ドローンを飛ばす前日に100%まで充電するのがベストでしょう。
__当日の天候はどうでしょう?前回雨の日はドローンを飛ばせないとうかがいましたが、暑い日、寒い日や風の強い日などは飛ばせますか?
当日の天候が一番の問題かもしれませんね。国の許可を取り、周囲の根回しを済ませて、充電も完璧、という状態でも、当日その場に行ってみて天候が悪かったらドローンは飛ばせません。
特に風は、ドローンの大敵です。どの程度の風速まで耐えられるかは機体の種類によっても異なりますので、まずはご自身が購入したドローンが風速何メートルまで耐えられるのかを確認しておきましょう。そのうえで当日は、風速機を持参するといいでしょう。風速機で風の強さを測ることで、その日の風の強さに自分のドローンが耐えられるかがはっきりわかります。
ただし、風は生き物。急に突風が吹くこともありますし、そもそも地上と上空では風の強さが違います。
少し風が強いなと思ったら、少しずつドローンを浮かせてみて、どのくらい映像がブレるのかを確認してみるといいでしょう。また、最近のドローンは風が強いと警告してくれるものもあります。
__暑い日や寒い日はどうでしょう?
これはドローンというよりバッテリーの問題ですが、酷暑、極寒の地ではドローンは飛ばせないことが多いです。熱すぎるとオーバーヒートしてしまいますし、寒すぎるとそもそもバッテリーが動かない。
プロのカメラマンで雪山のドローン映像を撮影する方もいますが、彼らはドローンを飛ばす場所までバッテリーを懐で温めたりしているんです。
十分にドローンに慣れ、操縦技術も上達するまでは、酷暑、極寒での撮影は避けた方がいいと思います。
ドローンは繊細で面倒。でも特別なツール
__その他、意外と忘れがちなことはありますか?ドローンの充電だけでなく、スマートフォンの充電も忘れないようにしましょう。一般的な空撮用ドローンは、アプリをダウンロードして、スマートフォンをコントローラー代わりにして使います。
いざ飛ばそうと思ったときにスマートフォンの充電がない、というミスはよくあります。実際に飛ばすときには、ドローンもスマートフォンも、両方充電しておきましょう。
あとは、撮影した動画を保存するためのSDカード。意外と前回の撮影データを移すときに外したまま忘れがちです。もちろん機体のハードディスクにも保存はできますが、動画だとすぐに容量オーバーしてしまいます。
今では機体内蔵ハードディスクが1TBあるようなドローンもありますが、そうでなければ必ずSDカードを準備していきましょう。
__ここまでのお話を聞くと、ドローンを飛ばすまでにはかなりたくさんのハードルがありそうですね。
そうかもしれません。しかし私は、ドローンで撮影した動画には他にはない魅力があると思っています。
私が最初に動画撮影に興味をもったのは、DJI社製の「DJI Pocket 2」という手持ちカメラを購入したことがきっかけでした。その名のとおりポケットサイズなので、片手で持って歩き回り、いろんな場所を撮影しました。
DJI Pocket 2 - Magic At Hand - DJI
Compact and portable, DJI Pocket 2 is a stabilized 4K camera made to let you capture your moments with magic at hand.
この記事をwww.dji.com で読む >しかし、コンパクトだからこそ物足りなかった。もっと迫力のある、映画のような映像を撮りたいと思って、ドローンでの空撮を始めたんです。
今から始めようとする方にとって、ドローンは制限ばかりで面倒なツールだと感じるかもしれません。しかし条件さえクリアしてしまえば、ドローンは映画のような非日常の世界を映し出してくれる、特別なツールになるはずですよ。