そのなかで、ドローンとロボットの連携を目指した取り組みを行なっているのが、Blue innovationです。利用者や現場の声を汲み取り、どのようなドローンが最適か、どのようなシステムなら利用しやすいかを追求されているそう。
今回は、Blue innovationのサービスが生まれた背景や、サービスを提供されている子ども向けドローン教室「ドロミングラボ」についても詳しくお話を伺いました!
“お客様の仕事をより便利に”を追求して生まれたBlue innovation
警備や点検、物流など幅広い業界へドローン・ロボットの活用を提案しているのが、Blue innovationです。ドローン・ロボット業界の最先端のトレンドを踏まえ、それぞれの企業が抱える課題を解決するために尽力しているそう。ドローン業界の老舗として長年培ってきたノウハウを活かし、現場の人が使いやすく、より効率的なドローンの活用方法を提案するBlue innovationのサービスはどのように生まれたのでしょうか?Blue innovation常務取締役の那須隆志さんにお話を伺いました。
ーBlue innovationは、どのような課題を解決するために生まれたサービスなのでしょうか?
世間では、「ドローンやロボットは、今後幅広い現場で使われ始める」という認識が年々広がっています。そして実際に、物流倉庫などでは、地上を走るロボットが当たり前に使われ始めています。
しかし、実は、「1つの現場に複数のメーカーのロボットが混在していると、非常に扱い辛い」といった課題があることも事実です。メーカーによってはロボットやコントローラーの扱い方が異なる場合がありますから、機械の扱いに長けている人でも扱いが難しい場合もあります。
そこで私たちは、複数のドローンやロボットを動作させる環境でも、1つのプラットフォームで扱えた方がお客様が便利になると考え、ドローンとロボットを連携させるサービスを開発したのです。
ードローンとロボットの連携とは、具体的にどういうことでしょうか?
たとえば、ドローンが点検して異常のある箇所を発見した際に、補修ロボットが自動で向かうといった連携がとれると、非常に便利ですよね。私たちの会社では、こうしたロボット同士の連携プレーがスムーズに行えるよう、ロボットを統合管理できるBlue Earth Platformを開発しています。また、ドローンによるオートメーション化社会を見据えて、基盤となるようなプラットフォームの開発も目指しています。
危険な作業を肩代わり。Blue innovationのサービスとは
ーそれでは、より具体的に、御社がどのようなサービスを展開されているのか伺えますか?弊社は、ドローンを自動で制御したり、データを溜めたりするプラットフォームを作る会社です。言い換えると、ドローンとロボットのインテグレーターですね。社会的な課題やお客様が抱える課題に対して、メーカーが製作したドローンがどのようにインテグレーションできるのかを考えてサポートするのが、私たちの仕事です。
たとえば、送電線の点検は大変危険な作業を伴いますが、いまだに人が行っています。点検現場では、人が双眼鏡で下から覗くだけでなく、場合によっては送電線の上まで登って作業をすることも。高所の不安定な環境のなかで、ロープを伝うように点検される方もいます。
その結果、送電線の点検では、年間で感電事故や転落事故も起きている現状があります。こうした背景から、「危険を伴う点検業務を、ドローンが代わりに行えないか?」とご相談いただき、ドローンと弊社のセンサー技術を活用して、現場で導入していただくようになりました。
メーカーのドローンでは機能が足りない場合には、お客様のニーズにマッチできるよう弊社が機能をカスタマイズすることもあります。
ードローンのカスタマイズも積極的に行われているのですね。サービスは、どのような地域で利用されているのでしょうか?
地域としては、日本全国で活用され始めています。弊社のサービスをご利用いただけている事業者様の規模としては、いわゆる大手企業様が多いんです。そうなると、たとえば石油化学系のプラント会社では、非常に大きな石油タンクを日本全国に保有されていますから、おのずと全国的に活用していただけることになります。
有難いことに、弊社のサービスを利用することで「効率的かつ安全に点検できる」と業者間で広まったそうで、全国の事業所で使われ始めているという段階になっています。
ー公式サイトを拝見していて、ELIOS2という球体のカバーがついたドローンが非常に興味深かったです。球体のカバーは、そのような現場で衝突をしてもドローンに衝撃が及ばないよう設計されているのでしょうか?
球体で覆われたドローンの使用用途は、主に設備点検です。特に屋内の発電所のボイラーや石油化学工場のタンクの中、下水管の中で利用されています。仰っていただいたように、万が一ドローンが壁や設備にぶつかったとしても、ドローン/設備ともに傷つかないため、故障しづらいところが強みです。
ちなみに、このドローンは、弊社のリサーチャーがスイスのメーカーから見つけてきたものです。お客さんの課題がきっかけとなり、出会えたドローンだと思っています。
ーサービスを送電線の点検や棚卸しに導入されて、現場では実際にどのような声が聞かれていますか?
「自分達が一所懸命やっているものを、ドローンが代われるなんてすごいね」と仰っていただいています。そういった現場にはやはり、機械好きの男性が多いので、空飛ぶドローンを見ると歓声が上がることもありますね。
—非常に近未来的な光景ですね。いずれ、そうした作業はすべてドローンが行うようになるのでしょうか。
いえ、これまでに人が行ってきた点検や棚卸しなどを、明日からドローンがすべて代われるかというと、まだまだ技術的な課題はあります。自動飛行するようプログラムしていても、安全面を考慮すると、ドローンの知識を持っている人が現場で見張らなければならないという課題があるんです。今後は、現場の方達に安心してご利用いただくためにも、ドローン自体の技術の進化が必要だと感じています。
ードローン自体の技術の進化というと、たとえば、ルートや点検箇所をプログラムするのは難易度の高い作業になるのでしょうか。
いえ、ドローンの機種にもよりますが、「ここのルートを飛ぶ」とソフトウェア上で設定すること自体は簡単です。難しいのは、ハードウェアの動きや自然現象を考慮しなければならない点です。たとえば、ハードウェアのセンサーに少しでも誤差が生じれば、ルートが10cmほど変わってしまいますから。
ドローンをはじめとしたハードウェアが関わるプログラミングが難しいのは、自然現象も加味する必要があるためです。たとえば、ドローンは空を飛ぶものである以上、強い風が吹けば流れていってしまう。ハードウェアとソフトウェアを組み合わせたソリューションを考えるにあたり、こうした部分を考慮に入れるのは非常に難易度が高いんです。
ただ、難しいからといってつまらないわけではなく、むしろ、思い通りに行かないからこそ面白いと感じます。私も前職ではエンジニアでしたが、「なぜ、ルートにずれが生じるのか?」と考える過程は、エンジニアにとって大きな学びになりますね。
ー興味深いお話です。Blue innovationのサービスは、将来、子ども達や社会にどのような影響を与えるのでしょうか?
2000年初頭にITバブルが起きた当時は、ホワイトカラーと呼ばれる事務系の方々の仕事を自動化する流れが加速しました。ところが、現場で体を動かすブルーカラーの仕事にはその波が来ず、こんにちに至るまで、その大部分が自動化されていません。ですから、次の目標は、ブルーカラーの人達が危険な思いをしたり、苦労をしたり……という部分をロボットが担っていくことではないかと考えています。
私たちは、Blue Earth Platformがより多くの現場で利用できるように、さまざまなメーカーとのアライアンスを進めています。また、幅広いツールを効率的に利用して、業務の安全性を高める人材が育成できるよう、子ども達のプログラミング教育も始めているんです。
ドロミングラボにドローンの教材を提供する取り組み
ープラットフォームの開発だけでなく、次世代の人材育成にも注力されているのですね。子ども達へのプログラミング教育は、公式サイトでご紹介されているドロミングラボで行っているのでしょうか?そうです。ドロミングラボは、小学校中学年をターゲットにしたスクールで、プログラミングに限らず、ドローンの操縦も含めて体験していただけます。たとえば、「ドローンがエアコンの風に流されてしまうのをどう制御するか」まで含めて学んでもらえるのが魅力です。
スクールではいわゆるトイドローン(200g未満の、おもちゃ程度の性能を持つドローン)が主流ですが、一部ではプログラミングができる機種や、センサーが付いている機種も扱っています。いろいろな機種に触れてもらうことで、センサー付きドローンとセンサーなしドローンでは、飛行の安定性にどれくらい違いがあるかを体感してもらえる点がメリットですね。
内容としては、小学校高学年から中学生まではカバーできるかと思います。大人向けのパイロット教育も行っていますが、高校生の教育はまだ未着手ですので、今後は年齢の幅を広げていけたらと考えています。
ードロミングラボでは、直接、御社の社員が指導に当たられるのでしょうか。
いえ、正確には、我々がドローンの教材を作り、認定校に利用していただいている形です。ですから、指導にあたるのは各地の認定校の講師のみなさまです。
私たちがドローンの教材を提供するきっかけになったのは、JUIDA(一般社団法人日本UAS産業振興協議会)が優良なスクールを認定する「JUIDA認定スクール」制度が始まったことです。
JUIDA認定スクールでは、無人航空機産業の健全な発展のために、無人航空機運航上の安全に関わる知識と、高い操縦技能を有する人材の養成を行っています。全国200校以上から操縦士を輩出するなどドローン産業を牽引する存在となっています。引用:JUIDA
当初のJUIDA認定スクールは大人向けのドローン教室が大半でした。そこで弊社では「子供向けのドローン教育の取り組みを始めよう」と考え、教材事業をスタートさせたんです。今のところはJUIDA認定スクールを中心に教材提供していますが、いずれ普通のプログラミングスクールでも導入していただけるような教材やカリキュラムを作っていくことを目指しています。
制御を行えるエンジニアを確保することが、事業拡大のカギになる
ーBlue innovationが今後事業を展開していくうえで、課題に感じていることはありますか?まず、日本全体の視点からお話しすると、いま現在、ドローンの制御をできるエンジニアは非常に数が少なくなっています。言うまでもなく、ドローンが自由自在に動けたり自動飛行できたりするのは、専門家によって制御されているためなんです。ところが、制御を学んだエンジニアの多くは自動車メーカーに流れてしまい、ドローン業界を選びづらい課題があります。
私の学生時代には、日本の物作りが盛んな時代でしたから、ハードウェアを作る担い手が多くいました。ただ、そんな時代ですらも、制御を担える人材は少なかった印象があります。ですから今後は、制御を学んだエンジニアが育ちやすい環境を作ることで、日本全体の技術の発展スピードが速くなることを期待しています。
また、弊社に関して言えば、今後は、ドローンに拘らないソリューション展開を進めていきたいと考えています。 内容としては、ドローンのみならず自動走行ロボットを扱ったソリューションを予定しています。2022年には、いくつか発表できるように開発を進めています。
ーそれでは、最後にプログラミングを学ぶお子様や保護者様へメッセージをお願いします。
現在、プログラミング教室というと、ソフトウェアだけで完結するゲーム関連の教材が多いかと思います。もちろん、ソフトウェア完結型でも学べるポイントは多くありますが、ドローンのようにトライアンドエラーを体感できるハードウェアが関わる学びは非常に重要だと考えています。
実際にドローンを手に取り、試行錯誤を繰り返すことは、お子様にとって貴重な財産になるでしょう。私は一時期、大手国内メーカーで製品開発を担当していましたが、上手くいかなかったものを試行錯誤を繰り返して開発できた時には、やはり大きな達成感がありました。
今後は、効率的に仕事を遂行するために、ドローンやロボットが生活に定着する時代がやってきます。だからこそ、エンジニアを育てていくのが重要になる時代だと考えていますので、興味があるお子様がいらっしゃいましたら、まずは弊社のサービスに頼って頂けたらと思っています。
ー那須さん、本日はありがとうございました!
Blue innovation(ブルーイノベーション)はこちら
日本全国の企業が抱える課題を解決するために、ドローンのサービスを展開している「Blue innovation(ブルーイノベーション)」の公式サイトはこちら。今回の取材に出てきたシーン以外にも、さまざまなシチュエーションで活用できます。詳しくは以下のページでご覧ください。
ブルーイノベーション株式会社 - ドローン UAS システムインテグレータ ビジネス
複数のドローンやロボット、センサーなどデバイスを遠隔で制御・統合管理する独自開発のデバイス統合プラットフォーム「Blue Earth Platform(BEP)」を活用し、社会課題の解決、そして日本の未来の構築のためのソリューションを開発・提供しています。
この記事をwww.blue-i.co.jp で読む >