ドローン最前線、レベル4対応新型機「PF4-CAT3」とは|未来の物流を支えるACSLの挑戦

ドローンで未来の物流を支える レベル4対応新型機 PF40CAT3とは?
高度な自律制御技術を基盤に、物流、インフラ点検、防災災害対応など、産業用ドローンの開発と社会実装を進める株式会社ACSL。国産ドローンへの期待を一手に担う同社は、2023年3月に日本初となる第一種型式認証書(レベル4対応)を取得し、その技術力を証明しました。

ACSLのドローンは、取り扱いが簡単でセキュリティ性が高いことから、最近では防衛装備庁から3.7億円の大型案件を受注するなど、信頼性をさらに高めています。また、2024年1月に発生した能登半島地震では、ドローン測量によって災害状況把握を支援し、その存在感を示しました。

そんなACSLが、2024年6月27日に新たに第一種型式認証機として申請したのが、日本郵便(JP)との共同開発によって誕生した大型ドローン「PF4-CAT3」です。従来型の「PF2-CAT3」と比較して、搭載可能な荷物のサイズ・重量、そして航続可能距離が大幅に向上した同機は、「ドローン物流のスタンダード」を目指して開発されたと言います。同社2例目のレベル4対応機体となるか、その動向には日本全国からの期待が寄せられています。

この記事では、株式会社ACSLの経営管理ユニット 渉外担当責任者 伊藤康浩さんに、同社の歩みや海外展開の状況、そして注目の新機体についてお話を伺いました。

株式会社ACSL 経営管理ユニット 渉外担当責任者 伊藤康浩さん

世界初・ドローン専業の上場企業として

——国産ドローンへの期待を背負う御社ですが、これまでの歩みについて教えてください。

ACSLを創業したのは、日本のドローン技術のパイオニアである野波健蔵先生(千葉大学名誉教授)です。NASAから帰国後、ヘリコプターの自律飛行に関する研究を続けていた野波先生は、国産のオートパイロット技術や飛行技術が産業化において計り知れない可能性を秘めていると確信しました。そこで、2012年にミニサーベイヤーコンソーシアムを設立し、産業化への第一歩を踏み出しました。

さらに活動を進める中で、「他の企業と協業するには、自ら会社を立ち上げる必要がある」との思いから、2013年に株式会社自律制御システム研究所(現ACSL)を設立しました。これが、自律制御技術を基盤に、自社でドローン機体の量産を行う旅の始まりでした。その後は、オープンイノベーションの精神のもと、製造、販売、サービスに強みを持つ企業と連携し、ドローン産業化のための強固な基盤を築き上げていきました。

(取材)日本ドローン業界の第一人者、野波健蔵さんが語るドローンの未来と課題

日本のドローンの第一人者として知られる、日本ドローンコンソーシアム会長で千葉大学名誉教授の野波健蔵さん。野波さんは幼少期から飛行機に関心を持ち、スペースシャトルのエンジンの研究などを経て日本初となるエンジンヘリの自律飛行に成功。その後株式会社自律制御システム研究所(現ACSL)を創業するなど、まさに日本のドローンの歴史をつくってきた人物と言えます。そんな野波さんに、これまでの歩みやドローンの...

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その成果はすぐに現れ、2015年春には初の機体量産を開始。さらに、2016年3月には楽天株式会社や株式会社東京大学エッジキャピタル(UTEC)からの出資を受け、企業体制を一層強化しました。そして、2018年12月、ACSLはドローン専業企業として世界初の東証マザーズ(現東証グロース)への上場を果たしました。

これらの成功は、野波先生の先見性と、自律制御技術を軸としたオープンイノベーションのアプローチがもたらしたものです。ACSLは、日本のドローン市場の活性化に貢献してきたと考えています。

防衛装備庁から大型受注、能登では救援作戦の支援も

——現在の注力領域と、これまでの実績について教えてください。

現在、ACSLはとくに防衛・災害対応分野に注力しています。経済安全保障への関心が高まる中で、この領域での取り組みは強化せざるを得ない状況です。最近では、防衛装備庁が2024年3月に実施した入札において、3.7億円の大型案件を受注しました。これには、2020年から進めてきた経済産業省の補助事業での国産ドローンの開発と機体性能の向上が高く評価され、またセキュアな国産ドローンへの需要が急速に増していることが背景にあります。


防災面では、令和6年に発生した能登半島地震において、ACSLの小型空撮機体「SOTEN」がその優れた耐風性能を発揮しました。この災害対応は、日本UAS産業振興協議会(JUIDA)の指揮の下、石川県輪島市からの要請を受け、目視外飛行によるドローンを使用した初期災害支援活動* を実施しました。
* 航空法第132条の92(捜索、救助等のための特例)に基づく


現地の状況は非常に厳しく、高速道路は緊急車両のみが通行可能で、一般道も多くが不通状態でした。特に山道や農道はほぼすべてが通行不能となり、建物の倒壊や道路の封鎖が多数発生していました。道路の隆起も多く、車両は時速30km程度でしか移動できない状況で、多数の避難所が孤立していました。

このような緊急事態に対し、ACSLは1月6日に現地に入り、15時間かけて移動した後、翌7日から本部との連携を開始。8日から14日にかけて、11ヶ所で被災状況の調査オペレーションを実施しました。さらに、エアロネクスト社も、当社の物流専用ドローン「AirTruck」を使用した医薬品の配送を行いました。

「SOTEN」は、単なる空撮機に留まらず、夜間飛行で赤外線カメラを用いて地面のクラックを検出するなど、多目的に活用できる機材です。ACSLは日常的に目視外飛行を行っており、その豊富なオペレーションのナレッジが、混乱する被災地でも冷静かつ効果的な対応に繋がりました。

災害対応は一括りに「防災」とされがちですが、実際には異なるミッションが次々と発生し、柔軟な対応が求められます。その中で、ACSLが様々なユースケースやシチュエーションに対応できたのは、これまでの活動の積み重ねによる成果だと感じています。重点分野とも重なり合うため、今後もこの領域に注力していきたいと考えています。

「脱中国」が進む世界に、メイドインジャパンで戦いを挑む

——海外市場への展開状況について教えてください。

海外への展開において、特筆すべきは「脱中国」の動きです。とりわけ米国、インド、台湾では、中国製ドローンの置き換えが進んでおり、ACSLの存在感が日増しに強まっています。

まず、米国市場では、防災や公共サービス向けの規制により、中国製ドローンの排除が進行中です。そのため、米国製やフランス製のドローンが市場を狙っていますが、まだ主流とは言えない状況です。

そんな中、ACSLの「SOTEN」は高い評価を得ています。「SOTEN」はNDAA(米国防総省の調達基準)に準拠しているだけでなく、競争力のある価格設定という強みもあります。広大な国土を持つ米国では、送電網の点検といったユースケースに対するニーズが高いのですが、「SOTEN」はその優れた特性から、米国の設備点検企業から強い関心を集めています。

この期待に応えるべく、ACSLは現地法人を設置し、2023年には輸出許可を取得、12月には出荷を開始しました。ディストリビューターと連携し、大手インフラ系企業5社とMOUを締結するなど、全米での展開を進めています。さらに、米国の世界最大級のドローン展示会「XPONENTIAL 2024」にも「SOTEN」を出展。ACSLの子会社の役員が各パネルセッションでモデレーターを務めるなど、ACSLの存在感はさらに高まりました。

ACSL、カリフォルニア州サンディエゴで開催の展示会「XPONENTIAL 2024」に出展 - 国産産業用ドローンのACSL | 株式会社ACSL

ACSLは、2024年4月22~25日に米国で開催された「XPONENTIAL 2024」に、米国子会社のACSL, Inc.と共にSOTENを出展し、現地の設備点検企業から高い関心を獲得 米国では、経済安全保障及び脱中国製品...

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台湾市場においても、米国同様に「脱中国」の動きが進んでいます。現地にはいくつかのドローン企業が存在しますが、その多くは小規模であり、欧米のメーカーも台湾市場への注力は限定的です。

このような状況下で、ACSLは現地での展示会出展や顧客へのデモンストレーションを通じて、「SOTEN」の優位性を訴求しています。2023年には現地で代理店契約を締結し、台湾での製品販売と拡販に向けた連携を進めています。

台湾やインドにはまだ未開拓の分野が多く残されていますが、ACSLは中長期的な視点で市場開拓に取り組んでいく考えです。

主力は小型機「SOTEN」、中型機「PF2」、大型機「PF4」

——現時点でのメインラインナップ(主力機体)をご紹介ください。

ACSLのメインラインナップの一つが、先ほどから何度か登場している小型ドローン「SOTEN」です。


「SOTEN」は、多用途に対応できるよう設計されており、平常時や災害時の空撮、点検、測量など、さまざまなシーンで活躍しています。特に防衛・防災分野での高い評価を受けている堅牢なセキュリティ性能は、先ほども触れた通りです。

この機体は、2019年に制定された通称「5Gドローン法」をきっかけに開発されました。日本のドローン業界の先駆者であるヤマハ発動機と、カメラメーカーのXactiとのコラボレーションによって生まれた、純粋なメイドインジャパンの製品です。そのこだわりは、取り扱いのしやすさにも現れており、各種アタッチメントは「カチッ」とはめるだけで簡単に組み立てが完了します。また、プロペラの方向を間違えないように接続部のデザインに工夫を施すなど、細部まで配慮された使いやすさが「SOTEN」の魅力です。

バッテリーや各種アタッチメントは、はめ込むだけで装着が完了


プロペラの向きを間違えないよう、接続部の形状にも工夫が施されている


さらに、「SOTEN」の大きな強みは、風に対する耐性です。ACSLのコアコンピタンスである機体の姿勢制御技術により、風速15メートルの環境にも耐えられる性能を実現しています。

再び防災の事例に戻りますが、能登のオペレーションでは、地震による大規模な隆起で地形が一変し、自衛隊などによる物資輸送経路を確認する必要がありました。そこで投入されたのが「SOTEN」です。「SOTEN」は、精密な写真測量を通じて、変わり果てた地形を迅速かつ正確に把握することを可能にしました。ハードな環境でも粘り強く飛び続け、正確なデータを取得できる「SOTEN」は、あらゆる場面で信頼できるパートナーとして活躍しています。


次にご紹介したいのが、中型ドローン「PF2-AE」です。この機体は、平常時や災害時の点検、測量、物流といった幅広い用途に対応する先進的なドローンです。

「PF2-AE」には、大きく分けて3種類の量産タイプがあり、それぞれ異なる用途に特化しています。具体的には、汎用型、物流用(カーゴを搭載可能)、そしてインスペクション用(大型の高精細カメラを搭載可能)というラインナップです。

小型ドローンの「SOTEN」は、そのコンパクトさゆえに高精細なカメラを搭載することが難しいのですが、「PF2-AE」ではその心配は無用です。たとえば、俯瞰撮影や高精細な画像が求められる点検作業においては、「PF2-AE」が最適な選択肢となります。ちなみに、5月に放映されたドラマ『ブルーモーメント』でも、この機体がその真価を発揮しました。


また、大型ドローン「PF4-CAT3」についても触れておきたいと思います。こちらの機体は第一種型式認証を申請済みで、主に物流分野* での活躍が期待されていますが、それ以外の分野にも幅広く適用される予定です。大型機については、後ほど詳しくご紹介しますので、ぜひご期待ください。
* 「PF4-CAT3」を物流以外の目的で使用する場合は「PF4」として扱う予定

最後にご紹介するのは、SBIR(Small Business Innovation Research)プログラムで開発中の次世代機です。この機体は、従来の製品と比べてさらに携行性が向上し、高速起動や高い対候性を備えています。また、AI技術の活用も視野に入れ、これまでの製品とは一線を画す進化を遂げることを目指しています。

さらに、経済安全保障重要技術育成プログラム(通称K-program)においては、自律分散技術を活用した群飛行の実現を目指しています。この技術により、GPSが利用できない環境でも、複数のドローンが自己位置を推定し、他の機体と情報を共有することが可能となります。今年度は、この革新的な技術のフィージビリティスタディを実施しており、将来的な実用化に向けて大きな一歩を踏み出しています。

日本郵便(JP)との提携によりドローン物流を現実に

——2024年6月27日には、物流ドローンのスタンダードを目指す新型機「PF4-CAT3」の第一種型式認証を申請されたと伺いました。これに至るまでの日本郵便(JP)との取り組みについて教えてください。

JPとの本格的なパートナーシップは、2017年に始まりました。最初の取り組みは、国土交通省のドローンポート実証プロジェクトで、長野県伊那市での実証実験を行いました。

このプロジェクトを契機に、2018年11月には、日本郵便と共同で日本初となる補助者なし目視外飛行(レベル3)の承認を取得し、福島県の郵便局間での輸送を成功させました。

その後、2019年から東京の奥多摩での実証プロジェクトがスタートし、2023年までの4年間にわたり継続的に取り組みました。このプロジェクトでは、株式会社ZMPの宅配ロボ「DeliRo®」との連携により、ラストワンマイル物流の実現にも挑戦しました。

さらに、三重県熊野市では、ドローン を活用した郵便物や荷物の配送実証も
実施しました。このプロジェクトでは、全戸に8立方メートルの受け取りボックスを設置し、上から物資を投入する形でドローン物流を実現しました。物流のニーズは地域やお客様ごとに異なるため、手を変え品を変え、最適なソリューションを提供してきたという実感があります。

日本郵便が実施するドローンおよび配送ロボットの連携による配送試行にACSLの国産ドローンを提供 - 国産産業用ドローンのACSL | 株式会社ACSL

株式会社ACSL(本社:東京都江戸川区、代表取締役社長 兼 COO:鷲谷聡之、以下「ACSL」)は、日本郵便株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:衣川 和秀、以下「日本郵便」)が実施するドローンおよび配送ロボットの連携による配送試...

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ACSL、日本郵便が実施する「ドローンによる郵便物などの配送試行」に 国産ドローンを提供 - 国産産業用ドローンのACSL | 株式会社ACSL

株式会社ACSL(本社:東京都江戸川区、代表取締役社長:鷲谷聡之、以下、ACSL)は、日本郵便株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:衣川 和秀、以下、日本郵便)が実施するドローンによる、郵便物などの配送試行に、国産ドローンACSL...

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こうした取り組みを進める中で、2021年6月には日本郵便及び日本郵政キャピタルとの資本・業務提携も締結しました。この提携により、日本郵政キャピタルからの出資を受けながら、日本郵便との業務提携を深化させ、三者間提携体制で新たな物流システムモデルの構築に向けた記念すべき一歩を踏み出しました。

そして2022年12月6日、先ほど少し触れた「PF4-CAT3」のコンセプトとモックの発表を実施し、その際にはお披露目式も開催されました。

2023年3月にはレベル4飛行の試験も実施しました。この試験で使用したのは、「PF2-CAT3」です。

さらに、ACSLはJPとの取り組みをきっかけに、万国郵便連合(UPU)の諮問委員会にドローン関連企業として初めて加盟しました。これにより、UPUにおいて各国の郵政事業体へのドローン技術の訴求にも積極的に取り組んでいます。



ACSL、ドローン関連企業として世界初、万国郵便連合に加盟 - 国産産業用ドローンのACSL | 株式会社ACSL

万国郵便連合は192カ国の加盟国を持つ国際機関で、ACSLはドローン関連企業としては世界で初めて加盟 世界各国における郵便・物流サービスのシステムやガイドラインなどの標準化や、ラストワンマイル配送などの課題解決に、唯一のドロー...

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——JPとの提携によって、どのような強みを得たと感じますか。

最も大きな強みは、皆様からの絶大な信頼です。実証実験を行う際には、まず住民の方々に説明に伺いますが、「郵便局さんがやることなら」と、これまで一度も難色を示されたことがありません。

実証実験が始まると、住民の皆さまは初日こそ興味深そうに見守っておられますが、数日も経てば、空を見上げることすらしなくなります。これはまさに、ドローン物流が地域社会に定着した未来を象徴しているかのようです。このような信頼関係を築けたおかげで、レベル4飛行の住民説明会も問題なく進んでおり、今後の展開に大いに期待を寄せています。

認証2例目となるか?新型物流専用機体「PF4-CAT3」

——ではいよいよ、JPとの共同開発による新型物流専用機体「PF4-CAT3」についてご紹介ください。

ACSLは、ドローンの頭脳ともいえる自律制御技術に強みを持ち、機体の安全性においても確固たる技術を誇っています。しかし、それだけでは十分とは言えません。たとえば、レベル3飛行の解禁では、機体の安全性に加えて、長距離通信を確保する技術が必要とされました。また、レベル4飛行の解禁に際しては、機体の安全性と均一性の保証が求められました。

これらのニーズに応え続け、安全性を追求してきた結果、ACSLは2023年3月に日本で初めて第一種型式認証書(レベル4対応)を取得することができました。そして、今日ご紹介する新型機「PF4-CAT3」は、当社にとって2例目の第一種型式認証申請中の機体です(2024年6月27日付)

新型機「PF4-CAT3」


ACSL、新型「物流専用機体」の第一種型式認証を申請 - 国産産業用ドローンのACSL | 株式会社ACSL

ACSLは、2022年12月に創設された無人航空機(ドローン)の型式認証制度において、2023年3月に日本初となる「レベル4」(有人地帯での目視外飛行)に対応した第一種型式認証を取得 今後の物流分野におけるドローンの社会実装加...

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この機体は、従来型の「PF2-CAT3」と比較して、搭載可能な荷物のサイズや重量、さらには航続可能距離が大幅に向上しています。設計段階では、軽量化しつつも強度を確保すること、さらに航続可能距離を伸ばすためにバッテリーを多く積むといった複雑な要求に対応すべく、繊細なバランスを追求しました。

また、メンテナンス性の向上も重要なポイントです。従来型のカーボンボディは一体成型で、一箇所が壊れると全体を交換しなければなりませんでしたが、「PF4-CAT3」ではカウルを複数に分割することで、一部分が破損しても交換可能な設計に変更しました。

さらに、安全性を高めるために通信モジュールも強化し、複数の電波を同時に受信しながら、最も強度の高い電波を選択して飛行できるようにしました。これにより、より安定した運航が可能となり、物流分野での信頼性がさらに向上します。

「PF4-CAT3」の革新的な点として、物流での実運用を念頭に置いたオペレーションのしやすさが挙げられます。従来型の機体では、安全な飛行を確保することに重きを置き、オペレーションの利便性には課題が残っていました。しかし、新型機では、メンテナンスがしやすい方向にカウルが開く構造や、100サイズのボックスをそのまま装着できるデザインなど、実際の取り回しを意識した設計が施されています。


また、オペレーションに関わる重要な改良点として、プロペラが折りたためる仕様も導入しました。物流現場で使用する際、スタッフ一人で機体の出し入れができることが求められるためです。折りたたみ機構を追加すると、部品が増えて重量が増すうえ、強度が低下するというデメリットもありますが、専門性の高いチームが工夫を重ね、機体の強度と重量のバランスをギリギリまで調整しました。これにより、操作性と安全性を両立したドローンが完成したのです。


「PF4-CAT3」は、レベル4飛行を含む物流分野でのスタンダード機を目指して設計された機体です。内部への浸水防止や運搬性を高めるギミックなど、まだ検討中の部分もありますが、ドローン物流の実現、そして日本のドローン市場創出に向け、さらなる検証や試験を重ねていきたいと考えています。

最先端の技術を誇りに、未来を切り拓く

——そんなACSLがこれから目指す未来とは。

ACSLは昨年11月に創業10周年を迎えました。少子高齢化による労働人口の減少に伴い、無人化・省人化のニーズが急速に高まる中、この10年間で日本のドローン市場も大きく進展しました。また、2015年の航空法改正を皮切りに、ドローン飛行のルールが整備され、2018年にはレベル3、2022年にはレベル4飛行の解禁が行われるなど、実運用に向けた国の取り組みも本格化しています。

とはいえ、市場の要請があるからといって、無条件に規制緩和を進めるわけにはいきません。安全な飛行が確保されなければ、社会からの信頼を失い、ドローンの普及が阻まれる可能性があります。この点を深く理解し、ACSLは従来から規制に関する当局との意見交換会に積極的に参加し、安全な飛行を実現するための技術開発に取り組んできました。こうした努力が結実し、国内外でACSLの存在感が高まっていると自負しています。

今後も、私たちは新型機の開発や市場開拓といった「先行投資」を続けながら、収益性を確保するために、米国を中心とした海外展開をさらに加速させていく予定 です。常に最先端の技術を開発し、それをドローンを通じて社会に実装することで、社会の持続可能性と生産性を高め、危険で厳しい仕事から人々を解放する。それこそが、ACSLが目指す未来であり、私たちの掲げるゴールです。
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