そんな中、9月27日、神奈川県横浜市にある「横浜 Sunny Aeropark」で、産業用の新型国産ドローン・AIR HOPE(エアホープ)のデモフライト会が開催されました。
今年11月の発売を目前に控え、実際に飛ぶ様子を間近に見られるということで、会場には多くの人が集まりました。秋空のもと開催されたデモフライト会の様子をレポートします。
期待の国産機、AIR HOPEとは?
今年6月に開催された民間のドローン展示会「Japan Drone 2022」で初めて実機が公開され、大きな反響を呼んだAIR HOPEは、ドローン関連サービスを展開するセブントゥーファイブ株式会社が開発した新型の国産機です。機体下部にカメラや搬送用ボックスを付け替えるなど目的に応じたカスタマイズが可能で、 アレンジ次第で多様な活用が期待できるドローンです。アレンジの幅が広いことで、たとえば災害時対応では被災地へ物資を搬送したり、空撮映像から被災前後の損壊箇所を比較したりできるメリットがあります。また、点検や測量ではズームカメラや赤外線カメラ、点検装置などを付け替えることで、さまざまな項目を調査できます。ほかにも農業分野での生育状況確認や虫害箇所の検出など、想定される活用シーンは多岐にわたります。
AIR HOPEはペイロード(最大積載量)や飛行時間の長さに優れており、比較的パワフルなため、飛行コースを事前に設定した配送困難地域や外出困難者への搬送など、物流での活躍も期待されています。
セブントゥーファイブによると、 こうした活用で、 物流業界の慢性的なドライバー不足や長時間労働の解消、トラックの代わりに電力で稼働するドローンを使用することによる二酸化炭素の排出量削減など、副次的な効果も期待できるということです。
主催者代表・石井氏「日本にドローン産業を根付かせたい」
デモフライト会の当日は9月下旬にも関わらず汗ばむような陽気で、見事な秋晴れでした。汎用性が高いドローンということで、会場には地方自治体や建設会社、商社など、さまざまな業界からおよそ20人が集まりました。デモフライト会ではまず、主催者であるセブントゥーファイブの代表取締役・石井克幸氏からあいさつがあり、AIR HOPEの概要説明などが行われました。
石井氏:
「私どもセブントゥーファイブは2018年に設立した会社で、当初はドローンの点検調査などを主に行い、設立2年目からは実証実験を中心に、被災情報を把握するシステム開発やソリューション開発を行ってきました。
昨年度は、物流、農業分野における生育調査、水環境点検におけるドローンの利活用に関する実証実験など、ドローンを使ったいろいろな分野の実証実験に携わりました。
そして今年度は、いよいよドローンを開発、販売する段階になりました。点検調査、システム開発、実証実験支援、そして機体の開発。これらすべての要素をそろえることで、日本にドローン産業を根付かせたいと考えています。
さて、今回は機体開発の第一弾となるAIR HOPEについて、実際に飛ぶ様子をぜひ皆様にご覧いただきたいと思っています」
「実機をご覧いただく前に、まずはAIR HOPEの機体コンセプトについてお伝えしたいと思います。
日本における現在のドローン産業は進み方がまちまちで、実証実験を行っている分野もあれば、実用化がすすんでいる分野もあります。AIR HOPEはこれら両方の分野で活用することを意図しています。つまり、実証実験で活用するのはもちろん、実際のビジネスでも活用することを意図しているわけですね。
まずは実証実験での活用についてですが、昨年度われわれが行った物流や点検の実証実験では、実際に今回のAIR HOPEの機体を使用しています。今年度もドローンを使ったナマコの密漁対策の実証実験など、いろいろな実証実験に活用する予定です。
このような実証実験で得られたノウハウをAIR HOPEを使っていただく会社の皆様にも提供することで、どのような分野でドローンを活用できるのかを検討し、日本のドローン産業を推進していきたいと思っています。
もうひとつの用途が、実際のビジネスでの活用です。
残念ながら今の日本のドローン業界では、活用への期待が先行するばかりで、実際にビジネスにつながっていない現状があります。
そんな中でこの機体は、撮影用のカメラや測量機器などを付け替えて搭載することができ、カスタマイズ性に優れています。そのため、実際にビジネス利用が進む空撮や測量などへのご要望にもしっかりとお応えできます。
それだけでなく、いずれ日本でドローンを使った物資の搬送が実用段階になれば、ぜひわれわれのドローンを物流に使っていただきたいと考えております。実証実験、そしてビジネス活用。両方の用途を念頭におきながら、ぜひ今日のデモフライトをご覧ください」
アームをたたんでコンパクトな収納、市販カメラの搭載も可能
石井氏からの挨拶のあとは、実際の機体やアタッチメントを前に、担当者からAIR HOPEの具体的な使い方やおすすめのポイントなどが紹介されました。主な特徴は以下となります。
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物流ボックス
ドローンの機体にとりつけたまま、物流ボックスの扉の開閉が可能なため、出し入れが容易にできる。 -
搭載カメラ
デモフライト会で搭載されていたのは、静止画、動画、デジタルズームが可能なSonyの「α7R IV」タイプのカメラ。Sony製のカメラを中心に、現在、サポート可能なカメラ機種をさらに増やすべく、検証中。市販のカメラが利用できるため、専用カメラを別途購入せずに撮影が可能。 -
折りたたみ式のアーム
四方向にアームを折りたたむことができ、使用しないときに無駄なスペースが必要ない。収納用のボックスは縦横が約70センチ、高さが約35センチで、コンパクトな収納が可能。 -
マグネシウム合金製
ドローン本体、アーム、いずれもマグネシウム合金でできていて、軽量。紫外線に強く耐久性も優れており、品質管理もしやすい。 -
ツインプロポでの操縦
二つのプロポ(コントローラー)があり、基本はツインプロポで操縦する。ひとつがドローン本体を操縦するプロポ、もうひとつがカメラとジンバルを操縦するプロポで、二つに分かれていることから、飛行中でも安定した撮影ができる。
デモフライト、空中からの撮影や自動航行を実演
さあ、いよいよフライトの実演です。担当者が2つのプロポ(ドローン本体を動かすプロポと、カメラ・ジンバルを動かすプロポ)を操作し、晴れ渡った秋空にAIR HOPEが飛び立ちました。最初にカメラ操作のデモが行われ、AIR HOPEに搭載されたカメラがとらえた、空からの映像がパソコンに映し出されました。プロポでカメラやジンバルを操作してパソコンに映る画面を動かし、実際に撮影する時の画像の動きなどが確認できます。
次は、自動航行のフライトです。AIR HOPEが事前にプログラムされたコースに沿って会場を自動で大きく周回。決まったルートでの配送や定期的な点検など、活用が期待できる多様な用途が紹介されました。
フライトの様子を見学した参加者からは、操作や点検などに関し質問が寄せられました。
参加者「自動航行をしている最中に、割り込んで操縦することはできるのでしょうか?」
担当者「はい、できます。一度モードをチェンジして、舵をマニュアルにしてから操作を引き取って操縦するというやり方です」
参加者「再び自動航行に戻す際は、プログラムを中断したところから再開することができますか?」
担当者「はい、アプリで自動航行再開の操作をすると、中断したところから飛行を再開します」
ほかにも、収納する際にたたむやり方を実際に見てみたいという要望を受けて、担当者がアームをたたみ箱に収納するときの形にするなど、利用シーンを想定した具体的な質問が寄せられていました。
参加した電気機器メーカーの男性は、「産業用のドローンが実際に飛ぶところを見るのは今日が初めてでした。思ったよりも難しくなさそうだったので、具体的な活用をいろいろと検討してみたいと思います」と話していました。
レベル4解禁、注目されるドローンの未来は
「空の産業革命」を担う存在として期待が高まるドローン。今年12月には有人地帯において、目視の範囲外でドローンを自動・自律飛行させる、いわゆる「レベル4飛行」が一定の要件のもと解禁となります。また、ドローンをはじめとする無人航空機の登録が義務化されたほか、今後、ドローン操縦に関する国家資格制度も導入される予定です。さまざまな法整備や制度改革がすすみ、将来的に活躍の幅が大きく拡大していくことが予想されます。今回のデモフライトを主催したセブントゥーファイブ・マーケティング部の番匠ジュリア柚衣さんは「一般の皆さんにはドローンの良い点がまだまだ認知されておらず、ドローンは特殊な撮影に利用するものであるとか、時には危険な飛ばし方をする趣味の世界のものなどとと思われているかもしれません。実際はそうではなくて、ルールを守ってしっかりした知識を持った人が使えば、ドローンは本来、私たちの仕事や生活をより便利に、豊かにしてくれる存在です。多様な活用方法ができるAIR HOPEを通じて、ドローンの良さを是非知ってもらえたら嬉しいです」と話します。
同社のAIR HOPEがどのような形で活躍するのか、期待が高まります。
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