後発だからこそ実現した「小型×高性能」屋内点検ドローン ERI Robotics「Small Doctor」開発の舞台裏
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監修者
コエテコドローン責任者
柴垣 泰
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今回お話を伺った方
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株式会社ERI Robotics代表
藤本 高史氏前職で新規事業開発に携わった経験をもとに、2021年に新潟でTOMPLA株式会社を創業。ドローンを活用した実証実験や企業支援を手がけるなかで、小型屋内ドローンの可能性に着目し、「Small Doctor」シリーズの開発を進める。2025年にERIホールディングスグループへ参画。2026年には熊本のCOBALTとの統合を経て、株式会社ERI Roboticsとして、屋内の狭所・暗所点検に活用できるドローンの開発・普及に取り組んでいる。
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2021年に新潟で創業し、2025年10月に指定確認検査機関を中核とするERIホールディングスのグループに参画、2026年1月に熊本のCOBALTと統合して現在の社名になりました。
強みは、カメラ映像から機体の位置を割り出す「自己位置制御」で屋内でも操縦しやすいことと、購入後もソフトウェアのアップデートで機能が進化すること。
今回は株式会社ERI Robotics代表の藤本高史氏に、開発の背景から製品の特徴、活用シーン、今後の展望までを聞きました。
ERI Roboticsとは?ドローン業界の外から起業し、ERIグループへ

株式会社ERI Robotics 代表の藤本高史氏
藤本氏は実証実験の支援を重ねる中で小型屋内ドローンの可能性に気づき、継続的な製品提供の体制構築と、展開先の顧客リレーションを求めてERIグループに加わりました。
——最初に、TOMPLAを創業した経緯を教えてください。
藤本氏:前職で新規事業を担当していたころ、人口減少社会ではロボットやドローンが活躍すると考えて、それらをマッチングする事業を社内で起案しました。ただ「まだ早い」という判断で、それなら自分でやろうと一念発起しました。
ロボットは物理的な制約がまだ大きく、一方でドローンは航空法改正でレベル4が解禁される直前でした。それまでドローンのことはまったく知りませんでしたが、新潟で会社を立ち上げました。
——業界につながりがない状態から、何を足がかりにしたのでしょう?
藤本氏:物流で街中にドローンを飛ばすことがビジネスの機会になると考え、都市部での実証実験から始めました。そこで大事なのは行政とのつながりで、新潟市や新潟県にかなりバックアップしていただきました。
ドローン側のノウハウは、個人的なつながりで、ドローン会社から独立した方々に来てもらいました。ドローンを動かす人たちと、街を動かす人たちをつなぎ合わせる立場からのスタートです。
小型機に軸を移し、ERIグループへ
——2025年10月にERIホールディングスのグループに参画した背景は?藤本氏:当初は実証実験や大企業のドローン活用を支援するコンサルティングが中心でしたが、その中で、狭いところに入れる小型ドローンは製品として伸びると見えてきました。
2023年ごろから徐々に事業の軸を移しましたが、ハードウェアを作るには資金が、売るにはチャネル*が要ります。単独での成長は難しいと考え、そこをドライブしてくれる会社のもとでやろうと決めました。
すでに多くの会社がERIグループに加わっていて、グループイン後の動き方のモデルがしっかりしていたことも決め手です。実際、最近商談したゼネコンさんからは「ERIさんを選ぶとは、目が高いですよ」と言われました。
2026年1月には、TOMPLA時代から協業してきた熊本のCOBALTと統合しました。現場オペレーションと開発力に長けた同社と組み、現場からのフィードバックを製品に活かす体制を整えています。
——ERIホールディングスの本業である建築確認検査とは、どんなシナジーがありますか。
藤本氏:建築確認検査*は建てる前と建てている最中の業務が中心ですが、建てた後にはメンテナンスや点検が発生します。私たちのドローンはまさにその領域向けの製品です。
前工程で高いシェアを持つグループの顧客ネットワークは、後工程でドローンを展開するときにそのまま活かせることを強く感じています。
後発ドローンメーカーの開発戦略「プロセッサーボードとソフトウェアに集中」

Small Doctorを手に説明する藤本氏
Small Doctorの開発着手は2023年。背景には、運用する側としてメーカーに感じた課題と、2020年以降のプロセッサーボードの進化があります。カメラ映像から自己位置を推定するソフトウェアへの集中が、後発ならではの差別化です。
——なぜ小型の屋内機を自社で開発しようと考えたのですか。
藤本氏:それまで、物を運べるような比較的大型のドローンを扱い、さまざまなトラブルも経験しました。当時はメーカーから機体を買って運用する立場だったので、「メーカーにはもっとこう動いてほしい」と感じることが多かったんです。
しかも大型機は、飛ばす場所やテスト環境を用意するだけでも大変です。小型の屋内機なら、ラボの中で開発とテストを高速に繰り返せる。「メーカーの立場ならこうしたい」という思いを、自分たちの製品で形にできると考えました。
——2020年以降の半導体の進化は、開発にどう影響しましたか?
藤本氏:2010年代のドローンは基本的に屋外用で、フライトコントローラー・カメラ・GPSの3つで構成され、計算するのは姿勢制御だけでした。
その後、NVIDIAやQualcommがGPU・CPU・メモリにフライトコントローラーまで一体化したボードを相次いで出し、軽量化・省電力化でドローンに載せられるようになったんです。
海外ではSkydioなどがいち早く製品化した一方で、日本での商用展開は限定的だったため、差別化できると考えました。
——国内の他社との違いはどこにありますか?
藤本氏:ドローンがここまで広く知られるようになったのは、先行してきた企業の皆さんの挑戦のおかげだと思っています。
そのうえで言うと、先行するメーカーの多くは、フライトコントローラーや自己位置推定の仕組みを独自に作り込んでいます。それまでの開発資産は強みである一方、新しい技術を活かそうとすると、かえって難しくなる面もあると思います。
私たちはフライトコントローラーを尖らせるのではなく、計算ボード上でカメラ映像から自己位置を推定するプログラムに力点を置き、ソフトウェア系のエンジニアを厚く配置しています。
後発だからこそ、先人が切り開いた市場を独自のやり方で伸ばせる余地は大きいと考えています。
Small Doctor(スモールドクター)とは?操縦しやすさの仕組みと機種の使い分け

Small Doctor Crawl
Small Doctorシリーズは、GNSSが届かない屋内の狭所・暗所に特化した小型点検ドローンです。自己位置制御で屋内でもホバリングでき、壁に接触しても落ちにくい設計です。
トンネルなど広い暗所向けの「Small Doctor 03」、カメラの角度を変えられ天井内に向く「Small Doctor Edge」、より小さく床下や小屋裏に向く「Small Doctor Crawl」の3機種があります。
自社開発・国内生産だからこそ、トラブルにも迅速に対応できます。さらに、現場の声をもとにアップデートを重ね、進化し続けるドローンです。
——自己位置制御は、操縦のしやすさにどうつながるのでしょう?

藤本氏:GPSが入らない屋内では、ドローンはX・Y・Zすべての方向に流れていくのが一般的です。私たちのドローンは位置を常に計算し続けるので、屋内でもホバリングできます。
また、ホビー用ドローンは壁に少しぶつかっただけで落ちるような制御が入っていることがありますが、Small Doctorはあえて逆です。ぶつかっても落ちず、傾いたまま進めたり後ろに下がれたりするよう、姿勢を補正しています。
ぶつかりながらでも安定して操作できるんです。
——ぶつかっても傾きを修正し安定した飛行ができるというのは、狭い場所であればなおさら、大きなメリットですね。では、競合製品と比べたときの優位性についても教えてください。
藤本氏:GPU・CPUボードを積んでいるので、後からソフトウェアを追加できることです。
買った後も、アップデートでどんどん使いやすくなっていく。よくテスラに例えるのですが、ソフトウェアの更新で機能が増えていきますよね。それと同じ考え方です。
今、リリース予定で準備しているのは、ドローンの飛行軌跡を表示するアプリケーションです。
映像だけではどの向きにどう動いて撮ったのかわかりにくいのですが、図面と重ねれば「この映像は図面のこのあたり」とわかり、点検ログとしても使い勝手が上がります。
センサーの追加などハードウェアの制約が出る機能もありますが、ソフトウェアだけで伸ばせる部分は大きい。アップデートされ、より高性能になり、使いやすくなる、進化するのがSmall Doctorシリーズです。
Small Doctor 3機種の違いと使い分け
| Small Doctor Edge | Small Doctor Crawl | Small Doctor 03 | |
| 想定用途 | 天井の狭小配管部など | 床下など閉所の狭小空間 | トンネルなど広範囲の暗所 |
| サイズ/重量 | 260mm×222mm×90mm / 530g | 226mm×206mm×85mm / 480g | 335mm×290mm×80mm / 520g |
| 最大飛行時間 | 18分 | 18分 | 16分 |
| 提供形態 | 販売 | 年間サブスクリプション | 販売 |
——EdgeとCrawlの違い、使い分けを教えてください。

藤本氏:Edgeはカメラの角度を変えられます。Crawlは角度を変えられない代わりに、より幅が狭く小さい機体です。今はビルの天井内はEdge、住宅の小屋裏や床下はCrawlが多いですね。
屋内点検ドローンの活用シーン|ビルの劣化診断から住宅の定期メンテナンスまで

Small Doctor Edge
Small Doctorの主な活用シーンは、ビルの定期点検や修繕前の現状確認・劣化箇所の調査と、住宅の定期メンテナンスです。
——ビルでは、どのような場面で使われていますか。
藤本氏:定期点検のほか、修繕工事前の現状確認や劣化箇所の調査です。見積もりや修繕計画を立てる前に、状態を確かめるわけですね。
お客様はビルメンテナンス会社やデベロッパーです。建て替えを検討している場合や、建物が古くなったため一度状態を確認したいというデベロッパーからの依頼が多いです。
——戸建て住宅ではいかがですか?
藤本氏:ハウスメーカーには、家を建てた後、5年単位ぐらいの定期メンテナンスのパッケージがあるので、その中に組み込んでいただく形でお話を進めています。
Small Doctorシリーズの販売代理店と価格|エリアで縛らず門戸を開く

——販売代理店と価格について教えてください。
藤本氏:現在、国内の代理店は大阪・東京・名古屋エリアの3社で、ドローンを使った調査会社やドローンスクールの運営会社です。代理店はどんどん増やしたいと考えていて、エリアで縛ることはしていません。
直販価格はホームページで公開しており、講習や保守の費用も載せています。
ドローン「Small Doctor」シリーズの料金
| 項目 | 価格 |
|
本体価格 |
Small Doctor 03 / Edge(本体1機+スタートセット):180万円 |
| Small Doctor Crawl(年間サブスクリプションプラン):要問い合わせ | |
| 必須運用契約 | 運用講習:3万円 / 人(税抜) ※導入時必須 |
| 年間運用契約:2万9,800円 / 機(税抜) ※継続必須 | |
|
現場導入トライアル |
購入前レンタルプラン:15万円 / 1週間 |
ERI Roboticsの今後の展望|土木分野への展開とドローンスクールとの協業

ERI Roboticsは今後、グループの地場土木コンサル会社と組み、土木現場向けドローンを新たな収益源に育てる方針です。ドローンスクールとの協業にも前向きです。
そして、屋内の狭所・暗所で磨いた技術の先に見据えているのは、火星の地下探査。GNSSが届かない場所を飛ぶ小型ドローンの挑戦は、宇宙にまで広がろうとしています。
——今後のグループ戦略を教えてください。
藤本氏:ERIグループは、建築物の安全・安心、土木インフラや自然環境の維持・保全に貢献する会社が次々と加わっているグループです。
すでにグループ各社が当社のドローンを使った新規事業に動き始めていて、新たな収益源になり得ると考えています。
——ERI Roboticsとして、グループ外の企業との協業も進めているのでしょうか。
藤本氏:ERIグループ外の企業との協業事例として、カンツールさんと共同で展開する下水管用のドローンがあります。
カンツールと共同開発した「Small Doctor Argo」は下水道や排水管などの管路点検に特化した機体で、「下水道展'26東京」にも展示されました。
——ドローンスクールとの協業の可能性はありますか?
藤本氏:大いにあると思います。ドローンを実際に使うのは現場の方々で、大手ゼネコンの本社に営業に行っても、使うのは現場の人たちです。
ドローンスクールはその現場の方々が最初に門戸を叩く場所なので、私たちにとって重要な接点になり得ると思っています。
当社の機体を販売していただくことも、スクールにとって新たな収益源のひとつになると考えています。
——最後に、製品ロードマップとめざす姿を教えてください。
藤本氏:私たちがめざすのは、トップパイロット向けのプロモデルではなく、一般ユーザーが現場で簡単に使える製品です。
直近の方向性は自動化ですが、闇雲に自動化すればいいわけではありません。現場に適した自動化で、人の難しい操縦を極力減らしていくことです。
その先の長期的な夢は、火星の地下探査です。
人が火星で暮らすには地下の調査が欠かせず、そこには地下探査用ドローンが必要になります。NASAは、惑星探査のドローンにはカメラ映像で自己位置を推定する「ビジュアルSLAM」が有用だとしています。
カメラは小さく軽いので、火星への輸送コストの面でも有利です。私たちも、その技術につながるかどうかを指標に、今の開発をバックキャストしています。
——ビルの天井裏から、火星の地下へ。Small Doctorの行き先が、ますます楽しみになりました!
ERI Roboticsは「誰でも使える屋内点検ドローン」で点検現場を変える
ERI Roboticsは、後発であることを強みに変え、プロセッサーボードとソフトウェアを軸にした屋内点検ドローン「Small Doctor」シリーズを展開しています。GNSSが届かない狭所・暗所でもホバリングでき、購入後も機能が進化する設計は、操縦経験の少ない現場担当者の導入ハードルを下げるものです。人の目が届きにくい天井内や床下、ダクトの奥を確認する手段として、活用の広がりが期待されます。
Small Doctorシリーズの機種ごとの仕様や価格、1週間の導入トライアル、販売代理店の募集については、ERI Roboticsの公式サイトで確認できます。
株式会社ERI Robotics 会社概要
| 社名 | 株式会社ERI Robotics(旧TOMPLA株式会社) |
| 設立 / 代表者 | 2021年3月26日 / 代表 藤本高史 |
| 所在地 | 本社:東京都品川区西五反田7-22-17 TOCビル8階 熊本フィールドセンター:熊本県熊本市西区花園3丁目4-32 新潟営業所:新潟県新潟市中央区天神1-1 プラーカ3 KENTO内 |
| URL | https://www.r-eri.jp |
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