KDDIスマートドローン説明会レポート|郵便局にドローンポート、国内初のUTMサービスプロバイダID取得で「10分で駆けつける空」へ

KDDIスマートドローン説明会レポート|郵便局にドローンポート、国内初のUTMサービスプロバイダID取得で「10分で駆けつける空」へ
KDDIとKDDIスマートドローンは2026年9月28日、「ドローン事業に関する説明会」を開き、日本郵便との基本合意にもとづく郵便局へのドローンポート設置を発表するとともに、国内初となる「UTMサービスプロバイダID」取得とサービス展開について説明しました。

ドローンポートを全国に広げるうえで課題だった「設置場所」と「制度」に同時に手を打ち、日本中どこでも10分でドローンが駆けつける社会をめざします。

会場では、全国4拠点のドローンを1つの画面で見守り、飛行計画から外れた機体をシステムが即座に知らせる遠隔運航のデモも公開されました。本記事では、発表内容とデモの様子、ドローンが「空の社会インフラ」になるまでのロードマップをレポートします。

KDDIスマートドローンがめざすドローンポートの全国配備|人手不足と災害に「AI労働力」で備える

KDDIスマートドローン代表取締役社長の博野雅文氏

KDDIスマートドローン代表取締役社長の博野雅文氏


働き手の不足が年々深刻になり、自然災害も激しさを増すなか、KDDIは2026年5月に発表した中期経営戦略で、AIが人に代わって働く「AI労働力」を事業の柱に据えました。

ドローン事業は、その考え方を最もわかりやすく形にした事業だと、KDDIスマートドローン代表取締役社長の博野雅文氏は位置づけています。
「ドローンはもう、実証や検証という段階ではありません。人の仕事の代わりを担っていく段階に入っていると考えています」(博野氏)
同社が進めるのは、ドローンポート(ドローンが自動で離着陸・充電する基地)を全国に配備し、遠隔から運航する体制づくりです。常設のポートは石川県を中心に8都道府県・20拠点、遠隔運航の累計実績は21,000回を超えます。

KDDIスマートドローンのドローンポート


  • 平時:施設巡回、インフラ点検、鳥獣害対策、パトロール
  • 有事:災害状況の一次確認、孤立集落の把握、要救助者の捜索

平時は地域の働き手として、有事には人が現場に入る前に状況を確かめる「最初の目」として働く。めざすのは、必要なときに日本中どこでも10分以内にドローンが駆けつける社会です。

北海道新十津川町|定期パトロールでクマを発見

KDDIスマートドローンによるクマ発見の画像

北海道新十津川町では、町役場の屋上にドローンポートを常設し、クマの出没を早期に把握しています。

会場のスクリーンには、ドローンが撮影した白黒映像が映し出され、動き回るクマの姿を確認できました。住民から出没情報が寄せられると緊急出動し、サーマルカメラで位置を確認、警察や猟友会と連携して対応にあたります。

映像は鮮明ではないもののクマの動きはよくわかります。人に代わってドローンが地域の安全を守る見回りを担えることを、あらためて実感しました。

石川県志賀町|北陸地方の大雨で4日間12回の遠隔出動

水害などの状況を確認するKDDIスマートドローンのドローン

2026年8月の北陸地方の大雨では、県と町の緊急要請を受け、志賀町役場屋上の常設ポートから遠隔で出動。4日間で12回飛行し、浸水や道路の状況、水没したトラックの様子などをリアルタイムで県・町と共有しました。
「災害が起きてから駆けつけるのではなく、常にドローンをそこに置いておく。そうすることが有事の対応力につながっていくんです」(博野氏)
平時の巡回で使う設備が、そのまま災害への備えになる。常設型ならではの強みです。

ドローンポート全国展開に必要な5つの要素|残る課題は「設置場所」と「制度」

KDDIスマートドローンのドローンポート

活用を一部の地域にとどめず全国へ広げるには、「機体」「通信」「遠隔運航体制」「設置場所」「制度」の5つがそろう必要があると同社は考えています。このうち3つはすでに整えてきており、今回の発表は残る2つに応えるものです。

要素 KDDIグループの取り組み
機体 米ドローンメーカーSkydioと資本提携(2024年5月)
遠隔運航体制 日本航空(JAL)と資本提携し、安全運航の知見を導入(2023年11月)
通信 高品質なモバイル通信網に加え、Starlink(米SpaceXの衛星通信)とドローンの直接通信に成功
設置場所(今回発表) 日本郵便と基本合意
制度(2026.9.16発表) 国内初の認定UTMサービスプロバイダID取得

Starlinkとの実証(2026年7月)では、携帯電話と同じ電波で衛星とドローンが直接つながり、映像の伝送も確認できました。山間部や離島、災害時など地上の電波が届きにくい場所でも、ドローンを活用できる可能性が広がります。

2026年度内のサービス提供に向けて、関係省庁との調整が進められています。KDDIグループがドローン事業を手がける最大の理由も、通信の「つなぐ力」にあると博野氏は語りました。

日本郵便×KDDIの基本合意で、郵便局がドローンポートの拠点に

KDDIスマートドローンの事業説明会の様子

「設置場所」の課題に対する答えが、日本郵便との連携です。KDDIと日本郵便は2026年6月に、ドローンによる地域課題の解決と社会基盤化に向けた基本合意書を締結しました。

なぜ郵便局なのか|法令で全市町村に置かれた地域の拠点

KDDIスマートドローンはこれまで、能登エリアの12か所や大阪府池田市のローソン店舗敷地など、自治体や企業とともに拠点を広げてきました。全国展開で課題となっていたのは、生活圏に近く、長く運用できる設置場所の確保です。

郵便局は法令に基づいて全国の市町村に置かれ、過疎地域や中山間地域でも生活圏の近くにあります。
「郵便局は地域住民との接点を持ちながら、生活に近い場所に立地しています。ドローンポートの活用という意味でも、非常に意義深いと考えています」(博野氏)
住民が日常的に訪れる場所にポートを置ければ、平時の見守りにも、災害時の拠点づくりにも生かせます。

日本郵便とKDDIの2つの連携テーマ|ポートの全国展開とドローン物流

KDDIは通信・遠隔運航体制・オペレーション人材を、日本郵便は郵便局・物流配送網・現地人材・自治体との接点を持ち寄り、互いに補い合うモデルです。

連携テーマ 主導 補完 内容
①ドローンポートの全国展開 KDDI 日本郵便 郵便局ネットワークを設置場所として活用
②ドローン物流 日本郵便 KDDI Starlinkを含む通信と遠隔運航体制で支援

収益化について博野氏は、各社が個別にポートを導入すると投資負担が大きいと説明。全国に展開したポートを、自治体の災害対応や民間のインフラ点検・監視・警備などで共同利用する「シェアリングモデル」で、経済合理性を築く考えです。

第1弾は石川県・珠洲郵便局での実証

KDDIと日本郵便がドローン拠点として基本合意

基本合意に基づく第1弾として、2026年9月28日から10月4日にかけて、石川県の珠洲郵便局で実証が行われました。

郵便局の屋上にSkydio社のドローンポート「Skydio Dock for X10」を設置し、自律飛行型ドローン「Skydio X10」を配備。市内に3か所ある既存ポートのうち、消防署のポートと連携して複数の機体を遠隔で運航し、監視・点検エリアの拡大を検証するものです。

  • 平時:通学路の安全確認、インフラ点検、野生動物の出没確認
  • 有事:道路寸断を想定した状況確認、被災状況や孤立集落の把握
  • 郵便局との連携:集配社員の安全確保に向けた配送ルートの状況把握

能登半島の奥に位置する珠洲市は、災害時の陸路アクセスに課題を抱える地域です。災害時に郵便局が物資を運ぶ前に、ドローンが先に飛んで道路状況を確かめ、日本郵便と共有する。物流への貢献も視野に入れた連携です。

郵便局へのドローンポート本格展開は2027年度以降

全国すべての郵便局に設置するわけではなく、設置数については日本郵便と協議中です。今年度は珠洲での検証と設置可能性の精査を進め、2027年度以降の本格展開をめざします。まずは、地域の担い手不足が深刻なエリアから取り組む考えです。

遠隔運航では、現地に社員がいない場所でトラブルが起きた場合の対応も課題です。

KDDIスマートドローンは、全国100社以上が参加する「KDDIスマートドローンパートナーズ」と連携して対応する方針です。日本郵便の協力を得ることも検討しています。

ここまでの話を聞いていても、KDDIスマートドローンが着々と、しかも堅実に土台を築きながら、次のステップへと歩みを進めていることがわかります。

国内初のUTMサービスプロバイダID取得で、ドローンの飛行手続きを一元管理へ

KDDIスマートドローン執行役員CTOの杉田博司氏

KDDIスマートドローン 執行役員CTOの杉田博司氏


「制度」の面では、KDDIスマートドローンが2026年9月16日、国土交通省航空局から国内で初めて「UTMサービスプロバイダID」を取得しました。2026年12月からUTMサービスの提供を始める予定です。

取得の背景として、執行役員CTOの杉田博司氏は、21,000回以上の運航実績、NEDOの次世代空モビリティ実現プロジェクト(ReAMo)への参画、JALと築いた安全運航ノウハウを挙げました。

UTMとは?2026年3月に始まった認定USP制度

UTM(UAS Traffic Management)は、多くのドローンが同じ空を安全に飛べるよう、飛行計画の重なりの確認や飛行中の監視を担う、いわばドローンの「交通整理」の仕組みです。

国土交通省航空局が2026年3月に始めた「UTMサービスプロバイダ(USP)制度」は、交通整理を担う民間のインフラ事業者を国が認定する制度です。許可・承認は引き続き国が行い、USPは運航者の手続きを支える立場です。

  • これまで:運航者が国のシステム「DIPS2.0(ドローン情報基盤システム2.0)」へ直接、飛行計画を通報
  • これから:運航者は認定USPのサービスを通じて通報でき、計画の重複判定や空域情報の確認もまとめて行える
「わかりやすく言うと、インターネットのサービスプロバイダのようなもの。ドローンの飛行数はこれから10倍、100倍と広がっていくので、国がすべてを管理するのは難しいんです」(杉田氏)
同社だけでも飛行計画の重複は数百件規模。許可する国の側も負担が増しており、手続きのデジタル化・効率化が重要になっていると杉田氏は話します。

UTMサービスで一元管理できる5つの業務

業務 UTMサービスでの変化
①飛行計画の作成・通報 DIPS2.0と連携、飛行計画の作成・通報を支援。空域制限情報も確認できる
②飛行計画の調整 異なるUSPを利用する運航者間でも、飛行計画の重複確認や調整を支援
③飛行前点検 点検の実施状況をデジタルで把握・管理できる
④飛行の実施 多数の機体を一元的に把握・監視し、飛行記録を管理できる
⑤飛行日誌の作成 飛行記録をデジタルで管理し、飛行日誌の作成・保存業務を支援

【デモレポート】UTMで遠隔運航を見守る|計画からの逸脱をアラートで即座に通知

KDDIスマートドローンの事業説明会の様子

デモを担当したKDDIスマートドローンの社員


UTMの説明に続いて、遠隔運航のデモが行われました。ポイントは、多数のドローンを1画面で見守れることと、計画から外れそうな機体をシステムが知らせてくれることの2つです。

全国4拠点のドローンポートを1画面で俯瞰

4拠点の運航状況を1画面に表示したUTMの画面

4拠点の運航状況を1画面に表示したUTMの画面


スクリーンには、北海道新十津川町、石川県志賀町、大阪府池田市、埼玉県秩父市の4拠点が映し出されました。各拠点の飛行計画エリアが水色の枠で示され、機体の位置やカメラ映像も同じ画面で確認できます。

平時は全体を俯瞰し、異常があったときだけ1機に集中する。人が1機ずつ画面に張り付かない運用です。

ポートが全国に広がれば、空には数十機のドローンが同時に飛びます。人の注意力だけに頼らない仕組みの第一歩がUTMだと、デモを担当したエンジニアは説明しました。

高度超過やエリア逸脱を、次の操作とあわせて通知

KDDIスマートドローンの事業説明デモの様子

画面右側に、高度やエリアの逸脱を知らせるアラートが時刻とともに並ぶ


デモで飛ばしたのは新十津川町の機体です。飛行前の手続きと点検の完了をシステム上で確認してから離陸し、あえて計画から外れる「想定外」を再現しました。

上限の高度に近づくと「高度を下げてください」と、システムが即座にアラートを表示します。計画の範囲に戻ると「解消」が記録され、帰還後には飛行日誌も自動で記録される仕組みです。
「飛ぶ前の手続きを仕組みとして確認できて、飛行中に計画から外れそうになればUTMが知らせてくれる。そうすることで、人が判断に集中できるようになると考えています」(デモを担当したエンジニア)
デモでは、実際の通報より狭い範囲・低い高度上限で模擬の飛行計画を設定しています。実際の通報とは異なるため、逸脱しても法令違反にはなりません。

同社は東京・飯田橋のオフィスに「遠隔運航ルーム」を設け、今も複数のオペレーターが同時運航を行っています。デモで見た光景は、すでに日々動いている運航の延長線上にあります。

質疑では、1人のオペレーターが同時に運航できる機体数も話題になりました。

杉田氏によると、機体カメラの映像を見ながら飛ばすレベル3.5飛行(無人地帯での目視外飛行の区分)では、当初5機が目安とされていました。現在は、リスクに応じた運用ができれば機数を一律に定めない形です。

映像を見ながら100機を同時に監視するのは難しく、全国レベルで管理できるUTMのような仕組みが必要になると杉田氏は見ています。

ドローンが空の社会インフラになるまで|今後のロードマップ

KDDIスマートドローンの今後

KDDIスマートドローンが描くのは、鉄道や道路などのインフラにドローンが組み込まれていく未来です。その先には、有人機も含めた空域の統合管理を見据えています。

  • 現在:運航管理基盤の整備(UTMサービスプロバイダIDの取得)
  • すでに進む分野:建設、警備など、人手で支えてきた業界での活用
  • 次の展開:鉄道、道路などインフラ企業での活用拡大
  • 将来像:有人機や空飛ぶクルマを含む空域の統合管理
「鉄道や道路といったインフラ企業さんも、ドローンポートを活用していく。まさにインフラに組み込まれている形のドローンになってくると考えています」(杉田氏)
衛星通信は、ドローンだけでなく有人機や空飛ぶクルマでも期待されています。
「ネットワークにつながっていないとドローンは飛ばせないし、安全も管理できない。通信インフラと空は、非常に親和性がいいと考えています」(杉田氏)
通信、運航管理、設置場所が整っていけば、ドローンは「特別な機械」から、地域の暮らしを支える当たり前の設備へと変わっていきます。

ドローンが地域を見守る日常は、もう始まっている

郵便局が「設置場所」を、国内初の認定UTMが「制度」を支え、ドローンポートの全国展開は次の段階へ進もうとしています。

会場から離れた場所にある機体を見守り、計画から外れかけた瞬間にシステムが「高度を下げてください」と知らせる。会場で見たその光景は、遠い未来の話ではありません。

2026年12月に始まるUTMサービスと、2027年度以降の郵便局での本格展開が、日本中どこでも10分でドローンが駆けつける社会への次の一歩になりそうです。
 KDDIスマートドローン公式サイト 


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