そして2023年5月25日には、ドローンの第一種型式認証を申請したことを公表しています。これはACSL株式会社に続き、国内2例目の申請となりました。ただし、ACSL社が資本金30億円を超える上場会社であるのに対し、イームズロボティクス社は資本金2億1750万円 、従業員約30名のベンチャー企業です。
この記事では空の産業革命に“台風の目”として名乗りをあげたイームズロボティクス社・代表取締役社長の曽谷英司氏に、ドローン物流を可能にする同社の新型機体の開発状況についてうかがいました。
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イームズロボティクス株式会社 代表取締役社長 曽谷 英司氏
(取材)右肩上がりに需要増、日本からドローン市場を盛り上げる!イームズロボティクス株式会社代表 曽谷英司氏
右肩上がりに需要が伸びているドローン業界。日本のドローン業界を盛り上げようとしているのがイームズロボティクス社です。今回は、同社代表取締役社長の曽谷英司氏に、ドローン業界の動向や国産ドローンの展望などについて伺いました。
この記事をcoeteco.jp で読む >オープンソースでの開発が評価され、2022年11月に資金調達
__まず、2022年11月に実施された資金調達について、御社のどのような取り組みが評価された結果だと考えていますか?2022年11月の資金調達については、第一種型式認証取得を見据えた新しい機体の開発に対して投資していただきました。そして、投資先に弊社が選ばれた理由は、弊社がオープンソースのソフトウェアを使用しているためです。
弊社では世界で広く活用されている「アルジュパイロット」というソフトウェアを使ってドローンの開発を進めています。オープンソースのソフトウェアを使えば、我々のような小規模なベンチャー企業でも、世界に肩を並べる飛行能力を備えたドローンをスピーディに開発できます。
__オープンソースのソフトウェアを利用すると、なぜ開発が早まるのでしょうか?
オープンソースのソフトウェアは全世界にソースコードが公開されており、自由に利用できます。世界中のエンジニアが利用するなかで素晴らしい使い道が生まれることもあれば、改善すべきポイントが見つかることも。さらには開発者の間でコミュニティが生まれ、ビジネスにつながることもあります。つまり、みんなが使いやすいものが、安い価格で手に入る土台になるんです。
しかもドローンは、さまざまなパーツやソフトウェアとの連携が求められるプロダクトです。独自に研究していると限られた知見しか得られませんが、オープンソースのソフトウェアを使用する開発者同士でノウハウを融通し合えば、技術開発がスピーディに進むのはもちろん、質も高まっていきます。今回の資金調達が実現した背景には、こうしたオープンコラボレーションへの期待感もあったのではないかと考えています。
__理解が深まりました。そのほかにも、御社が評価されているポイントを教えてください。
あともう一つは、弊社がNEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 )との「ReAMoプロジェクト」で1対多運航(パイロット1名が複数台のドローンを操縦する運航形式)を研究していたことも、評価していただいたのでしょう。
ReAMo 次世代空モビリティの社会実装に向けた実現プロジェクト | Realization of Advanced Air Mobility Project
ReAMo(リアモ/次世代空モビリティの社会実装に向けた実現プロジェクト)公式サイトです。ReAMoプロジェクトについての説明、最新情報や各コンソの研究・開発の概要や成果をお伝えします。NEDOへのReAMoに関するお問い合わせも本サイトからどうぞ。
この記事をreamo.nedo.go.jp で読む >![](https://static.coeteco.jp/coeteco/image/upload/c_limit,f_auto,q_auto,w_1400/v1/cs-product/froala/v-bXlJ_-7PjGAkHPB24VQQ.jpg)
現在のところ、1台のドローンを遠くまで飛ばすには、ドローンの飛行経路近くに人を立たせて、バトンリレーのようにドローンを目視しなければなりません。
一方で「ReAMoプロジェクト」では、レベル4飛行(有人地帯での目視外飛行)の社会実装に向けて、1人のオペレーターが10台、20台のドローンを飛ばせるようなシステムを開発しています。そのような研究開発を国の機関と共同で行っているのは弊社のみなので、その点も評価していただけた理由だと考えています。
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__そして、2022年11月に資金調達を受けて開発したのが、今回第一種型式認証を申請した「イームズ式E600-100型」(以下、E600)なのですね。以降で詳しくお話をうかがっていきます。
無人航空機の型式認証制度、物流のカギを握るのは「第一種」
__そもそも、「無人航空機の型式認証制度」とはどのような制度なのでしょうか?ドローンの型式認証制度とは、ドローンの強度や構造、性能及び製造の均一性について検査を行い、安全性を担保するための制度です。いずれは東京のような人口密集地でもドローンが飛ぶことを見据え、機体の安全性が厳しく審査されます。
機体の型式認証には第一種型式認証と、第二種型式認証があります。飛行する区間の人の立ち入りを管理すれば飛行を認められる機体が「第二種」、人の立ち入り管理の必要なく飛行を認められる機体が「第一種」の認証を受けます。
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イームズ式E600-100型
__第一種と第二種の違いは、人の立ち入りを制限するかどうかということでしょうか?
基本的にはそのとおりです。加えてここでのポイントは、人が立ち入るか立ち入らないかで、ドローンに求められる性能が大きく異なることです。弊社はすでに2023年3月末に第二種を申請して認証活動を進めていますが、第一種では、ハードウェアやソフトウェアの信頼性をさらにきびしくチェックされます。第一種は第三者の上空を飛べるように作られる機体なわけで、万が一落下するようなことがあれば大事故につながるためです。
第一種の厳しい認証をクリアしたドローンは第三者の上空を飛ばすことができ、そのうえ完全自律飛行も認められます。今は地上人口密度の低い場所での飛行が中心ですが、実績を重ねてシステムの安全性を向上することで、やがて東京都内上空の飛行ルートをプログラミングしたドローンを、大阪まで飛ばすこともできるようになります。これは非常に画期的で、実現すれば物流の未来が変わるでしょう。
厳しい基準をクリアするには資金調達が不可欠だった
__第一種型式認証を受けるドローンには、どのような性能・性質が求められますか?第一種型式認証を取得するには、航空機並みの厳しい基準をクリアしなければなりません。人々が暮らしているエリアの上空を自律飛行する機体ですから、設計や製造均一性が航空法や世界各国の航空安全基準、ISO等に適合していなければならないのです。申請の際には、一つ一つの部品の製造過程やトレーサビリティを細かく調査するなど、均一性を確保するための品質管理体制を証明していかなくてはなりません。
__安全を守るためとはいえ、かなりのコストがかかりますね。
その通りです。安全を守るためには、出どころや品質のはっきりしない部品が使われることを阻止しなければなりませんから、空の安全を守るためには欠かせない措置でしょう。しかし、規程を満たすためにはものすごい手間と資金が要るのも事実で、資本力のある大企業でなければ申請にこぎつけることすら難しい。2022年11月に資金調達をしたのも、そのような事情からでした。
それでも、困難を乗り越えて、2023年5月、弊社は第一種型式認証を申請いたしました。これはACSL社に次ぐ2番目の申請です。しかも、ACSL社はドローン専業メーカーとしては唯一の上場企業であり、資本力もあります。そのACSL社にわずか2ヵ月遅れで従業員30名程度のベンチャー企業が追いつけたのは、かなり画期的なことです。
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「ドローン飛行情報確認システム」も提供。空の安全確保サポートに力を入れている
弊社では、非常に軽量な機体で、「落ちにくいのはもちろん、万が一落ちても安全なドローン」を開発しています。万が一機体が故障した場合でも、地上被害を軽減できるパラシュートを搭載したり、今後は開発中のAIにより安全な場所を探して緊急自動着陸する機能の搭載を目指しています。
この機体が本格的に運用されれば、ドローンが当たり前に荷物を運ぶ社会が訪れるかもしれない。そんな未来に向けて、今も鋭意、開発に挑んでいます。
2030年、トップでレベル4飛行を実現する企業になるために
__最後に、御社の今後の課題と展望について教えてください。一部、冒頭の繰り返しになりますが、弊社では国の研究組織であるNEDOとともにReAMo(リアモ)プロジェクトを立ち上げて1対多運航を研究するだけでなく、レベル4飛行の実現をも目指しています。
具体的には、2030年を目途に、日本で初めてレベル4飛行を実現させる企業になるために、より信頼性が高く、低価格で長時間飛べるドローンを開発していきたいと考えております。
乗り越えるべき課題としては、ヒト、モノ、カネがあります。我々ベンチャー企業にとって、資金調達と人材確保は必須課題です。ドローン市場で生き抜くためには、まずは設備投資が必要です。そのためには、さまざまな企業とタイアップして設備投資を充足し、それを取り扱える優秀なエンジニアを新たに募集しなければなりません。
現在、ドローンの世界的シェアは中国のDJI社が市場の7割を占めています。しかし、情報漏洩リスクやセキュリティ面の課題があり、国家事業としてのインフラ整備などでの利用に不安を抱く声もあります。DJI社の優位性は変わらないとしても、産業用ドローンなら対応次第で風向きが変わる可能性もあるでしょう。
そのときには弊社が、日本のドローンのリーディングカンパニーとして名乗りを挙げる企業でありたいと考えております。