(取材)株式会社WorldLink & Company CTO 渡辺一生さん|ネクストステップは「3次元」産学連携でドローン業界を牽引

ネクストステップは3次元 産学連携でドローン業界を牽引する
高性能レーザスキャナ(LiDAR)や超高解像度カメラなどの先端技術とドローンを組み合わせ、社会課題の解決を目指すSkyLink Japan (株式会社WorldLink & Company)。災害時の被害調査や鳥獣害対策、圃場の見回り、山林の測量など、提供するソリューションは多岐にわたります。

この記事では、株式会社WorldLink & Company 執行役員・CTO ソリューション統括事業部 事業部長の渡辺一生氏に、ドローンソリューションの現状と今後の展望についてお聞きしました。

フィールドロボティクス分野での歩み

ーー京都大学東南アジア地域研究研究所においてフィールドロボティクスプロジェクトに携わっていたとのことですが、どのような研究をされていたのでしょうか。

京都大学が得意とする海外フィールドワークの分野で、自然や文化、風習、社会などのさまざまな面から、文理融合で地域を深掘りし理解を深めていくというのが大まかな研究の枠組みです。

もともと私自身は、大学の修士課程から衛星画像の解析や地理情報空間の分析などの研究を進めてきました。タイなどの東南アジアを対象に「土地をどのように利用しているか」「作物がどのようにできているか」などを衛星解析して明らかにするという研究で、博士論文も東南アジア地域の自然環境の分析に取り組みました。

研究所も同じようにフィールドワークを文理融合で研究している場所で、研究員として2008年に就職しました。

「私の自作機に勝てるマシンを探していた」 ドローンを使った画像処理研究に取り組む京大・渡辺連携准教授が「HP Z Workstation」を選んだ理由

「私の自作機に勝てるマシンを探していた」──そう話すのは、京都大学東南アジア地域研究研究所の渡辺一生連携准教授だ。東南アジア地域における自然環境や現地住民の生活、文化の関係を調査・研究する目的で、ドローンの空撮画像を使った分析を行う渡辺氏は、処理に大きな負荷がかかる高精細画像を大量に扱うために、日本HPの高性能ワークステーション「HP Z Workstation」を選んだ。 ...

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ーーフィールドワークに衛星画像でアプローチすることのメリットはどのような点ですか。

俯瞰して地域の全体像を把握できる点と、それを定量的に示して可視化できる点ですね。例えば、「〇〇の田んぼはいつ拓いた」のような話を現地の人に聞くのと同じように、過去の衛星画像を用いることで客観的に場所・時間・量を把握できます。過去にさかのぼりつつ、現在に至るまでを数値やデータで視覚化できるところが一番の強みです。

ーー研究を通して俯瞰的にデータを見る中で、意外な発見やおもしろかったことはありますか。

インドネシア・リアウ州の森林で、天然林がどう伐採され、人がどのように手を加えて今に至るかを調査していました。地域に住んでいる人たちの語りだけではなく、実態としてデータに表れて地域外の広い範囲の影響もわかるので、歴史的な部分や広い範囲のことが手に取るように理解できるという経験をしたことがあります。「虫の目」と「鳥の目」がぴったり合うような発見はおもしろいなと感じますね。

ドローンとの出会いやSkyLink Japanと協業に至った経緯

ーー2014年ごろにはドローンの可能性に着目されていたということですが、当時のドローンとの出会いを振り返っていただけますか。

もともと衛星画像が専門だったので、好きな時に好きな場所で、好きな細かさでデータを取りたいと思っていました。ドローンという無人機の存在は知っていましたが、当時は価格が高かったですね。

それが2014~15年ごろにDJI社のPhantom1やPhantom2が出てきて、「これに自分でカメラをつけて飛ばせばいいじゃないか」と。もともとアドバルーンにカメラを取り付けて写真を撮るなどしていたので、無線でそういうデータが取れるなら色々試してみたいと考えました。空飛ぶロボットにセンサーを付けて、そこから得られる情報をどうやったらちゃんと分析できるのかという点に興味がありましたね。

ーー当時の課題感や、ドローンを本格運用したことによる影響を教えてください。

データを取るということは、どうしても受動的にならざるを得ないこともあります。自分で能動的にデータを取ることに関して、ドローンは最適な方法だと思います。当時は自分たちで詳細な地図をマッピングすることはあまり行われていなかったので、多方面から問い合わせや共同研究のお誘いなどがあり、反響はかなり大きかったですね。

環境分析のような理系の分野の人たちとも、文化人類学のような文系の人たちとも一緒に取り組めます。インドネシアやアフリカ、フィリピンなどさまざまな場所に、ドローンを片手にデータを取りに行きました。

ーーどのような経緯でスカイリンクジャパンと協業するようになったのでしょうか。

京都大学のあと、総合地球環境学研究所というところに赴任したのですが、山手にある研究所から降りていったところに、ちょうどSkyLink Japanの初店舗がありました。知人から「ドローン屋が駅前にオープンした」と話を聞いて、「じゃあ行ってみよう」というのがきっかけでしたね。それが2015年ごろのことです。

SkyLink Japan (スカイリンクジャパン)

SkyLink Japanはドローン(無人航空機,UAV)の販売や産業向けソリューションを提供いたします。「ドローンと社会を正しくつなぐ」というミッションを掲げ,農業,点検,測量,計測,戦略コンサルティングや保守サービスの提供など,多様なお客様のニーズに応えます。

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ーーそこからどのように協業に至ったのですか。

当時は、ドローンといえばCMや映画などの動画撮影がメインの使われ方でしたが、そこには全く興味がありませんでした。なので、「自分で地図を作りたい」と、カメラや自動航行の方法などについてスタッフと話していました。そのうちSkyLink Japanに「測量や調査に使いたい」という問い合わせが増え、スタッフから相談を受けるようになったのをきっかけに、技術顧問の依頼を受けたのがスタートです。

私自身も京大でプロジェクトを立ち上げて一緒に共同研究をすることになり、2017~18年ごろには、片方では「社会技術を発展させる」、片方では「研究を進める」という形ができあがりました。

ーーまさに産学連携ですね。産学連携で進めたことによるメリットはありましたか。

産学連携のメリットは本当にたくさんあります。研究では、予算を獲得するチャンスは1年に1回で、準備から採択結果が出るまでに半年くらいかかります。しかし、ドローン業界にとっての半年は「一昔前」。当時は半年も経てば次のバージョンが出ていましたから。SkyLink Japanとの協業によって、より早く最新の機材が使える点が一番のメリットでしたね。

最新の機材に対して、私はさらに先の方法を考えます。すると、先端技術を使った先端の研究という相乗効果がねらえるのです。新しく発展していく分野に対して新しい方法を応用させることで、私は研究に活用し、SkyLink Japanはお客さんに還元できます。業界の先頭を走って引っ張っているという感覚でした。

ドローンソリューションをめぐる市場ニーズの変遷

ーードローンと出会ってからの約10年の変化を振り返ると、ドローン技術や市場ニーズにはどのような変化を感じていますか。

ドローンが出回り始めた時期に趣味以外の目的として考えられていたのは、測量や災害時に人が入れない場所での状況把握です。そのような部分にフォーカスが合い始めたのが2017~18年ごろの流れでした。

また、同時期に出てきたニーズとして、農業があります。農薬散布は、もともと日本の食料生産の3分の1ほどは無人ヘリコプターで行なわれていましたが、一握りのスペシャリストでなければ操縦できませんでした。一方ドローンは安定して多くの人が操縦できるので、ドローンを農薬散布に活用しようというニーズが生まれたのです。

さらに、そのあとに出てきたのが物資輸送やインフラ点検です。SkyLink Japanと初めに立ち上げた事業も、太陽光パネルの点検でした。それまで人が歩いて点検していた作業にドローンを活用するというものです。当時はインフラ点検というとおもに太陽光パネルで、日本におけるドローンの草創期にあたります。

ーーその時期から6年ほどが経ちますが、ニーズは増えているのでしょうか。

用途も規模も拡大していると感じますね。新しいニーズとして、壁面やダム、橋梁などの巨大構造物の点検が増えていて、さらに今後立ち上がるだろうといわれているのが物流です。全体の活用事例も増えていますし、マーケットももちろん拡大しています。

DRONE  

WorldLink & Company、デンソー製UAVによる橋梁点検事業の継承

株式会社WorldLink & Company (以下: ワールドリンク) は、株式会社デンソー(以下:デンソー)からUAV(ドローン)による橋梁点検サービス事業に関する資産を譲受した

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また、メーカーの種類という観点でも、変化が生じています。もともとは中国のDJI社がメインで、どこでもDJIのドローンが使われているような状況でしたが、3年ほど前から少しずつ潮目が変わりました。

理由はセキュリティ上の問題で、携帯端末やドローン、監視カメラといった国の安全情報を取り扱うような機器については中国製を排除しようという動きがありました。そのため、日本は日本で国産のドローンを作ろうという流れができています。

ーードローン市場の規模感と種類が増えている背景としては、人口減少や業務の効率化というニーズが最も強いのでしょうか。

そうですね。日本でいうと、人口減少に伴う人手不足・担い手不足のなかで、いかに効率的に作業をするかという部分が強いです。

建設現場を例に挙げると、若い人が減っているうえに職人的な技術が必要とされるため、深刻な人手不足で成り立たなくなってきています。そこで、効率的な測量情報の取得にドローンを使い、得られた三次元データをバックホーなどの建設機械に入れることで、オペレーターをサポートする三次元化施工という形ができつつあります。人手不足解消のために国も音頭を取り、予算も新しく付けている状況です。

ーードローンのニーズについて、意外な気付きはありましたか。

意外ではないかもしれませんが、田舎の人たちはドローンに対してとても寛容だと感じました。都会でドローンを飛ばすと、通報されてしまったり、危ないものが飛んでいると思われてしまったりします。さまざまな地域に行きましたが、意外とドローンってウェルカムな存在なんですね。

きれいな風景が田舎にあっても、地域の人はそれを空から見たことはありません。空からの映像を見せたり渡したりすると、すごく喜んでくれます。「私たちの村ってこんなきれいな場所なんだね」と気付き、新しく地域の良さを再発見してもらうというのは、ドローンじゃないとできませんね。

あとは獣害についても、「いつどのように獣が入ってきているのか」などをドローンで調査することで、新たな対策ができます。地域の人たちと密接に関われる道具としても、ドローンはなかなかおもしろいです。身近な存在になりえるロボットだと感じますね。

ーードローンの今後のニーズについては、どのようにお考えですか。

今後の流れとしては、「3次元」が一つのキーワードではないでしょうか。特にコロナ禍以降、VRなど非接触でその場所をリアルに把握・表現する技術が流行っています。例えば、3次元の計測を橋梁全体で行うと、それまでは人が実際に見て確認していた作業を全てロボットが担い、3次元でデータを保管してさらに次の点検にそれを活用できるのです。

あらゆるものがVRのなかで表現できる世の中になっていこうとしています。ドローンは人が入れない場所に入って3次元のデータを作れるという点で、今後数年間で大きな流れがくるのではないかと感じています。

ドローン業界における今後の展望

ーードローン活用の今後について、現状はどのようなハードルがあるのでしょうか。

新しい技術に法整備や仕組みづくりが追いついていない点が課題です。技術が発展するスピードが速すぎるのですね。さらに技術の発展に伴って、ニーズに関する発想も次々と喚起されています。実験ではさまざまなことができていても、それを実際に活用できる場があまりないのが現状です。

ーーそのうえで、SkyLink Japanや渡辺さま自身の、未来への展望についてお聞かせください。

この業界は技術が日進月歩です。そのため、常にアンテナを広げて世界中から情報を集約し、良いものかどうかを我々の手できちんと評価していくことが非常に重要です。国内のフィールドロボティクス分野をどんどん進歩させるために、引き続きトライアルや社会実装に取り組んでいきたいですね。

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