(インタビュー)ドローンクラウドサービスHec-Eye(ヘックアイ)とは|ITの力で、クラウド×ドローンで地域課題を解決していく!
そして、数ある職業のなかでも注目を集めているのが、ドローンに関連した仕事やサービスです。日本のドローン産業は成長を続けており、農業や測量などさまざまな業種に活用されるようになりました。
そのなかでも「世界の田舎と日本の田舎の様々な用事を楽にする」ことを目指してドローンクラウドサービスを行っているのが、今回、インタビューに応じてくださった株式会社リアルグローブの展開するHec-Eye(ヘックアイ)です。今回は、ドローンのクラウドサービスを事業として行っている、株式会社リアルグローブの代表取締役社長である大畑貴弘さんからお話を伺いました。
クラウドのプロバイダーから、行政へ
まずは、株式会社リアルグローブの代表取締役社長である大畑さんに、Hec-Eyeを立ち上げるまでの経緯を伺いました。
株式会社リアルグローブ 代表取締役社長 大畑 貴弘さん
ーHec-Eyeはドローン×クラウドという、非常に現代的なサービスですよね。大畑さんご自身も、クラウドやドローンに造詣の深い方なのでしょうか。
私は、15年ほど前から、和製クラウドプロバイダーといわれる「ニフティクラウド(現在の社名はニフクラ)」で、コンテナ型のクラウドを提供してきました。ただ、当時としては最先端だった「ニフクラ」でしたが、海外のクラウドサービスが日本へ上陸してきたことで、主戦から遠ざかってしまったんです。
残念ながら市場は奪われた形になりましたが、私自身にはクラウドの知見が残りました。そこで、この知見を利用できる場所を数年間にわたり模索していったんです。ちょうどその頃は、タブレット端末を利用した学校教育の実証実験が総務省によって行われた時期でもあり、クラウド面の担当として携わることになりました。
ータブレットはすっかり授業に定着していますが、長い期間をかけて研究や実験が重ねられていたのですね。
そうなんですよ。今ではGIGAスクール構想がはじまり、1人につき1台のタブレット端末で学ぶのが当たり前になりましたが、それまでの準備はなかなか大変だったと思います。私自身も、実証実験に携わる中で、行政におけるITの難しさや課題感などを教えていただきました。
その後は、実証実験で得た知見をもとに、ITを活用した生涯学習プラットフォーム構想について議論する中央教育審議会に加えていただき、専門委員として2年間携わることに。生涯学習のコンセプトの一つである、「教育という行為を通じて地域社会を活性化する」ことについて考えながら、「地域社会を活性化するために、ITがどうあるべきか」にも思いを巡らせるようになりました。
PCの中に閉じたSaaS事業はレッドオーシャン。だが地方にはたくさんの余白が
こうして、大畑さんが持つクラウドの知識と、行政への知見、そしてまちづくりへの思いが重なって誕生したというHec-Eye。ドローンから取得した情報をリアルタイムで地図上に集約できるプラットフォームで、人の目で確認することが難しい広範囲のエリアでも、Hec-Eyeを導入すれば、瞬時に情報を集められるのがメリットです。Hec-Eyeは日本各地の地方自治体でも利用されており、本来の災害対応に加え、不法投棄対策や鳥獣害対策など「地域の困りごと」や観光空撮のような「地域の魅力発信」にも一役買っています。2019年度のセミナーは、岩手県から鹿児島県まで幅広い地域の自治体に実施されました。
また、2019年3月15日に幕張メッセで催された国内最大級のドローンイベント「Best of Japan Drone Award2019」では、Hec-Eyeがソフトウェア部門において最優秀賞を受賞しています。そんなHec-Eyeが誕生したきっかけについて、さらにお話を伺いました。

ーさまざまな場所で活躍してこられた大畑さんですが、Hec-Eyeというサービスの着想を得たきっかけは、どこにあったのでしょうか。
生涯学習のプロジェクトを通し、地方格差を肌身で感じたのがきっかけです。生涯学習に携わっていた頃は、よく地方へ出張していたのですが、都会から離れると、ITはまだまだ浸透していませんでした。主に利用されているツールは、いまだに紙とペンでしたね。一方の私は、ITやクラウドが当たり前の世界で生きてきた。都市と地方では、ITを取り巻く事情がまったく異なるのだなと実感したんです。
また、事業の切り口で見ても、地方へのIT普及はまだまだチャンスがあるなと思いました。というのも、PCの中に閉じたSaaS事業って、もはや重箱の隅をつつくようなニッチな領域しか残っていないんです。
ーいわゆる、「レッドオーシャン」なんですね。
そうなんです。それで、「クラウド×地方で事業を始められないか?」と模索していたときに、偶然、社員がドローンを持ってきまして。「これは、何かできるかもしれないな」と感じました。
というのも、ドローンに関して言えば、都会よりも地方のほうが運用に適しているんです。なぜなら、人が密集している都会でドローンを飛ばすには、いろいろな障壁があるからです。
ただ、ロボットなどと違い、ドローンの用途は限られているのも事実でした。使えるとしたら「情報収集」くらいかな、という前提のもと、当時の仲間達と議論を進め、「ドローンによる救急医療や災害対応の領域でソリューションを作っていこう」と見定めてスタートしたのがHec-Eyeというわけです。
Hec-Eye(ヘックアイ)は、位置情報付きで映像をリアルタイムで送れるサービス
地方自治体や現場では、「ドローンやITに触れたことがない人がほとんど」と話す大橋さん。迅速な対応が求められる災害現場などでも利用されるHec-Eyeは、「利用者目線」を大切にしていることが強みです。現場の声を活かすことで、「使いやすく幅広いシーンで活用可能」なクラウドサービスを実現したというHec-Eyeは、どのようなサービスなのでしょうか。
ーそれでは改めて、Hec-Eyeについて教えてください。
Hec-Eyeは、クラウド上に情報を集約することで、簡単に情報を活用できるクラウドサービスです。たとえば、山や建設現場、災害現場といった「人が立ち入りにくい場所」にドローンを飛ばし、位置情報付きで映像を送ることで、市役所や町役場、消防本部などの意思決定をする場所に、リアルタイムで状況を届けることが可能になります。

Hec-Eyeは、言わば「テレビ会議システム」のようなものです。たとえば、テキストメッセージで、「たくさん燃えています!」と言われても、どれくらいの状況なのか、正確に把握できません。一方で、実際の映像を送ることができれば、「この規模であれば、○人程度を派遣しなければ」と計算したり、「A地点の火災は比較的小規模だから、より大規模なB地点を優先しよう」などと瞬時に判断できます。
とくに災害時には、予想を遙かに超える災害が同時多発的に起きる傾向があります。ところが、災害対策本部の人員は限られており、広いエリアを少ない人数で監視しなければならない。「限られたリソースを、どの順番で、どのように配分していけば良いか?」という意思決定を迅速に進めるためには、ドローンの活用が非常に有効なのです。
ーなるほど。確かに、そういった場面では、ドローンの活用が非常に有効な手立てになりそうですね。少し気になるのですが、逆に言うと、これまではどのような方法で情報収集・意思決定をされていたのでしょうか?
多くの場合は、現場で写真を撮影したり、テキストで記録したりして本部に持ち帰り、指示をもらって、再度現場へ……というふうに、現場と本部を行ったり来たりするのが主流だったと思います。災害本部の現場であれば、地図に手で情報を書き込み、電話機と無線機を使用して情報収集するのがベーシックで、時間とリソースがかかってしまう課題がありました。
昔は、この方法がもっとも最適だったのだと思います。事実、災害対応に対して、日本はとても優秀な国だと思います。現場の人が血と汗と涙を流して積み上げてきたものですから、私たちももちろん、敬意を払います。
ただ、ドローンというツールが出てきたことで、今まで知らなかったことが知れるようになったのも事実です。しかも、ドローンは陸上用のロボットと比べて、屋外での使用に適しており、プログラムとの相性も良いんです。つまり、陸上のロボットでは、路面の状態や交通の制約を考慮しなければならないのに対し、ドローンは想定しなければいけないシチュエーションの数が圧倒的に少ない。
そのうえ、ドローンは、ランニングコストが比較的安価なんです。これまでの災害救助の現場で俯瞰映像を撮ろうとするときには、消防防災ヘリコプターが必要でした。消防防災ヘリコプターは確かに強力なツールですが、運用にコストがかかるため、身近な半径数100メートルに利用する際には、オーバースペックな場合もあります。
それを補完する形で利用できるのが、ドローンの素晴らしい部分です。消防防災ヘリコプターを大量に配備することは難しいですが、ドローンなら大量に配備しても数10万~数100万円ほどのコストで済みますから。
ボタンは大きく、機能はシンプルに

ーここまでのお話で、ドローンの有用性が非常によく分かりました。ただ、大畑さんもおっしゃっていた通り、地方にはITに不慣れな方も多いのですよね。Hec-Eyeのプログラムを作るうえで、どのような部分に配慮されましたか?
まさに、Hec-Eyeがターゲットにしているのは、現場で作業服を着て働いている人達です。今までのITは、わかりやすく言えば、スーツを着た人たちが、事務所でおしゃれに使いこなすもの。でも、それと同じ仕様では、現場の人達を困惑させてしまいます。
ですから、Hec-Eyeは、「ボタンは大きく・操作はシンプルに・必要最低限をカバーする」というコンセプトで開発しました。というのも、IT系のツールって、ボタンも文字が小さいことが多いんです。また、さまざまな機能を搭載している分、不慣れな方には利用しづらい点がありました。
そこでHec-Eyeの操作は、「ボタンを押すだけ」にしています。さらには、手袋をはめていても扱いやすくしました。こうした工夫ができるのは、現場でいろいろな方と関わってきたからこそなのかなと自負しています。
資源量調査から鳥獣害対策まで。ドローンの可能性は無限大
ーここまで、災害現場を中心に利用シーンを伺いましたが、他にはどのようなシチュエーションで利用されていますか?よく利用していただいているのは、自治体の作業や土木建築現場などです。たとえば、状況報告として、「対象となる面積は何平米あるのか」を調査しなければいけない業務があります。そうした業務にドローンを導入すると、一気に見渡せる範囲が広がり、調査効率がアップします。このような利用を想定し、Hec-Eyeには、調査を蓄積して帳票に直す機能も搭載しています。
他にも、農業で作付け調査に利用したり、林業で資源量の調査をしたり、鳥獣害対策で、生態調査(対象となる動物が何匹いるのか)を調べたりすることも可能ですし、空き家の状態や不法廃棄物の調査に使われるケースもあります。
中でも、ドローンの強みが生きるのが鳥獣害対策で、高性能の赤外線カメラを利用することで、動物の体温を感知し、何匹の鳥獣がどのエリアにいるのかを具体的に把握できるんです。しかも、動画で見られるので、動物の動きがよくわかるんですよ。
日本は国土のおおよそ80%が山林なうえ、全国の自治体のうち半分以上は過疎に見舞われています。山林が多くなると、その分、さまざまな調査をする必要も出てくる。ドローンはこのような市区町村において、「身の回り数百メートルを調べるツール」として、非常に優秀なものだと考えています。



プログラミングで「身近なことをちょっと便利に」
ー今日はさまざまな角度から、ドローンの有用性について知ることができました。ドローンは子ども達からも人気で、プログラミング教材として使われることもあるのですが、事業を展開されるお立場として、何かメッセージはありますか。私が子どもだった頃と比べると、IT社会になったことで、「挑戦するハードル」がとても低くなったように感じます。プログラミングだって、今や、誰でも簡単にチャレンジできるものになりましたよね。だからこそ、子ども達には、そこから一歩踏み出して、「具体的に、身近なことをちょっと便利にしてみると、楽しいかもしれないよ」と伝えたいですね。何も、はじめから大それたことをするのではなく、「おじいちゃんが毎日やっている仕事をITで楽にしてあげる」とか、そういった小さな工夫が、社会を良くするきっかけにつながっていくのではないでしょうか。
今日お話したとおり、世の中の産業は、まだほとんどがIT化されていません。特に、現場作業系の仕事はすっかり置き去りにされている面もあります。そういった場所をIT化する仕事は、社会に山ほど残っています。言い換えれば、ブルーオーシャンが広がっているわけで、なんだか夢がありますよね。
残念ながら、クラウドをはじめとした大掛かりなITプラットフォームは、今のところアメリカに先を越されています。しかし、身の回りから着想し、日本という土地柄に合うサービスを作るという方法ならば、まだまだイノベーションの可能性は眠っています。みなさんはぜひ、“身の回り数百メートルを便利に”というつもりで、素敵なアイディアを実現していただければと思います。
ー大畑さん、ありがとうございました!
Hec-Eye(ヘックアイ)はこちら
災害現場をはじめ、日本のさまざまな地域で活用されているドローンサービス「Hec-Eye(ヘックアイ)」の公式サイトはこちら。今回の取材に出てきたシーン以外にも、さまざまなシチュエーションで活用できます。詳しくは以下のページでご覧ください。現場と指令本部が シームレスに繋がる 資料請求・お問い合わせはこちら 03-6380-9372 [Hec-Eye担当]
https://hec-eye.realglobe.jp/ >
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