(レポート)『2024年度最新 登録講習機関向け監査対策ウェビナー』ー登録講習機関の現状と課題とは?

(レポート)『2024年度最新 登録講習機関向け監査対策ウェビナー』ー登録講習機関の現状と課題とは?
2024年5月15日、ドローン情報サイト「コエテコドローン」は『2024年度最新 登録講習機関向け監査対策ウェビナー』を開催しました。

ドローンの国家資格制度「無人航空機操縦者技能証明」の導入から約1年半が経過し、登録講習機関の数と資格取得者数は着実に増加しています。しかし、講習の適正化と運営の効率化には課題も多く、監査を通じた改善が求められています。

そこで今回のウェビナーでは、バウンダリ行政書士法人の佐々木氏、橋本氏に登録講習機関の監査の概要と、監査で指摘される具体的な事例を解説いただきました。また、ウェビナーの後半では、バウンダリ行政書士法人の中島氏より、効率的なスクール運営を支援するクラウドシステム「Droby®」の活用法が紹介されました。登録講習機関の運営に携わる方々は、ぜひ参考にしてください。



■登壇者
  • バウンダリ行政書士法人 代表行政書士 佐々木 慎太郎 氏
  • バウンダリ行政書士法人 登録講習機関等監査実施団体管理者 許認可法務部マネージャー 行政書士 橋本 拓人 氏
  • リーガライト行政書士法人 代表行政書士 中島 北斗 氏

■司会
GMOメディア株式会社 事業開発本部 柴垣 泰

■主催
GMOメディア株式会社 
コエテコ ドローン byGMO

■協力
バウンダリ行政書士法人
https://boundary.or.jp/lp_drone-kansa/

リーガライト行政書士法人
https://naka4.com/drone/

登録講習機関の現状と監査の重要性(バウンダリ行政書士法人 佐々木氏)

バウンダリ行政書士法人 代表行政書士 佐々木 慎太郎 氏


ドローンの国家資格制度「無人航空機操縦者技能証明」が2022年12月に導入され、約1年半が経過しました。この間、登録講習機関の数は485社、666スクールにまで増加し、2等資格取得者は9,088件、1等資格取得者は1,157件に上っています(2024年3月31日時点)。資格取得者数は今後も増加すると予想されます。

また、国家資格制度への移行に伴い、これまで航空局ホームページに掲載する講習団体については新たな掲載を停止しており、民間技能認証による飛行の許可・承認の審査簡略化の運用は2025年12月に終了となる予定です。



一方で、登録講習機関の運営には課題も見られます。そこで重要な役割を果たすのが、登録講習機関に義務付けられている監査です。

佐々木氏は、監査の目的について、講習が適切に行われていることを確認し、運営を標準化することにあると述べました。監査を適切に実施することにより、無人航空機操縦者の講習水準を維持し、社会的信頼性を高めることができます。

監査の種類

監査には、以下の2種類があります。

  • オンライン監査
  • 実地監査
登録講習機関は原則として年1回の監査を受ける必要があり、3年に1回は実地監査を受けなければなりません。監査を受けないと、登録講習機関としての登録取り消しや業務停止の可能性もありますので、必ず受けるようにしましょう。

また、監査の起算日は、登録講習機関の登録日となります。スクールの開校日ではありませんので注意が必要です。

監査の流れとスケジュール

監査のスケジュールは概ね数ヶ月かけて行われ、以下のような内容が確認されます。

  • 講習の様子を撮影した動画や書類の確認
  • 登録講習機関としての申請時に提出した書類の内容と国の基準との整合性
  • 事務規程(運営ルール)の内容と実際の運営との整合性

監査終了後、登録講習機関から国土交通省航空局へ監査報告書を提出し、監査が完了します。

チェック内容は国土交通省航空局のホームページにあるチェックリストに基づいて行われます。各登録講習機関は、事前にチェックリストを確認し、自身のスクールの運営が適切に行われているか確認しておきましょう。

提出書類や動画の準備は、初年度は大変ですが、次年度以降は大きく変更されることはないため、初年度で準備方法を覚えておくことで次回以降はスムーズに監査を進めていけるようになります。



佐々木氏は「登録講習機関にとって監査は負担に感じられるかもしれないが、適正な運営を確保し、社会的信頼を得るために不可欠な取り組みである」と強調しました。各スクールは監査を前向きに捉え、運営の改善につなげていくことが望まれます。

登録講習機関の監査で散見される不適切事例(バウンダリ行政書士法人 橋本氏)

バウンダリ行政書士法人 登録講習機関等監査実施団体管理者 許認可法務部マネージャー 行政書士 橋本 拓人 氏


バウンダリ行政書士法人の橋本拓人氏は、これまでの監査実施における実例を踏まえ、登録講習機関の監査で散見される不適切事例を具体的に紹介しました。

まず、屋外での特定飛行時の飛行許可申請の不備です。許可が必要な飛行にもかかわらず、申請を行っていないケースが見られるとのこと。橋本氏は、各スクールが飛行形態に応じた許可申請の要否を適切に判断し、必要な手続きを行うよう呼びかけました。

次に、登録講習機関の講師として登録されていない人物が講習を行っているケースについて言及しました。国家資格の講習には、事前に航空局に届け出た講師のみが従事できる点に注意が必要です。橋本氏は、講師の選任や変更の際は、必ず所定の手続きを行うよう注意喚起しました。

修了審査においては、機体のオーバーライド機能を使用していない、または適切な安全措置を講じていない事例が報告されています。オーバーライド機能の使用は国の定める要件であり、安全確保のために必須の措置であると橋本氏は説明しました。

さらに、限定変更(目視内)の実地講習では「基本操縦(自動)」いわゆる「自動飛行」を実施していないケースが多いそうです。これは、実地講習と修了審査の内容が必ずしも一致していないことが原因と考えられます。橋本氏は、各スクールが国の定めるカリキュラムを十分に理解し、漏れなく講習を実施するよう求めました。

そのほか、以下のような指摘事項が挙げられました。

  • 講習事務規程に沿った安全対策の未策定
  • 講習料金の不適切な徴収と割引根拠の不備(恒久的な値引きの場合は事前届け出が必要、一時的なキャンペーン等の割引は根拠となる資料が必要)
  • 講習記録簿の記載不備(講習日付だけでなく、科目ごとの時間数と担当講師氏名の記載が必要)
  • 時間割通りの講習の未実施、必要履修科目・必要最低時間数の未記載

橋本氏は、これらの不適切事例を教訓として、各スクールが自身の運営を見直し、改善につなげることの重要性を訴えました。



また、指導処分を受けないためには、以下の点に注意が必要だと説明しました。

  • 空域の追加や講師の追加等、変更届け出が必要な場合は速やかに提出し、航空局から受理メールが来てから運用すること
  • 登録申請書類、事務規程、添付書類を確認し、講師・空域・機体が適合しているか確認すること
  • わからないことがあれば、専門家や監査実施団体、航空局に相談すること
  • 日頃から国の基準を認識し、事務規程通りの講習事務を行い、講習を適切に実施すること

最後に、橋本氏は登録講習機関の健全な発展のために、監査を「指摘する側と指摘される側の敵対関係」ではなく、「適切な講習事務を行うための伴走者」と捉えるべきだと語りました。監査実施団体とスクールが協力し合い、より良い講習環境を作っていくことが求められています。

効率的なスクール運営を支援するデータ管理プラットフォーム「Droby®」(リーガライト行政書士法人 中島氏)

リーガライト行政書士法人 代表行政書士 中島 北斗 氏


リーガライト行政書士法人の中島北斗氏は、登録講習機関の運営を支援するために開発したクラウドシステム「Droby®」を紹介しました。中島氏自身、登録講習機関の顧問業務に携わる中で、設立後の事務処理の煩雑さを痛感したことから、業務効率化のためのシステム開発に着手したそうです。

下記の通り、登録講習機関に義務付けられている事務業務は多岐に渡ります。



Droby®は、登録講習機関の業務フローに沿って設計されており、以下のような機能を備えています。

  • 受講生の入学申込みをオンラインフォームで受け付け、必要書類のアップロードにより書類の収集と管理を効率化
  • 請求書の発行や割引、振り込みの有無を一括管理
  • 講習記録簿の作成をシステム上で行うことで、記録漏れを防止
  • 国土交通省の告示に定められた時間数や科目に自動で対応し、適正な講習の実施をサポート
  • 修了証明書の作成、発行台帳への記録、交付も対応

監査対策については、Droby®上で必要な資料を管理・提出できるため、作業の効率化とヒューマンエラーの防止につながります。また、提出が求められる書類や記録が不足している場合は、システムがアラートを出す仕組みになっています。中島氏は、「人的ミスをいかに減らすか」という点に開発の力点を置いたと述べ、Droby®がスクール運営者の負担軽減に寄与することを期待していると語りました。

さらに、Droby®にはeラーニング機能も搭載されており、受講生の学習をサポートしています。実験などの動画も盛り込み、「より実践的で飽きのこない教材作り」を心がけているそうです。

最後に、中島氏はDroby®の利用実績について触れ、監査対応とeラーニングの両面で50校ほどの導入実績があり、利用スクールから好評を得ていると紹介しました。より多くのスクールにDroby®を活用してもらい、登録講習機関全体の運営水準の底上げにつなげたいとの思いも語られました。

ドローン産業の発展を目指して

ドローンの国家資格制度が普及する中、登録講習機関は適正なスクール運営と講習の質の担保に日々尽力する一方、業務の煩雑さや監査への対応など、多くの課題に直面していることと思います。

本ウェビナーでは、登録講習機関の監査で指摘される具体的な事例が紹介され、改善のためのヒントが提供されました。中には、「うちのスクールでも同じような課題があるかもしれない」と感じた方もいるかもしれません。監査の指摘事項を前向きに捉え、一つ一つ改善策を検討していくことが、運営の質の向上につながります。

また、データ管理プラットフォーム「Droby®」のようなツールを活用することで、業務の効率化と適正化を図ることができます。業務の煩雑さや監査への対応にお悩みの方は、導入を検討してみてはいかがでしょうか。

Droby申し込みページ(バウンダリ経由)



講習の質の向上は、ドローン産業の健全な発展に直結する重要な課題です。業務支援ツールを上手に活用しつつ、監査実施団体など関係各所とも連携しながら、ドローン産業の発展を目指し、一歩一歩前進していくことが期待されます。
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