を抱える総合大学である東海大学が、全国の大学に先駆けて2023年8月より「東海大学ドローンアカデミー」を開校しました。
無人航空機操縦資格取得へ講座を開講DAの運営を担当する(左から)新井講師、木村学長補佐、佐川講師湘南キャンパスのサイエンス・エンジニアリングカレッジに今年4月から、「東海大学ドロー
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同大学で2012年以前からソーラー無人飛行機の開発に力を入れてきた木村英樹学長補佐は、「総合大学だからこそ、各分野の専門家が有効にドローンを活用するすべを学べるようになる」と期待しています。
スクールでインストラクターを務めるのは、航空工学の専門家で、2012年から無人航空機のプロジェクトに参加していた新井啓之講師と、システム工学科で情報通信や機械力学について研究している佐川耕平講師。
機体に詳しい新井講師とシステムや応用技術の知識に長けた佐川講師によって、一般のドローンスクールでは学べない、専門分野と掛け合わせた知識・技術を学べるのが、東海大学ドローンアカデミーの特長です。
今回は東海大学ドローンアカデミーについて、東海大学とドローン研究との歴史を振り返りつつ、木村学長補佐、新井講師、佐川講師の3名にお話をうかがいました。
ソーラー無人飛行機から始まったドローン技術研究
__まずは東海大学のドローン研究の取り組みについて教えてください。木村英樹学長補佐(以下、木村):ドローンの研究に取り組むようになったのは、サウジアラビアで行なわれた「ジャナドリアフェスティバル* 」に日本がゲスト国として呼ばれ、そこに私が研究していたソーラーカーを出展したことがきっかけでした。
そこでサウジアラビアとの繋がりができ、東海大学としてなにか共同して研究ができないかと考えたところから「UAV(無人航空機)プロジェクト」がスタートしました。
新井啓之講師(以下、新井):UAVプロジェクトは、本校とサウジアラビアのキング・アブドゥル・アジーズ大学の共同で進められました。
サウジアラビアは産油国として発展してきましたが、国として今後石油が枯渇したときを見据えて新しい産業を育成していこうとしていました。特に再生エネルギーや太陽光発電、風力発電などのような技術です。
日本には、サウジアラビア側が必要とする多様な技術を同時に持っている機関は意外と少なく、本校にお声がかかったという経緯もあります。
さいわい本校は総合大学であり、航空宇宙学、機械工学、建築学、コンピューター応用工学などをそれぞれ専門に研究している教授や学生がいますから。
__サウジアラビアは日本から遠い国のように思えますが、実際に大学同士の交流をしてみていかがでしたか?
新井:このプロジェクトは大学同士の交流ということもあり、教育と研究という点が重視されていたため、機体を開発するところから共同して手がけました。
実際に現地に行って物づくりをしていたときに、おもしろい点に気が付きました。我々はものづくりの国ですので、新しいものを材料から作る方法を考えます。しかし、サウジアラビアの学生は、作ったものを見て「それ、どこに売っているの?」と聞くんです。
「売ってるんじゃなくて、最初から作るんだよ」と伝え、機体の製作方法を教えながら製作を進めました。
最終的には彼らと共同で機体を製作できるようになり、結果として彼らの物づくりに対する熱意の高さを実感しました。
__共同プロジェクトでは、どのような成果や知見を得られましたか?
新井:サウジアラビアとのプロジェクトでは、2013年に「サンファルコン1」を開発しました。翼幅が3.7メートルの固定翼にソーラーを載せたソーラー無人飛行機です。これを元にして、2015年には翼を7.6メートルまで大きくした「サンファルコン2」も開発しています。
ここから本文です 東海大学工学部の国際プロジェクト「ソーラー無人飛行機プロジェクト」の学生メンバー4人がキング・アブドゥルアジーズ大学(KAU)を訪問。現地の学生とともに製作に取り組んだソーラー飛行機「サン・ファルコン1」の公式試験飛行を実施した。試験飛行当日は、KAU学長をはじめ、本学工学部 ...
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工学部がサウジアラビア王国のキング・アブドゥル・アジーズ大学(KAU)と共同で開発を進めてきたソーラー無人飛行機が、12月12日に完成しました。このプロジェクト
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この2機で得た知見は、2017年の「NEDOプロジェクト」に引き継がれることになります。スカパーJAST、JAXA(宇宙航空研究開発機構)、NICT(情報通信研究機構)と連携して実施されました。
このプロジェクトは工学部航空宇宙学科の福田紘大准教授らが中心となって進め、2020年12月に世界最大級のソーラー無人飛行機の製作に成功しています。
工学部航空宇宙学科の福田紘大准教授らが中心となって開発した世界最大級のソーラー無人飛行機の最終動作確認を、12月27日に静岡県富士市で実施しました。この飛行機は
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東海大学ドローンアカデミーは操縦だけに止まらない!大学ならではの『総合力』で実践指導
__今まで無人航空機の開発プロジェクトを手がけていた東海大学が、ドローンスクール『東海大学ドローンアカデミー』を設立した背景について教えてください。木村:多方面で専門知識を持つ「総合大学」である本学がドローンスクールを開校することで、より深く、実践的な知識を学べる場になると考えたからです。
本学は、航空宇宙学科、機械システム工学科、そして農学部、医学部、海洋学部と、多彩な学部・学科 構成となっております。各分野の専門家が操縦を覚えれば、専門分野の発展のためにドローンはより効果的な役割を果たせるでしょう。
佐川耕平講師(以下、佐川):東海大学ドローンアカデミーは、2023年3月に国土交通省の登録認定を受けて、同年8月に開校しました。私もインストラクターを担当しております。
私の専門は機械システム工学ですので、ドローン操縦技術だけでなく、ドローンでの画像認識や、またドローンと他の技術を掛け合わせるような応用技術の面でも受講生に教えられることもあるでしょう。
たとえば、農学部の生徒はドローン操作を学ぶだけでなく、ドローンの画像認識技術を利用して農作物の育成状況をチェックする方法も学べます。また、同じ農学部であれば、農薬散布の知識も身につくでしょう。
その意味で、我々のような総合大学がドローンスクールを併設するメリットは大きいといえるでしょう。
__東海大学ドローンアカデミーでは、具体的にどのようなカリキュラムを用意されていますか?
新井:講座は学科10時間以上、実地13時間以上に加えて修了審査を実施し、それを7週間に渡って受けるコースと、1週間の短期集中で受けるコースがあります。
本スクールは登録機関認定を受けているため、修了審査に合格することで、二等無人航空機操縦士国家試験の実地試験が免除されます。
現在は、学内関係者を対象としてスクールを開講しております。すでに学費などをいただいていることから、東海大学学生(教職員等関係者を含む)に限って、 練習用機体の維持などに必要となる最低限の費用を負担頂きますが、一般のドローンスクールに比べて安い費用で受講頂けるようにしています。
スクールは現在、本校の学生および教職員を対象としています。現状はドローンスクールを修了しても大学の単位認定はされませんが、2024年4月以降は大学の1単位として認定されるプログラムにしていきたいと考えております。
地域との連携で大きなプロジェクトへ
__ドローンスクールとして、目指す姿や将来の展望などについて教えてください。佐川:先ほども申し上げたように、総合大学という強みを活かして、さまざまな専門知識と組み合わせた実践的なドローンの利活用を伝え、さまざまな分野で活躍できる人材を育成していきたいと思います。
新井:私は航空工学が専門ですが、実際に遠隔操縦の固定翼機やマルチローター機を長年操縦してきたこともあり、空を飛ぶドローンが潜在的に持っているリスクを色々な場面で実際に経験してきました。
その立場から、ドローンはどんな飛び方をするのか、どんな状況下でどのようなリスクがあるのかという視点を含め、講習の中で安全にドローンを飛ばす方法について伝えていきたいと思います。
木村:じつはつい先日、東海大学の医学部付属業員救急救命センターの方と、ドローンを災害時の医療物資輸送や災害救助に利活用できないかと話をしておりました。
その他にも、災害時に画像認識技術を搭載したドローンで行方不明者を探したり、地震時にいち早く活断層を確認したりするなど、地域の医療や災害対策にも役立てていけるよう、スクールを含めドローン研究全体を進めていきたいと思っております。