【ドローンスクール運営ノウハウ|連載④】ドローンスクール体験会の入会率改善戦略|実践的手法まとめ
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ガイド
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コエテコドローン責任者
柴垣 泰2001年GMOメディア株式会社に入社後、営業責任者を経てドローン関連の新規事業開発を担当。コエテコ・ドローンの事業責任者として全国100校以上のドローンスクールを取材し、業界動向を深く把握。国土交通省や有識者への取材を通じて、ドローン・ロボティクス分野の最新トレンドと事業者の情報に精通。E.R.T.S産業用無人航空機操縦技能認定を保有。幅広い人脈を活かしてドローン関連企業・自治体・教育機関をつなぐ橋渡し役を担い、業界の発展に努めている。
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本記事では、体験会の入会率を向上させる具体的な戦略を解説します。参加者心理の理解から効果的なプログラム設計、最新ドローンシミュレーターの活用法、成約につながるフォローアップ戦略まで、実践的なノウハウをお伝えします。
ドローンスクールを取材していると、多くの運営者から『Webサイトからの問い合わせが伸びない』『せっかく作ったサイトが活用できていない』という悩みを聞きます。 実際に100を超えるスクールのWebサイトを見てきましたが、優秀な講師陣と充実したカリキュラムを持ちながら、Webサイトが足かせになってしまっている「もったいない」事例が本当に多いのです。 ...
2025/09/29
ドローンスクール体験会で入会率向上が重要な理由

見込み客との決定的な接点となる体験会
ドローンスクール体験会は、見込み客との初回接触で最も重要な機会です。Webサイトやパンフレットでは伝えきれない「実際の学習環境」「講師の指導力」「受講生の雰囲気」を直接体感できる貴重な場といえます。体験会参加者の多くは「ドローン操縦に興味はあるが、実際の受講は迷っている」状態です。この段階で満足度の高い体験を提供できれば、興味を具体的な入会行動につなげる可能性が大幅に高まります。
ドローンスクール業界の入会率傾向と成功事例

習い事業界全般では「体験会からの入会率30〜60%」が一般的ですが、ドローンスクールは特殊な傾向があります。1名からでも体験会を実施するスクールが多く、単純な入会率計算が困難なケースもあります。
体験会・説明会から高い入会率を維持しているスクールの共通点
- 参加者個別の関心事・目的を的確に把握
- 実際の授業をイメージしやすい充実した体験内容
- 不安や疑問への丁寧な個別対応
- 限定特典・キャンペーンの効果的活用
これらの要素を体系的に導入することで、入会率の大幅改善が期待できます。
ドローンスクール体験会参加者の心理分析

参加動機パターンと不安要素の把握
体験会に参加する人々の動機は多岐にわたります。なぜ体験会に参加を希望したのか、動機の主なパターンを把握しておきましょう。個人参加者の主な動機
- 趣味としての空撮・ドローン操縦習得
- 転職・キャリアアップのスキル獲得
- 定年後の新趣味・副収入源の検討
- 家族・知人の影響による興味
企業派遣参加者の主な動機
- 業務でのドローン活用検討
- 法令遵守のためのライセンス取得
- 競合動向を踏まえた情報収集
一方で、参加者が抱く不安要素も理解しておく必要があります。
参加者が抱く典型的な不安
- 操縦技術への不安(「うまく操縦できるか」)
- 費用対効果への疑問(「費用に見合う価値があるか」)
- 時間的制約(「仕事との両立は可能か」)
- 年齢・経験への心配(「ついていけるか」)
「興味」から「入会決断」への転換ポイント
参加者が入会を決断する転換点には共通パターンがあります。最重要なのは「自分にもできそうだ」という実感を得られる瞬間です。この実感は実際の操縦体験や同じ境遇の卒業生事例で生まれやすくなります。また、「今始めないと機会を逃す」という適度な緊急感も転換点となります。ただし、過度なプレッシャーは逆効果のため、自然な流れでの動機づけが重要です。
参加者の期待値管理
体験会では、参加者のドローンに対する先入観や期待値を適切に把握し、現実的な理解に導くことも大切です。「簡単に資格が取れるはず」「すぐに仕事に活用できそう」と期待が極度にふくらみすぎると、後々の満足度低下につながる可能性があります。逆に「難しそう」「危険そう」といった過度な不安も、意欲を削ぐ要因となります。
たとえば ジムの体験トレーニング を思い浮かべてください。
「1週間後にはムキムキになれる」「1ヶ月で10kgの脂肪を落としてナイスボディに!」と過大な期待をさせれば、結局は達成できずに落胆につながります。
逆に「筋肉がつくまでには半年以上かかる」「苦しいトレーニングこそ結果に結びつく」と“大変さ”ばかり伝えると「自分には無理だ」と感じられてしまうでしょう。
体験したその日から筋肉が大きくなるわけではありませんが、「体を動かすのは気持ちいい」「続ければ変わっていきそうだ」という実感を得られたらどうでしょうか?「よし、挑戦してみるか」という気持ちがわいてきそうですよね。
ドローンも同じで、“正しい範囲での価値と手応え”を伝えることが、入会の決断で大切な要素なのです。
効果的なドローンスクール体験会プログラムの設計

入会率向上のための基本プログラム構成
効果的な体験会は「説明→体験→クロージング」の3段階構成を基本とします。所要時間は1〜3時間程度が最適です。体験会の開催は、午前・午後・夜/平日・土日祝日と、日時もバリエーションをつけて、誰でも参加しやすくしましょう。以下は3段階構成を基本としたプログラム構成の一例です。

第1段階:情報提供・説明(30分)
- ドローン業界の現状と将来性
- 国家ライセンス制度の概要とメリット
- 業務・趣味両面での活用事例紹介
- 自スクールの特徴・強み・実績
- 受講システムと料金体系
第2段階:実践体験(45分)
- ドローン機体の基本操作説明
- シミュレータでの操縦体験
- 小型ドローンでの実機操縦体験
- 個別質疑応答
第3段階:フォローアップ(30分)
- 個別相談・カウンセリング
- 入会手続き・特典説明
- スケジュール調整・次回予約
傾聴力を活かした個別対応の重要性
単なる情報発信ではなく「傾聴力」が入会率向上の鍵となります。傾聴力とは、相手の話を深く理解し、信頼関係を築くためのコミュニケーション力です。参加者の本音や不安を引き出し、それに応じた柔軟な対応ができるかが成約率を大きく左右します。
効果的な傾聴テクニック
- 相づち・うなずきで話しやすい雰囲気作り
- 相手の言葉を言い換えて確認(例:「授業についていけるか心配なんですね」)
- 結論を急がず最後まで聞く姿勢
参加者タイプ別の情報提供戦略

私の取材経験からも感じることですが、参加者のニーズを見極め、そのタイプに刺さりやすい情報を提供できるスクールほど、入会率が高い傾向にあります。
初対面で相手の属性を正確に見極めるのは簡単ではありませんが、前述したように「傾聴力」を活かして、参加者の目的を見極めましょう。
参加者がスクールに求めているものがおおよそ把握できた時点で役立つのが、情報提供のテンプレート化です。
情報提供テンプレートの準備例
- 最新の国家ライセンス取得実績(具体的な数字を出しておく)
- 国家ライセンス取得のメリット(DJIの一部機種は条件つきで承認が不要になる、など)
- 企業でのドローン活用成功事例(コエテコ記事などを参考に)
- 趣味活用者の実践スタイル紹介
- 卒業生が重視したポイント(料金以外も含む)
- 自スクール独自の強み・付加価値
- 限定特典・キャンペーン情報
これらをまとめておき、テンプレート化しておけば、どのスタッフや講師も体験会や説明会をスムーズに行えます。
具体的な対応例
まず、情報提供を体系的に整理したテンプレートを用意しておきます。そして実際に参加者と話をしながら、相手のニーズに合わせて内容を調整していくのがポイントです。
たとえば、「仕事に活用したい」という意向を感じ取ったら、資格取得の合格率や卒業生の成功事例を重点的に紹介します。「卒業生の○○さんは資格取得後に職場で新たなドローン事業を立ち上げ、売上向上に貢献されています」といった具体的な話が効果的です。
一方、60代で趣味と実益を兼ねてドローンを学びたいという方には、70代で資格取得した実例や、空撮を趣味からアルバイトに発展させた事例を紹介するのがよいでしょう。
「当スクール最高齢の卒業生は72歳で、今では地元の観光PR動画を手がけて月4万円の副収入を得ています。その方も最初はリタイア後の趣味として始められたのですが、当校で実践的な練習を積み、案件の受注についてもご相談に乗りながら少しずつ実績を伸ばしたんですよ」という話なら、「自分にもできそうだ」と感じてもらえるはずです。
このように参加者の反応を見ながら、説明の重点を調整していくスクールは成果が出やすいと感じます。
ドローンシミュレーター活用による体験効果の最大化

シミュレーターがもたらす安全で効果的な操縦体験
ドローン操縦シミュレーターは体験会において極めて効果的なツールです。実際の操縦感覚を安全環境で提供できるため、初心者の不安解消と学習意欲向上を同時に実現できます。シミュレーターの最大のメリットは、初心者でも機体破損や事故の心配なく、リアルな操縦感覚を体験できることです。これにより「実際の操縦への期待感」を効果的に醸成できます。
体験会でのシミュレーター導入戦略
シミュレーター活用のポイント- 操作方法の丁寧な説明とサポート
- 簡単なミッション設定による達成感の提供
- 実機との違い・共通点の適切な説明
- 複数人参加時の待ち時間対策
待ち時間の有効活用法
- 専属スタッフによる個別質疑応答
- 空撮映像・ドローンショーの鑑賞
- 各種機体展示と特徴説明
- 卒業生作品・活用事例の紹介
シミュレーターは各校に1台といったケースが多いので、体験会の参加者数が数人以上になると待ち時間が発生します。
待ち時間もうまく活用しましょう。前の人の体験を一緒に見ながらスタッフが解説したり、ここまでの不明点に回答したりする時間にできます。一定の人数以上になるようなら、空撮映像やドローンショーをまとめた動画などをスクリーンで流すのもいいですね。
シミュレーターがあると「ドローンスクールの設備も充実しているな」という印象を与えます。さらに実機を展示し、特徴の説明書きなども添えておく、卒業生の作品等を展示したり紹介したりすると、スクールの印象度も高くなります。
実体験に基づくシミュレーターの評価
私は実際に複数のシミュレーターを体験しています。率直な印象としては、ドローンのシミュレーターはまだ各社で定義がまちまちだと感じます。
たとえば、ラジコン機用の受信機を使っているためスティックの操舵感が実技試験で用いられるプロポとはかなり異なるものもあれば、パソコンの画面を通じて操作感を学べるタイプ、さらにはVRゴーグルを使って没入感を高め、よりリアルな体験に近づけているものまでさまざまです。
過去に体験した中には「映像がカクカクして実機との差が大きい」「操作の反応が遅い」といった使いづらさを覚えるものもありました。しかし、技術は年々進化しており、最新のシミュレーターほど現実に近い体験が可能になっています。
展示会などでもドローンに限らず、さまざまなジャンルでシミュレーターは自社サービスや商品の魅力を伝える重要なフックとして多用されています。
体験会においても、実機を飛ばす前にドローンの楽しさを安心して味わえることで参加者の不安を和らげ、結果的に入会の後押しにつながる非常に効果的なツールです。
入会率向上のためのクロージング戦略

ドローンスクール体験会当日の効果的なクロージング手法
体験会成功の鍵は、当日の「その場入会」を自然な流れで促進することです。限定性を活用した動機づけ
- 体験会参加者限定の特別価格
- 期間限定の教材費無料特典
- 次期開講クラスの残席情報
段階的な意思確認プロセス
- 「ドローン操縦体験はいかがでしたか?」
- 「実際に資格取得してみたいと思われますか?」
- 「受講時期についてはいかがお考えですか?」
- 「ご不明点やご心配な点はありませんか?」
実践ポイント(声掛けで意識すること)
- 短く/具体的に:長く説明すると“検討疲れ”になるので短くまとめる
- 選択肢を出す:Yes/NoよりAかBを選ばせる方が決断しやすい
- 小さなYesを積む:資料送付・日程候補提示など「次の小さな約束」を目標にする
- NG例:×「今日決めてください」/×「今すぐ契約で割引します」→ 強引に聞こえるので避ける
法人・個人別のクロージングアプローチ
法人向け3ステップアプローチ
- 現状把握:「どの業務で活用できそうに感じましたか?」
- 意思決定フロー確認:「社内の決裁者・手続き期間は?」
- 次の小さな約束:「無料トライアルと見積り、どちらが先がよいですか?」
法人向けでは、意思決定の決裁者やスケジュールを聞くとよいでしょう。
肯定的な回答であれば「では決裁者の方向けに要点だけまとめた1枚資料をお作りします」と伝えれば、引き続き接点を持ってアプローチが可能です。未確定な様子であっても「導入メリットと想定コストだけまとめてお渡しします、送付してもよろしいですか?」と次へとつなげられます。
「小さな約束」はソフトクローズの一種で、いきなり入会を迫るのではなく「無料トライアルと見積もり」というふたつの選択肢を提示し、選んでもらう方法です。どちらを希望しても、相手との関係を継続でき、次のステップへと進めます。
個人向け(フリーランスや副業を想定)3ステップアプローチ
- 体験感触の確認:「仕事で使える手応えはありましたか?」
- 本気度の測定:「資格重視コースと実務重視コース、どちらが近いですか?」
- 不安のケア:「費用や時間で心配な点はありますか?」
個人の場合は、「実際にドローンを学んで多少なりとも収入を得られるのか、費用をかける意味があるのか」といった疑問や不安が生じることが多いです。
たとえば、金銭面での不安があるようなら「分割や機材レンタルのプランもあります。試算をお出ししますね」と話すのは良い方法のひとつです。
また、「スクールに通う時間を捻出できるかな」といった様子であれば、「週末集中クラスか平日夜クラス、どちらが合いますか?短期で1回だけのカリキュラムもできますよ」「ここには書かれていませんが、ご希望があればマンツーマンで自由に日程を調整することも可能ですよ」と話してみましょう。
資料には書かれていないことも含めて提案すると、特別感や「体験会に参加したからこそのメリット」も感じられ、入会への意思が高まりやすくなります。
ドローンスクール体験会後のフォローアップ戦略

メール・LINEを活用した継続的なアプローチ
体験会当日に入会を決められない参加者への効果的なフォローアップが重要です。メールフォローアップのタイミング
- 体験会当日中:参加御礼メール
- 3日後:補足情報・質疑応答回答
- 1週間後:他参加者の入会状況・残席情報
LINEを活用したコミュニケーション
- スクールの日常風景・授業風景の配信
- 個別質問への気軽な対応
- ドローン業界の最新情報共有
参加者個別ニーズに合わせたパーソナライズ対応
趣味志向参加者への対応- 空撮スポット情報の提供
- 受講生作品の紹介
- ドローンイベント案内
ビジネス活用検討者への対応
- 業界別活用事例の詳細資料
- 同業種卒業生との面談機会
- 投資回収シミュレーション資料
継続的な関係構築
入会に至らなかった参加者に対しても、継続的な関係を維持することが重要です。将来的な入会につながる可能性があるだけでなく、口コミによる新規顧客獲得の機会も期待できます。- 季節ごとの特別講座やセミナーの案内
- ドローン業界の最新動向に関する情報提供
- 卒業生の活躍事例や成功体験の共有
実際の取材で見た効果的なアピール手法

私が取材した中で、さりげなく自スクールの魅力をアピールしていた効果的な手法をご紹介します。
信頼性の可視化
- 卒業生向けイベントやLINEグループがあることを紹介
- 卒業生アンケートをさりげなく閲覧できる場所に配置
- 外部メディアで取り上げられた事例を印刷して掲示
実績と専門性のアピール
- 講師やスクールがスクール運営以外で実務における外部事業者や自治体との連携があることがわかる資料を配置
- 業界での講師の活動実績や専門資格を自然に紹介
- 最新の設備や教材への投資状況を具体的に説明
これらの手法は、直接的な売り込みではなく、参加者が自然に「信頼できるスクールだ」と感じられるよう配慮されている点が秀逸です。
まとめ:ドローンスクール体験会入会率アップのポイント
ドローンスクール体験会の入会率向上には、参加者心理の深い理解と「自分にもできる」という実感を与える体験設計が不可欠です。成功の3つの柱
1:参加者ニーズの的確な把握:傾聴力を活かした個別対応
2:価値ある体験の提供:シミュレーター活用による安全で効果的な操縦体験
3:戦略的なフォローアップ:メール・LINEでの継続的な関係構築
これらの要素を体系的に実践することで、体験会参加者の入会率アップの可能性が高まります。参加者にとって真に価値ある体験を提供し続けることで、ドローンスクールの持続的成長を実現していきましょう。
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