(イベントレポート)Japan Drone 2024|ドローンの社会実装が加速!防災・点検・物流の最新事例が集結した3日間

Japan Drone 2024|ドローンの社会実装が加速!防災・点検・物流の最新事例が集結した3日間
2024年6月5日〜7日までの3日間、千葉県の幕張メッセにて、ドローンに特化した国内最大規模の展示会「Japan Drone 2024」が開催されました。

今回で9回目を迎えるJapan Droneでは、「さあ、次の時代へ ON to the NEXT ERA」をテーマに、大きさや用途がさまざまなドローンの展示をはじめ、キーパーソンによる講演が行われました。

2022年の改正航空法によりレベル4飛行(有人地帯での目視外飛行)が可能になったことや、2025年の大阪・関西万博でeVTOLの社会実証実験が予定されていることもあり、ますます注目が集まるドローン業界。

過去最大の出展者数となり、多くの来場者で賑わったJapan Drone 2024をレポートします!

ドローンの社会実装に向けた取り組みを加速|ブルーイノベーション株式会社

ブルーイノベーション株式会社では、ドローン業界の安全性・信頼性の向上と、社会実装に向けた取り組みを加速させています。代表取締役社長  熊田貴之氏より、最近発表された3つのトピックについて紹介いただきました。

「板橋ドローンフィールド」の運営を通じた社会実装の推進

2024年9月、都心に近いドローンのテストフィールドとして「板橋ドローンフィールド」が開設されます。東京都板橋区の物流施設に併設するこのフィールドは、ブルーイノベーションが施設の運営を任され、社会実装を意識したビジネスマッチングの場としても活用する計画です。


熊田氏は、「従来のテストフィールドは研究開発が中心でしたが、板橋ドローンフィールドではベンチャー企業や大手企業とのマッチングを通じて、ソリューション開発や事業展開を促進したいと考えています」と述べ、施設運営を通じた産業育成への意気込みを見せました。

「機種別ドローン操縦者技能・運用証明証」の新設へ

ブルーイノベーションは、一般社団法人 日本UAS産業振興協議会(JUIDA)とともに、国内のドローン機体メーカー4社(ACSL、イームズロボティクス、Liberaware、プロドローン)および複数の海外ドローンメーカーの国内代理店と戦略的提携MOUを締結しました。

この提携の目的は、日本国内で販売されているドローンの機種ごとの操縦技能および安全運用スキルをドローンパイロットが保有していることを客観的に評価・証明する「機種別ドローン操縦者技能・運用証明証」(機種別ライセンス)を新設することです。

背景には、現在のドローン運用における課題があります。熊田氏は、「国家ライセンスや民間のライセンスを持っていても、小型のレーシングドローンから大型のVTOLまで、1つのライセンスで全ての機体を操縦できるわけではありません。航空業界では機体ごとのライセンスがあり、パイロットは特定の機体しか運転できないのと同じように、ドローンの世界でも、そのような細分化が必要になってくるでしょう」と指摘します。この取り組みにより、ドローン業界の安全性、信頼性の向上、ひいては産業全体の活性化につなげたいという考えです。

津波警報ドローンの実績を活かした防災プラットフォームの開発

さらに、ブルーイノベーションでは、ドローンポートシステムを活用し、点検や監視、警報などの広域巡回を自動化する「BEPポート|ドローン自動巡回システム」のトライアルサービス提供を開始しました。BEPポート|ドローン自動巡回システムは、現場に常設したドローンポートから人の介在なしに定期的に点検や監視を行うことができます。災害時には、Jアラートと連動した状況把握にも対応可能です。

熊田氏は、仙台市で津波警報ドローンを導入した実績をもとに、点検や防災系のプラットフォーム開発を進めてきたと説明します。「巡回監視や点検などのニーズが増えている」と現状を分析し、「無人で巡回点検を行う世界が動き始めています」と強調しました。

産業の成熟期に入ったドローン業界、社会実装が次なる課題に

ドローンの認知度と可能性が高まる中、メディアの扱いは以前ほど大きくなくなったものの、熊田氏はこれを産業が育ってきた証だと捉えていると話しました。熊田氏は「ドローンがどれだけ産業用途で導入できるかが問われる段階に来ている」と述べ、社会実装に向けた具体的な取り組みの必要性を訴えました。


ブルーイノベーション株式会社 代表取締役社長  熊田貴之氏

第二種型式認証を取得したVTOL型ドローン「エアロボウイング」|エアロセンス株式会社

エアロセンス株式会社では、垂直離着陸型固定翼(VTOL)ドローン「エアロボウイング」を展示しました。エアロボウイングは、ダムや河川の監視・点検で定評がある国産ドローン。Japan Drone 2024開催初日である6月5日に、第二種型式認証を取得しました。VTOLとして第二種型式認証を取得するのは国内初となります。

エアロボウイングは、垂直離着陸が可能なため離着陸に滑走路を必要とせず、固定翼型で長距離の飛行に適しています。また、シミュレーターを用いた操縦練習もでき、これにより、実機を使わずに緊急時の対応などのシミュレーションも可能です。

展示では、型式認証取得発表で興味を持った来場者が熱心に説明を聞いていました。代表取締役社長の佐部浩太郎氏は「自治体にも導入いただき、災害時に運用できるようサポートしています。国産ドローンへの期待は高まっており、エアロセンスとしても期待に応えられるよう努めていきたいと考えています」とコメントしました。

エアロセンス株式会社 代表取締役社長 佐部浩太郎氏

高解像度カメラ搭載のセルラードローン「Skydio X10」|NTT コミュニケーションズ株式会社


NTTコミュニケーションズ株式会社のブースでは、Skydio社製のドローン「Skydio」の展示を行っていました。なかでも「Skydio X10」は、現在最も注力している最新機種です。

Skydio X10の主な特徴として、128倍までのズーム機能、暗所での撮影能力の向上、サーマルカメラによる温度検知機能などが挙げられます。また、暗所での自動飛行機能も備わっており、ナビゲーションカメラを使用することで、暗闇でも障害物を回避しながら飛行が可能です。

また、Skydio X10は、LTE対応を予定しているセルラードローンであり、これにより距離に縛られずに点検等の用途に活用できるようになります。障害物回避技術と組み合わせることで、安全性を確保しつつ長距離の飛行が可能になるとのことです。

5G&IoT部ドローンサービス部門の結城氏は「NTTコミュニケーションズはSkydioとパートナープログラムを組み、セルラードローンの検証を進めてきました。検証のなかでは、お客様よりカメラ性能の向上に対する高い評価をいただいています」と話しました。

NTTコミュニケーションズ株式会社 5G&IoTサービス部 ドローンサービス部門 結城杏彩氏

人の立ち入りが難しい場所での点検を可能にする「IBIS2」|株式会社Liberaware


株式会社Liberawareは、独自開発の小型ドローン「IBIS2」を展示しました。IBIS2は、主に屋根裏、天井裏、床下、ボイラー配管などの人が立ち入りにくい場所の点検に活用されています。これまでは、人が足場を組んで時間とコストをかけて点検していた場所を、IBIS2を使うことで効率的に点検することが可能になりました。

IBIS2の開発は、同社の代表が福島第一原子力発電所のプロジェクトに関わった経験がきっかけとなっているといいます。当時のドローンはまだ機体が大きかったため、小型でGPSが届かない狭い場所での点検に適したドローンがありませんでした。そこで点検に適した小型ドローンの必要性を感じ、IBIS2の開発に着手したそうです。

そしてついに、2024年2月には、IBIS2が福島第一原子力発電所の調査に活用され、内部の撮影に成功しました。この点検実績がきっかけとなり、同社には電力会社からボイラー内部の点検など、人が立ち入りにくい場所での活用に関する問い合わせが増えているとのことです。

「今回のJapan Drone 2024への出展を通じて、より多くの人にIBIS2の性能と可能性を知ってもらえる機会になりました」と向山氏は語りました。

株式会社Liberaware スマート保安事業部 向山卓弥氏

滑走路不要、1000km以上の飛行を実現した「テラ・ドルフィンVTOL」|株式会社テラ・ラボ


株式会社テラ・ラボは、Japan Drone 2024において、独自開発の固定翼型無人航空機「テラ・ドルフィンVTOL」を展示しました。テラ・ドルフィンVTOLは、滑走路を必要とせず、10時間以上、1000km以上の長時間飛行を実現するモデルとして、災害時での活用が期待されています。

テラ・ラボの松浦氏は、今年の展示会について、コロナ禍を経て開催が危ぶまれていたにもかかわらず、回復どころかさらに盛り上がりを感じていると語りました。また、松浦氏は、ドローン業界の変化として、以前は開発を目指す出展者が多かったが、現在は実証の段階から実装へとステージが移行し、実運用を見据えた出展者が増えてきていることを指摘しました。テラ・ラボのブースでも、主力プロダクトをより前面に押し出し、顧客のパイプラインを意識した展示に変更したとのことです。

松浦氏は「今年のJapan Drone の最も大きなトピックスは、実運用が可能なモデルを提示することだと認識しています。夢物語ではなく、現実的な運用方法を説明することが重要だと感じています」と話しました。

株式会社テラ・ラボ 代表取締役 松浦高英氏

ドローン業界におけるセキュリティ対策への関心高まる|GMOインターネットグループ

GMOインターネットグループは、来場者にVRで空飛ぶクルマに乗った体験をしていただくブースを展開しました。空飛ぶクルマに乗る体験を身近に感じてもらうと同時に、ハッキングによる危険性を実感してもらえるようなコンテンツを用意し、セキュリティの重要性も認識していただける内容となっていました。

VRで空飛ぶクルマに乗って渋谷の街を体験!


GMOインターネットグループでは、GMOグローバルサインが電子認証や暗号、GMOサイバーセキュリティbyイエラエが脆弱性診断やペネトレーションテストなど、セキュリティの異なる分野でサービスを提供しています。その強みを活かし、ドローン業界におけるセキュリティ分野でのサービス提供に注力しています。

Japan Drone 2024では、セキュリティを重要視する事業者からの問い合わせが増えており、コアな層からの関心も高まっているとのことです。浅野氏は「3年前からJapan Droneに出展していますが、当初は『なぜGMOがドローンの世界に?』という反応が多かったと思います。しかし、徐々に 『空のセキュリティ=GMO』という認知度が上がってきていると感じました」と語りました。

ドローンの活用が広がる中、セキュリティの重要性はますます高まっていくでしょう。GMOインターネットグループは、グループの強みを活かし、ドローン業界におけるセキュリティ分野に貢献していきます。

GMOグローバルサインホールディングス株式会社 CTO室 室長 浅野昌和氏

自治体によるドローン活用の取り組み|千葉市

自治体もドローンの可能性に注目し、積極的に活用を推進する動きが見られるようになってきました。千葉市は国家戦略特区の優位性を活かし、ドローン活用の取り組みを加速させています。

Japan Droneの別会場では、千葉市が「千葉市ドローン産業セミナー」を開催し、国家戦略特区における同市のドローン活用の取り組みを紹介しました。千葉市は2016年に国家戦略特区に指定され、規制・制度の緩和や税制面の優遇を活用して、ドローンや自動運転モビリティなどの実証実験を積極的に展開してきました。

セミナーでは、千葉市総合政策局 未来都市戦略部の佐藤正則氏が、同市のドローン関連施策について説明しました。千葉市のドローン関連施策は、「ちばドローン実証ワンストップセンター」、「ドローン宅配実証実験」、「ドローン活用推進事業」、「無人航空機操縦者技能証明取得支援事業」の4つの柱で構成されています。

「ちばドローン実証ワンストップセンター」では、実証実験を実施したい事業者に対し、必要な手続きに関する情報提供や関係機関との調整などを支援しており、これまでに100件以上の対応実績があるとのことでした。

また、「ドローン宅配実証実験」では、東京湾臨海部の物流倉庫から幕張新都心の超高層マンションへのドローン配送の実現を目指しています。この構想は、物流倉庫の立地、海上・河川上空の飛行ルート、大規模な都心型住宅地という地域的優位性を活かしたものです。

佐藤氏は、ドローンを活用した事業アイデアを持つ事業者や、規制緩和を必要とする事業者からの相談を積極的に受け付けていると述べ、国家戦略特区としての優位性を活かした千葉市のドローン活用の取り組みをアピールしました。

広がるドローンの可能性と社会実装へ向けた動き

今回の「Japan Drone 2024」では、ドローン業界の最新テクノロジーと社会実装へ向けた動きを肌で感じることができました。各社の展示からは、ドローンの活用領域が点検・監視、物流、災害対応など多方面に広がっていることがわかります。同時に、業界全体で安全性と信頼性を高めるための取り組みも活発化しています。機体の性能向上だけでなく、操縦者の技能確保やセキュリティ対策など、各社が社会実装へ向けた課題に取り組む様子も印象的でした。

今後もドローン技術の進歩と社会実装が進み、ドローンが私たちの生活やビジネスに革新をもたらしていくことでしょう。次回のJapan Droneで、さらなる進化を遂げたドローン業界の姿を見ることができるかもしれません。次回の開催が今から待ち遠しく感じられるイベントでした。
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