国土交通省に聞くドローン新制度3年目の課題と展望
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今回お話を伺った方
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国土交通省航空局安全部無人航空機安全課 課長
江口 真氏ドローン・無人航空機に関する制度設計や安全対策を担当。機体認証・操縦ライセンス制度、レベル4飛行をはじめとする無人航空機の社会実装と利活用促進を推進している。
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また、2025年12月には、国土交通省ホームページ掲載無人航空機・ホームページ掲載講習団体による民間技能認証を根拠とした飛行許可申請の簡略化運用が終了し、新制度への移行が本格的に進んでいます。
この節目に、国土交通省航空局安全部無人航空機安全課 課長の江口 真氏に、これまでの3年間の総括と今後の展望についてお話を伺いました。
ドローン制度施行3年の総括―社会実装段階への移行とレベル3.5飛行の普及

国土交通省航空局安全部無人航空機安全課課長 江口真氏
――制度施行から3年が経過しました。この間の変化をどのように総括されていますか?
江口氏:航空法で無人航空機を定義し、航空局でドローンを所管し始めてから、ちょうど10年という節目を迎えました。この間、ドローンをいろいろな場面で活用いただく中で、社会実証という段階から社会実装の段階へと移行してきたと実感しております。
レベル4飛行や機体認証、ライセンス制度を創設した最後の法改正からは3年が経過しましたが、ライセンスについては、一等、二等ともに取得者数が順調に増加しています。
相応の数の方々にライセンスを取得していただいており、ドローンの普及や安全な運航に寄与していると言えるのではないでしょうか。
――ここ数年における特に注目すべきポイントを教えてください。

江口氏:この3年間における大きな動きとしましては、レベル4に対応可能な機体の普及がまだ十分に進んでいない状況を踏まえ、利活用をより一層促進するために、レベル3.5飛行という新たなカテゴリーを設けたことが挙げられます。
レベル3.5は、物流のみならず、インフラ点検など幅広い分野で活用いただいており、かなりの広がりを見せていると認識しています。
また、昨年12月には、ホームページ掲載無人航空機の運用および民間講習機関による民間技能認証を根拠とした申請簡略化運用が廃止*となりました。
これは以前より予告していた内容ではありますが、機体認証・型式認証制度の施行から3年が経過し、制度として一定程度定着してきたこと、特にライセンスにつきましては着実に取得者数が増加してきていることを踏まえた措置となります。
登録機体数が減少した理由は?更新期限到来で35万機に、講習機関は増加

――登録機体数が一時的に減少したとのことですが、その背景と現状の評価を教えてください。

江口氏: 昨年の6月20日に機体の登録制度開始から3年の更新期限を迎えました。登録義務化の際に初めて登録された方々が、ちょうど3年を経過して更新期間に入ったわけですが、それまでの間、登録機体数は継続的に増加していました。
本来、機体を使用しなくなった場合には登録を抹消していただくことになっておりますが、「また飛行させる可能性がある」ということで、そのまま登録を維持されていた方が相当数おられたのではないでしょうか。
こうした方々の中で、「最近は使用していないため、更新の必要はない」と判断された方が一定程度生じたことにより、昨年6月20日時点で登録数が減少しました。現在は約35万機となっていますね。
――では講習機関や機体認証についてはいかがでしょう?
江口氏:一方で、講習機関につきましては、制度施行から3年が経過してちょうどライセンスの更新時期を迎えるところ、登録更新講習機関も着実に増加しています。登録更新講習機関は2025年12月末時点で既に107スクールが登録されている状況です。
また、機体認証についてですが、第二種については近年、認証数が増加してきておりますが、第一種については1型式にとどまっているのが現状です。

2025/1/18時点
レベル4飛行そのものについては実績が出始めているものの、本格的な社会実装にはまだ至っておらず、現段階では社会実証の段階にあると認識しています。
事業化の鍵は運航効率化|多数機同時運航の拡大とUTM認定制度の創設へ

――今後、ドローン事業を本格的に定着させていくために、どのような取り組みを進めていかれますか?
江口氏: 制度としてはひと通り整備され、相応の普及も進んでまいりました。
ただ今後、事業として本格的に定着させていくためには、事業者の方々が採算性を確保し、持続可能なビジネスとして展開できる環境を整える必要があります。
そのためには、運航の効率化を推進していくことが不可欠だと考えています。
効率化の施策のひとつとして、多数機同時運航(操縦者の数より多い複数の無人航空機の同時運航)の推進が挙げられます。これは運航効率を向上させる上で最も有効な手段のひとつです。
一方、安全性の観点から、現時点での多数機同時運航を安全に行うための関するガイドラインの対象範囲は、現時点では操縦者1名に対して運航する機体数5機までの運航としています。今後は、自動検知システムなど新技術の活用により、この機数制限をさらに拡大していく方針です。
Q:確かに事業としてドローンを活用し採算性を向上させていくには、ひとりでたくさんの機体を飛ばせるというのは大きいですね。ただ、そうしてドローンが増えていくことでの課題もあると思うのですが。
江口氏:そうですね。たとえば運航する機体の数が増加すれば、当然ながら空域の過密化が進むことが予想されます。
そこで、UTM(無人航空機の運航管理システム)を導入し、より多くの機体を効率的かつ安全に運航できる環境を整備してまいります。具体的には、本年度中にUTMの認定制度を創設する予定です。
2025年度中には、UTM施策の第2段階として、UTMサービスプロバイダー(運航管理サービスを提供する事業者)に対する認定要件を策定いたします。
一定の要件を満たした事業者を認定することで、安心してサービスを利用してもらえるようにしていきます。
UTMサービスプロバイダーは複数の事業者が参入することを想定しており、実際にドローンを運航される方々が、ご自身のニーズに応じてプロバイダーを選択できる仕組みを構築する考えです。
UTMが本格的に導入されれば、運航の効率化が大きく進展するものと期待していますし、逆に申し上げれば、このシステムなくしては本格的な事業化は困難であると認識しております。
二等ライセンスで農薬散布の許可承認が不要になる見込み

――農薬散布についてのドローン活用においても、変化があるそうですが教えていただけますか?
江口氏: 農薬散布に関する規制緩和につきましては、現在パブリックコメント*を実施しているところです。
具体的には、機体認証(機体の安全性を国が認証する制度)を取得していることなどが基本要件となります。
――二等ライセンスの付加価値が上がりますね。
江口氏:農薬散布は危険物輸送(危険性のある物質を運搬する飛行)と物件の投下に該当するため、ライセンスと機体認証を保有していても、個別の許可・承認取得が必須とされていました。
しかし新制度では、ライセンスおよび機体認証の保有に加え、その他いくつかの要件を満たすことで、限定された敷地内での農薬散布であれば許可・承認を不要とする方針です。
そもそも本制度の基本的な考え方としては、機体認証とライセンスを取得した上で飛行することにより、安全性を確保するという設計になっています。もちろん、個別に許可・承認を取得して飛行することも可能ではありますが、制度本来の趣旨は、機体認証とライセンスの取得を通じて安全を確保しつつ、利活用を促進していくというものです。
引き続き機体認証やライセンスの取得を促進してまいりたいと考えており、そのための具体的な方策についても、継続的に検討を進めていく予定です。
メッセージ

――最後に、事業者、自治体、講習機関、一般の操縦者に向けてメッセージをお願いします。
江口氏: 航空局の役割として、安全確保が最も重要なミッションであることは言うまでもありません。しかし同時に、ドローンの利活用を積極的に促進していくことも、私たちに課せられた重要な責務であると認識しています。
そのため、安全確保と利活用促進という両輪のバランスを取りながら進めてまいりたいと考えています。具体的には、リスクが高い領域につきましてはしっかりと規制を維持する一方、リスクが相対的に低い領域では積極的に利用を促進していく、いわゆるリスクベースのアプローチですね。
安全の確保と利活用の促進、この2つを両立させながら、ドローン産業の健全な発展を支援していきます。
事業者、自治体、講習機関、そして操縦者の皆様には、この方針をご理解いただき、共にドローンの新たな可能性を切り拓いていきたいと願っています。
社会実装段階へ移行したドローン産業|安全確保と利活用促進の両輪で市場拡大へ
制度施行から3年を経て、ドローンは「社会実証」から「社会実装」の段階へと確実に移行しています。レベル3.5の新設や多数機同時運航の推進、UTM認定制度の導入など、事業化を見据えた効率化施策が次々と打ち出されてもいます。また、能登半島地震での活躍は、ドローンが災害対応の重要なツールとなり得ることを実証しました。
国土交通省が掲げる「安全確保と利活用促進の両輪」というバランス感覚は、今後のドローン産業の健全な発展に不可欠です。機体認証・ライセンス制度の普及拡大と、それに伴う規制の合理化が、さらなる市場拡大の鍵となりそうです。(コエテコドローン・柴垣)
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