ドローン製造は3Dプリンターで変わる!金型不要・納期短縮をHPとYOKOITOに聞いた
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今回お話を伺った方
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🖊️ 株式会社日本HP 3Dプリンティング事業部 営業部長
宮内 大策氏ドローン・製造業など幅広い業界への3Dプリンター活用を推進。海外での先行事例をもとに、金型不要・小ロット対応・量産品質を両立する製造ソリューションとして、日本市場でのドローン部品製造への応用を積極的に提案している。
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株式会社YOKOITO 取締役CTO
深見 公貴氏3Dプリンター事業に携わりながら、HP Jet Fusionを活用したドローン部品の受託造形・製造事業を展開。FRP外注で約1年かかっていた部品納期を約2週間に短縮するなど、ドローン開発のスピードと設計自由度を根本から変える取り組みを実践している。設計から量産まで伴走支援するコンサルティングも手がける。
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3Dプリント(積層造形)は、もはや「試作品を手早く作るための道具」ではありません。金型を使わず、データさえあれば数日で最終製品としての強度を持つ部品が完成する。ドローン開発の常識そのものを塗り替えつつある技術です。
今回、その最前線について、株式会社日本HP 3Dプリンティング事業部営業部部長宮内氏と、実際にHP Jet Fusionでドローン部品を製造している株式会社YOKOITO 取締役CTO深見公貴氏に話を聞きました。
提供する側と、使う側、両方の視点から見えてきたのは「ドローンとモノづくりの未来」です。
なぜ今、ドローン業界が3Dプリントに向き合うのか

左:株式会社YOKOITO 取締役CTO深見氏 右:株式会社日本HP3Dプリンティング事業部営業部部長 宮内氏
ドローン開発の現場でいま起きているのは、「金型を使わない」という選択です。
ドローンの機体開発は、かつてないスピードで競争が激化しています。少しでも軽く、少しでも頑丈に。そんな相反する要求に応えるため、メーカー各社は日々、部品の設計を見直しています。
しかし、従来の製法にはいくつもの壁がありました。
- 金型を使う量産方式
→初期費用が高く、修正のたびに時間とコストがかかる - 切削加工
→素材のロスが大きく、複雑な形状には向かない - FRP(繊維強化プラスチック)による外注製造
→1台分の部品でも納期が長期化しやすい

「弊社の取り組みとして、最初からHP Jet Fusionがドローン向けだとわかっていたわけではないんです」と、日本HPの宮内氏は振り返ります。
海外のお客さんがHP Jet Fusionを使い始めて、どんどん成果が出てきた。話を聞き、うちのプリンターがドローンのパーツ製造に向いているとわかってきた。もっと深掘りしていこうということで取り組みを始めたのが3年ほど前です(宮内氏)ドローンは自動車のように何万台という規模で量産されるものではなく、多くても数百~数千台規模が大半のケースです。だからこそ、金型のコスト*が重くのしかかります。
型を作って製造していくとコストがかかりますし、1つ1つに合わせたカスタマイズにも対応しづらくなる。3Dプリンターならデータから直接製造できるので、コスト面やスピード面でメリットがでるんです(宮内氏)では、数ある3Dプリンターの中でも、HP Jet Fusionがなぜ、ドローン製造に強いのか、その理由を探っていきましょう。
HP Jet Fusion(MJF)の仕組みと強さの理由

JAPAN DRONE 2026「日本HP」ブース(コエテコ取材より)
HP Jet Fusionの強さの理由は、「レーザーを使わない」という発想の転換と独自の特許技術にあります。
3Dプリンターの積層造形にはいくつかの方式がありますが、HP Jet Fusionが採用する「MJF(Multi Jet Fusion)」方式は、従来主流だったレーザー方式(SLS)とは仕組みが根本的に異なります。
弊社の場合、レーザーを実は使用していません。粉末にインクを塗布して、その後ランプのエネルギーをかけて、インクが塗布されたところだけが溶けるという仕組みです。紙に印刷するように造形ができるわけです(宮内氏)

粉末状のプラスチックにインクを噴射し、熱で溶かして固めるこの方式には、大きな利点があります。
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スピードの安定性
→造形の面積が増えても、造形にかかる時間はほぼ変わらない。造形時間は「高さ」だけで決まる -
材料
→主流はPA12(ナイロン12)、エンジニアリングプラスチックに分類され、機能性が高い素材 -
強度の均一性(等方性)
→HP独自の特許技術により、縦方向・横方向で強度差が出にくいのが特徴

特にHPならではの「強度の均一性」について、実際にHP Jet Fusionを使用してドローンパーツを製造している深見氏はこう語っています。
たとえばノズルから樹脂を押し出していくFDM方式でキューブを作ると、方向によって強度が全然違うんです。1対3ぐらい差が出ることもある。それを考えながら設計するのはとても難しいのです。FDMでは部品の向きや力のかかる方向まで考えて設計する必要があります。
HP Jet Fusionの方は、基本的に1対1になり、強度の差が出にくいのは大きなポイントです(深見氏)
一方、Jet Fusionなら方向による強度差が小さいため、設計の自由度が高く、強度を考慮した設計もしやすい。強度が求められるドローン部品の製造にも、適した特性といえるでしょう。
造形方式の比較
| 方式 | 主な仕組み | 強度の方向差 | スピードの特徴 |
| FDM | ノズルから樹脂を押し出して積層 | 方向によって最大3倍前後の差 | 形状により変動しやすい |
| SLS (レーザー方式) |
レーザーで粉末を焼結 | 比較的均一 | 密度が高いと時間がかかる |
| MJF (HP Jet Fusion) |
インク塗布+ランプ加熱で 溶融結合 |
ほぼ均一(等方性) | 高さのみで決まり安定的 |
この仕組みにより、強度・生産性・低コストという3つの特徴が同時に実現できると宮内氏は言います。
よく話すのが、120グラムの3Dプリント製チェーンで、4.5トンの車を持ち上げられるほどの強度が出る、という例です。生産性で言うと、20個のドローンパーツ(180mmサイズ)が12時間で出来上がります。
人手がほとんどかからないので、“1人で1週間に200個作る”ことも可能なわけです(宮内氏)

深見CTOが語る、3Dプリントがドローン製造にもたらした変化

「1年かかっていた部品が、2週間で届く」この変化が、ドローン開発のスピード感そのものを変えました。
株式会社YOKOITOは、HP Jet Fusionを使ってドローンメーカー各社の部品を製造しています。取締役CTOの深見公貴氏は、導入前の状況をこう振り返ります。
中〜大型固定翼のVTOLドローンは、ボディにはFRP(繊維強化プラスチック)を使うことが一般的です。しかし、納期が1年ほどかかることも珍しくありません。
シミュレーションだけでは限界があるので、開発者としては実際に飛ばして検証したい。そのためにも、できるだけ早く機体を作る必要があります(深見氏)
たとえば、ドローンパーツを2週間程度で納品することも可能です。私たちの着眼力や発想力を存分に発揮し、HP Jet Fusionを活用することで、ドローン製造の「スピード感」という課題をひとつ解決できた、大きな一歩だと考えています(深見氏)深見氏は、さらに3Dプリンターで作るメリットについて、語ってくれました。
複数パーツが「1個」になる


スピードだけではありません。3Dプリントならではの設計思想の転換も、大きな変化をもたらしていると深見氏は言います。
たとえば、さまざまな部品を組み合わせて作るパーツも、3Dプリンターなら、別々に作り組んで仕上げるという過程を、一度の造形で完結できるのです。
本当は3Dプリント以外だったら、外側と、パイプと、支えを全部別々に作って、組み立てないといけないのです。それを1個のパーツで作れてしまう(深見氏)これは、自動車業界で近年注目される「ギガキャスト」(車体の広い範囲を一体成形する技術)と発想が近いと、深見氏は続けました。
複数パーツを一体化したほうが生産性は高いし、強度も出る。組み立て工数も10分の1とか20分の1くらいになることもあります(深見氏)
「中身は自由に詰め放題」という発想


3Dプリンターが得意とするのが、内部に空洞や複雑な構造を持つ部品の製造です。従来の切削加工では作るのが難しい内部形状も、3Dプリンターなら設計データに沿ってそのまま造形できます。
この特性が、ドローンならではの新しい設計を可能にしています。
3Dプリンターは空洞を作るのが得意なので、中にいろいろなものを詰められます。
たとえば寒冷地でドローンを飛ばすなら断熱材を内蔵できますし、難燃材料を詰めることもできる。ガソリンを使うレシプロエンジン式のドローンは、万が一の落下時に発火のリスクが懸念されますが、機体を難燃素材で覆っておくことで、そのリスクを抑える設計も可能になる。
想像力次第で、自由に作ることができるから、さまざまなアイデアや工夫をして、よりドローンの性能や安全性を高めることができるのも大きな魅力です(深見氏)
試作と量産が「同じ感覚」になる

YOKOITOでの製造の様子
最終製品としての信頼性を支えているのが、「再現性」だと宮内氏は強調します。良いものが1個できただけでは、最終製品(量産部品)としては使えません。
試作と量産の違いは、同じものが1回できればいいわけじゃなくて、再現性なんですよね。今日作ったものが明日もできる、来週もできる。そこが本当に重要なんです(宮内氏)
試作している感覚と、量産している感覚が、ほぼ同じなのです。これって実はすごいことなんですよ(深見氏)大事なのは、同じ品質のものを、何度でも安定して作れるかどうかです。HP Jet Fusionはすでに『試作品を作るもの』から『量産するもの』へと役割を広げています。
導入前後の変化(YOKOITOの事例より)
| HP Jet Fusion導入前 | 導入後 | |
| その他造形方式との生産力の差 | 1.5時間/1部品 |
2.4分/1部品 (1バッチ12時間で300部品を同時造形した場合) |
| パーツ構成 | 複数パーツを個別に製作し組立 | 1パーツで一体成形が可能 |
| 組立工数 | —— | 10分の1〜20分の1程度に削減 (YOKOITO事例) |
HP正規代理店・YOKOITOが担うドローン製造の「伴走支援」

YOKOITO、右側にHPのプリンター
YOKOITOは単にプリンターを売る会社ではなく、ものづくりを一緒に進める会社です。
株式会社YOKOITOは、もともと3Dプリンターの代理店業を軸にした会社です。そこから工業製品の製造請負など幅広い業界へと事業を広げ、HPの正規代理店になり、今はドローンセグメントへの営業を本格化させています。
株式会社YOKOITO
- 事業の柱は装置販売(代理店事業)と、部品を作る受託造形・製造事業
- 製造業(受託造形)スタート時から事業が急成長し、装置販売と同じ規模の人数でスタッフを雇用するほどに
- サブスクリプション形式のコンサルティングなど、設計から量産までを伴走支援する体制も持つ
YOKOITOは、機器を販売するだけでなく、「どう使えばうまくいくか」を伴走しながら考えてくれます。ドローン開発や製造に携わる方、小ロット生産、3Dプリントのドローン分野での活用を考えている方には特に心強い存在です。

これだけ複雑な形状も造形できる
デジタルファブリケーション(デジタルデータから直接モノをつくる技術)の先端を行く企業であり、小さなモノから大きなモノまで、「モノ」にこだわり、「モノ」の可能性を最大限に広げていく。
その思想を体現しているのが、HPの3Dプリンター技術を活かしたドローン製造です。YOKOITOは、新しいものづくりの可能性を現実のものにしています。
ドローン開発の未来「分散型ものづくり」という潮流

3Dプリントが変えているのは、部品の作り方だけではありません。「工場」という概念そのものかもしれません。取材の終盤、2人が語ったのは、単なる技術の話にとどまらない、ものづくりの未来像でした。
災害に強い「分散型」のものづくりへ
今の生産システムって、工場が工業地帯にぎゅっと集まっている構造なんですね。これは非常に災害に弱くて、地震や台風で工場が潰れたら、そこでもう物が作れなくなってしまう。実際、YOKOITOのオフィスは工業地帯ではなく、住宅街の中にあるといいます。
一方でこの技術は、電気と通信と材料さえ揃えば、どこでも物が作れる。通信が断たれていても、USBみたいな小さいデバイス1個でものが作れるっていうのは、非常に革命的だと思っています(深見氏)

YOKOITOの社内、HP Jet Fusionを前に、まるで研究室のようだ
すごく街中、住宅地の中でやっているんですよ。要するに、大きな工場や騒音対策などが必要ない。このことは、日本のものづくりの未来とつながっているのです。
確かに「モノ」を生産していますが、ガッタンゴットンと機械がうなっている、ラインに大勢並んで部品を組み立てていく、いわゆる昔ながらの工場とは違います(深見氏)
若い世代との親和性、AIとの相性
3Dプリンターの可能性とアイデアやクリエイターとのマッチングが進めば、将来の工場のイメージそのものが変わっていくかもしれません。頭の中に描いたアイデアや図面が、3Dプリンターによって短時間で形になり、試作や改良を繰り返せる環境は、創造力や発想力を活かした仕事として、新たな魅力を持つ可能性があります。
デジタル技術を駆使しながら、ものづくりに携わりたいと考える若い世代にとっても、工場で働くイメージは少しずつ変わっていくのかもしれません。
こうした変化は、新しい世代がものづくりに挑戦するきっかけにもなり、日本の製造業の未来を支える大きな力になっていくのではないでしょうか。
さらに、AIによる設計との相性の良さも、今後のものづくりを占う要素として挙げられました。
AIは、いろいろなところに入り込んでくるでしょう。AIはデジタルの話なので、デジタルでものづくり・設計をしていくときに相性がいいのは3Dプリンターだと思っています(宮内氏)宮内氏は、こう続けました。
日本は昔から、まず品質(クオリティ)をしっかり確認してから、という姿勢がある。それは今も大切なことではあるのですが、スピードやコストといった別の良さにもう少し許容範囲を持たせることができれば、もっと多くのメリットを得られるはずです。「品質」に、スピードやコストをかけあわせていけば、日本のものづくりはさらに強みを増していくはずだと宮内氏は語ってくれました。
海外の方がそのメリットに気づいて使い始めるのが早かったですが、日本もそのメリットに気づき、いろいろと使い始めてきていると感じます(宮内氏)
ドローン製造の進化はものづくりの進化でもある!
「軽くて頑丈」「型がいらない」「2週間で届く」今回の取材で見えてきたのは、3Dプリントがドローン開発のスピードと自由度を根本から押し上げているという事実でした。金型に縛られない設計、災害に強い分散型のものづくり、AIとの掛け合わせ。ドローンというひとつの分野から見えてきたのは、製造業全体の未来を占うヒントかもしれません。
アイデアが次々と形になり、新しい価値が生まれていく。そんな未来の工場を想像すると、日本のものづくりのこれからが楽しみになります。
空を飛ぶドローンの姿は、単なるテクノロジーの進化ではありません。その機体には、ものづくりの常識を変えようとする挑戦が詰まっているのです。
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