(イベントレポート)第39回ブロードバンド特別講演会「舞いあがる?ドローンビジネスの将来」

ブロードバンド特別講演会 舞い上がる?ドローンビジネスの将来
2023年6月19日、第39回ブロードバンド特別講演会「舞いあがる?ドローンビジネスの将来」が開催されました。

講演会では、航空工学者でありJUIDAの理事長を務める鈴木真二氏による「空飛ぶクルマ実装への課題について」、国土交通省航空局次長を務める新垣慶太氏による「ドローンの制度整備について」など興味深いセッションが展開。

続くパネルディスカッションでは、ドローンビジネス最前線を走るキーマンたちにより、レベル4解禁で注目を増すドローンビジネスについての熱い議論が交わされました。


開会あいさつ(岩本敏男理事長)

講演会の冒頭では、NPO法人ブロードバンド・アソシエーション 岩本 敏男理事長より開会のあいさつと、ドローン産業の現状についてお話がありました。


岩本氏
現代は世界秩序や価値観が激変する「パラダイムシフトの時代」といわれています。急激な変化に、人間が知性、経験、感性だけで対応していくのは困難でしょう。特にAIは、社会の仕組みや価値観や文化を大きく変えてしまう可能性を秘めています。

「アインシュタイン-シラードの手紙」をご存じでしょうか?これは「ウランの核分裂研究を支援して欲しい」というルーズベルト米国大統領宛ての手紙でした。しかし、アインシュタイン博士は、この手紙にサインしたことを、大変後悔したと言われています。結果的に原子爆弾の開発につながったからです。

ここから分かるのは、最先端技術には必ず光と影があるということです。科学技術の進化を止める必要はありませんが、そこには人類共通のルールが必要です。

皮肉なことにロシアがウクライナを侵攻したことで、偵察機や無人爆撃機としてのドローンの有効性が明らかになりました。ドローンには、今後もさまざまな分野での利活用が期待されています。

我々ブロードバンド・アソシエーションでは、産官学を基軸としたネットワークを構築し、ドローンをはじめとする最先端技術の発展に貢献してまいりたいと考えております。

「ドローン、空飛ぶクルマの国内外の研究開発動向と社会実装の課題」(鈴木 真二氏)

東京大学名誉教授であり、日本UAS産業振興協議会(JUIDA)理事長でもある鈴木真二氏からは、ドローンと空飛ぶクルマの過去、現在、そして未来についての話がありました。


鈴木氏
ドローンの歴史は、1930年代のアメリカまで遡ります。当時はターゲットドローンとして、地上から航空機を撃ち落とすための「的」としての役割を担っていました。全米で8,000機ほど製造されていたので、1つの産業として成り立っていたのでしょう。

日本では、1980年代に世界に先駆けてラジコンヘリで農薬散布するという技術が開発され、1990年代に実用化に至ります。しかし、ドローンが世界中に広まるきっかけとなったのは、2010年にフランスのパイロット社が製造したホビー用のおもちゃドローンです。

この、2010年に開発された「電動マルチコプター」としてのドローンを大型化すれば人が乗って空を飛ぶことが可能になるとして、「空飛ぶクルマ」への期待が高まっていきました。

人が乗って空を飛ぶ機械にはヘリコプターがありますが、ヘリは構造が非常に複雑で、操縦も難しい。これに対してドローンの特長は、ヘリコプターよりも構造がシンプルで自動制御による飛行安定化も容易です。ドローンの可能性にいち早く気づき、開発に取り組んだのが、ドイツのスタートアップ企業でした。2016年にはヘリコプターのような洗練された機体も出現し、同年3月に初めて有人飛行に成功します。

ドローンが人を乗せて街中を飛び交えば、交通渋滞を避けて移動できます。これに注目したのがアメリカのUber社でした。しかし、Uberが目指す機体にドローン技術が追いつかず、2020年12月、Uber社はドローン部門を他社へ売却せざるをえなくなりました。

小型のヘリコプターはガソリンで3時間ほど飛べますが、空飛ぶクルマのバッテリーは30分しかもちません。これにより飛行距離が全く違ったのです。それでもなお、都市のなかを簡単に飛べるというドローンの特性は、全く新しいビジネスモデルの展開を期待させるものです。

ドローンの技術開発は世界中で進んでおり、2025年には10年前と比較して約30倍のマーケットに成長すると予測されています。

また、人を乗せたドローン、いわゆる空飛ぶクルマは、2024年のパリオリンピック、そして2025年の大阪万博でのお披露目に向けて、現在世界中で開発合戦の真っ最中です。

DRONE  

大阪・関西万博の空飛ぶクルマ運航事業者が決定

公益社団法人2025年日本国際博覧会協会は、2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)における「未来社会ショーケース事業出展」のうち、「スマートモビリティ万博」空飛ぶクルマの会場内ポート運営の協賛企業を決定した

この記事をwww.drone.jp で読む >

2030年代には限定された空域を自律飛行する「空飛ぶリムジン」が商用化され、2040年代には管制などのインフラも普及し、また大量生産でコストが下がり、「空飛ぶタクシー」の一般利用が広がるでしょう。そして2050年代には空飛ぶクルマを個人所有する日も夢ではない時代が到来するのが今から楽しみです。

「次世代航空モビリティを支える制度整備」(新垣 慶太氏)

次に、国土交通省航空局次長の新垣慶太氏より、ドローンに関する機体認証制度、ライセンス制度の概要と、現在急ピッチで進んでいる「空飛ぶクルマ」に対する制度整備の現状についてお話がありました。


新垣氏
ドローン市場は現在目覚ましい発展を遂げています。2022年度には約3,100億円だった市場規模が、2027年度には約8,000億円まで拡大することが予想されています。

ドローンの利活用事例としては、長崎県の五島列島での商業配送や、兵庫県の鉄道インフラ施設の点検などが挙げられ、さまざまな場面で導入が始まっています。

(国土交通省が公開するドローンの利活用事例)

ドローンの利活用が広がることを見越して、法整備も急ピッチで進められました。制度は、許可・承認制度、機体登録制度、機体認証・技術証明制度の3つに分けられます。

まず、2015年には空港の周辺や高度150m以上、または人口集中地区の上空にドローンを飛ばすときには国土交通省の許可が、夜間飛行や目視外飛行には承認が必要になりました。

Mlit  

航空安全:無人航空機の飛行許可・承認手続 - 国土交通省

国土交通省のウェブサイトです。政策、報道発表資料、統計情報、各種申請手続きに関する情報などを掲載しています。

この記事をwww.mlit.go.jp で読む >

また、2022年6月より、100g以上のドローンを飛ばす場合には、所有者の登録とリモートIDの搭載が義務付けられました。

Mlit  

航空安全:無人航空機の登録制度 - 国土交通省

国土交通省のウェブサイトです。政策、報道発表資料、統計情報、各種申請手続きに関する情報などを掲載しています。

この記事をwww.mlit.go.jp で読む >

同年12月には機体の認証制度と操縦者の国家ライセンス制度が創設され、国が認証した機体で、国家ライセンスを取得した操縦士が運航ルールに従って飛ばす場合は、レベル4における目視外飛行が許可されることとなりました。

Mlit  

航空安全:機体認証等 - 国土交通省

国土交通省のウェブサイトです。政策、報道発表資料、統計情報、各種申請手続きに関する情報などを掲載しています。

この記事をwww.mlit.go.jp で読む >

機体認証制度は、レベル4飛行を想定した、第一種(有効期間1年)と、それ以外である第二種(有効期間3年)にわかれております。

2023年6月現在、この第一種機体認証を取得したのは、株式会社ACSLのPF2-CAT3型という機体のみですが、今後レベル4飛行の本格化に向けて、第一種認証を取得するドローンが増えていくことを期待しております。


一方、操縦士のライセンスには、レベル4飛行に対応できる一等と、それ以外の二等があり、それぞれ学科試験、実地試験と、身体検査に合格しなければなりません。ただし、登録講習機関で指定の講習を修了することで、実地試験の免除を受けられます。

国家ライセンス制度に対応した登録講習機関はセミナー開催時で418校。こちらもまた増えていくことを期待しております。


「空飛ぶクルマ」に対する制度整備も、現在急ピッチで進んでおります。

「空飛ぶクルマ」、いわゆるeVTOLは、電動化、自動化といった航空技術や垂直離着陸技術によって実現します。日本では、自動車や航空機メーカーの出身者によって設立されたSkyDrive、東京大学発のスタートアップ企業であるteTra aviation、またHONDAなどが開発を手掛けています。

もちろん海外でも、アメリカのJoby Aviation社、ドイツの Volocopter社、イギリスの Vertocal Aerospace社など、競うように研究開発が進められています。

国土交通省では、官民協議会のワーキンググループにおいて、機体、離着陸場、技能証明、運航、事業制度等に関する制度整備を検討しており、2023年度末までには必要な基準策定を完了させる予定です。

2025年の大阪・関西万博でのお披露目に向け、現在、空飛ぶクルマの実装に必要な制度整備を進めています。

Mlit  

航空:無人航空機の目視外及び第三者上空等の飛行に関する検討会 - 国土交通省

国土交通省のウェブサイトです。政策、報道発表資料、統計情報、各種申請手続きに関する情報などを掲載しています。

この記事をwww.mlit.go.jp で読む >

パネルディスカッション(パネリスト紹介)

休憩をはさみ、有識者によるパネルディスカッションが行われました。議題は「レベル4飛行認可で舞い上がるドローンビジネス」です。

(モデレーター)株式会社MM総研代表取締役社長 関口和一氏


私が初めてドローンを見たのは、2010年代後半、アメリカのラスベガスでした。最初は小さな展示会でしたが、年々大きくなっていきました。

当時私は日本がこれから世界をリードできる産業は3つ、3D、自動運転、そしてドローンだと思っておりました。しかし、日本では一向にドローンという話が出てきませんでした。

日本の大企業が二の足を踏んでいるうちに、中国ではDJI社が立ち上がり、ドローンビジネスを席巻していきました。日本はというと、2015年の首相官邸ドローン墜落事故をきっかけに、規制ばかりの法律を作ってしまったというのが今までの歴史でございます。

今回は、現在のドローンビジネスをけん引するパネリストの皆様にお集まりいただき、今後について忌憚なき意見交換をしていただきたいと思います。

株式会社MM総研

MM総研は、ICT市場専門のリサーチ・コンサルティング企業です。幅広い分野の専門知識と調査実績を有する専門研究員がお客様を支援いたします。

この記事をwww.m2ri.jp で読む >

(パネリスト)センシンロボティクス代表取締役社長CEO 北村卓也氏


弊社は建設、点検など、人にとってリスクの高い業務に対し、ドローンなどのデジタルツールに我々のソフトウエア技術を組み合わせ、ソリューションを開発して提供している会社です。

現在日本は少子高齢化による労働人口の減少、老朽化する社会・産業インフラ、災害の甚大化など、多くの社会課題を抱えております。課題先進国ともいえる日本の課題に対し、デジタルツールにソフトウエア技術を組み合わせることで挑んでいます。

弊社の武器は「省人化」です。業務アプリケーション、クラウドプラットフォーム、ロボティクスの3つをワンストップで提供し、究極的には、ワンクリックすれば必要なミッションをこなす業務自動化ソリューションを目指しております。

センシンロボティクス | 社会インフラ課題をデータ活用で解決

社会/産業インフラの設備点検、災害被害状況把握等の防災・減災対応、警備・監視といった業務を中心に、ドローン等のロボティクス技術を使った業務プロセス改革のDX支援サービスおよびプロダクトをワンストップで提供します。

この記事をwww.sensyn-robotics.com で読む >

(パネリスト)株式会社ジャパン・インフラ・ウェイマーク代表取締役社長 柴田巧氏


弊社では、有人地帯での補助者なし目視外飛行を2025年に実現すべく、無人システムの技術開発と実証実験を進めております。

2022年度には全天候で利用可能な15分クイックチャージを備えたDrone in a Box技術を備えた「Sunflower」の取り扱いを開始し、施設巡回警備の品質向上を進めました。

2023年度には、アメリカ、イスラエル、フランス、中国のドローンメーカーと定期的な技術ミーティングを実施しながら、Drone in a Boxソリューションの開発を継続しています。

また、次回のジャパンドローン展では、陸・空両方の全方位点検が可能なRaaSソリューションを発表する予定です。

ジャパン・インフラ・ウェイマーク|インフラ点検をドローンで支える

橋梁、橋梁添架管路、鉄塔をはじめとした社会インフラ管理をドローン、デジタル技術を活用した効率的な点検サービスで変えていきます。

この記事をwww.jiw.co.jp で読む >

(パネリスト)一般社団法人ドローン操縦士協会(DPA)代表理事 吉野次郎氏


私どもの法人は、2016年6月15日、ドローン操縦士の技術発展と知識の普及を目指して設立されました。具体的にはドローン操縦士の技術認定ライセンスの発行や技術向上のための検収、ドローン事業発展のための講演会の開催などが事業の中心です。

ドローンの自動飛行が実現し、機体の性能が上がれば、操縦訓練は必要ないのではと思われるかもしれませんが、一定レベルの技能の習得は必要です。人間は自分がコントロールできない物を自動飛行させることに抵抗を覚えます。また、運転が自動化しても、法整備や規制などは複雑で、それを理解し、世の中に広げる役割は必要でしょう。

とはいえ、AIの出現で、操縦訓練も変わってきています。車の教習所のように、今後はAIによる教習も進んでいくものと思っております。

D-pa  

ドローン資格認定 | 一般社団法人ドローン操縦士協会(DPA)

国交省登録管理団体である一般社団法人ドローン操縦士協会(DPA:ディーパ)は、産業用ドローンの普及およびドローン操縦士育成を目的とし、ドローン操縦士回転翼3級、インストラクター資格等ドローン操縦に関する資格認定事業を展開しています。

この記事をd-pa.or.jp で読む >

(パネリスト)NTTデータアビエーション ビジネススペシャリスト 羽鳥友之氏


弊社はNTTグループのなかでもグローバル・ソリューションを提供する役割を担っております。私の所属する第一公共事業部では、2016年くらいからドローン事業にも着手しておりまして、日本が抱える社会課題である労働人口減少、地域格差などに直結できるソリューションを提供すべく取り組んでおります。

衝突や墜落リスク、運用コストの問題、業務への適用など、ドローンにはどうしてもリスクが付きまとうものです。弊社は多数のドローンが安全かつ経済的に飛行できる仕組みづくりのため、航空管制分野における既存アセットを活かし、ドローンの安全をトータルサポートする航空管理ソリューションを提供しています。

将来的にはドローンの無人運転や空飛ぶクルマの登場など空の交通への安全対策が重要になってくるでしょう。弊社では、全てのモビリティが相互に連携し、空全体の安全利用の仕組み作りにもスピード感をもって対応してまいります。

NTTデータ | Trusted Global Innovator

NTTデータ(国内事業会社)のウェブサイトです。NTTデータはテクノロジーを活用した事業変革や社会課題の解決に向けて、お客さまとともに未来を見つめ、さまざまなサービスを提供します。

この記事をwww.nttdata.com で読む >

パネルディスカッション(議論)

モデレーター 関口氏
まずは、航空法改正によってレベル4が認められたことに対する各社の評価からおうかがいします。

センシンロボティクス 北村氏
期待どおりではないが、想定どおりではありました。法整備によって、ドローンを飛ばすことの敷居が高くなり、マーケットが一瞬しぼんだ印象があります。実際にドローン分野にトライする新規企業は少なくなっています。

ただし、各国に先立ってレベル4が解禁されたことは評価できるでしょう。法整備によって、1対多数の飛行管理ができるようになることには期待しています。

ジャパン・インフラ・ウェイマーク 柴田氏
レベル4が実現すると、可能性が広がります。点検、巡回巡視、災害時の状況確認が無人で実施できるようになります。特に、ドローンがデータ通信基地局として頭上を飛び回り、山林での調査が非常にやりやすくなることに期待しております。

DPA 吉野氏
法整備には、良い面と悪い面があるでしょう。悪い面は皆さんがおっしゃるように、参入障壁が上がったこと。そして良い面としては、安全性を担保するために機体管理や国家ライセンス制度などが整備されたことです。スクール運営側からみると、民間資格には興味はないが、国家ライセンスなら取りたいという方が増えていますので、その広がりとしては評価できるでしょう。

それに、ドローンスクールは車の教習所と違い、学校の体育館程度の広さがあればよく、設備投資も少なくて済みます。ゆくゆくは農業高校の授業でドローンの資格を取得させるようになっていくのではないでしょうか。今や農薬散布にドローンを使うのは当たり前になっていますから。

NTTデータ 羽鳥氏
なかなか規制が厳しいという声があがるのもわかります。しかし、法整備が進んだということは、事業を安心して行う土台ができたという良い面もあります。最初の基準をクリアするのは難しいかもしれませんが、これを機に、事業者の方にはドローンを飛ばす事業を拡大していってほしいと思います。

ただし、法整備が期待どおりだったかというと、少し遅いかな、という印象は否めません。

モデレーター 関口氏
続いて、ドローンの利活用について諸外国と比べたときに、現状の日本の立ち位置について、どのようにお考えですか?

DPA 吉野氏
ドローン事業を「機体」、「サービス」、「その他」の分野に分けると、確かに機体の事業は遅れてしまいました。今、世界で一番いいドローンを選ぼうとすれば、日本のメーカーは選択肢に上がりにくいでしょう。しかし、サービスの方では実用化できるものが育ってきています。

日本が特別に遅れているとは思いませんが、とにかく世界の状況が早すぎます。余りにもスピードが速いので、考えているうちに乗り遅れてしまうでしょう。

センシンロボティクス 北村氏
日本がレベル4をいち早く解禁したことは評価されていいでしょう。しかし、とにかく中国が強すぎます。以前中国の深圳を訪れた際には、街中をドローンがビュンビュン飛んでいました。何かルールがあるのかと聞いてみたところ、「イノベーションに犠牲はつきものだ、何を言ってるんだ」と。

日本はそういう国と戦っていかなければならないのです。

ジャパン・インフラ・ウェイマーク 柴田氏
私も日本は遅れていると思います。ドローンには今まで3つの波がありました。1つめは「ホビーの波」。DJI社が空からの映像を映し出し、初めての経験を提案しました。それを見ていたビジネス界隈の方が、建築の施工管理で使っていくという2つめの波が来ました。そしてその後には調査・検査の波。いずれにも日本は乗り遅れてしまいました。そして現在4つめの「自動化の波」が来ています。

遅れた理由として、旧法制が日本人の頑張る心を削ってしまったことは否めません。かつてのWinny事件を覚えていますか?あの技術が支援されていたら、スカイプやYouTubeを生み出したのは日本だったかもしれません。

かつてTOYOTAはアメリカのフォードに勝った。そういう挑戦を我々にもさせてほしいのです。

NTTデータ 羽鳥氏
日本が遅れていることは間違いないでしょう。しかし、法制度だけが理由ではないと私は思います。たとえば、配送を考えたとき、アメリカの映像を見ると、Amazonの配送ドローンは、配達物を各家庭の庭先に落としています。それを日本の消費者心理としては許容できないでしょう。また、住宅事情もあります。日本ではドローンから物を落下させるほどの庭を持っている家はなかなかありません。

それを考えると、そもそも日本では配送にドローンを活用していくのは難しいのかもしれません。

モデレーター 関口氏
最後に今後についてうかがいます。現在の日本の立ち位置から、今後どういった分野でドローンの利活用が期待できると思いますか?海外展開もできるようなビジネスに育てられるのでしょうか?

NTTデータ 羽鳥氏
新しい規制になってしまうかもしれませんが、「事業の認定制」のようなものを作って、ある程度事業化を守り、事業を促進していく必要があるかと思います。

センシンロボティクス北村氏
私は日本が「課題先進国」であることを逆手に取り、ドローンを活用した課題解決を仕組みとして輸出していくしかないと思います。

いち早くレベル4が解禁されたのは喜ばしいことです。それを契機に、自動化や無人化をどこの国よりも早く打ち出して、その枠組みを買ってもらうのがいいでしょう。

ジャパン・インフラ・ウェイマーク 柴田氏
日本は現場のことをよく知っていることが世界一だと私は信じています。世界一のドローンメーカーにはなれないかもしれませんが、オペレーションや産業DXを行っていくという文脈では、まだまだチャンスはあります。

そのためには、新技術を使って現場でノウハウを磨いていくようなアプローチが重要です。

DPA 吉野氏
ドローン教育の見地から見ると、日本の教育制度の中でドローンをどこで教えていくか、という課題があると思います。航空工学なのか、パソコンやプログラミングなのか。どこに位置づけるかによって、長期的な人材育成は変わってくるでしょう。

ドローンを飛ばすことを教えるのは短期的なことで、実はドローンを飛ばすこともできて、整備もできて、ソフトやAIのことも全部わかっている、という方はどの業界にもいないのではないでしょうか。

ドローン全般のことを理解している専門家をどのように育てていくか。そこに、これからの課題とチャンスがあると思います。

閉会あいさつ(松本俊博副理事長)

最後はNPO法人ブロードバンド・アソシエーション 松本 俊博副理事長より、閉会のあいさつがありました。


今回は鈴木先生、新垣さんの講演を始め、パネルディスカッションも含めて非常に有意義な意見交換の場になりました。

我々放送業界にとっても、ドローンの登場は革命的なできごとでした。それまで、災害時にはヘリコプターで現場へ向かう必要がありましたが、どうしても大掛かりな取材になり、オペレーションに難がありました。ドローンならその課題をクリアできますし、山岳番組などにおいても、ドローンの活躍には目覚ましいものがあります。

今後、いずれ来ると言われている直下型地震が発生したときにも、即座に現場にドローンを複数機飛ばし、リアルタイムで現場で何が起こっているのかを記録できるでしょう。

ドローンは我々の「安心・安全」のあり方を変えるツールにすらなりえます。まだまだ活躍の幅が広がっていくドローン市場に、ご来場の方々と手を携えて挑んで参りたいと思います。

まとめ

官学の有識者によってドローンと空飛ぶクルマの現状と課題、法整備についての理解が深まり、パネルディスカッションでは本音を交えた深い議論が交わされた、第39回ブロードバンド特別講演会「舞いあがる?ドローンビジネスの将来」。

機体開発で出遅れてしまった日本企業は今後どのようにドローン市場で巻き返していくのか、第一線で活躍する各社のリーダーに期待が集まります。
まるわかりガイドでドローンを知ろう
まるわかりガイドを見る

RECOMMEND

この記事を読んだ方へおすすめ