現状のドローン人材に関する課題とドローンキャリアマップの活用法について、執行役員本部長の植木順也氏と技術開発企画部 ドローン推進グループの金子祐輝氏に伺いました。
時代に先駆けドローン人材サービスを展開
――御社では2018年2月からドローン人材派遣サービスを開始しておられます。これはどのようなサービスなのでしょうか。金子:このサービスは、ドローン業界で働きたい個人と、ドローン活用を検討中の企業とのマッチングを図るサービスです。
ドローン分野はまだまだ歴史が浅いので、ドローン人材が必要だと考えている企業でも人材要件が整理できていないケースが多いんです。そこで私たちが企業と求職者の間に立ち、適切なマッチングを行っています。
――サービス提供を開始したきっかけを教えてください。
植木:当社は1979年に創業し、メーカーやIT企業に対して受託開発やエンジニア派遣等を行ってきました。テクノロジーの世界では、何年かに一度、新しい革新的な技術が出てきます。これまでの私たちの経験から、社会の動きに先んじてその技術を活用して事業を展開することが社会貢献につながると考えてきました。
そのため常に新しい技術へのアンテナを張っている中、2017年ごろに出てきたのがドローンでした。2018年の時点でドローンの市場規模は860億円程度でしたが、23年には3800億円と予測されており、今後需要が大きく膨らんでいくだろうと注目したのです。
一方で足元を見ると、法整備や人材面ではまだまだ乗り越えなくてはいけない課題がありました。人材面で言えば、企業側からするとそもそもどんな人材が必要なのかがわからない。個人としてはドローン業界に足を踏み入れたくてもどうすればいいかがわからず、キャリアパスも不明確といった状況だったんです。
そこで、ドローンの黎明期から参入することでノウハウを蓄積し、今後確実に拡大していくであろうドローン業界で企業と個人の両方にお役に立てるサービスを展開しようと、ドローン専門の人材サービスを始めました。
――どういった企業に人材を紹介されていらっしゃるのでしょうか。
金子:ドローン業界に分類される企業は、大きくわけて二つの業種があります。一つはドローンを活用したソリューションをサービスとして提供する企業。もう一つが自社業務の効率化や安全性の確保のために、ユーザーとしてドローンを使う企業です。
ご相談いただく実績が多いのは、前者のサービスを提供する企業ですね。いま、業界としてもようやくさまざまなサービスが現れ始めましたが、それに伴って人手不足感が高まっており、お声がけいただく機会も増えました。お客様の業種としてはサービス業、メーカー、SIer、建設業が多いですね。
お問い合わせの際には、「こういった経験・スキルを持つ人材がほしい」と明確にご指示いただくケースもありますし、「ドローン事業を展開したいので詳しい人がほしい」といったような、人材要件がきっちりと固まっていないご相談をいただくこともあります。
――業界が盛り上がる中、未経験からのキャリアチェンジをめざしてドローンの資格にチャレンジする方も増えていると聞きますが、実際のところ未経験からドローン関連の仕事に就くことは可能なのでしょうか?
金子:未経験の場合、これまでどんな業界にいて、どんなことをやってきたのかが重要です。過去の経験や知識を生かせると判断されれば、未経験でも採用されるケースはよくあります。
たとえば最近では、IT企業でシステム開発のプロジェクトマネジメントをご経験された方が、ドローンのサービスを提供している会社でプロジェクトマネージャーとして採用されました。ドローン業界は全くの未経験ですが、企業側が「ドローンの知識は仕事の中で身に付ければいい」と判断されました。
私たちは、ドローンはあくまでデータセンシング技術の一つだと考えています。すべてが全く新しい技術でできているわけではなく、データやソフトウェア、システムと組み合わせることでその性能を発揮します。
つまり顧客がドローンを活用したいと考えたときにはまず、その目的に対してドローン以外の技術がどこまで活用できるのかを判断できる人材が必要になるわけです。たとえドローンについては未経験でも、周辺の知識があれば充分バリューを発揮できますので、はじめから諦める必要はないと思いますよ。
企業と求職者のギャップを解消する「ドローンキャリアマップ」
――改めて、ドローン人材マーケットの課題を教えてください。金子:人材面での問題点は、企業が求めている人材と求職者の経験・スキルにズレがある点です。企業からは点検や農薬散布といった業務の実務経験者のニーズが高いのですが、「経験がある」と言って応募されてこられる方の多くがドローン操縦経験者です。
求められるスキルとしても、企業は高い操縦技術よりもプロジェクトの管理や調整など、ビジネススキルが高い方を求められるケースが目立ちます。一方で求職者は「操縦スキルが一番重要」と考えている方が多く、ギャップの解消が大きな課題と言えます。
――そのギャップの解消のために作られたのが「ドローンキャリアマップ」なのですね。
金子:まさしくその通りです。市場から求められている人材要件と個人のキャリアパスを可視化し、企業と求職者のギャップを埋めるきっかけにするため、2022年にパーソルグループとPwCコンサルティング社、パーソルプロセス&テクノロジーが共同で「ドローンキャリアマップ」を作成しました。その名の通り、求職者が企業の求める人材になるための地図の役割を果たします。
パーソルグループが業界初の「ドローンキャリアマップ」を公開 企業の求める人材要件の定義と、はたらき手のキャリアパスの双方を支援
パーソルプロセス&テクノロジー株式会社のプレスリリース(2022年7月19日 14時00分)パーソルグループが業界初の「ドローンキャリアマップ」を公開 企業の求める人材要件の定義と、はたらき手のキャリアパスの双方を支援
この記事をprtimes.jp で読む >――具体的にどのようなものなのか、教えてください。
金子:マップでは、ドローンに関連する職種を「運用系」「ソフトウェア系」「ハードウェア系」「周辺サービス系」の4つに分類しました。現在すでにあるドローン関連職種と、いまはまだ存在していないけれども今後生まれてくるだろう職種を分かりやすく表示しています。
またマップの中央には、ドローンと直接関係のない既存職種を配置しています。これにより、イメージしやすい既存職種がドローン業界とどういった関係性にあるのか、感覚的に理解できるようになっています。
またキャリアマップと併せて、「職種要件定義表」と「未来職種一覧」を展開しています。「職種要件定義表」は、具体的にその職種がどういう仕事でどういったスキルを求められているのかを定義づけたものです。人材要件の整理に活用できるほか、習得手段まで記載しているため、学習のきっかけにもなります。
「未来職種一覧」は、今後生まれてくる職種の内容を示したもので、ドローン人材のキャリアパスの広がりを確認することができます。
――それらをどのように活用してほしいとお考えなのでしょうか。
金子:企業の中には、そもそもの人材要件が整理できていないケースがまだ多く見受けられます。ですから、求める人材を募集する際、どのような記載をすればほしい人材とマッチするかを知りたいときにぜひご覧いただきたいですね。
企業も段々と「経験者が少なく、採用が難しい」という点を理解されるようになってきました。そのうえで、いまは多くの企業が「じゃあどうすればいいかがわからない」と悩んでしまっている状態です。
そこで職種要件定義表では、「ドローン業界が未経験でも、こういった経験があればこの業務に生かせる」との情報を整理しています。こちらを頼りにしていただければ、やみくもに経験者だけを探す必要がなくなり、募集の戸口が広がります。
また、たとえば「エンジニアがほしい」という場合、同じ会社の中でも人事の考える人材と現場がほしい人材のイメージが異なることがあります。そのような場面で認識に差が出ないよう確認するためのツールとしても使えると思います。
個人に向けては、「ドローン業界にチャレンジしたいけれども、どうしたらいいかわからない」とお悩みの方にぜひ活用していただきたいですね。
「経験がないと採用されるのは難しい」と考えていらっしゃる方も多いですが、まずはマップを見て、ご自身の経験が生かせるかどうかをチェックしてもらえればと思います。
――リリース後の反応はいかがでしたか。
金子:企業向けにセミナーなどを実施したところ、「募集のイメージが湧いた」「経験者しか難しいと思っていましたが、違う選択肢があることに気付いた」といったお声をいただきました。個人からも、キャリアマップを見たことでご相談いただくケースが出てきています。
求職者と共に新しい可能性を探求
――今後ドローン人材ビジネスをどのように展開していきたいとお考えでしょうか。金子:まだまだ企業と個人の間にドローン人材に対する共通認識が生まれていない状態です。キャリアマップもまだ浸透しきっているものとは言えないので、積極的に情報発信してそのギャップを埋めていきたいと思います。
また、現段階ではドローンに関する仕事の数よりも、ドローン業界の将来性に期待を寄せてご登録いただく求職者の方が多い現状があります。そのような方々に対し、しっかりと働く場所を提供できるよう、人材エージェントの立場からご支援していくつもりです。
そうしてドローン事業に取り組む企業が増えてきたら、マップを活用しながら企業の悩みに合わせて適切な人材を提案できるように尽力していく。そうやって業界の活性化を図っていきたいですね。
――最後に、御社がドローン人材ビジネスに参入する意義について、ぜひ語ってください。
金子:2021年ごろからようやく少しずつドローンの商業サービスが展開されるようになってきました。2022年には目視外飛行が解禁され、今後ますます活用の幅は拡大していくはず。それに伴って人材ニーズも伸びていくと考えています。
「これからドローン業界で働きたい」と考える方は、まずはぜひキャリアマップを活用してほしいと思います。ご自身の経験やスキルは、実はドローン業界で生かせるものかもしれません。そして私たちと一緒に、新しい可能性を探していってもらえれば嬉しいです。
植木:ドローンは新しい業界ですが、その期待値は非常に高いものがあります。現状、ドローン人材サービスを提供している会社は少ないと見立てています。当社は早期から事業を展開しているからこそ、業界を深く知り、企業や求職者に即した提案ができる強みがあります。
私たちにお声がけいただければ、「こういう人材を求めているのであればここが狙い目です」「こういった職種につきたいのであればこの経験が必要です」など、企業・個人両方に適切なご回答ができるかと思います。
ドローンは過疎化や高齢化といった問題に対応する手段としても注目されています。パーソルグループは「はたらいて、笑おう。」をビジョンに掲げていますが、ドローン業界で働いて誰かの、または社会の課題を解決することは、楽しんで働くことにつながるのではないかと感じています。そのような社会の実現に、私たちも貢献していければと思います。
IT・機電エンジニアの派遣求人・人材派遣ならパーソルクロステクノロジー
IT・エンジニアの派遣なら【パーソルクロステクノロジー】。旧パーソルテクノロジースタッフの派遣サービスは、2023年1月の合併により求人数がさらに充実。大手優良企業や高時給な求人の中から、希望の職種や勤務地、スキルなどの条件にあった仕事を紹介します。
この記事をstaff.persol-xtech.co.jp で読む >パーソルクロステクノロジーのドローン人材派遣では、ドローンを操縦するオペレーターからエンジニアまで、ドローンに関連する幅広い人材が登録しております。企画立案、申請代行、撮影といった各作業フェーズを網羅的にカバーし、適切なご提案をいたします。
この記事をpersol-xtech.co.jp で読む >