(取材)GMOグローバルサイン株式会社 浅野昌和氏|セキュリティ技術で安心・安全な「空の移動革命」を実現

(取材)GMOグローバルサイン株式会社 浅野昌和氏|セキュリティ技術で安心・安全な「空の移動革命」を実現
空の産業革命」を担う存在として注目を集めているドローン。社会でドローンを活用するための取り組みが官民一体で進められ、ドローンの活躍の場が広がる一方で、通信データの改ざんや情報漏えいなどのセキュリティリスクも懸念されています

この記事では、GMOグローバルサイン株式会社 CTO室 室長浅野昌和氏に、ドローンの普及にともなうリスクや、ドローンの安全な運用を支えるセキュリティ対策の技術についてお聞きしました。

GMOグローバルサイン株式会社 CTO室 室長 浅野昌和氏

ドローンのセキュリティリスクと暗号技術

ーーまずはGMOグローバルサインの持つ技術について、強みを教えてください。

GMOグローバルサインのメインとなる技術は、いわゆる暗号技術です。たとえばSSL/TLSと呼ばれる規格は、通信の暗号化やサーバーの認証のほかに、サーバーにアクセスする人を認証するクライアント認証や、IoT機器の認証など、あちこちに使われる汎用性が高い技術です。また、電子署名と呼ばれる技術は、最近では電子契約に活用されており、弊社でも電子署名サービス「GMOサイン」を提供しています。
そのほか、インターネットブラウザとWebサーバーが通信する際に暗号化の機能を付加する「SSLサーバー証明書」発行などのサービスも提供していますね。

ーードローン運用において考えられるセキュリティリスクには、どのようなものがありますか。

最も大きいリスクは、操縦者とドローンの間に悪意を持った第三者が介在し、通信を乗っ取るケースです。ドローンが乗っ取られると、たとえばドローンで輸送しているものを盗まれたり、人がいる場所で墜落させられたりする危険性もあります。

また、これからドローンの活用領域が広がっていくなかで、ドローンで撮影した画像等をオンラインでクラウドにつなげる機会が増えてくると、データを盗み見られてしまうリスクも浮上します。機密性の高い場所の点検にドローンを使っているようなケースでは、見られてはいけない場所を覗かれてしまうことにもなりかねません。また、データを盗み見る(通信に割り込む)仕組みを使えば、ちょうどスパイ映画のように、警備会社のドローンの映像をすり替えることもできますので、建物内に不審者が侵入するようなリスクも考えられます。

ーーそういったリスクに対して、GMOグローバルサインはどのような技術を提供できるのでしょうか。

私たちの技術でできることは2つあり、1つは暗号化です。SSL/TLSの技術を用いて、ドローンとサーバーの間、あるいはドローンと操縦者の間を暗号化することで、盗み見やすり替えのリスクに対応できます。そしてもう1つは、認証です。こちらもSSL/TLSが持つ機能で、ドローンとサーバーがお互いを認証したうえでやり取りをすると、悪意を持った第三者が間に介入することを防げます。ドローンに操縦や経路に関する命令を送っているのが意図したサーバーかどうかがわかれば、乗っ取られる心配はありません。同じように、サーバーに送られている画像が意図したドローンからのものなのかを確認できれば、すり替えなどの可能性を排除できます。

ーー2020年11月にプロドローン・SkyDrive・GMOグローバルサインの3社間による技術供与合意がありました。これを機に次世代モビリティ分野への進出をスタートされたとのことですが、この3社間で合意を交わすに至った経緯を教えてください。

GMOグローバルサインのセキュリティ技術で「空」もセキュアに 空飛ぶクルマ・ドローンの「通信・制御」のセキュリティに関する技術供与で基本合意

GMOインターネットグループのプレスリリース(2020年11月20日 14時03分)GMOグローバルサインのセキュリティ技術で「空」もセキュアに 空飛ぶクルマ・ドローンの「通信・制御」のセキュリティに関する技術供与で基本合意

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このたび合意を交わした2社は、いずれも特定の領域に強みを持ちます。プロドローンさんはドローンをメインに扱っている会社で、さまざまな先進的な試みをされています。そのころはドローンの世界でセキュリティの重要性がそこまで認識されていなかったのですが、すでにセキュリティに関する高い意識とビジョンをお持ちでした。そのような部分の意識の高さが、機体のバリエーションにも表れている会社だと思います。

SkyDriveさんはどちらかというと空飛ぶクルマがメイン。2025年の大阪・関西万博で飛行する唯一の国産の機体メーカーです。空飛ぶクルマの分野ではSkyDriveさんと組んで、どのような部分でセキュリティが必要でどのような実装が考えられるかを一緒に考えましょうということになりました。日本で唯一自分たちで機体を作って飛ばすことにチャレンジしているパイオニア的な存在で、心から応援したい会社です。

ドローンを作ったり飛ばしたりという部分は、私たちの得意な領域ではありません。私たちは私たちの強みにフォーカスし、それを求めている他社と協力したいと考え、この合意に至りました。

「空の移動革命に向けた官民協議会」への参画

ーー翌年の2021年5月には、官民協議会に参画されたということですが、この協議会の概要や目的について教えてください。

GMOインターネットグループ、 「空の移動革命に向けた官民協議会」へ参画が決定

GMOインターネットグループ、「空の移動革命に向けた官民協議会」へ参画が決定~セキュリティ技術で空の安全を守り、次世代モビリティ産業の成長に貢献します~  GMOインターネットグループ(代表:熊谷 正寿)は、2021年5月21日(金...

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協議会の正式名称は「空の移動革命に向けた官民協議会」で、「移動革命」とあるように、おもな議題は空飛ぶクルマです。直近では2025年の大阪・関西万博での飛行実現を目指し、空飛ぶクルマの社会実装に必要な要素を考えています。たとえば、空飛ぶクルマの活用方法や航空法に照らした安全性の問題など、さまざまな課題に官民が一体となって取り組んでいます。

ーー協議会にはどのような経緯で参画することになったのでしょうか。


ドローンファンドさんとご一緒した際にお話を頂いたのがきっかけです。国土交通省や経済産業省と相談するなかで、セキュリティの部分がミッシングピースになっているという話がありました。空飛ぶクルマの社会実装からしばらくの間は人が操縦する形になりますが、将来的には自律飛行に移行すると考えられており、そうなるとセキュリティが重要なピースになってきます。そのような背景があり、早い段階から参画してセキュリティの重要性を意識的にお話できる機会があればと思い、参加しました。

「Japan Drone/次世代エアモビリティEXPO 2023」について

ーー2023年6月に開催された「Japan Drone/次世代エアモビリティEXPO 2023」について、出展の目的を教えてください。

一番は啓蒙活動です。世の中の方々に、ドローンや空飛ぶクルマが安全に飛ぶためにセキュリティ技術が必要だということをわかってほしいと思い参加しました。昨年に続き2回目の出展だったのですが、前回よりもドローンや空飛ぶクルマの認知度が上がり、社会に浸透してきた実感があります。昨年は「もう少し未来のこと」だと考えている方や、今までのドローン活用の延長線上で考えている方が多かったように思います。一方で今年は移動革命や空の産業革命と呼ばれる技術をしっかり見ようと思って来場した方が多かったのではないでしょうか。

(イベントレポート)Japan Drone 2023|空飛ぶクルマ『HEXA』の展示も。ドローン業界の最新テクノロジーが集結!

2023年6月26日〜28日の3日間に渡り、幕張メッセにて開催された日本最大級のドローン展示会「Japan Drone 2023」。 イベントには、ドローンに関する製品やサービスなどを提供する企業・団体が集まり、最新テクノロジーを紹介するとともに業界の未来を展望しました。多くの参加者で盛り上がりをみせた会場の様子をレポートします!

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ーー他社との交流や意見交換を通して、GMOグローバルサインに求められている知見や役割についてはどのように感じましたか。

やはりこれまで、機体メーカーにとって一番のプライオリティは「いかに飛ばすか」でした。しかも、人が見える範囲で操縦する形がメインだったので、セキュリティ面はそこまで深刻な問題ではありませんでした。しかし、航空法の改正により目視外飛行が可能になったことで、セキュリティの課題に取り組む必要性を改めて感じられていると思います。そのため、リスクについて説明し、半ば啓蒙活動のような形でお話しました。実装の段階までにはまだ少し時間がかかるかもしれませんが、みなさんの意識が徐々に変わってきている感触はあります

ーーホワイトハッカーによるドローンハッキングLIVEを行なったそうですが、LIVEで実演した内容と、お客様の反応や感想をお聞かせください。

まず、使用したのは市販で誰でも買えるようなドローンです。セキュリティは目には見えないので、どのようなリスクがあるのかを目に見える形で実演しようと、実際に脆弱性を突いて制御を乗っ取ったり、画像を盗み見たりすり替えたりしました。目の前で実演することで、リスクが現実にあることを理解してもらうのがねらいです。来場者の方からも、リスクを実感したという声が多かったですね。「本当にできちゃうんだ」と。


ーー空飛ぶクルマ「HEXA」の展示ブースでは、お客様からどのような反応・感想がありましたか?

空飛ぶクルマがリアリティを持ってきていると知っていただくことが大きな目的でしたが、裏の意図として、だからこそセキュリティの課題も差し迫っていることを伝えたいという思いもありました。実際に乗ったり見たりすることで、「これが空飛ぶクルマか」とわかってもらえたのではないでしょうか。かなり反響が大きく、空飛ぶクルマを体感してもらうねらいとしてはドンピシャだったと感じています。


ーーGMOインターネットグループが「Japan Drone & AAM Awards 2023 審査員特別賞」を受賞しました。受賞を受けての感想はいかがですか。

アワードをいただけるとは全く思っていなくて、そもそも審査員特別賞があるとも知りませんでした。今年はエントリーしていなかったのですが、あのような形で評価していただいて賞をもらえたのはとても意外でしたし、すごくうれしかったですね

ドローンが安心して飛べる社会へ

ーー最後に、ここまでのお話を踏まえて未来への展望をお聞かせください。

私たちの技術はインフラ事業であり、表に出ることなくさまざまな方々を下支えする役割だと思います。それでもなくてはならない技術だと自負しているので、私たちの技術を通してドローンや空飛ぶクルマが安心して空を飛べるような世の中になってほしいですね。

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