熟練の技術を有していない方でもスマート農業を導入すれば、最低限の人員で高品質生産をすることが可能になります。この記事では、スマート農業が導入されるようになった背景やスマート農業の活用事例などをわかりやすく紹介します。
スマート農業の特徴
スマート農業とは、ロボットやAI、IoTなどの先端技術を農業に活用することを意味します。先端技術で作業を超省略化することにより、高品質生産を可能にします。人の目では判断することが難しかった土壌の環境など、スマート農業を導入することによって栽培履歴を管理しやすくなるのがメリットです。作業を省力化するだけではなく、環境保全や食料自給率の向上なども期待されています。なお、スマート農業は農林水産省から推進されており、支援サービスの紹介やガイドラインの作成などスマート農業を導入しやすい環境作りが進められています。
スマート農業に関連した補助金
スマート農業を導入する際、農林水産省からは以下のような補助金が受けられます。- スマート農業総合推進対策事業費補助金
- スマート農業総合推進対策事業費地方公共団体補助金
補助金を申請する際には、公募要領の受給条件を満たしているか確認しましょう。申請書には、収支予算や事業計画などを記入することが求められます。
参考:農業用ドローン補助金
スマート農業が導入されるようになった背景
出典:農林水産省農業分野では、担い手の高齢化の進行に伴い、担い手の減少が深刻な問題となっています。農林水産省の調べでは、農業従事者の人数は昭和35年に1,175万人だったのに対し、平成2年には293万人、令和2年には136万人まで減少していることがわかります。
さらに、令和2年においては農業従事者が最も多い年齢は65~74歳であることがわかっています。このような担い手不足の解消を目的として、スマート導入は導入されるようになりました。スマート農業を導入することで、高齢の農業従事者における軽労化や新規就農者の確保などが期待されています。
2020年度の日本における食料自給率は37%といわれており、食料の大半を輸入に頼っていることが現状です。輸入国の戦争や不作などが起こった場合、深刻な食糧不足に陥ることが懸念されています。日本の食料自給率を向上させるためにも、スマート農業は推し進められるようになりました。
また、農業の分野は「休みが取れない」「重労働できつい仕事」といったイメージがありましたが、スマート農業を利用することで就農へのハードルが下がることが予想されます。ドローンスクールでは農薬散布や農業に使用するための、操縦免許も取得できますので、気になる方はチェックしてみてください。
参考:農業・農薬散布向けドローンスクール
スマート農業のメリット
ここでは、スマート農業を導入するメリットを紹介します。作業の自動化
作物の生育環境を自動でコントロールできるようにしたり測定データをリアルタイムで確認できるようにしたりすることで、農業における作業は大幅に自動化することが可能です。作業を自動化することで、労働時間の短縮や身体的負担の軽減にもつながります。労働時間が短縮できることで、人的コストを削減しながら高品質の作物を生産できるようになることもメリットです。
圃場の拡大・収穫量のアップ
作業の自動化・機械化を行うことよって、圃場の拡大や収穫量のアップが期待できます。具体的には、トラクターの直進運転やドローンでの肥料の自動散布、水田の水管理などが挙げられます。短時間で効率的に作業を進められることから、圃場を拡大しても最低限の人員で作業を行えることがメリットです。圃場が多数で分散している場合でも、スマート農業を導入することで圃場をモニタリングしやすくなり広範囲の圃場も容易に管理できるようになります。
情報共有の簡易化
作物を育成するために最適な温度や湿度、日射量などをデータ化することで、経験がない新規就農者でも栽培技術を習得しやすくなることがメリットです。見本となるデータがあることで、新規就農者の早期育成、技術継承にも役立っています。また、測定したデータは生産者間でも容易に共有でき、作物にとって最適な生育環境を共有し合えることで、生産量アップも期待できます。
環境保全
地球環境保護や残留農薬による人体への影響の観点から、化学肥料や農薬の使用量を削減することは農家にとって重要な課題の1つです。化学肥料や農薬を一切使用しない有機野菜は消費者から注目を集めており、環境保全型農業は農林水産省からも推進されています。スマート農業を導入することで、化学肥料や農薬の使用を最小限に抑えて作物を栽培することが可能になります。リモートセンシングの技術を採用すれば、肥料や農薬を必要な箇所にだけ必要な量を散布できます。肥料や農薬の量を抑えることで、費用削減にもつながるでしょう。
スマート農業が抱える課題
ここでは、スマート農業が抱える課題について解説します。コストが割高になる
AIを搭載した機械やサービスは高額であるため、容易に導入できない点が課題となっています。たとえば、農業用ドローンの費用相場は100~300万円程度であり、機体の定期点検費用や保険料などもかかります。そのため、小規模の農家の場合は、スマート農業を導入しない方がコスト面でプラスになることもあるでしょう。コストを抑えてスマート農業を導入したい場合は、国や自治体の補助金・助成金制度を利用することがおすすめです。
また、スマート農業を導入する第一歩として、タブレットやスマートフォンで利用できる生産管理アプリを導入する方法もあります。年間数千円~数万円ほどで利用できるアプリもあるため、使用感を試してみても良いですね。
新たな作業負担
スマート農業を導入するためには、パソコンやタブレットを利用して、データ入力・分析を行う必要があります。これまでにパソコンやタブレットを扱ったことがない農家の方にとっては、そういったデバイスの操作に慣れることが負担になるケースも。就農者のITリテラシーが向上することで、現場で最新のテクノロジーを導入しやすくなります。当事者が最新技術を使いこなすことが難しい場合は、新しいテクノロジーを活用できる人材を募集することも1つの方法です。
スマート農業の活用事例
スマート農業の活用事例は、主に以下の通りです。- 自動走行トラクター
- 自動運転田植え機
- スマート追肥システム
- 無人草刈りロボット
- 自動収穫機
- 自動運転アシスト機能付きコンバイン
- 圃場の自動監視
- 水田の水管理を遠隔自動制御化
- 遠隔監視による無人自動走行システム
上記の活用事例からもわかるように、広範囲に及ぶ稲作においてスマート農業は広く活用されています。水田だけではなく、ビニールハウス内の管理や果樹農園などにもスマート農業は利用されています。
アシストスーツ
茨城県では、作業負荷がかかりやすい腕や腰をサポートするために、モーターを搭載したアシストスーツを導入しているイチゴ農家があります。アシストスーツを導入したことで、年間の作業時間は5.17%短縮し、作業負担の軽減に効果が得られたそうです。無人トラクター・コンバイン・田植え機
無人トラクター・コンバイン・田植え機などは1,000万円以上かかるものもありますが、1人で同時に2台を走行できることがメリット。費用を抑えて自動運転技術を導入するために、複数の農家で共同購入するケースもあります。農業用ドローン
滋賀県大津市で農業用ドローンを導入した農家では、作業効率が向上したことにより玉ねぎの栽培面積を1haから1.5haへと規模拡大しました。さらに、圃場に踏み入ることなく播種できることで、収量低下を防ぐことにも効果があったそうです。参考:国家資格ドローンスクール
ロボット草刈り機
茨城県では、従業員15名のリンゴ農家でロボット草刈り機を導入しています。1台で最大30aの面積を草刈りできるロボット草刈り機によって、除草作業を無人化でき経営の効率化を図れました。除草作業時間の削減だけではなく、従業員の労働環境改善にも効果が得られています。センサーネットワーク機器
ワイン農家ではセンサーネットワーク機器を導入したことで、農園内の温度や雨量を正確にモニタリングできるようになりました。実際に人が行うと丸一日を要する作業でしたが、機器を導入することによりカビ被害を防ぎ作物の品質安定化にもつながったそうです。いちごの選果ロボット
熊本県阿蘇市のいちご農家では、いちご選果ロボットを導入したことで、選果時の損傷対策を徹底できるようになりました。1台あたり1,500万円ほどですが、人件費や選果する時間を大幅に削減できるなどのメリットがあります。防除と収穫の適期を自動算出するソフト
広島市の小松菜農家では、播種日を入力することで2回の防除と収穫の適期を自動算出するソフトを導入しています。防除と収穫の適期が把握できるようになることで、タイムロスの削減と品質の向上に効果が得られるそうです。スマート農業技術による効果
出典:農林水産省農林水産省の調べでは、ドローンによる農薬散布で作業時間が81%の短縮、自動水管理システムにより作業時間は87%短縮していることがわかります。また、センシングデータを活用することにより、農作物の生育や病害を予測することも可能になります。
スマート農業を導入して生産性を向上させよう
農業用ドローンや自動草刈り機など、さまざまな新しいテクノロジーは幅広い農家で活用されるようになりました。導入する際には、費用対効果を分析することが重要です。費用面でハードルが高い場合は、共同購入や助成金の活用などを検討したいですね。スマート農業を導入することで、身体的負担の軽減や作業時間の短縮などさまざまな効果を得られるでしょう。メリットや課題なども抑えたうえでスマート農業を導入して、生産性を向上させていきたいですね。