(連載)初めての空撮ガイド|プロの映像クリエイターに聞く、飛行時にありがちなトラブル・注意点

飛行時にありがちなトラブルと綺麗な映像を撮影するコツ
これまでプロの映像クリエイターである岡田和士さんに、ドローンでの空撮ノウハウをうかがってきた「連載・初めての空撮ガイド」。第1回ではドローンの選び方、2回目ではドローンを飛ばす前にすべきことをうかがいました。

(連載)初めての空撮ガイド|プロの映像クリエイターに聞く、空撮前の準備とドローンの選び方

近年はドローンの国家ライセンス制度を始め、空の交通ルールが急激に整えられ、初心者が知識のないままドローンを飛ばすことが難しくなっています。 この記事では映像クリエイターであり、ドローンの専門家でもある岡田さんに、初心者がドローン空撮を始める前に知っておくべきことや機体の選び方についてうかがいました。

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(連載)初めての空撮ガイド|プロの映像クリエイターに聞く、空撮準備と撮影時の基礎知識

ドローン空撮に挑戦したい初心者のための「初めての空撮ガイド」。資格を取得してドローンを購入しても、すぐに空撮ができるわけではありません。映像クリエイター・ドローン専門家の岡田さんに、ドローンを実際に飛ばす前にすべきこと、飛ばす際に知っておくべき知識を伺いました。

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ドローンスクールに通い、ライセンスを取得して国への申請を終え、必要な機材も、必要な手続きも全てそろったところで、今回はようやく実際に飛ばす際の注意事項についてうかがいます。さらには特別に、プロの映像クリエイターとしてドローンで美しい映像を撮るポイントについても、岡田さんに教えていただきました。

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Kazuhito Okada

誰かに喜んで貰いたい、感動を分かち合いたいから動画を趣味で始め、 今はドローンまで使った撮影をさせて頂けるようになりました。 映像撮影・ドローン撮影・編集など、ご依頼あればご相談ください。 Instagram eleven_film_design

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発生しやすい電波遮断は、飛行前の「ロケハン」で確認

――今回は、実際に空撮をする際にやりがちなミスや、トラブルについて教えてください。国土交通省の事故統計によると(無人航空機に係る事故等報告一覧)、接触と操作不能が多いようですね。

そうですね、電波の遮断によってドローンが操作不能になってしまうことはよくあります。ドローンは通常、機体とコントローラーが電波で繋がっていますが、それが物理的に遮断されてしまったり、別の電波が間に入ってきてしまったりすると、機体とコントローラー間の電波が途切れてしまいます。

難しいのは、電波が目に見えないことです。たとえば山の近くでドローンを飛ばしている場合、山の向こうに強い電波を発するものがあると、近づくほどに電波が乱れてしまいます。それに気づかずに山の奥まで飛ばしてしまうと、完全にコントロール不能になってしまうこともあるでしょう。

――電波の遮断が起きやすいのは、どのような場所が考えられますか?

まずはビルの多い街中が考えられます。ビルは物理的に電波を遮断するので、危険も多い。また、山でも電波塔があると、その影響を受けてしまいます。あとは電車や新幹線も強い電波を発するので、周辺の飛行には注意が必要です。

周辺の電波状況は、飛ばす前にドローンの操作画面上で確認できます。画面上で電波状況が安定しているかどうかを確認し、ゆっくりとドローンを上昇させてみてください。上限の150メートル上空までドローンを上昇させてみて、電波の乱れがないかを確認してから撮影を開始することをおすすめします。ただし、仕事で撮影を請け負う際には、前もってロケハンし、チェックしておくことが重要です。

――チェック段階ではわからなくても、飛行させていて突然電波が遮断されることはないのでしょうか?

電波が遮断され、完全にコントロールを失ってしまうまでには段階があります。まず、コントローラーで受信している映像が、少しずつ乱れてきます。Wi-Fiが不安定なときの動画のように、カクカクとコマ送りのようになって来るんです。次に、もっと電波が悪くなると動画がフリーズしてしまい、最終的には真っ暗になってしまう。そうなると操作がまったく効かなくなります。

動画がカクカクしてきたら、これ以上は危険だと判断し、引き上げるようにしましょう。これを覚えておくと、ドローンをロストしてしまうことが少なくなります。

リターンボタンで海にドボンも!注意したいGPS設定

――飛行中にGPS信号が失われて、ドローンを失ってしまうことはないのでしょうか?

鉄板の上を飛行するなど、特殊な環境下でなければ、GPS信号が失われてしまうことはあまり考えられません。

GPSで気を付けなければならないのは、むしろ初期設定です。始めたばかりの方だと、ドローンをセットして、すぐに飛ばし始めてしまうことがよくあります。しかし、ドローンがGPS信号をキャッチするまでには時間がかかります。GPSをキャッチできないまま飛行させてしまうと、ホームポイントが決められていないので、ドローンが予想外の動きをしてしまうこともあります。

飛ばす際には2分ほど待って、必ず「ホームポイントを更新しました」という案内が出るのを待って、飛行させるようにしましょう。

――ホームポイントを設定すると、ドローンがその場所に戻ってくるのですね。

そうです。一般的によく使われているDJI社のドローンであれば、リターン・トゥ・ホームのボタンで、最初に設定したホームポジションまで自動で戻ってきます。しかし、ここで注意しなければならないのは、移動中のポジション設定です。

よく、海上で船に乗りながらポジション設定をしてドローンを飛ばし、リターンボタンで戻そうとする方がいます。しかし、ドローンはコントローラーがある場所ではなく、最初に設定した地図上のポイントに戻ります。そのため、ドローンが海に沈没してしまうことがあるんです。これは、海釣りをする方やマリンスポーツを楽しむ方によくあるミスです。移動中にドローンを使用する場合には、必ず手動でドローンを戻すようにしましょう。

また、ドローンは精密機器です。車移動などで長時間振動を受け続けると、センサーがずれてしまうことも考えられます。飛ばす前にはすべてのセンサーが正常に働くかどうかも確認しなければなりません。

墜落・接触事故を起こしてしまったら、国土交通省へ報告

――今まで電波やGPSなど、機能的な問題についてうかがいましたが、パイロットのテクニック的にありがちなミスはありますか?

ドローンの性能が高くなり、衝突・墜落事故は本当に少なくなりました。最新機種になると、ほとんど墜落事故は起こらなくなっています。現在のドローンはほとんどが全方位障害物センサーがついていますので、その点においては安心感は高まっています。

ただしそれでも、センサーに全てを任せるのは危険です。電線やネット、木の枝などに気づくことができなければ容易に事故につながるからです。センサーがついているから安心だよね、ではなく、目視での障害物確認は絶対に怠ってはいけません。

また、風速の確認やバッテリーチェックも重要です。特に飛行させている最中でもバッテリーはどんどん減っていくので、私は50%を切ったら着陸を考えるようにしています。

テクニックというよりも、環境や状況をしっかり把握しておくことが、衝突・墜落防止に繋がります。


――衝突後、機体に損害がないかはどのように判断すべきでしょうか。

万が一事故を起こしてしまったら、たとえ外傷がなかったとしても、メーカーや販売店で調べてもらうべきです。ドローンは精密機械ですので、一見してわからないところが故障している場合も十分にあります。私がドローン販売に携わっていた頃には、モーター、バッテリー、センサーの3カ所が、よくある故障部位でした。

また、あまりに古い年式のドローンを使っていたり、コントローラーとして利用するスマートフォンの機種があまりに古かったりした場合にも、事故は発生しやすくなります。人気のDJI社の機種でいうと、ミニシリーズとエアシリーズの場合、2より古い機種はリスクが高いと考えましょう。

同じように、スマートフォンが古すぎることも事故原因になり得ます。ドローンのコントローラーは、専用アプリをダウンロードしたスマートフォンで代用するのが一般的です。しかし、このスマートフォンが古すぎると、アプリを動かすだけで精いっぱいで、オーバーヒートしてしまう可能性もあるのです。

このように、衝突・墜落リスクを防ぐためには、現場の環境把握だけでなく、ドローン本体の性能にも配慮が必要なのです。

――実際に衝突や墜落の事故を起こしてしまった場合、どのように対処すればよいのでしょうか?

事故を起こしてしまった場合には、国土交通省への報告が必要です。国土交通省では「事故・重大インシデントについて」のなかで、報告すべき事故内容と報告方法について定めています。事故を起こした場合には、まずはドローンを安全なところに着陸させてから、けが人がいる場合は救護し、事故の詳細を国土交通大臣に報告しなければなりません。

報告すべき事故は、「事故」と「重大インシデント」に分けられていますが、基本的には人に接触した場合や他人の物を損壊した場合と、ドローン自体に問題が発生した場合は報告が必要です。

他人の敷地内に入ったドローンを放棄しても、機体の登録番号から必ず持ち主は判明し、責任を追及されるでしょう。ドローンを飛ばすということは、常に監視の下にあるということを忘れないようにしましょう。

プロとして、「飛ばさない」判断ができるドローンパイロットになってほしい

――他に注意すべきことはありますか?

ドローンを飛ばすときには、周囲のプライバシーに配慮しなければなりません。実際、ドローンは上空150mまで飛ぶので、通常映像からは人物を判定できず、誰かのプライバシーを侵害することはないでしょう。しかし、見る人からはそれがわかりません。カメラを搭載したドローンが周囲を飛んでいるだけで、盗撮されているのではないかと不安に思う方も多くいます。

最もよい方法は、事前に周辺住民にあらかじめ説明をしておくことです。未成年者のいる学校周辺や女性専用マンション上空、温泉施設の上空などには特別な配慮が必要でしょう。人としての最低限の配慮が、ドローンパイロットとしてのリスクヘッジにもなるのです。

――最後に、これからドローンで空撮を楽しみたい方に向け、きれいな映像を撮るコツや、今後のアドバイスがあれば教えてください。

きれいで印象的な映像というのは、意外と単純な映像なのだと私は思います。ドローンがカメラを前に向け、一定の速さで真っすぐに飛ぶだけでも美しい映像になります。アクティブにドローンを右往左往させるよりもずっと、印象的な映像が撮れるでしょう。一定の速さでドローンを飛ばすことこそ、実は技術が必要なんです。

今後、ドローンの空撮をお仕事にしたいと考えている方には、ぜひ「飛ばさない」という判断ができるようになってほしいと思います。現場に入ると、クライアントはやっぱりドローンが飛ぶところを見たいと期待するでしょう。

「もっとギリギリを攻めてほしい」とか、「人に近づけてほしい」とか、ドローンに詳しくないからこそ、無理な依頼をされることもあるかもしれません。そんなとき、一瞬でもドローンが落下する可能性が頭をよぎったら、「できません」と言える勇気をもってほしい。

ドローン以外にも、美しい映像を撮る方法はあります。プロとして、正しい判断ができるドローンパイロットになってほしいと思います。

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