(取材)みつば行政書士事務所|YouTubeでも情報発信!建設業・ドローン特化の行政書士・瀬野先生に聞く

(取材)みつば行政書士事務所|YouTubeでも情報発信!建設業・ドローン特化の行政書士・瀬野先生に聞く
建設業とドローンに関わる申請手続きに特化したみつば行政書士事務所。代表の瀬野りえ氏は、メーカーでの勤務経験を生かした多角的な視点を持ち、顧客のドローン運用をサポートしています。「建設」と「ドローン」に特化しているからこその強みやYouTubeでの発信などについて、瀬野氏にうかがいました。

みつば行政書士事務所代表 瀬野りえ氏

「建設」×「ドローン」の専門性の深さが強み

――瀬野先生が行政書士事務所を開いた経緯を教えてください。
 
私はもともと新卒で電気関連のメーカーに就職し、転職を経る中で、さまざまな経験をさせてもらいました。メーカー業界は事業再編やトレンドの移り変わり、円の動きといった自分の意思ではどうしようもできない事象の影響をすごく受けるんですね。  
 
それで「環境に振り回されず、自分の力だけで仕事したい」と考えていたところ、行政書士という仕事にたどり着いたんです。 「一度だけ試験に挑戦する。駄目ならすっぱり諦めて会社員に戻る」と決め、周りにもそう宣言して自分を追い込みました。
 
半年ほど全力で勉強し、晴れて2016年の試験に合格。翌年にみつば行政書士事務所を開業しました。
 
――未経験でいきなり開業の道を選ばれたんですね。 
 
行政書士の仕事は自分に向いていると思っていましたからね。またネットで検索すると、「行政書士は食えない仕事」といったネガティブな情報が溢れていました。それを見て、「この業界にはチャンスがある」と思ったんです。

稼げる人が少ないということは、きっとブルーオーシャンな領域を見つけることができるはず。基本的にポジティブなんですよね(笑)。
 
――そこで「建設業」と「ドローン」を選ばれたわけですね。なぜこの二つに特化しようと思われたのでしょうか。
 

まず、建設業許可申請手続きは行政書士の王道業務です。継続的な手続きが発生するので、建設業のお客様が増えるほど事務所の経営が安定する分野です。ですからまずここは外せないと考えました。  
 
いっぽうドローンについては会社員時代、行政書士を目指し始めたタイミングでたまたまドローンの市場調査をする機会があったんです。まだ日本では全く認知度もありませんでしたが、ヨーロッパでは軍事目的で使われていたドローンが民間に転用され始めており、国内市場においても大きな可能性を感じました。
 
今後必ずドローンの時代が来ると確信し、「行政書士になったらドローン関連業務を中心に据えよう」と試験に合格する前から決めていたんです。  
 

同所提供


――建設業とドローンに特化したことによるメリットをどう感じていらっしゃいますか。
 
   
行政書士で建設業にかかわる申請を扱っている人は多いのですが、私のように入札に必要となる経営事項審査や入札まで対応できる行政書士は限られます。また、ドローンに特化した行政書士はかなり少ない。この二つを掛け合わせることで、ほかの行政書士にはない強みを発揮できています。
 
近ごろは建設業のお客様が業務でドローンを活用するケースも増えてきました。例えば屋根点検や橋梁点検、災害時の点検ですね。ドローンであれば危なくて人が行けないような場所でも、安全で短時間に点検できるということで需要が増えてきています。そのような企業からご依頼を頂戴しています。

個人~大手企業まで、1000件以上の申請実績

――専門性が高いからこそ深い相談にまで乗れるんですね。申請以外のご相談も寄せられることがあるのでしょうか。
 
許認可にかかわる業務以外にも、 20年近い会社員時代の経験を元に、雑談ベースでさまざまなご相談に乗っています。人事や経営企画、マーケティングといった経験が生きていますね。
 
一番多いのが「人材採用定着・育成」の問題、次に「営業販売戦略」です。ときには公共事業への参入を希望する中小規模の建設業者に対して、許可業種の増やし方をお話することも。最近は「ICT活用」の話題も増えてきていて、補助金をご紹介するケースもあります。
   
――顧客はどのように開拓されたのでしょうか。
 
1年目は想定していたよりもお客様が来ず、不安に駆られたこともありました。ただ地道に実績を積んでいくことで、徐々にお客様が増えてきました。
 
うちのお客様にはテレビの撮影関連の許可申請が多いのですが、ある番組のディレクターが別のディレクターを紹介してくださるケースが多いですね。この5年間、ドローン関連だけで累計1000件以上の申請を行いました
 
――1000件越えとはすごいですね!ご依頼は法人が多いのでしょうか。
 
そうですね。 基本的には法人のお客様がメインです。依頼は全国から受け付けていて、一番多いのは東京の企業からのご依頼です。メールでの依頼が95%以上なので、一度も相手方と面識なく終わる案件も珍しくありません。
 
個人の方では、お年を召した方で「申請を誰かに任せたい」と考える方が多いですね。「自分の別荘を上から撮影したいので許可を取って欲しい」といったご相談をいただくケースもありました。
 
――依頼できる業務の範囲はどこまででしょうか。
 
機体登録や飛行前の登録に関しては、基本的にご自身で行ってもらっています。あとは、そもそも頼まれる頻度も低いですが、飛行日誌の記載もしていません。それ以外の業務でしたら地権者からの許可取りなども含め、大体は受け付けています。
 
ただ、時間が足りなくてお断りするケースは結構あります。イベントの規模にもよりますが、最低でも1ヶ月前にはご依頼いただきたいですね。たとえば花火大会などの大きなイベントでしたら、イベントを企画した段階でご相談していただけると大変助かります。
 
 ――では、お願いするときには機体登録を済ませておいた方がいいんですね。
 
そうですね。機体を買って登録して、自分でしっかり飛ばせるようになるまで練習をしてからお声がけいただけるとありがたいです。そこから先の申請はすべてお任せください!
 

――これまでにトラブルや大変だったことはあったのでしょうか。
 
大きなトラブルはないですね。当初は仕事の進め方がわからない上、聞ける相手もいなかったので申請先に問い合わせながらおっかなびっくり進めたものですが、いまはスムーズに進めることができています。
 
ただ大変になったことといえば、法制度の改正により航空局に申請が殺到し、許可が下りるまでに時間がかかってしまっている点ですね。2022年、機体登録の対象となるドローンの重量が100g以上に引き下げられ、登録システムも変わりました。この二点が相まって、申請者が登録しなければならない機体の数が格段に増えたんです。
 
また、いろいろと制度が変わったことで、複雑な法規制に社内で対応できなくなったり、それまで依頼していた行政書士が対応できなくなったりしてうちに依頼が回ってきたケースもあります。そのほかいまの時代ならではの背景として、企業としてSNSでの炎上のきっかけともなりうる罰則適用になる事態を避けるためにご相談いただくこともありますね。

2019年にYouTubeを開設したのですが、2021年くらいからそういった理由でYouTubeをご覧になった有名企業からご連絡が来る機会も増えました。ドローンを全国で500台、操縦者が800人いるほどの大手企業から「丸ごと任せたい」と依頼されるケースも続いており、その影響力に驚いています。

YouTubeで発信!事業展開のサポートに注力

――YouTubeでの発信を行っているとのことですが、何かきっかけがあったのでしょうか。  
 

きっかけは「お客様への説明をもっと効率的に行うことができないか」と考えたことです。飛行申請にかかわる手続きはどのお客様もほとんど共通ですが、説明するには結構な時間がかかります。
 
そこで思いついたのが、YouTubeの活用でした。お客様に「YouTubeで説明しているので見てくださいね」とご案内すれば、双方にとっていいんじゃないかと思ったんですね。
 
あくまでお客様への説明目的で作りましたが、このような発信をしている行政書士はいないので、すでに「登録者1000人以上」「直近12カ月の総再生時間4000時間越え」の収益化条件を満たすまでになりました。2022年末にアップした「DIPS2.0で包括申請してみた」の動画は1.6万回再生(2023年1月末時点)を超えています

 
 ――動画では、一つひとつの作業を詳しく説明していらっしゃいます。 
 
実際の申請作業の流れに沿って画面のスクリーンショットを撮りながら動画を作っていますから、基本的には動画を見るだけで申請できるようになっています
 
また、役に立ちそうだと感じたコメントについてはすべて返信するようにしています。全部隠さずお教えしているので、他の行政書士から、「そんなに全部説明されると仕事がなくなるからやめてくれ」と言われたこともあります。
 
 ――先生自身は「顧客が減るかも」とは思わないのでしょうか。  
 
もともと、YouTubeを見て質問までするような人は、私のYouTubeがなくても自分で申請してしまう人がほとんどなんですよね。行政書士にはらう手数料も決して安いわけではありませんから、自分で頑張って申請しようと思う人は応援したいと思っています。
 
お客様になってくれるのは、動画を見ても「煩雑だし、任せよう」と思う個人や企業。実際にYouTube経由でご依頼も頂いているので、YouTubeを始めた価値は十分にあったと思っています。特に「この日までに確実に許可を取っていなくちゃいけない」と決まっている企業からはご依頼をいただくことが多いです。
 
――仕事を進める上で気を付けていることは。
 
役所から補正指示が出されてしまうと、許可が下りるまでに時間がかかってしまいます。なので、「絶対に補正指示を受けない!」との思いで役所に書類を提出しています。
 
ただ、補正指示を受けるのはこちらがミスをしたときだけでなく、役所の方から「こういう文言を追加してほしい」といったお願いベースでご連絡が来るときもあるんですよね。そんなときは、再提出した後すぐに役所に電話をかけ、他の新規の申請と混ざらないようにしてもらっています
 
また一からの順番待ちになると、たとえば期日が決まっているテレビの撮影などは間に合わなくなる可能性がありますからね。
 
――迅速な行動が鍵なんですね。
 
そうですね。それは常に心がけています。顧客対応においても、お客様とLINEのIDを交換し、連絡が来たらすぐに返信するようにしています。迅速な対応は顧客対応の要ですので、手を抜かないようにしていますね。


――ドローン業務を手掛けるやりがいを教えてください。
 
自分がかかわった番組については可能な限り家で見るようにしています。中には「あぁ、この許可申請、苦労して取ったなぁ」という案件もありますが、そうした経緯を経てドローンで撮影された映像がテレビ番組で流れるとやりがいを感じますね。
 
―― 今後どのように事業者を支えていきたいとお考えでしょうか?  
 
まずはベースとして「法令順守」があります。現状は目視外飛行を解禁し、産業発展に注力する「緩和」が行われる一方で、罰金の設定や登録要件の厳格化といった「規制」も進む過渡期にあります。今後市場の拡大が見込まれる中で、しっかりと安全を守った上で、ドローン市場の拡大の一助となれるようにかかわっていきたいと考えています。
 
また今後はYouTubeでも、手続きや制度に関する話だけでなく、事業展開に役立つような動画を上げていくつもりです。行政書士なのであくまでサポートがメインですが、ゆくゆくは事業を発展させるための別法人を立ちあげることも見据えながら、お客様の事業発展を支えていきたいですね。
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