今回取材したのは、JULCセンター長の中村 佳晴氏と代表取締役の松本 篤史氏。お二人に、JULCの人材育成にかける思いや講習カリキュラム開発について、詳しくお話を伺いました。
「現場で活躍できる人材を育成したい」全国で高品質の教育を提供
―JULCは、どのようなねらいのもとで活動している登録講習機関なのでしょうか。中村センター長:
日本無人航空機免許センター(JULC)は、「現場で活躍できる人材を育成したい」という思いで活動している団体です。
私が以前ドローンメーカーに勤めていたときに、「現場に出られるドローンのパイロットが少なくて困っている」という声を何度も耳にしました。そこで、現場で活躍できる人材の育成が必要であること、各業種の専門領域を教える教育が必要であることを痛感したんです。そのために、JULCではドローンを安全に飛ばすための基礎的な知識・技能を習得できる国家資格講習に加え、各業種での業務に欠かせない専門的な内容を民間資格で提供しています。
分かりやすくパソコンにたとえると、ドローンの国家資格取得はせいぜい「パソコンでキーボードを打てる」くらいのレベルです。パソコンで仕事をするには、さらに高度な知識やスキルが必要で、ソフト等も扱えなければいけません。それと同じように、各分野の専門的な内容を理解しておかなければ、ドローンを現場で活用することはできないんです。現在提供している民間資格講習は空中写真測量のみですが、今後もカリキュラムを増やす予定です。
―他の登録講習機関との違いはどのようなところでしょうか?
中村センター長:
JULCは日本全国で現在28校ありますが、どの教習所も高いレベルの教育水準に統一していることです。当団体は各教習所の教官の人選・育成に非常に力を入れており、使用するテキストもかなりのこだわりを持って作成しています。
JULCの講師陣は、全員が実際に現場でドローンを活用し、活躍している優秀な現役パイロットです。一人ひとりの知識量、技量、バックグラウンドやお人柄なども見て採用しているため、我々としても信頼して講習をお任せできています。
また、JULCのオリジナルテキストは、内容、品質ともに他社には負けない内容になっていると自負しています。私自身のパイロットとしての経験も惜しみなく注いで作りましたので、受講時はもちろん、講習受講後の現場でもしっかりと活用いただけると思いますよ。
松本代表:
この前も、ある企業様から50名ほどの方にお越しいただき、全国8箇所の教習所に分かれて国家ライセンスの講習を受けていただきました。こうした場合、大切になるのが質の担保です。せっかく「企業で一斉に資格を取ろう」と考えてくださったのだから、スクールや講師によって得られるスキルにばらつきが生じてはいけませんよね。
我々は講習で使用するテキストも強いこだわりを持って作り上げています。また経験値の高い教官も揃っています。全国で均一的に高いレベルの講習を全国で受講し、同水準のスキルを持つ受講者の育成が可能なスクールは、そう多くないはずです。
ドローンの基本から慣熟訓練、ビジネス活用まで。スクール内でスキルアップを目指せる
―展開しているコースや内容、習得できるスキルなどを教えていただけますか。中村センター長:
JULCでは、現在大きく分けて4つのコースを展開しています。①無人航空機操縦者技能証明(一等、二等)、②産業活用コース、③機体学習コース、④オンラインセミナーです。
①無人航空機操縦者技能証明(一等、二等)
①無人航空機操縦者技能証明(一等、二等)は、ドローンの基本的な知識・技能があるのかを証明する国家資格で、JULCでは講習と修了審査を実施しています。主に法規や無人航空機の構造、飛行経路作成の考え方などを学んでいただけます。なお本講習は、どちらかというと会社などで技能証明が必要となる方向けの講習です。現在の民間資格は2025年で終了予定となっているため、それ以降の業務で依頼主に技能を証明する際には国家資格が必要になると予想されます。
繰り返しとなりますが、国家資格講習で学べる内容は、あくまでも基礎的なものです。より実用的・実践的な内容は、専門性の高い「産業活用コース」で学んでいただけます。
②産業活用コース
②産業活用コースは、現場でのドローン活用に必要な知識習得や飛行スキル向上のための講習を、ワンストップで提供するコースです。現在「空中写真測量 基礎」「基礎フライトトレーニング(1日間)」「基礎フライトトレーニング(3日間)」の講習があり、年内に新たなカリキュラムを2つ以上追加予定です。空中写真測量 基礎は、現場で使う機能や現場での注意点などといった、空中写真測量の基礎を学んでいただける講習です。測量、点検、建築現場などのほか、実は様々な業種、場面でご活用いただけます。例えば災害時の被害場所を即時測量して現状のリアルな状態を把握したり、ゲームのグラフィック作成で地形を把握する際に使ったり……。そのような方々に本講習を受けていただければ、ご自身で現場での作業ができるようになります。
なお講習では、空中写真測量を集中的に学習しますので、ドローンにまつわる法律等の話はしません。一緒に国家資格講習を受けていただくとドローンの基本を理解した上で学べるため、最もおすすめです。
続いて基礎フライトトレーニングは、国家資格を受講される前や飛行技術に自信がなく訓練を重ねたい方、国家資格取得後も定期的に訓練を続けたい方向けの講習です。ドローンは、継続的な訓練が非常に大事です。私もそうですが、梅雨時などで長期間訓練ができないと、いざ仕事をするときに不安に感じてしまうんですよ。ですが、普段から練習していると安心できますし、現場でも120%の力を発揮できます。
トレーニングは1日間・3日間に分かれていて、1日間コースは主に自主練習の方法をレクチャーする講習です。飛行練習は独学で行う方も多いですが、そもそもの練習方法がわからず、非効率な練習をしてしまっているケースが少なくありません。そこを、私たちがお教えすることによって、上達につながる飛行練習ができるようになります。
3日間コースは講師がすぐそばにつき、みっちりと指導するコースです。飛行技術や緊急時の対応方法は、1日・2日練習しただけでは身につくものではありません。例えば、ドローンを静止させても、風に乗って動いてしまうということが、現場ではよく起こります。そのときの適切な対応方法などを、実践的な講習によってしっかりとご理解いただけます。
③機体学習コース
③機体学習コースは、現在「DJI Matrice300 RTK 基礎」の講習をしています。DJI Matrice300 RTKは、高性能・高機能で汎用性が高く、様々な用途でお使いいただけます。しかし、高性能すぎるがゆえに、持て余してしまう場合も多いんです。機能を上手に活用すれば、精度も効率も上げることができ、仕事も確実なものとできます。ですが、機能を知らない・使えないと、飛行時間が長くなったり、精度が出なかったり……故障の原因にもなりえます。そこを、受講者様の使用用途に応じてアドバイスをし、機体の性能を十分に発揮できるようにサポートするのが、本講習です。今後は他メーカーさんの機体講習もしていきたいと考えています。
④オンラインセミナー
④オンラインセミナーは、機体登録や飛行許可など、ドローン運用にまつわる様々なテーマを無料で学習いただけるオンライン講座です。行政書士の佐々木先生のご協力で、どのテーマもわかりやすく、正確な情報を提供できるセミナーとなっており、これまで3,000名ほどの方にご参加いただきました。普段からドローンを飛ばされている方はもちろん、初心者の方であっても大変勉強になる内容だと思いますよ。ドローンを使いこなすには、煩雑な法律の理解や手続きが必須です。そこをわかりやすくすることで、優秀なパイロットを増やせたり、利活用が広がったり、様々なメリットが期待できます。
大事なところだからこそ無料で提供し、ドローン利活用者を広げていくことが、我々の重要な役目の一つだと考えています。今後は法規以外にも、みなさんが気になっているテーマのコンテンツを増やしていく予定です。
松本代表:
このようなコース展開としているのは、やはり現場で活躍できる人材を育成していきたい思いがあるためです。最初はライトユーザーやホビーユーザーでも、ドローンの利活用を進めるうちに、新たな使い方が見えてくることもあるでしょう。
そのときに、JULCで国家ライセンス講習を受けて、ドローンの法律やルールなど基本的なことをご理解いただく。そこから、産業活用コースや機体学習コースで応用教育をして、現場で活躍できる人材を輩出していく。このようにスクール内でステップアップしていただくことを理想としています。
ドローンのライトユーザーの方も、本気でビジネス活用を目的にする方も、ぜひJULCを頼りにしていただきたいです。
全国の教習所が連携・共有し、常に進化を目指す
―指導にあたってこだわっているポイント、強みなども教えていただけますか。中村センター長:
優秀な教官が揃っていることです。JULCでは、点検・測量のお仕事や、映画撮影など、ドローンに関連するあらゆる業種で活動・活躍している方を教官として集めています。経験談や対策なども絡めた指導を提供できるのは、各分野のプロフェッショナルが集うJULCならではです。
また、教官同士が支え合い、教え合う体制を作り上げています。各分野のエキスパートが切磋琢磨し、互いを高め合っていきたい。そうすることでより一層、質の高い学びを提供できると考えています。
JULCは全国の教習所で連携できることも強みです。問題点や経験談、より有効な教授方法などを共有することにより、JULC全体で常に進化していくことができます。例えば「このような教え方のほうがわかりやすいのでは?」という意見によって該当部分を修正したり、教科書に追記したり……。教官も教えやすく、受講者様にとってもわかりやすい、全員がかゆいところに手が届くというような環境を、全員で一丸となって作り上げたいと考えています。
松本代表:
加えて「受講者情報管理サービス」システムも、我々の強みとして非常にこだわっているところです。操縦者のスキルを一元管理し、どんどんステップアップいただけるように作り上げました。
JULCの公式ページでアカウントを作っていただくと、民間資格も国家資格も一括管理できるようになっています。受講証明証などもオンラインで出力・取得できますので、非常に便利にお使いいただけると思いますよ。
また、受講特典もあります。JULCの親会社は、ドローンの保険を取り扱う「エアロエントリー株式会社」です。保険をお安くしたり、行政書士へのご相談を割引できたりという特典もご用意しています。
JULCでは、教育をもちろん中心においていますが、保険や手続きなどのドローンに関するものすべてを、総合的に支援したい。最終的には、「ドローンで困ったことがあれば、JULCで解決できる」組織を目指したいと考えています。
操縦者を支援することで、日本経済や地域社会に貢献
―今後ドローンが社会に普及していくにあたり、JULCさまはどのような役目を果たしたいと考えておられますか。中村センター長:
ドローンの導入から基礎、応用、そして出口となる現場でのご活躍までを一気通貫で支援していきたいと考えています。そして、最終的には人命救助やインフラの安全性向上などの分野でもドローン並びに操縦者が貢献し、結果日本経済や地域社会の発展へと繋げていきたい。これが、私たちの最大の目標です。
いまはまだ、ドローンの導入となる基本部分ができたところです。出口までを作ることを目標に、運営していきたいと考えています。
―ドローンの未来に、大きく繋がりそうですね。最後に、読者の方にメッセージをいただけますか。
中村センター長:
私自身もパイロットですし、パイロットを目指す方を支援したいと考え、パイロット視点ですべてを作り上げています。国家資格講習を続けていくのはもちろん、民間資格をどんどん増やし、ドローンに関わるあらゆる業種の方々が「JULCに勉強しに行けば間違いない」と思えるようなカリキュラムを増やしていくことを考えています。
全国にJULC教習所がありますので、ドローンにご興味のある方、ステップアップを目指す方は、ぜひ、ご相談ください。