(取材)国土交通省 航空局 櫻井一孝氏|ドローン登録講習機関の監査制度の現状

国土交通省櫻井氏 /ドローンスクール監査制度について有識者に聞く
ドローンの国家ライセンスを取得するための講習が受けられる「登録講習機関」。国土交通省の認定を受けたドローンスクールで講習を受けることで、実地試験が免除されるメリットがあります。

登録講習機関では、一定の水準を保つために外部機関の監査を受けることが義務付けられています。今回は、監査の目的や内容について、国土交通省 航空局 安全部 無人航空機安全課 無人航空機企画調整官 櫻井一孝に話を聞きました。

国土交通省 航空局 安全部 無人航空機安全課 無人航空機企画調整官 櫻井一孝氏

登録講習機関の監査目的は、講習水準の確保・向上

ーー登録講習機関向けに監査を実施する主な目的やメリットは何ですか。

無人航空機講習の適切な実施のために、外部による監査を受けていただきます。法令の遵守状況などを確認し、講習の水準の確保や向上を図るのがねらいです

監査を受けることで法令違反の防止にもつながるため、社会的な信頼性も向上することになるでしょう。受講生も安心して講習を受けられますし、さまざまな関係者にメリットのある制度だと思います。

ーー具体的にどのような機関が、どのくらいの頻度で監査を実施するのでしょうか。

頻度については国土交通省の省令で、登録講習機関は毎事業年度ごとに外部監査を受けるように規定されています。本部と事務所がある場合は、それぞれについて事業年度ごとに監査を受けていただく形です。

実施主体となる監査実施団体の要件は別途規定しており、どのような監査をするのか、どのような体制で行うのかといった事務規程を提出してもらいます。会計監査などの過去の監査実績も提出していただくので、監査実施団体になり得る団体としては、民間の管理団体(航空局HPに掲載されている講習団体を管理する団体)や会計監査事務所が中心になるのではないでしょうか

ここ1~2か月で届出は増えており、2023年10月上旬時点で10団体の届出を受理しています。

ーー「計画的監査」「随時監査」の違いと、それぞれの監査の目的やタイミングについてお聞かせください。

まず「計画的監査」は、先ほどお話しした事業年度ごとの監査です。事前にあらかじめ登録講習機関と監査実施団体でやり取りをしたうえで計画的に行うため、登録講習機関もいつどのような監査を受けるのかをある程度把握して臨みます。

一方で「随時監査」は、事故や重大インシデントが発生した場合や、品質管理上の不具合が発生した場合、計画的監査で是正措置報告書を受けたものの改善が見られない場合において臨時で行う監査です。

計画的監査は監査のタイミングがわかっていますが、随時監査は状況によっては講習の様子などの実態を確認しなければならないケースもあるため、抜き打ちで実施する可能性もあります

監査の流れとチェック項目、事前準備

ーー監査(計画的監査)の具体的な流れを教えてください。

まずは、登録講習機関から任意の監査実施団体に対して監査の依頼をします。その後、登録講習機関と監査実施団体の間で日程の調整をしたり、監査実施団体のなかで監査実施計画の策定や監査員の選定をしたりといった事務的な手続きを経て、実際に監査を受けることになります。

その後、監査実施団体から登録講習機関に「監査報告書」が提出されますが、もし不適切な事項があれば「不適切事項等及び是正措置報告書」が合わせて提出され、その場合は、原則として2週間以内に監査実施団体へ是正内容の報告が必要です。

そして登録講習機関は、監査実施団体から提出される監査報告書などを、監査を受けた日から1か月以内に航空局に提出し、監査の結果や内容を報告していただきます。以上が基本的な監査の流れです。

ーー監査はいつ受けるのでしょうか?登録講習機関あてに、監査の時期を知らせる通知などは送られますか。

監査を受けるタイミングについては、いまのところ登録講習機関自身で把握して受けてもらいたいと考えています。日程調整や事務手続きなどがあるので、年度末ギリギリではなく、ある程度余裕を持って監査を受けていただくのがよいでしょう

具体的な実施方法については、登録講習機関は3年間が更新期間となるのですが、1~2年目は実地監査とオンライン監査のどちらでも自由、3年目は実地監査を受ける決まりです。ただし、この方法は登録講習機関と監査実施団体の双方に負担が大きいという意見もあり、実地監査を3年間のうち任意の年に実施できるようにするなどの対応を検討しています。

また、登録講習機関のなかには国際規格であるISOの認証を持っている会社もあるかと思います。「ISO9001」や同等の認証を受けている機関については、認証を証明する資料を提出することで本部のオンライン監査を書類監査に代えることが可能です

ーー監査ではどのような項目がチェックされるのでしょうか。

チェックリストは公表していますが、具体的には受験者の入学書類関係や財務諸表が適切か、管理者や講師が国が定める講習を受けているか、国が定める講習内容が行われているか、修了審査の内容・方法が適切か、などを確認します。

特に国として重視しているポイントは修了審査です。修了審査員や管理者の研修、修了審査の採点内容や記載漏れの有無などはしっかりチェックするので、しっかり記録・保存していただくことが重要ですね。

ーー監査にあたり、登録講習機関はどのような事前準備が必要なのでしょうか。

事前準備というよりも、基本的には、自らの事務規程通りに講習を実施し、必要な書類を適切に記録・保存していただくことが重要です。常日頃から事務規程や国の基準を認識したうえで適切に業務を行ってほしいですね。

監査に向けて準備するとしたら、省令や告示などの国の基準を踏まえて事務規程に漏れがないか、事務規程通りに講習事務が行われているかといった点を改めて確認していただければと思います。

現状の課題は、監査制度の周知・監査の環境整備

ーー監査制度について、登録講習機関への周知をどのように進めていく予定でしょうか。

航空局としても周知不足は課題の一つとして認識しており、今後さまざまな場で周知が必要だと思います。可能であれば適宜説明会などの詳細な説明の場を設けたいです。

ーーこのほか、監査制度について課題に感じていることはありますか。

監査実施団体の届出の受理を進めているところですが、今後も引き続き監査実施団体への周知も含めて、監査をする主体の環境整備を進めなければなりません。現状では10団体を受理していますが、これが適正な数かはまだわからない部分なので、なるべく早めに届出の受理を進めていきたいです。

また、「監査費用が高い」という声も耳に届いています。監査実施団体の数が少ないので競争原理が働いていないことも一つの要因だと思うので、一定数の団体を受理することで監査実施団体の質を担保しつつも、適正な価格に収まる形になればと思います。監査における選択の幅が広がるように環境を整えていきたいですね

登録講習機関の水準担保がドローン業界全体の信頼性につながる

ーー監査制度がスタートすることにより、登録講習機関、ひいてはドローン関連業界にどのような影響があるとお考えでしょうか。

2022年12月から技能証明制度がスタートし、それに合わせて監査制度も始まりました。願出の確認の段階では、規程や体制が整っているかという点を確認しています。実際の業務が適切に行われるかという点はこれから見ていくことになるので、その点をしっかり監視する制度は非常に重要です。

もし不適切な講習事務を行っている機関があった場合は是正することで、登録講習機関の講習事務につき、一定の水準が担保されれば、業界全体の信頼性にもつながるはずです。今後の業界の発展にも寄与できるのではないでしょうか。

適切に活動している機関を後押しして、利用者も安心して講習を受けていただけるという点で、意義の大きい制度だと思います。



まるわかりガイドでドローンを知ろう
まるわかりガイドを見る

RECOMMEND

この記事を読んだ方へおすすめ