(取材)綜合警備保障株式会社(ALSOK)|「大型商業施設を時短で見回り」ドローン活用で警備の負担を減らし、より安全な社会へ

(取材)綜合警備保障株式会社(ALSOK)|「大型商業施設を時短で見回り」ドローン活用で警備の負担を減らし、より安全な社会へ
1965年の設立以来、警備業界のフロントランナーとしてひた走る綜合警備保障株式会社(ALSOK)。40年以上前から警備ロボットの開発を行うなど、警備のDX化にも注力しています。

そんなALSOKはいち早くドローンに注目してサービスを展開しており、2021年11月にはドローンによる自動巡回サービスを始めました。ALSOKが警備にドローンを取り入れた背景やその特徴について、綜合警備保障(ALSOL)セキュリティ科学研究所 所長 澤口晴彦氏にうかがいました。

綜合警備保障(ALSOK)セキュリティ科学研究所 所長 澤口晴彦氏

人手不足を救うドローン

――まずは警備業界の抱える課題について教えてください。
 
いま日本国内には、1万400社ほどの警備会社があります。警備員の人数も約59万人に上り、これは警察官(約29万人)と自衛官(約22万人)を合わせた数よりも多いんです。市場規模としても3兆4500億円程度と、かなり大きな市場です。
 
ただどうしても警備業界には3K(きつい・汚い・危険)のイメージがあり、人手不足に悩んでいる企業が非常に多いのが現状です。全体の9割を占める中小企業では特に顕著ですね。有効求人倍率で見ると、2022年10月時点で、全体で1.35倍のところ、保安関係では7.46倍。実に5倍強の開きがあります。
 
――ALSOKではどのような人手不足対策を行なっているのでしょうか。 
 
人手不足に悩んでいるのはどの警備会社も変わりません。そのため、各社労働環境の整備に注力しています。私たちの場合、働き甲斐のある職場をつくって離職率を低下させるため、長時間労働の是正や有給休暇の取得促進、9年連続の給与ベースアップ実現などを行ってきました。
 
環境整備の一環として、システム化・自動化による効率化も進めています。「警備」と一口に言っても、施設の警備や交通誘導など、その仕事の内容はさまざまです。それぞれの場面に応じて、AIやカメラ、ドローンなどを活用していきたいと考えています。

――なぜドローンを活用するに至ったのでしょうか? 
 
もともと当社は、新しいシステムを積極的に取り入れてきた会社です。約40年前から自律走行型の警備ロボットの研究開発を進め、15年ほど前には商品化に成功しています。そのノウハウのもと、「どうすればシステムを警備業務に応用できるのか」を常に考えています。
 
そんな中で2010年ごろ、たまたまインターネット上で海外でドローンが活用されている様子を目にしました。まだ日本では全く流行していない時代でしたが、「ドローンを警備で使えるんじゃないか」とひらめいたんです。

同社で活用されている、米Skydio社製のドローン(同社提供)


――ずいぶん早い段階で着目されていたんですね。 
 
そうなんです。警備で使うドローンの特許も取得しました。ただ、どうにか活用できないかといろいろなところに相談してみたものの、当時はまだ自動飛行の技術もなく、屋内ではGPSが途切れてしまうといった問題が山積していました。そのためその時点では、警備業務に活用することは断念しました。
 
一方で、当時は国土強靭化が叫ばれ、インフラ点検の重要性が増していました。ALSOKは警備業のほかに点検業務も行っているため、こちらの分野では活用できると判断。2014年に空撮サービスを開始し、主に太陽光パネルの点検に踏み出しました。事業や体制は順調に拡大しており、2020年には外壁点検サービスを開始しています。

巡回業務をドローンで!警備業務のさらなる効率化を目指す

――2021年、新しいドローンサービスを発表されました。これはどのようなものでしょうか。
 
①社会インフラ点検向け空撮サービス②自動巡回ドローンサービスですね。米Skydio社とジャパン・インフラ・ウェイマーク社の三社でドローンによる巡回機能の開発やサービスの展開を進めており、①社会インフラ点検向け空撮サービスでは、道路橋の点検を主に行います。※JIWオペレータ付きドローンレンタルサービス
 
②自動巡回ドローンサービスは、施設の内外を巡回する「巡回業務」でドローンを活用するものです。決められた時刻になるとドローンが自動でポートから飛び立ち、あらかじめ指定したルートを巡回してポートに帰還。GPSの届かない屋内や狭い場所でも飛行が可能で、障害物も自動で回避します。
 
Alsok  

【ALSOKニュース】ALSOKグループにおけるドローン事業の拡大 インフラ点検向け空撮サービスとドローン自動巡回サービスを開始|2021年11月5日|安全安心のアルソック【ALSOK 綜合警備保障】

ALSOK(本社:東京都港区、社長:青山 幸恭)は、2014年よりドローンを用いたソーラー発電設備の点検向け空撮サービスの販売を始め、外壁調査等へメニューを拡大しながらドローンサービスを展開してまいりました。 2021年11月より、新たに

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――巡回サービスは具体的にどのような場面を想定しているのでしょうか。 
 
たとえば、百貨店でのユースケースが想定できます。これまで百貨店では、閉店の際に警備員が一つひとつのフロアを歩いて見て回っていました。 ただ、どうしても人の目では確認しづらい部分がある上、時間もかかります。

そのような場所でドローンを用いることで死角をなくし、巡回にかかる時間も短縮できると考えています。
 

同社提供

 
Alsok  

【ALSOKニュース】【日本初】AIを搭載した完全自律飛行ドローン警備システムの屋内実証を 東京スカイツリータウン®で実施|2020年7月15日|安全安心のアルソック【ALSOK 綜合警備保障】

ALSOK(本社:東京都港区、社長:青山 幸恭)と東武タワースカイツリー株式会社 および東武タウンソラマチ株式会社(本社:東京都墨田区、代表取締役会長兼社長:岩瀬 豊)は、東京スカイツリータウン内にて、日本初のGPSを使用することが困難な

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――開発に当たってはどのような点を重視されたのでしょうか。
 

実際に機体を作製するSkydio社に対し、「すぐに情報を上げてくれる機体を」との要望を出しました。高画質の画像やルート設定の柔軟な仕組みについてはどの業界・業種でもそこまで必要なものは変わらないと思いますが、警備会社である私たちならではの重要な視点が「安全を担保できること」です。

たとえば、飛行の最中に墜落したり緊急着陸したりした場合、なぜそのような事態が起こり、いま機体がどうなっているかがわからないのでは、責任を持ってドローンを運用できません。機体の状況をリアルタイムで把握でき、何か異常があればすぐにアラートを出して私たちに知らせるといった機能を搭載してくれるよう求めました。
 
――パイロットの育成も行っているとうかがいました。 
 
ジャパン・インフラ・ウェイマーク社の指導のもと、自社のドローンパイロットを育成しています。地域ごとにドローンを操縦できる人材自体はそれなりにいるのですが、全国規模で同じ品質を担保したいと思うと一気に難易度が高くなります。そこでALSOKの全国に広がるネットワークの強みを生かし、全国規模でパイロットを育成しています。
 
――女性や高齢者でも問題なく業務にあたれるのでしょうか。 

 
そうですね。当社でも多様性の確保や働き方改革を進めており、女性や高齢者でも安心して働ける環境を整備することは重要だと考えています。女性でも希望すれば男性と同じように働ける環境を整備していますし、システムの導入で体力を必要としなくなる分、性別や年齢にかかわらず、より働きやすい環境が構築できていると考えています。

「ドローン」×「人」のシナジーを生み出す

――今後、同種のサービスが他社から展開されることも予測される中、ALSOKの持つ強みを教えてください。 
 
一つは機体の性能です。高性能な米Skydio社の機体を使用していますが、警備分野ではALSOKが優先的に同社の機体を使用させてもらう契約になっています。
 
そのほか、多様な業界のニーズを捉えやすく、全国規模で同じ品質のサービスを提供できることも強みです。今後、建設会社やメンテナンス会社もこの分野に参入してくると思いますが、もともとALSOKは大手企業や自治体など、ドローンを活用するほどの大規模施設やインフラを有する顧客との接点が非常に多い。そのため、顧客の要望を反映しやすい環境にあると言えます。
 
また私たちはもともと、警備員や防犯カメラなど多様な警備の形を提案してきました。お客様がドローンを望まれたとしても、防犯カメラでいい場合もあるかもしれませんし、その逆もあるでしょう。お客様の状態に合わせて最適な提案ができるのは私たちならではだと考えています。
 

――今後、さらにどのような展開を想定されているのでしょうか。
 

ドローンはビジネスモデルを変えられるツールだと思っています。今後の展望としては、まだまだアイディアの段階ですが、「機械警備」にもドローンを活用していきたいですね。
 
「機械整備」とは、自宅やオフィスにセンサーを導入することで、火災や不審者の侵入といった異常を知らせるものです。いまはセンサーが反応してから25分以内にガードマンが駆け付けるサービスを主軸としていますが、今後はまずドローンが駆け付けるようになるかもしれません。
 
とはいえ現段階では、警備のすべてをドローンに任せるところまでは考えていません。これは技術的な課題というより、ドローンの持つ性質の問題です。たとえば機械警備の場面では、ドローンは通報までは早くても、不審者の侵入抑止まではできません。最終的に警備員が駆け付ける必要があるでしょう。
 
ただ、最初の確認が早くなれば、警備の品質は上がります。ドローンと人間の警備の質を向上させ、シナジーを生み出せるようにしていきたいですね。
 
――今後、社会でどのような存在感を出していきたいとお考えでしょうか。 
 
まず警備業界の慢性的な課題である人手不足への対応を進めるために、省人化・効率化を進めていく必要があります。そこでドローンを含めたシステムを活用していくことは非常に重要です。
 
一方で、社会全体としていろいろな業界で省人化が進むことを考えたときには、ゆくゆくは現場に人がいなくなっていくことが予測されます。ただそれでも、最終的に人が対応しなければならない場面は絶対になくならないはずです。
 
そこで、人がいなくなったオフィスや現場をALSOKが24時間365日モニタリングし、何か異常があればドローンがすぐに駆け付け、最終的に警備員が対応する。そのような「DX対応」「スピード」に強みを持った警備で存在感を示していきたいですね。
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