(取材)神奈川県知事 黒岩 祐治|国産ドローンを活用した災害時物資輸送の実証事業を実施

神奈川県 国産ドローンを活用した物資輸送の実証事業 神奈川県知事 黒岩祐治氏
「空の産業革命」を担う存在として注目を集めているドローン。農業や点検、空撮など、さまざまな場面で全国で官民一体となったドローン活用の取り組みが進んでいます。

近年、ドローンの活躍が期待されている分野の一つが、防災です。小型で無人飛行が可能、場所を選ばないなどの利点から、多くの自治体が災害時の物資輸送や被災者捜索などにドローンの活用を検討しています。

そのようなドローンを防災に活用するための取り組みとして、神奈川県で国産ドローンを活用した物資輸送の実証事業が行われました。この記事では、実証事業の詳細や、同県の黒岩祐治知事へのインタビューをお伝えします。

災害を想定したドローンによる物資輸送の実証事業

神奈川県は「ドローン前提社会の実現」を掲げており、さまざまな場面でドローン活用の取り組みを進めています。実証事業はその取り組みの一環で、横浜警備保障株式会社(横浜市)が主催し、神奈川県などが支援・協力しました。

実証では、県西地域に発生した大規模な地震により、主要な幹線道路が土砂崩れなどで寸断されたケースを想定。国産ドローンによる医薬品(ダミー)の輸送を行い、災害発生時における救援物資の搬送について検証しました。

飛行ルートは、同県箱根町の箱根町園地内から箱根湖畔ゴルフコース職員臨時駐車場 まで、芦ノ湖を縦断する往復約13.3kmのコースです。参加者が見守るなか、約15分かけて対岸に医薬品を届けたあと、無事帰還して輸送を成功させました。

実証事業には、同県の黒岩知事や箱根町の勝俣浩行町長も出席。実証を見て、黒岩知事は「災害対策などに用いるドローンには、ぜひ国産ドローンに頑張ってほしいですね」、勝俣町長は「災害発生時に車が通れない場合、ドローンによる初動の現状把握と緊急物資の輸送には非常に期待しています」などと話していました。

国産ドローン使用で社会実装支援

今回の実証事業では、国産のドローンを使用した点もポイントの一つです。

ドローンは、サイバーセキュリティ上のリスクとして、情報が漏洩したり、操縦が妨害されるといった恐れがあるため、国においても、国産化でそうしたリスクを抑制しようと取り組んでいるところです。今回の実証事業でも、国産機を用いることで国産ドローンの社会実装を支援するねらいがありました。

使用した機体は、株式会社Autonomy製の新型クワッドコプタードローン(AQC-01型)。国産で、スペックは以下の通りです。

  • 寸法:600mm×600mm×350mm
  • 離陸重量:6.2㎏
  • 飛行速度:16m/秒(≒57.6km/h)
  • 最大飛行時間:42分
  • 最大飛行距離:20km

22,000mAhのリチウムコバルトバッテリーを搭載しており、オリジナルのフライトコントローラーで機体制御することで、自律飛行でも長時間飛行が可能だそうです。

実証は飛行レベル2(目視あり・自律飛行)で行われました。

災害時、初動の意思決定にドローンが有用

実証事業に出席した、神奈川県の黒岩祐治知事に話を聞きました。

——大規模災害時にドローンを活用しようと考えたきっかけを教えてください。

神奈川県では、相模原市内の廃校(元県立新磯高等学校)を活用した、さがみロボット産業特区プレ実証フィールドで、ドローンの実証事業や、災害対応のためのドローンの操縦訓練等に協力しています。
災害時には、特に初動で災害対策の意思決定にドローンの活用が有用だと考えています。

——具体的にどのようなケースにおいて、ドローンでの物資輸送を想定していますか?

火山活動も含めたさまざまな災害時に、迅速な対応の一環としてドローンを使った初動対策の意思決定を想定しています。また、緊急物資の輸送にもドローンが有用だと考えています。

——災害時の物資輸送以外にも、ドローンの活用を検討していることがあれば教えてください。

例えば、県下の農家などでは、農薬散布にもドローンの活用が検討されています。農家の高齢化が進んでいることもあり、ドローンが非常に期待されています。

また、県内の多くの地域では、鳥獣害対策としてドローンを使う試みが進んでいるなど、住民の生活に役立つケースが増えていると聞いています。このようなドローンの活用ケースについても、神奈川県としてサポートしていきたいです。

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